アタランテお母さん~聖杯戦争で子育て頑張る!~ 作:ら・ま・ミュウ
「赤のランサーとアーチャーはトゥリファスには居ない?」
日本の冬木とは打って変わり分厚い雲の覆う悪天の空。
トゥリファスの街の一角。旅行パンフレットを広げるモードレッドは煙草を手に大きく息を吐く
「……あぁ、考えうる限り最悪の状況だ。赤のアサシンのマスターが裏切り、時計塔派遣の魔術師は俺を除き全滅、黒は主力のランサーとキャスターを失い大幅な戦力ダウン」
おまけに聖杯大戦をすっぽかして二騎が海外逃亡――前者だけでも聖杯大戦の中止を考えるべき大事だというのに戦うべき相手が戦闘放棄とは話にならない。
「(時計塔に連絡を取るべきだろうか?)」
幸いランサーとアーチャーが向かった先は検討がついている。
聖杯大戦のルールを守る気がない相手なら時計塔に任せてさっさと脱落して貰った方が効率がいいだろう。
獅子劫はそう判断する。しかし、血の気の多い我がサーヴァントの心意気は全く違ったようで――
「よしっマスター、ニッポンに行くぞ!」
「……言っとくが観光目的じゃないよな?」
指を絡めニンニンっ……と【忍者村ご招待!】ヘンテコなパンフレットを小脇に挟むモードレッドに何とも言えないため息を吐いた。
場所は変わり道端で地図を広げ柳洞寺を探すアタランテ達。
つかの間の休息に心身共に休息を得た彼女達はいよいよこの都市を訪れた本来の目的を達成すべく公園のベンチに腰掛ける一人の老人に道を聞こうと話しかけた。
「すまない御老人。柳洞寺にはここから何処へ進めばいいのだろうか」
「ふぇ、柳洞寺とな?……そうじゃの、柳洞寺かのぉ……暫くお参りに行っとらんで、はてどう行くんじゃったか?」
首をかしげるその老人は……ボケているのだろうか?
顔についた
「すまんのぅ。どうも思い出せそうにない」
「いや謝罪するのは此方の方だ。話を聞いてくれて感謝する」
「孫の慎二がいれば、変わりに頼む事も出来たんじゃが……そうじゃ、これをやろう」
老人は懐から小さな金属片を取り出しカルナに握らせる。
「……きっと必要になる筈じゃ」
老人は意味深な笑みを浮かべると瞳を閉じて、そのまま寝てしまった。
「……?」
「おーい!どうやらこの先を進めば着くらしいぞぉ」
アタランテの声に視線を移動する。
サワ サワ サワ サワ
「……人の類いではなかったのか」
その隙をついたかのように老人は蟲の集合体となって溶け、排水溝を通って消えて行く……勿論追うことも出来たがあれに人を害するような気配は感じられず、そして一応あれでも生きた人間であるようだったのでカルナは見逃す事にした。
この世界の間桐家
「ぬわっ喉に餅が詰まった――あっでも儂の体、蟲の集合体じゃから窒息する事ない!」
「クール!僕はクールに生きるぜ!」
「えっ私ですか?
私は遠坂でしたよ、母さんや姉さんと違って巨乳ですけど……あっ今は衛宮です」