アタランテお母さん~聖杯戦争で子育て頑張る!~ 作:ら・ま・ミュウ
「びぇぇぇ!!!!」
‐マリーが泣いている‐
「圧制者どもぉ!最早生きて帰れると思うなぁぁ!!!!」
‐バーサーカーが笑っていない‐
「悪いが、今の俺に慈悲を期待するな」
‐ランサーは怒っているのか?‐
「フゥゥゥゥその子を返せェェェェ!!!!」
‐黒い、私だと……駄目だ……何だ、何が起きたのだ……あれが私ならば、『私』は一体……‐
「きゃっきゃっ!」
「ほれ~楽しいか♪」
オシメを変えたばかりのマリーがご機嫌になるのは、最近分かってきた事だ。素肌のまま抱き上げると不機嫌になるが、布などを間に挟んでやると気にならない……現界してから一週間、私がマリーのサーヴァントになってからもう随分と経ったような気がする。
「このまま平和に……とは行かないものか」
アタランテは、数日前なら共にマリーの笑顔に心癒されたランサーやバーサーカーが居ない事を少しだけ寂しく思った。
『赤のセイバーが黒のセイバーとバーサーカーに接触しました』
一昨日、教会の監督役シロウ神父が魔術師として一流の才を宿しながらも、生後半年あまりで聖杯大戦に参加することになったイレギュラーなマスターの様子を見に来た――建前で、本来の目的であるライダーを彼のマスターの下へ連れていく最後にさらりとそんな事を言ってのけた。
アタランテ、カルナ、スパルタクスは理解する。
ついに、始まったのだ。
七騎対七騎の聖杯を巡る壮絶な殺し合い――聖杯大戦が。
『すまない、俺は一度マスターの下へ戻ることにした』
シロウが教会を離れてから数分後、ランサーはマリーを心配するような顔をみせるも、そう短く言葉を残し霊体化して消えた。
『……我は扉前にて襲撃に備えよう』
バーサーカーは、今も扉を隔てたすぐ近くで警戒の目を光らせている。彼のマスターはそれで良いのかと疑問に思ったが、バーサーカーにある一定の裁量権を与えているか、制御を諦めているのかもしれない。緊急時には令呪を使わざるを得ないだろうが、高すぎる狂化ランク故にバーサーカーのマスターは手元に置くことを躊躇っているのだろう。
「きゃっきゃっ!」
…………それだけだ。
いざと言う時、バーサーカーは戦力として期待
マリーを守れるのは私だけだ。
「…………マリー、お前は可愛いよ」
アタランテはマリーの額に口づけをしてベットに預ける。
マリーはまだ遊び足りないのか両手を上下に揺らして楽しそうに声を上げた。
アタランテはそれにうっとりと……どこか陰りのある表情をみせるもピクピクとケモ耳を揺らして、マリーが寝つけるまで遊びに付き合った。
「すぅ……すぅ……」
「……よし、書くか」
マリーが寝ついた事を確認するとアタランテは懐から手帳を取り出し、ツラツラと何かを書いていく。
そして、三枚ほどページを消費して書き終えたアタランテは手帳をしまい、マリーの負担を抑えるべく霊体化をとった。
次回『襲撃』