アタランテお母さん~聖杯戦争で子育て頑張る!~   作:ら・ま・ミュウ

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慢心は人間にとって最大の敵である

迎撃システムを破壊され、幾つもの大穴を残す事となった空中庭園。城の主であり、この宝具の持ち主でもある赤のアサシンは憤怒の顔を隠そうともせず予備の貯蓄を回し城の修復へと努めていた。

 

「死にかけのマスターに出来損ないのサーヴァントごときが!」

 

強く腰掛けに拳をつく。

 

計画上、切り捨てる予定であった赤の陣営のマスター達。毒で眠らせた後、令呪を抜き取って赤のサーヴァントを残らず手中に集める……赤のランサーのマスターは悪運でも働いたか、持ち前の礼装が僅かに適合しその毒の効果が他のマスターより効きにくい状態にあった。

しかし、激痛に苛まれ、全身の感覚は出鱈目にかき混ぜらたような立つ事も覚束ない相手など取るに足らない。

奮闘虚しく意識を失うのも時間の問題であろう。

 

「誇りある魔術師が…貴様ら使い魔に、いい様にされるのは虫酸が走るのだよ!」

 

―令呪を持って命ずる、顕現せよランサー!―

 

「何っ!?」

 

令呪発動の兆候が見られれば瞬時に心臓を貫く筈だった。

されど彼の魔術師が、無詠唱で令呪を発動させる事が出来たとは……いや、過程がどうであれこちらの慢心が過ぎた結果だ。

 

転移してきた赤のランサーと、城を効率よく壊す手段を心得ていたマスターの男。

 

本来ならば、聖杯を確保し願いを成就していた期限を三日も過ぎ、よりにもよってその尻拭いを自身のマスターへ委ねる事になってしまった赤のアサシンの心内は穏やかなものではない。

 

 

「まーあれだ、この時代の魔術師にしては中々芯のある奴だったぜ。俺の時代でも魔術の腕は兎も角、軍師としてはやっていけたんじゃないかね~」

 

「ほぉっ彼の魔術師はそれほどの逸材で在られたか!くうっ私も会って話してみたかった!」

 

「……それは、小説のネタ集めか?」

 

「勿論ですとも!」

 

 

玉座の下では、こちらの手勢となったライダーとキャスターが楽しげに会話を繰り広げている。

…よもや、三騎士を味方に付けられないばかりか扱いやすいバーサーカーですら計画の足しにならずして消滅し、不安分子(セイバー)を残す事となるとは。あの何処か達観したような目付きをするマスター(シロウ)ですら予想がつかなかったであろう。

 

 

 

だが……この胸の蟠りも今日までだ。

 

「ライダーにキャスター、間も無くユグドミレニアの拠点上空へ到達する。」

 

「へぇ、だからどうした。俺に戦えっていうのかい?お前さんだって俺と同じサーヴァントだろうに」

 

「ならば、ここで自らの胸を串刺しにしてみるか……英雄でありたいのだろう?」

 

アサシンは()()()()、シロウから譲り受けた令呪を翳しライダーを煽り立てる。

 

「チッ……テメェの指示に従う」

 

「……まぁよい。キャスター、お前はせいぜい庭園から転げ落ちないように部屋で震えていろ。」

 

「――了解しました!」

 

「……?

これより我らは大聖杯を黒から奪い聖杯大戦を終結させる。しくじるなよ尖兵ども」

 

妙にやる気なキャスターに違和感を抱くも、大聖杯の強奪に向け赤の陣営は動き出した。


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