アタランテお母さん~聖杯戦争で子育て頑張る!~ 作:ら・ま・ミュウ
女にとって運の悪さとは、日常であり、昨日買った物を失くした、免許がない、財布を落としたなんてのは、どうしようもないぐらいありふれた日常の一コマだった。
「そうだ、旅に出よう」
それでも、彼女が前向きで居られたのは天性の才能故か、はたまた単に能天気な性格だったからか。
亜種聖杯戦争
旅先で令呪が発現したかと思えば、アレよコレよと事件事故に巻き込まれランサーのマスターとして参戦することになった彼女は何とか最後まで生き残り、聖杯へ願いを叶えて貰う権利を得た。
『さぁ、君の願いを叶えるといい』
「私はマリーの子供を、つまり孫を抱くまで死にたくない!」
最後に消滅する己のサーヴァントを見送り、願いを叫ぶ彼女。
―その願いは叶えられない―
「そん、な……」
産まれてすらいない子を想う母の願いを聖杯は無情にもはね除けた。
――宿屋
「……マリー」
「…ぁぁう」
「今後、聖杯大戦は激化の一途を辿るだろう。お前に覚悟はあるか?」
「ぅう…う」
「……そうか。」
無言で指を差し出し、反射的にそれを握るマリー。握手してるようにも見えなくはない“それ”を一歩下がって見守るアタランテ。
「契約は成立した。俺はこれより、お前の矛となり、盾となろう……アーチャー荷物を纏めろ、国外へ逃亡する」
「いや、その流れで何故そうなる!?」
たまらず叫んだ。
別に国外へ逃げる事に不満があるわけではない。マリーを守りながら戦う事に限界を感じていたし、カルナが味方になったからと、これ以上マリーを聖杯大戦の荒波に巻き込むような外道に成り下がった覚えはない。
……ただ、何と言うか…うん、何故だろう。ツッコんだ私の方が可笑しいのかな?
哺乳瓶やら粉ミルクやら、今朝がた改めて買い出したベビーグッズをトランクに積めていくカルナにマリーを抱き上げたアタランテは困惑の表情を浮かべる。
「ぁあぅ」
「そうか、考えるだけ無駄か……」
「では行くぞ」
「……待て」
「何だ?」
「出るのはオムツを変えてからだ。後、今日は日射しが強い。トランクから帽子と着替えを取り出せ。…白いやつだ。マリーはそれがお気に入りなんだ。」
「了解した。日傘は必要か?」
「あぁそうだな。少しかさばるが液体ミルクも買い足しておきたい、あの大型ショッピングモールによるか」
会話をしながら流れるような速さでオムツを変え、あっという間に着替えさせられていたマリー。
「済んだぞ」
「……あ、ぁぁ」
自分では、こうもスムーズに行えないだろう。
カルナは微妙な敗北感を覚えた。