アタランテお母さん~聖杯戦争で子育て頑張る!~   作:ら・ま・ミュウ

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努力家サンザーラ

この頃、マリーの成長が著しい。

 

昨日、寝返りをしたと思えば今朝には……“ずりばい”なのだろうか?

仰向けに寝かしつけた状態で足を動かし、気がつくとランサーの下まで移動していた。きっと、黄金のイヤリングが気になったに違いない。出来れば私の下に来て欲しかった

――いや、やはり喜ばしい事だ。

この日記をつけてからまだ一月ほどしか経っていないのに、これを見返すのは私の楽しみになっている。

まるで、漠然としていた夢が形になっていくような……聖杯が過程を無視して、願いだけを叶えてしまう物だとしたら今を味わう事が出来ないのは悲しいな。

 

 

―追記―

明日は離乳食を試してみようと思う。

それと受肉する目処は経っていないが、霊脈を利用し我々の魔力供給源に出来ない物かとカルナから話を受けて明日『柳洞寺』を訪れる事になった。

久しぶりに忙しくなりそうだ。明日が楽しみで仕方ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――空中庭園

不気味な怪物が佇むそこにアキレウスは眼を細める。

 

「まさか現物を拝めることになろうとは、」

「世界の裏側へ干渉して現れたというのか……不死身の怪物ヒュドラ」

 

黒のサーヴァントは撤退し、アキレウスの後ろにいるのはこの庭園の主であるセミラミスと毒の牙をその右腕に受け瞬時に切り飛ばしたシロウ・コトミネのみ。キャスター……シェイクスピアは何処に行ったかは分からない。パラシュートを背中に下げ自室の窓から飛び降りた彼の動向を知る者はいない。

 

『どうだ!此こそがサンザーラの秘奥!神の権能を再現せし人理を否定し塗り潰す…主神ゼウスから神々の時代を取り戻すべく命を受けたサンザーラの起源にしてその有終の一端である!』

 

ヒュドラの背後で声が響く。

それはどこか自慢気で、愉悦的で勝利を確信してやまない溢れんばかりの自信が感じられる。

 

「こっち側の人間が生き残っているとはな、驚いたぜ。だけど、お前みたいな奴が全知全能の息子とはゼウスも浮かばれねぇな」

 

侮蔑的な態度をとったアキレウス。

 

『フフフ……貴様ら戦闘狂には我らの千年に及ぶ悲願など推し量れまい』

 

それに対して、生きる半神。

サンザーラの祖。神と契りを交わした娼婦の息子であり不死…とはいかずともパックリと割れた身体を瞬時に再生してみせるほど高い()()能力を持った彼は嗜虐に顔を歪め、まるで己がサンザーラ代表であるかの如く悲しみに満ちた声で語りだす。

 

『長かった。ああ、長かった。全知全能の血に耐えられず死んでゆく同胞が!何れ新世界の体現者を地上に降ろす下準備の為に魔法の域に片足を掛けた…道さえ違えば君らと同じ人理に刻まれる英雄となっていたでたろうサンザーラの分家達……シヴァ、オーディン、インドラ、アンリマユ、彼ら偉大なる大神の前に何百と潰された事か…

ゼウスは何と残酷な事を命されるのだと嘆いたよ!発狂したさ!

 

“全神話系統の血をただ一人に集約する”なんて馬鹿げている!』

 

「……成る程、あの赤子に既視感があったのはその祖先が我が側にあったという訳か」

 

神の血を僅かとはいえ流すセミラミスは抑揚に頷いた。

アキレウスとシロウはその裏付けとも取れる発言に息を飲むが

――彼女を初め、サンザーラは数多の英雄譚の影に潜み神と契りを交わしてその血を次代へと確実に引き継がせてきた。

アキレウスは知らないだけでサンザーラとは遠からずの親戚である。生前、ただの魔術師に過ぎなかったシロウ・コトミネとの血縁関係は不明だがもしかしたら……

 

新世界だとか半神どうこういぜんに、

サンザーラ頑張り過ぎだろ……普通に引くわ。

 

アキレウス達は思った。




やったねマリーちゃん!
全神々が親戚だなんて……お年玉がいっぱいだ!

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