アタランテお母さん~聖杯戦争で子育て頑張る!~ 作:ら・ま・ミュウ
やったぞ!ぁぁあ!最高だ!
この子が!この子を※※として我々は!※を※※させる!
根源へと至るのだ!
我が祖※※※※※の断罪はやはり正しかった、神の血を絶やさず交配によって“維持”するのではなくっ※※※させるとは!素晴らしい!素晴らしいぞ!
しかし、魔術刻印を埋め込むことでしか完成ザザ………今のままでは半分が…ザザ………………限界…………ザザ………………10歳を越えるまでに植え付ければザザ…………………………
アタランテは夢を見ていた。
視ていたのはポットに浮かんだ赤ん坊
卑しく嗤う魔術師
生前の記憶や聖杯の知識にない異国の文字が刻まれた古い粘土版
そして、その男が持つ欠けた魔術刻印
ポットに浮かぶ赤ん坊を見て己のマスターだと知ったアタランテは全身の毛が逆立つような錯覚を覚える。
「これは、マスターの夢だと言うのか?」
マスターがサーヴァントの夢を見る。それは知っていた。だが赤ん坊であるマスターが生前の私の行いを見た所で何も分からないだろう。そう、思っていた。それが何だ?何だ、これはァ!
「これが親の行いである訳がない!」
“それ”からは微塵の愛も感じられず、生を厭う顔は窺えない。
まるで物を見るようで、熱烈な信者が異教徒を切り裂くような狂喜に満ちた瞳は赤ん坊の生存が危ぶまれた。
アタランテはそれが夢であると理解しつつ、彼の邪悪な魔術師を殺し赤ん坊を救い上げたい感情に駆られる。
『やぁ、久しぶりだね』
「誰ッ!?」
アタランテは自身の体を通り抜けて現れた男に息を飲む。反射的に掴もうとするが伸ばした腕はその男を通り抜け、ここは夢の中、アタランテが干渉出来ないと言うことは彼もまた赤ん坊がみた記憶の住人なのだろう。
『おぉ!我が友よ!』
『久しぶりだね』
赤ん坊の父親らしき魔術師と、紺色のコートを纏う男は親しげに会話を楽しみ
淡い光に照らされたポットの中で、赤ん坊はスヤスヤと寝息をたてる。帯びただしい数の魔術式が起動し、人の頭ほどある魔蟲が頭から覆い被さるおおよそ赤ん坊が受ける扱いでない、この状況で赤ん坊が苦痛を感じていない事だけが幸いだった。
「どちらにしろ、お前にはこの子を返す訳にはいかなくなった」
アタランテはそれが無駄な行いだと知りつつ、赤ん坊を守るように背にして会話する魔術師を睨み付ける。
最早、心は決まった。マスターの正体がなんであるか、人の身ではいや、英雄の身ですら手に余る存在であろうと、私は生まれてきたその事を祝福して……愛そう。
かつて、あの方が私にそうしてくださったように。
他のサーヴァントが敵に回ろうと絶対。
『びぇぇぇ!!!!』
その時、夢の中の赤ん坊が泣いた。
『おや、君の子が泣いているよ?』
『――マリーの事か?確かにこの子が生まれるのに
「そうか、お前の名前は“マリー”」
まるでアタランテがその言葉を知る事が、崩壊の条件だったかのように夢の世界は崩れ、意識は現実世界へと浮上する。
「……絶対に守る」
覚醒したアタランテはマリーをあつく抱き締めた。
「びぇぇぇ!!!!」
そして、アタランテと同じく目覚めたばかりのマリーはびっくりして泣いた。(号泣である)
次回『ァーウー!』