アタランテお母さん~聖杯戦争で子育て頑張る!~   作:ら・ま・ミュウ

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解放と黒

サンザーラ家は紀元前より存在した。より詳しく言えば古代ギリシャ。魔術の才を宿したとある娼婦が客として訪れた神に才能を見出だされ、強力な加護と共に神代が潰えようと決して衰える事のない…原理上、神の子すら授かることもできる胎盤(呪い)を与えられた事が始まりだった。

 

娼婦を初代と定めるかはサンザーラの中でも度々議論が交わされるが、彼女の娘こそサンザーラの初代当主であると見なされる事が多い。

 

娼婦の娘、イオナ・サンザーラは近い未来

神と人が袂を別つ事を揶揄し……サンザーラの男児は馬鹿しか産まれないからとサンザーラで男が生まれる事を禁忌とした、同世紀の魔術師を圧倒する知謀と優れた未来視によって如何にしてサンザーラが根源へと辿り着くか道を示した先導者であるからだ。

 

「はぁ……退屈ですねぇ」

 

尤も、サンザーラの魔術基盤をたった一代で築いたと言われるフェイ・サンザーラが()であり、母である娼婦に乱暴を働き、その子を実験材料として切り刻むなどという異常性こそ目を瞑れば、彼こそがという声がないわけでもない。

 

「この時代でやりたい事はしてしまいましたし……“死徒”は神の血が邪魔するでしょう…魂喰いでもしながらサンザーラの悲願を見届けますか」

 

 

フェイ・サンザーラ

彼は神代から現在へ、人という形を保ちながら生き長らえる正真正銘の化け物である。

 

 

 

 

 

 

 

「―――それが、貴方の正体ですか」

 

「ええっ前の亜種聖杯戦争で小娘に一度殺されましたが、この私は問題なく存在していますとも」

 

空中庭園の入り口。本来ならば聖堂にて黒のランサーを待ち構える筈だったシロウ・コトミネは、此度の聖杯大戦を狂わした元凶に言葉をかける。

 

「しかし、よく分かりましたねぇ。時計塔でもここまで知る者は……数人ぐらいましたが、」

 

「もしかしたらと思い、アサシンに調べてもらったんです。時間は掛かりましたが、貴方を消せばこれ以上、波紋が起きることはない。」

 

シロウは赤のキャスターが強化し低ランクの宝具と化した日本刀を取り出す。

 

「――あァあ、一画足りませんでしか」

 

サンザーラを名乗る男。フェイ・サンザーラはそれに目もくれず事前に人工魔眼で視たダーニックと黒のランサーが融合する未来が狂い、ダーニックを殺した黒のランサーが第二宝具に意思を飲まれ暴れ回る様を見る。

 

マスターを失い、下手なバーサーカーより扱いづらい彼に再契約を持ちかけるマスターなど存在しないだろう。

 

そして、シロウが真剣を振りかぶりフェイの頭蓋骨を捉える。

「――これで、詰みです。フェイ・サンザーラ」

 

血潮が舞い数千年に及ぶ彼の人生は幕を閉じた…かに思えた。

 

 

「あれなら……充分ですかねぇ」

 

「ッゥ!?」

 

 

二等に分断されたフェイの瞳が暴走するランサーを捉える。

シロウは激しく警戒を表し、距離をとった。

 

 

 

 

『ガァ"ァ"ァ"ァ"』

 

「ハァ…」

 

暴走した黒のランサーに向け、

フェイ・サンザーラは頭から脳髄を溢しゆっくりと歩きだす。

シロウは息を飲んで動けず、フェイ・サンザーラに気づいた英霊達は絶句。ある者は警戒を、ある者はグロ過ぎると口を覆い、ある者は低く唸った。

 

「見せてあげましょう!サンザーラの悲願とは何足るかを!」

 

誰しもが警戒の目を光らせる中、フェイ・サンザーラはその手に刻まれる魔術刻印を腕ごと切断し、次の瞬間()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――一方その頃

 

 

「おほほほ!これがスリルかァ素晴らしい!」

 

パラシュートを背負った赤のキャスターが戦線を離脱。

 

「「ああああああ!!!!」」

 

アーチャー(アタランテ)ランサー(カルナ)は消滅の危機に瀕していた。


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