アタランテお母さん~聖杯戦争で子育て頑張る!~ 作:ら・ま・ミュウ
「良い天気だ」
「あぁ、父は今日も俺たちを見守ってくれている」
快晴の空。気持ち良い風のふく高台で街並みを見下ろすのは二人の男女…カルナとアタランテ。
首の力も大分強くなり、おんぶ紐の使用も考え始めたこの頃、ベビーカーに入るマリーはうっとりとした瞳を細めて小さく欠伸を漏らす。
「…アーチャー、聞いてもいいか」
「何だ」
「何故、この島国を選んだ?」
「分からん。ただ夢の中でアルテミス様がこの地を訪れるようにと諭して下さったのだ」
「“夢”……英霊は本来夢を見ない。それがお前のスキルか宝具という訳か。」
「いや、そんなものはないが」
「…………そうか」
戦争や紛争がなく、聖杯大戦が終わった後もマリーと共に居たい。そんな想いを抱いた彼女は
最早、聖杯大戦など知らぬというのか一切の武装を解除し、ごくありふれた格好でベビーカーを引くその姿は一見、子連れの外国人観光客にしか見えない。
予約していた民宿の戸を叩いた一行は、こちらを外国人とみて慣れない英会話を試みる女将に苦笑し鍵を借りる。聖杯大戦の聖杯は元はこの地で造られた影響からか問題なく日本語や一般常識を心得ていた二人。
取りあえず、一ヶ月ぐらいは過ごす予定だ。
道中、寝惚けたマリーがカルナの魔力パスを切り離してしまうというハプニングこそあったものの、こうして今がある。
「あーうー、ぅぅう!」
「ほら~どうした~いないないばぁ!」
右へ、左へ、世話しなく動くマリーと気を引こうと釣られて動くアタランテ。
聖杯大戦が終われば英霊は消滅するしかない。それは単独行動持ちの弓兵であろうと変わらず、我々がマリーを育て上げるには圧倒的に時間が足りないのかもしれない。でも、今だけは。
「……今、だけは」
「ぃぁあ!あ!」
ころんっ
「「あっ」」
「見っ見たか!ランサーま、ま、マリーが!寝返りしたァ!!!!」
「あ、ぁぁあ…これは凄いな。今オレはかつてないほど胸が高鳴っている。まさか戦場以外でこのような気持ちになるとは予想外だ」
「マリー!マリー!凄いぞ!マリー!」
この幸せがどうか永遠に続きますように。
彼らは、願った。
☆☆☆☆ 息抜き回
「ねぇダーリン、マリーちゃんったら本当に可愛いわね!
あのゼウスの子孫って言うからどんなふてぶてししい子かと思ったけど、うん!私の加護を授けちゃう!」
「おい、止めろ。今お前が出てきたら世界線がぐちゃぐちゃになるだろうが!」
「ぶー、ダーリンのケチ。ヘラちゃんは加護あげてるのに私だけ~!」
「……は?」
ギリシャで人間の風俗に行くっていったら、この神(ヒト)ぐらいでしょう。