アタランテお母さん~聖杯戦争で子育て頑張る!~   作:ら・ま・ミュウ

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分岐点 後編

「赤ん坊を守りたいだと?

……ふんっ使い魔の分際で、と私の友なら言ってのけるのだろうが面白い。許可しよう。」

 

俺がマスターと過ごした時は少ない。

会話も最低限で、サーヴァントである筈がろくに側に仕えることも出来なかった。

 

「……嘗めるなよ、この毒婦めが!この私が貴様等の言いなりになってたまるものか!カルナ!奴等を殺せ!」

 

本来味方であったアサシンの裏切り。

赤の陣営としていち早く気づいた彼は、他のマスターの令呪が抜き取られライダーやキャスターまでもが敵にまわる中、的確な指示で庭園の三割を破壊せしめ元マスター達を確保すると、ついにはあの魔境と化した空の箱庭なら脱出してみせた。

 

これほど、優秀な彼が聖杯を手にする事が出来なかったのは俺の力が足りず、マスターの足を引っ張ってしまったからだ。

 

「申し訳ないセンベルン…貴方はここで死んでもらいます」

 

唐突だった。

まさか、聖堂教会の監督役がマスターとして参加し、不明であったアサシンのマスター=今回の黒幕だったとは。

黒鍵で腹部を貫かれたマスターはその時、己の死期を悟ったのだろう。

 

―全令呪を持って命ずる!英雄として生きろカルナ!―

 

自身のサーヴァントが神父の言いなりになるぐらいなら、そんな考えもあった。魔術師としての高いプライドが敵にいいように利用される惨めな様を許さなかったのかもしれない。だが、俺は…俺だけがその真意を理解していた。

 

「了解したマスター!」

 

赤の命運はアーチャーのマスターに託した。

 

 

 

そして、我がマスター最後の命令に従い全身全力を持って黒のアサシンを退けた俺の魔力は完全に失われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……監督役のあの男を信用するな。」

 

「分かった。」

 

カルナは彼のマスターが掴んだ事の経緯を語り、口を閉じる。

これで最低限の務めは果たせただろう。

そう思い、全身の力を抜いた。

 

「……あぁぅ?」

 

「起きてしまったか」

 

「……う」

 

すると、どういう風の吹き回しか。マリーは目をパチクリと開いてこちらを見つめるではないか。

 

「…………」

 

「…………」

 

カルナは腕を伸ばす。ほんの少し指先があたる程度に。

 

「ぁぁう!」

 

マリーはそれにしがみついて、「抱いてみろ」アタランテはそっとカルナに預けた。

 

「…………」

 

「………………温かい」

 

ぽつりと漏らしたのは捻りのないそんな気持ち。

 

「きゃっきゃ!」

 

マリーは嬉しそうに“にぱー”笑う。

 

やはり、俺は恵まれているらしい。

この幸運をマスターにも分かち合うことが出来れば、そんなiFを思い描きながら、マリーをアタランテへ返え―――「にゃ!」

 

マリーはカルナにしがみついて離さない。

 

「……アーチャー」

 

「ま、任せろ!お前が、消滅したら、下からキャッチしてやる!……おぉ、大丈夫だ、私、落ち着いて衝撃を殺せ!」

 

ケモ耳をわたわたさせながらカルナの下に腕を構えるアタランテ。そして行動の読めないマリー。

最後が、賑やかなのも悪くない。

 

カルナは今度こそ、消滅――

 

「にゃ!」

 

「「!?」」

 

カルナの不透明だった肉体がしっかりとした色を帯び、熱い魔力が全身を駆け巡る。

 

「マリーぃぃ~」

 

「赤ん坊がマスターか……ははっ」

 

 

 

赤のランサーカルナ。彼の新たなマスターは如何なる運命(Fate)の悪戯か、生後三ヶ月の赤ん坊である。




カルナ(マスター マリー)
筋力B→B‐ 耐久C 敏捷A→B
魔力B 幸運D→A(自己申告) 宝具EX→A++

アタランテ(マスター マリー)
筋力C→D 耐久D 敏捷A+→A
魔力A→B 幸運E 宝具B

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