ガンダムビルドダイバーズ・スピリッツインテンション   作:さくらおにぎり

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22話 意思の名の元に

 適正のあるELダイバーを強化人間に仕立て上げ、そのデータを基に作り上げたコピー体達をニュータイプ部隊と称した。

 

 そう答えたバーテンダーに、トラちゃんはコーヒーを飲み干して、四度目のオーダーを行う。

 

「姐さん、これが最後のオーダーだ。『BEYOND THE TIME』を頼む」

 

「はいはーい」

 

 トラちゃんのオーダーを受けたバーテンダーは、戸棚を開けて、かなり奥の方にあるそれを引っ張り出して来る。

 その様子を見ながら、マイマイは頬杖を突いた。

 

「運営の内乱って言っても、今だから言えるけど、結局は収束してみんなハッピーになっておしまい……だったのは大多数で、それ以外はそう言うワケにはいかなかったのよねぇ」

 

「あぁ……准将を始めとする多くの方々の尽力によって、無事にハッピーに終わったが、『命が失われた』ことに変わりない。0.1歩でも誤れば、今とは違う現在(いま)になっていたろうな」

 

 内乱の渦中に介入していたトラちゃんとマイマイは、その顛末を語り合う。

 

「で、"あの子達"は何て言ってたの?」

 

「言い方は様々であったが、感謝するにしきれない、とだけは伝えておこう」

 

「そう」

 

 トラちゃんの掻い摘んだ言い方に、詳しく問い詰めることもなく、マイマイは頷く。

 

「種デスのレイも言ってたもんねぇ、「どんな命でも、生きられるのなら生きたいだろう」って」

 

 

 

 

 

 ベースエリアに帰還してからは、ジンライ改弍の整備を行うこともなく、ハバキリはステラと共にログアウトした。

 先程の、カツラギ氏の"宣戦布告"は、他のメンバー達の耳にも届いているだろう。

 メンバー全員が同じ場所からログインしているのなら、わざわざGBN内で話し合う必要もないからだ。

 

 最初にハバキリとテラス、次にコウダイとサツキ、その後にセアと、少し間を置いてからメグミもログアウトを完了した。

 

 ハバキリ達はダイブルームを後にしてから、一度ガンダムベースから外へと出る。

 室内に居座り続けたために、吸う空気を入れ替えたいと言うこともあったが、それは建前。

 実際のところは、あまり無関係な人間に聞かれたくないと言う意味合いが強い。

 

 モノレールの駅前の噴水広場のベンチに腰掛けていくリヴェルタの面々。

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 しかし、皆自分から口を開く気にはなれそうにない。

 無理もない、あのような宣戦布告を聞いた直後だ、何を言えばいいものか。

 

「なんかこの部屋、空気が悪いな。エアコンの故障かな?」

 

 不意に、コウダイが『モンド・アカゲ』の台詞を使ってこの事態の打破を試みた。

 

「残念だったなコーダイ、故障してるのはエアコンじゃなくて、空気そのものだ」

 

 そのコウダイの意図を汲み取ったハバキリは、瞬時に会話を合わせる。

 

「空気が故障してるってどう言うことやねん!?」

 

「知らねーのか?今の時代、酸素と二酸化炭素はナノマシンで作られてるんだぜ?」

 

「人間の科学技術やべぇな」

 

「GBNで戦争するくらいには技術は進歩してるからなー」

 

 GBNで戦争、と言う言葉を聞いて、サツキも反応した。

 

「そうよ、元ゲームマスターさんが、今の運営に喧嘩売ったって……でも、ジルちゃんのことも心配だし、だからってあたし達一般プレイヤーに何が出来るか……あーんもうっ、いっぺんに色々ありすぎて混乱しちゃうっ!」

 

 頭追っつかない、とサツキは右手で額を押さえて見せる。

 サツキに続いてメグミも何か言いたそうに視線を右往左往させている。

 ここにいる全員が、多少なりとも言いたいことを抱えているだろう。

 それを見兼ねた上で、セアはパンッと手を叩いて音を鳴らし、全員の視線を自分に向けさせる。

 

「今日のところはもう解散。落ち着いてから今晩にまたチャットで連絡を取り合う。ここで焦ったって仕方ないから、今は、これでいいかな?」

 

 そう、今は落ち着いて事態を整理すべきなのだ。

 セアの全体意見に反対する者はおらず、不本意ながらここで解散となった。

 

 

 

 

 

 帰りのモノレールから本線に乗り換えて、地元の最寄り駅へ戻るハバキリ、テラス、コウダイの三人。

 

「……コーダイ」

 

 その途中、ハバキリは不意にコウダイに話しかけた。

 

「ん、どうした?」

 

 何気なく聞き返したコウダイだが、次のハバキリの発言に動揺を見せることになる。

 

「さっき、トーシローと会った」

 

「っ!?」

 

 動揺を見せはしたが、すぐに平静を取り戻す。

 

「……そうか。それで、一戦やり合ったのか?」

 

「まーな。ジンライが不完全だったからって、勝負はお預けになったけど」

 

 ひとつ借りを作られちまった、とハバキリは鼻で溜息をつく。

 

「不完全だからお預けになった……ってことは」

 

「おー、完全に完成してたら、あいつに何が起こるんだろーな?」

 

「……ハバキリの言う『普通じゃない相手』ってのは、そう言うことだったのな」

 

 ハバキリが、ジンライを極限に近い状態まで改造することに拘る理由。

 彼は、「普通じゃない相手とぶつかるかもしれない」と言っていた。

 それは、いずれトーシローとまたぶつかるのだと分かっていたのか、とコウダイは読み取った。

 

 ーー実際はそうではなく、もっと違う相手のことを指しているのだが、強ち間違いでもないーー。

 

「ま、その辺諸々を含めて、また今晩にだな」

 

「おぅ、そうだな」

 

 二人はそれ以上話すことなく、テラスも口を開くことはなく、最低限の挨拶を交わしただけで、駅前広場で別れた。

 

 

 

 

 

 その日の晩。

 時刻は19時になった辺りで、コーダイがチャットにメッセージを送信したことから始まった。

 

 

 

 コーダイ:と言うわけで、今日の大事と思う二点を挙げる。まずは、誘拐されたジルちゃんの行方。それと、元ゲームマスターによる宣戦布告だ。

 

 サッキー:あたしも色々考えてみたんだけど、やっぱりどうしたらいいか分かんなかった。

 

 エミル:ボクからも大事なことをひとつ。ゼダンの門に向かった時に、怪しいコロニーを見つけた。少しだけ中に潜入してみて、分かったことを挙げる。コロニーのドックに正体不明の紅い戦艦みたいなガンプラがあった。それと、プロト01の再調整の完了とか、大気圏突入オプションを備えているとかって聞こえた。最後に、その怪しいコロニーが、地球に向けて制動したこと。以上。

 

 ハバキリ:詳しくは分からんが、多分それ、コロニーを移動拠点代わりにしてるんじゃねーか?地球に向けて動いてるってことは、運営本部を攻めるための準備ってことかもな。

 

 コーダイ:どうやら、反乱軍として動くってのは本当みたいだな。

 

 セア:私からも、大事なことをひとついいかな。ちょっと画像を見せるけど……

 

 

 

 セアが送信してきた画像とは、彼女がアーモリー1で発見した、所々が欠けたデータ片だった。

 そのデート片に記録されていた内容もコピーしてテキストとして送信する。

 

 

 

 セア:『e ダi ー .136:z 』

 

『精s t:不a 』

 

『γ リfェp ンをf用:tg 18 昇』

 

『空 n n力:71% 7%n s 』

 

『mモリ- 枢  sn:k   w確n』

 

『s正 kチ  を服y:h損 n修s  』

 

『サ k ェ ブ測t:79 →93%  』

 

 ハバキリ:パッ見サッパリですけど、よーく読んだら何となくは分かります。もしかしてこれ、ジルの情報じゃないですか?一文目は『ELダイバーNo.136:ジル』ではないかと。

 

 コーダイ:三文目についてなんすけどこれ、『γクリフェプタン』って書いてるんじゃないですか?

 

 エミル:γクリフェプタンって確か、SEEDのブーステッドマン三人に施された処置だよね?脳にマイクロチップを埋め込むってアレ

 

 サッキー:待って。それじゃぁ、ジルちゃんはただのELダイバーじゃなくて、リアルブーステッドマン、って言うか、"強化人間"ってこと!?

 

 コーダイ:確証は無い。でも時々、ジルちゃんはニュータイプみたいな感知能力を持ってるとは思ってたけど、ひょっとすると人為的な副産物か、あるいは最初からそうなるように強化されたのかもしれん。

 

 ハバキリ:となると、最後の文は『サイコウェーブ測定:79%→93%に上昇』とも読み取れるな。ジルが本当に強化人間扱いされているなら、そー言う実験だってされてるだろ。

 

 エミル:だったら、四文目は『空間認識能力』のことを指しているかもしれない。

 

 セア:私はガンダムの専門用語はよく分からないけど、つまりジルちゃんは誰かの手によって、ガンプラバトルに勝つための実験動物のようにされている……で、いいのかな?

 

 サッキー:モルモットって言うか、戦闘マシーンのように改造されてるって方が正しいかもです。

 

 コーダイ:ハバキリが見たって言う、『複数のジル』ちゃんが俺の想像通りなら……ジルちゃんって言うELダイバーを強化して、それで得られたデータからクローン兵を量産するってことだろう。胸糞悪いったらねぇな。

 

 サッキー:それって、プルシリーズみたいにってこと?

 

 エミル:指し詰め、ジルちゃんのクローンを戦力化して、『ニュータイプ部隊』とでも名付けるつもりか。でも、もし本当にジルちゃんのクローン達が、ニュータイプみたいな能力を使って戦ったら……

 

 ハバキリ:運営の"正規軍"が真っ当な対応をすれば、少なくねー犠牲は出るが、止めることは出来るだろーな。

 

 コーダイ:でも現状、今の正規軍に不満を持ってるユーザーは多い。下手すりゃ、そう言うユーザーを抱き込んで束になって来る可能性もあるわな。

 

 セア:話を少し戻すけど、反乱軍が本部に攻撃を仕掛けるのは、来週……11月18日はちょうどメンテナンス日だけど、多分それどころじゃないよね?

 

 ハバキリ:十中八九、メンテは中止ですね。それと、全員に確認したいことがある。

 

 セア:何かな?

 

 エミル:どうした?

 

 サッキー:どしたの?

 

 コーダイ:いいからはよ

 

 ハバキリ:分かってるとは思うが、オレはジルを反乱軍のあんぽんたんどもの手から奪い返すつもりだ。あいつはまだ、オレ達に「ありがとう」を返してねーからな。でも、他のみんなはどーだ?

 

 サッキー:答えるまでもないでしょ。

 

 エミル:然り。

 

 コーダイ:然り。

 

 ステラ:途中参戦ですが、然り。

 

 セア:みんな、考えてることは一緒だよ。

 

 ハバキリ:よし、それが聞きたかった。具体的な作戦があるんだが、それはGBN内のブリーフィングでしたい。明日、学校の授業が終わり次第、フォースネストに来てくれるか?

 

 セア:了解です。

 

 ステラ:それじゃぁ、明日の晩ごはんは遅めになりますね。

 

 サッキー:オッケー。

 

 コーダイ:よっしゃ、それならこっちも動くとするか。

 

 エミル:それじゃ、また明日の放課後ってことで。

 

 

 

 チャットが終了して、ハバキリはダイバーギアを充電器に差し込ませて、ジンライ改弍の改造に掛かった。

 トーシローとの戦いで、問題点を洗い出せたのだ。

 それが分かった以上は、そこを改めるだけだ。

 

 

 

 

 

 翌日。

 各々の学校の授業終了に合わせて、フォース・リヴェルタの面々はフォースネストに集合していく。

 が、ハバキリとステラ、セア、サッキーだけで、コーダイとエミルがまだ来ていない。

 ログインはしているのだが、少し寄り道をしているのかもしれない。

 

 先に四人だけでブリーフィングルームへ移動し、モニターとコンソールを起動させていく。

 

「さて、具体的な作戦があるとは言ったけど、正直なところ、作戦と言えなくはねーが、実質博打そのものだ」

 

 ハバキリはコンソールを打ち込み、地球と、その衛星軌道周辺を表示させ、そこに赤いマーカーをいくつか置く。

 

「エミルの証言通りなら、恐らく反乱軍は衛星軌道上から部隊を展開、大気圏突入オプションを使って直接極東ベースを狙って中央突破してくるはずだ」

 

 いくつもの赤いマーカーが地球へと移動を開始する。

 次に画面が切り替わり、ベースエリア周辺のマップが映し出される。

 

「正規軍は各サーバーに戦力を分散させなきゃならんから、軌道上からの強襲を受けて、対応が一時的に遅れる。それでもすぐに立ち直って戦力を集結、包囲して各個撃破を狙うはず」

 

 ベース基地の周囲に黄色のマーカーが複数表示され、いくつかは赤のマーカーとぶつかって消えるが、すぐに黄色のマーカーが周囲から大量に現れ、赤のマーカーを取り囲む。

 

「オレ達が介入するのは、正規軍が立ち直りかける、その直前。正規軍の混乱時間を出来るだけ引き伸ばすと同時に、反乱軍側も混乱させる」

 

 次に、全く別方向から青のマーカーが六つ表示され、赤と黄色の群れの中へ突っ込んでいく。

 すると、ステラが挙手した。

 

「兄さん。私達の狙いは反乱軍なんですよね?だったら、正規軍と協力するって言うのはダメなんですか?」

 

「その手も考えたんだがな、これはあくまでも運営同士による内部抗争……正規軍と反乱軍の二色に分けられた戦いだ。その中へ介入するなら、問答無用で"第三勢力"と見なされる。だから、その案はダメだ」

 

「難しいですね……」

 

 案にダメ出しをされて、ステラは挙げていた手を下ろす。

 

「で、両軍が混乱している間にオレ達はジルを捜す。混乱から立ち直る前にジルを救出出来れば御の字、包囲される前にトンズラする」

 

 赤と黄色のマーカーの動きが止まり、青のマーカーが赤いマーカーの群れの中へ混じっていく。

 

「混乱してる時間がどれくらいか分からないけど、多分そんなに長くはないよね?えーと、あたし、ハバキリ、セアさん、ステラちゃん、コーダイ、エミルの六人か。これだけで捜してたら、結構時間が必要よね」

 

 サッキーが懸念を挙げる。

 両軍の出方にもよるが、それでも六人だけではシビアだと言うのだ。

 

「もしジルちゃんが見つかる前に両軍が立ち直ったら……乱戦になるって言っても、あたし達だけじゃ、あっという間に擦り潰されちゃうわ」

 

「そこだ、この作戦が博打な理由が」

 

 ハバキリはそれを否定できなかった。

 

「最低二個中隊くらいの戦力は欲しいが、無いモンねだりしてもしゃーねーんだ。手持ちのカードを切っていくしかねー」

 

「最低でも二個中隊は要るんだよな?」

 

 ふと、ブリーフィングルームの出入り口から声が聞こえた。

 四人が声に振り向けば、コーダイとエミルがやや遅刻しながらも来てくれていた。

 

「ごめん、ちょっと遅れた。……でも」

 

 しかし、ブリーフィングルームに入ってくるのは二人だけではなかった。

 ぞろぞろと、十数人ほどのダイバー達が次々に入室してくる。

 

「よぅ、久し振りだなハバキリ」

 

 その内の半分ほどに、ハバキリは見覚えがあった。

 

「なっ?お前ら、何でここに……」

 

 彼らは、元フォース・アルディナのメンバー達。

 それと、エミルが元々所属していた、元フォース・コキュートスのメンバー達だった。

 

 元アルディナのメンバー達は、口々に思いの丈を述べてくれる。

 

「コーダイから招集を掛けられたんだよ、「俺とハバキリの一大事、力を貸してくれ」ってな」

 

「トーシローとも戦うんだろ?なら、俺達がやらねぇで誰がやるってんだ」

 

「お前とコーダイだけじゃ、頼りなさそうだからな」

 

 ハバキリとその元仲間達の間を仲介するように、コーダイが親指を立ててサムズアップしてみせる。

 

「こいつらの実力は、お前だって知ってるだろ?戦力の勘定に入れても、問題ねぇぜ」

 

「お前ら……」

 

 暫し瞬きを繰り返すハバキリだが、すぐにいつもの調子を見せる。

 

「しゃーねーな、今だけは末席に加えてやるから、感謝しろよなー」

 

 元アルディナのメンバー達が談笑する側を、元コキュートスのメンバー達がセアに向き直る。

 

「いつもエミルがお世話になってます。彼からの要請を受けて、及ばずながらご助力に参りました」

 

「こちらこそ初めまして。ようこそ、フォース・リヴェルタへ。あなた方のご助力、感謝致します」

 

 礼儀に倣った挨拶と、コキュートスのリーダーとセアが握手を交わす。

 

 

 

 リヴェルタ、元アルディナ、元コキュートスの3フォースが揃ったことで、総人数は25人。ちょうどハバキリが要求していた二個中隊とプラス一人になる。

 

 一気に人数が増えたことで、ハバキリが途中まで説明していた作戦にいくつかの方向修正を加えながら、再度作戦を組み立て直し、ハバキリとコーダイが打ち合わせていく。

 

「よーし、それじゃ説明し直していくぞ」

 

 コーダイは項目を加えたモニターを映し直す。

 

「正規軍と反乱軍、両軍の間に急襲を仕掛けて混乱を誘発、その間に反乱軍の中からジルちゃんを捜して救出するってのは、さっきと変わらないが……」

 

 一度画面が切り替わり、部隊編成表が映し出される。

 

「ちょうど二個中隊って戦力があるから、チームごとに人数を割り振りたいと思う」

 

 中心となるのは、あくまでもリヴェルタのメンバーで、そこから補うように元アルディナと元コキュートスのメンバーが加えられる。

 

 セアとエミルを中核として、元コキュートスのメンバーで固めた『一番隊』。隊長はセア。

 

 コーダイとサッキーを中核として、元アルディナのメンバーで固めた『二番隊』。隊長はコーダイ。

 

 そして、ハバキリとステラにくわえて、アルディナ、コキュートスからエース級を選抜、少数精鋭で固めた『遊撃隊』。

 

「メンバーの割り振りは以上!それと最後に、この作戦のコードネームを決めたいと思う」

 

 一度全ての画面を保存した上で新しくページを作り直す。

 そして、先程からハバキリと考えていた作戦名を表示させる。

 

 

 

「作戦名は、『オペレーション・インテンション』!!」

 

 

 

 自分達は己が"意思"の元にここへ集い、そしてひとつの目的のために手を取り合うのだと、コーダイは言う。

 

 決戦は、今週末だ。

 

 

 

 

 

 その一週間、動く者は動く。

 

 ハバキリは自室に籠もっては、ジンライの再改造を行う。

 ジンの腕装甲を分解、無理矢理組み込んでいたフレームを一度抜き出し、加工し直していく。

 パテが乾燥されるまでの間に別のパーツの加工に取り掛かろうとして、ドアがノックされる。

 

「兄さん、お茶ですよ」

 

「おー、ちょーど切り良く終わったところだ。入っていーぞ」

 

 兄の反応を確かめてから、テラスがお盆を片手にドアを開けて入り、ハバキリは部屋の窓を全て開いて換気させる。 

 

「ジルちゃんを助けるためって言っても、根詰めすぎじゃないですか?」

 

 テラスの手によって、急須から湯呑へ緑茶が注がれる。

 コポコポと湯気が立ち昇っては消える中、ハバキリはお茶請けの紅葉饅頭の封を切りながら応える。

 

「今詰めてるつもりじゃねーんだが……でも休憩は大事だしな」

 

 こし餡が口の中で広がる中へ、緑茶を流し込んでいく。

 

「ねぇ兄さん、ノーベルガンダムでも使えそうな武器って、何か持ってませんか?」

 

 ふとテラスは、自機のことを話題に出した。

 

「ん?ノーベルに武器でも増やすのか」

 

「ほら、この間の百花繚乱は一対一のバトルでしたから、身軽

な方が良かったんですけど、今回の作戦は、敵がたくさんいるんですよね。だから、少しでも長く戦えるようにと思って……」

 

 テラスーーステラのポジションは、遊撃隊長たるハバキリの補佐と、アルディナとコキュートスのエース級ダイバーと連携して戦うことだ。

 つまり、一番危険な所へいの一番で突撃しに行くのだ。

 実力があるとは言え、ステラ自身はまだ素人に毛が生えた程度のルーキーダイバー。

 さすがに荷が重いだろうと言う意見はあったが、彼女の兄である遊撃隊長自らが「こいつは信用していい」と公言したのだ。

 当然プレッシャーはある。しかし同時に、少しでも兄の助けになりたいと言う気持ちが上回る。

 

「ま、実体系の武器ならエネルギーの配分は考えなくていーし、使えなくなったら途中で捨てればいーしな」

 

 何があったかなー、とハバキリは側に置いてあるプラケースを取り出して開ける。

 ジャンクパーツの山ではなく、塗装までしっかり施された武器庫のようだ。

 

「バズーカはさすがに邪魔になるしな。使いやすくてすぐ捨てられるって言ったら、サブマシンガンとかアサルトライフルくらいか」

 

「あ、刀とかありませんか?小太刀みたいな、軽くて振り回しやすいのを」

 

「刀?んーと、何があったっけなー」

 

 

 

 

 

 セアは自室でガンプラの組み立てを行っていた。

 それは、この間のオフ会の時には完成しなかった、フリーダムガンダムの改造機。

 

「……出来た」

 

 完成したそれを机に立て置き、セアは息をつく。

 本体そのものはフリーダムガンダムとそう変わらない。

 目を引くのは、サイドからリアスカートにまで広がる、白く彩られたフリーダムガンダムの"翼"。

 背部に装備されているのは、可変式楊翼とキャノンが一体化したバックパック。これもまた白く塗装されている。

 純白のロングスカートと、同じく純白のバックパックの二つは、見ようによっては花嫁のウェディングドレスのようにも見える。

 左右のマニピュレーターには、『ウイングガンダムゼロ』のツインバスターライフルを参考にしつつ、鴉野神社で大量に譲ってもらったパーツを使って完成させた、二丁のライフル。

 

 機体銘は、暫定していた仮の名をそのまま正式採用して、『フルドレスフリーダムガンダム』とした。

 

「もうこれ以上は、出来ないかな……」

 

 エンハンスドガンダムMK-Ⅱを実験機として使い続け、得られたノウハウ全てをフリーダムガンダムの改造に注ぎ込んだ、造形、機能美、GBN上での機体性能、いずれも現時点で自分が作れる最高のガンプラ。

 故に、今はもうこれ以上の加工は不要……と思いかけたが、すぐにまたフルドレスフリーダムガンダムを手にとった。

 

「うぅん、まだ出来ることがあるはず……」

 

 0.1%でもより良くするために、セアは再び愛機と向き合った。

 

 

 

 

 

 コウダイは、ルーズリーフにペンを走らせながら、ダイバーギアにイヤホンマイクを繋いで通話をしていた。

 

「……そうそう、その場合は、プランB2で対応な。それと、フォーメーションを寸断されちまった時は……」

 

 その相手は、かつてのアルディナのメンバー達や、元コキュートスのメンバー達。

 二番隊の隊長と言う立場を預かったコウダイは、同隊のメンバー達とグループ通話で意見を交わし合い、自分達の連携を密なものにしようとしている。

 慣れ親しんだ元アルディナのメンバーはもちろん、元コキュートスのメンバーも順応性が高く、コウダイの説明をすぐに理解してくれる。

 

「……よし。ひとまずはこんなところだが、何か意見になりそうなことがあったら、すぐに伝えてくれ。んじゃ、解散!」

 

 通話を終えて、イヤホンマイクを外すコウダイ。

 

「(人事は万端。後は、俺自身か)」

 

 机の上のスタンドに差し立てている、今は武装を外しているキャノパルドと、専用のプラケースを取り出した。

 

 ビームライフル、肩部キャノン砲、ハイパーバズーカ、脚部ミサイルランチャー、ジャイアントガトリング……だけでない、多くの武装がこの中に納められている。

 

 キャノパルド本体の加工よりも、武装の選択が重要だとコウダイは見ていた。

 元より完成度高く仕上げられたキャノパルドだ、セアのように以前から改造を進めているならまだしも、今から改造を開始して完璧に完成させ直すのは時間がかかり過ぎるからだ。

 

「(トーシロー、か……)」

 

 元アルディナのフォースリーダーのことを思い浮かべる。

 謙虚さと実力、そして一癖二癖あるメンバー達を纏めてきた統率力とカリスマを備えた人格者。

 今はおそらく、反乱軍の一員としてこの内乱に赴くのだろう。

 だが、腑に落ちないものがある。

 

「(思い返してみれば、あいつはハバキリばかりを狙って、同じフォースにいる俺には目もくれない……どういうことだ?)」

 

 そう。

 どう言うわけか、トーシローは『ハバキリと戦うこと』に固執しているように見える。

 ハバキリが反乱軍の計画の邪魔になるから、と言う理由で襲撃しているのならまだ理解できる。

 だが、そのハバキリの機体が不完全ならば見逃すと言うことまでしているのだ。

 本気でハバキリを邪魔だと思うのなら、機体のコンディションに関わらず撃墜を狙うだろう。

 そうでないとすれば、トーシローは一体どんな理由でハバキリを狙うのか。

 

「……今考えんのはそこじゃねぇな」

 

 トーシローへの疑念を一旦棚上げすることにして、コウダイはキャノパルドの武装選択に専念する。

 

 

 

 

 

 サッキーことサツキは、自室のパソコンでGBN関連の情報を集めに奔走していた。

 元ゲームマスターによる大々的な宣戦布告から数日、何かしらどこかで噂か動きはあるはず。

 GBNの掲示板を検索してみると、案の定と言うべきか、既に数十万件に渡るコメントが書き込まれている。

 批判や誹謗中傷のオンパレードなど読んでいても気分を害するだけなので、真面目に宣戦布告について議論を交わしていそうなものだけを探る。

 

 いくつか閲覧してみたが、既に宣戦布告の裏側に片足を突っ込んでいる自分達よりも詳しく事を知る者はおらず、予想や憶測ばかりが並ぶのみ。

 

 ふと、コメント件数やユニークアクセスが他のコラムと比較しても極端に少ないコラムに目を止める。

 匿名投稿による、『宣戦布告のその裏側』と言うタイトルのそれをクリックしてみる。

 

 とりあえずは流し見していくが、

 

「っ!?」

 

 貼り付けられた画像を見て、思わず目を見開く。

 その画像とは、培養液に満たされたカプセルの中で、複数の誰かが閉じ込められている光景。

 個人を特定されないためか、首から上はかなりぼやけた加工が為されており、大まかな形や色も分からなくなっている。

 

 ハバキリやナオエから聞いた話に嘘が無いのなら、これらは恐らく『ジルのクローン体』だろう。

 

 本当に量産されているのだと知り、画像に関するコメントはどうかと視線を落とす。

 だが、書き込まれているコメントはいずれも「捏造乙」や「これ何て映画?w」「画像の加工上手いでバエル」などと、これが実際に起きていることだとは思っていないものばかり。

 だが、他に有力な情報を持っていそうなコラムは他にはない。

 不快さを我慢しながらもコメントを全て見ようとする。

 すると、「これはどこで撮影されたものか詳しく」と言うコメントが出てきた。

 そこから先はふざけたコメントなどは書き込まれず、ひとつひとつ確かめるようなやり取りが続く。

 そして、最後の方に更新されたやり取りに、サツキはスライドしていた手を止めた。

 

『私はこれが本当に、元ゲームマスターの指示によって行われたことなのか疑問に思っている』

 

『強く同意します。もし本当に元ゲームマスターが、このニュータイプ部隊を使って戦争を仕掛けると言うなら、さらなる混乱に陥るだけだと、分からないわけがない』

 

『法的な問題になるのなら、ELダイバーへの名誉毀損に加え、国際的にクローニングは禁止されていることも含めて、とても許されることではない』

 

「…………」

 

 サツキは数秒の思考の後に、このコラムにコメントを書き込んだ。

 

『途中参加ですが失礼します。ニュースで得た知識ですが、元ゲームマスターのカツラギ氏は現在身柄を拘束されているはずなのに、どうしてこんな宣戦布告が出来るのか怪しいと思っています。これについてご意見をお願いします』

 

 書き込み完了から数分後に、いくつかのコメントが返ってくる。

 

『!?それは盲点だった。身柄を拘束されているのにログイン出来るはずがない』

 

『だとすれば、あの元ゲームマスターは何者だと言うことになります』

 

『あまり考えたくない発想だが、カツラギ氏が裏で賄賂を回している可能性が。もしくは、この宣戦布告が何かしらの出来レースの可能性もある』

 

「賄賂に、出来レースかぁ……」

 

 それはもう、情報規制によって"大人の事情"として片づけられてしまうもので、自分のような子どもが首を突っ込める話では無くなる。

 

 だとしたら。

 ハバキリが言うような、『大人の都合でELダイバーが虐殺される』と言うことだろうか。

 

『UC』本編でも、アナハイム・エレクトロニクスの重役である『アルベルト・ビスト』の台詞のひとつとして、「我々は戦争を食い物にしているのではない。時々で限定戦争を起こしてはコントロールし、本物のハルマゲドンから世界を守っているのだ」と言うものがある。

 

 それは、GBNでも同じことだろうか?

 今回のような叛乱だけではない、去年の今頃に起きたELダイバー動乱も、実は運営による自作自演ではないのか?

 四年前の『アルス』と名乗る何者かの侵略戦でもそうだ。

 六年前の第二次有志連合戦もそう、あるいはブレイクデカール事件もその一端ではないか?

 運営にとっては、GBN全体をコントロールするための、都合の良い"エサ"に過ぎないのではないか?

 

 疑い始めればキリがない。

 

 サツキはもう少しだけ、何か裏が取れないかと模索する。

 

 

 

 

 

 エミルことメグミは、フォース・リヴェルタの中で唯一、コキュートスと繋がりのある者として、同メンバー達と近況を伝え合ったり、今回、元アルディナのメンバー達と手を組むに当たっての懸念点などを確認し合ったりしている。

 さらに言えば、元アルディナのメンバー達はフォースを解散してからはそれぞれ独立していたが、コキュートスのメンバー達は、エミルが抜けた以外はフォースをもう一度組み直しているので、リヴェルタとのアライアンスを申し込んでおり、即時締結された。

 

 そのリヴェルタとコキュートスとの橋渡し役は、もちろんエミル。

 

「……本来ボク達は、この運営の内乱に関わるべきじゃないことは承知している。でも、大切な友達が囚われているのなら話は変わる」

 

『今回の作戦は去年の動乱事件とは全く別の意味で激戦になるだろう。撃墜されても誰かが死ぬような目に遭うわけじゃない、でも楽しくもない、只々苦しいだけの戦い……いや、それこそ、"戦争"だ』

 

「それでも。それでも彼女、ELダイバー・ジルはボク達リヴェルタの仲間なんだ。それを、何もせずにただ見過ごすだけなんてのは嫌なんだ」

 

『エミルにとっての友達なら、俺達コキュートスにとっても友達だ。助けない理由はない』

 

「ありがとう。ボクはみんなのわがままを聞いてもらってばっかりだな」

 

『何を今更。俺達みんなが、どれだけお前に助けてもらったと思ってんだ。このくらいのわがままくらい、その内に入るかよ』

 

「何度でも言うよ、ありがとうって。みんなの力、頼りにしてる」

 

 それからもう少しだけ言葉を交わしてから通話を終えてから、メグミは愛機の七星剣士エクシアを手に取った。

 

「(そうだ、これはジルちゃんを助けたいボク達だけの戦いじゃない。元アルディナと、コキュートス、みんなの戦いでもある)」

 

 ジルを助けたい気持ちが第一。

 しかし同時に、古巣の仲間達にカッコ悪いところを見せたくない、と言う気持ちもある。

 それは、ハバキリやコーダイも同じかもしれない。

 

 やるべきことの中に、ほんの少しだけ矜持(プライド)を含ませて、メグミは七星剣士エクシアのリペイントを始める。

 

 

 

 

 

 暗がりの中、白銀のジム・クゥエルーージャッジムメントはハンガーに掛けられている。

 そのコクピットの中で、トーシローは機体のコンソールを通じて、"ソレ"を見ていた。

 

 何かは聞かされていないが、赤い流線型の巨大な機体のコクピットに組み込まれていく『部品』

 その『部品』とは、見間違いでなければ、ノーマルスーツに身を包んだ小柄なダイバーだ。

 パイロットがMSの部品扱いされるような話は、そう珍しいものではないーー否、そもそもパイロットと言う概念すらないのだ。

 あの機体の性能などに興味はない。

 

「(そう。あくまでも僕の"本懐"はただひとつ。それを為しさえすれば、他事などどうでもいい)」

 

 だが、と納得できない自分もまた、心の片隅にいる。

 ダイバーすらも部品扱いするようなその光景は、見ていて気持ちの良いものでないからだ。

 その納得できない感情は、無理矢理そのまま片隅に押し込んでおく。

 

 本懐を為すためには、別の何かを押し隠すことも必要なのだから。

 

 

 

 

 

 そして、決戦の時ーー11月18日は訪れる。

 

「さて、時間だ」

 

 ガンダイバーの指示により、静止していたスペースコロニーのハッチから、無数の『NPDリーオー』が出撃していく。

 機体の前後にランドセルを背負ったようなそれらが、単独で地球の大気圏へ突入を開始、同時にその背負ったランドセルからパラシュートのようなもの展開し、大気の摩擦熱から機体を守りながら落下速度を減速させる。

 宇宙世紀において、U.C.0087以降に見られる大気圏突入装備、『バリュート・システム』だ。

 

 その数、凡そ2000機。

 

 2000機近くのNPDリーオーが次々に大気圏を突破していくその姿は、地上から見上げればそれは、夜空へ降り注ぐ流星群のようで幻想的なものだろう。

 

 しかしその実体はーーGBNを脅かす侵略者そのものである。

 

 2000機ほどのNPDリーオーが大気圏を突破し、バリュートをパラシュートにして降下する光景は、すぐに運営本部へと伝えられる。

 

『反乱軍と思しきNPDリーオー、多数確認!』

 

『多数じゃ分からん!正確に数えろ!』

 

『レーダー反応でも1000機以上!真っ直ぐ極東ベース本部へ降下してくる模様!』

 

『各方面に回しているガードフレームを極東ベースへ向かわせろ!総合的な戦力はこちらが上だ、後から数で押し潰せる!』

 

 この日に備えて配備されていたGBNガードフレームは、次々に降下してくるNPDリーオーの大群を前に、ビームガンやバズーカで迎撃を開始する。

 

『あいつら!MS単独で大気圏を突破してきやがったのか!』

 

『冗談じゃねぇ!増援が来るまで、俺らだけで止めろってのかよ!?』

 

『無駄口もそこまでにしろ!俺達が足止めしなくちゃその増援も間に合わん!』

 

『ちくしょーッ、ボーナスのひとつやふたつも貰わねぇと、割に合わねぇぞコレ!』

 

 次々にビーム弾や砲弾がNPDリーオーの大群へ撃ち込まれるが、対する反乱軍のNPDリーオーは機体各部に外付けされた円盤状のユニットを展開し、それらを多数繋げてバリアを展開した。

 

 かつての『フォース・フォートレス』が猛威を奮った、プラネイトディフェンサーだ。

 さらに装備だけではない、このNPDリーオーのプログラムは、フォートレスのログデータを解析した優秀なAIを組み込んでおり、冗談や誇張抜きで、SSランク級のダイバーが束になって連携していると言っても良い。

 多数のプラネイトディフェンサーで固めた鉄壁の防御力は、たかだか数十機ほどの一斉射撃など簡単に無力化してしまう。

 

 その上、NPDリーオーの攻撃オプションも豊富だった。

 マシンガンやビームカノンは当然として、バズーカ砲やダブルガトリングガン、外付けながらミサイルランチャーなども備えており、謂わば『サーペントの重火力にプラネイトディフェンサーを加えたMD』である。

 

 生半可な射撃では弾き返され、単騎での火力も向こうが上。

 

 NPDリーオーの大群は、極東ベースの防衛ラインに瞬く間に迫り、今のところ数で劣るGBNガードフレームを一方的に蹂躙していく。

 

『第一防衛ライン、突破されました!』

 

『慌てるな、第一、第二防衛ラインはあくまで捨て石だ。絶対防衛ラインさえ抜かれなければ良い。増援を絶やすな、戦局はまだこちらに有利だ』

 

 運営本部にはひっきりなしに報告が飛び交うものの、まだ余裕があった。

 

『……それと、"例の兵器"はいつでも撃てるようにだけはスタンバっておけ』

 

『ハッ』

 

 例え絶対防衛ライン寸前にまで到達されても、問題のないことを確認した上で。

 

 

 

 

 

 戦闘開始から一時間が経過した頃。

 

 各方面からGBNガードフレームの増援が集結しつつある中、ハバキリ達はフォース・リヴェルタとその助っ人達は、反乱軍のコロニーが停止している、その真反対の衛星軌道上から出撃しようとしていた。

 レンタル輸送機の格納庫では、各々のガンプラが立ち並び、一機ずつそれぞれが、サーフボードのようなSFS(サブフライトシステム)に乗り込む。

 

 ハバキリ、セア、コーダイ、サッキー、エミル、ステラ、元アルディナメンバー達、コキュートスメンバー達、総勢25名のダイバー達が、コクピットの中で出撃を待つ中。

 

 コーダイはセアに個人通信を繋いだ。

 

「せっかくの決戦を前に黙(だんま)りってのもなんです。セアさん、ここはいっちょ景気づけに……」

 

「何か言ってくれ、って言いたいんでしょ?もう三度目だからね」

 

 こほん、と咳払いをしてからセアは通信回線をオープンにする。

 

「今日、ここに集まってくれたダイバー全員へ。私達はこれより、GBN運営本部の正規軍と反乱軍との戦いの最中へ介入します。目的はただひとつ、『ELダイバー・ジルを救出すること』です。

 

 コーダイは、内心で感心していた。一度目と二度目のような拙い言葉ではない、皆を鼓舞すると言う意志の元に告げられている。

 

「第三勢力として介入する私達は、正規軍と反乱軍の両方と戦うことになり、非常に厳しく、そして苦しい戦いを強いられます。誰が墜されてもおかしくありません。それはもう、ここにいる誰もが承知の上でここにいるでしょう」

 

 ステラは、ノーベルガンダムに追加装備させた武装を再々度確認しながらも彼女の声に傾注している。

 

「ELダイバー一人の命など、どうでも良くありません。肉体が無くとも、私達生身の人間のように血が通っていなくとも、心は確かにあります」

 

 エミルは、コンソールを叩いて最後の調整を終えつつも、「それはそうだ」と小さく呟く。

 

「命とは何ですか?心臓?脳?いいえ、それはただの臓器のひとつに過ぎません。命とは、目に見えない『心そのもの』であるのだと、私は"感じて"います」

 

 サッキーは、無意識の内に右拳を胸に添えた。

 

「私はELダイバー・ジルがいつ、どこで生まれたのかは分かりません。ですが、私はいつか、彼女の"誕生日"をお祝いしたいと考えております」

 

 コキュートスのリーダーは、誕生日と言う言葉に目を見開く。

 

「この世に生まれたことを祝福する日。それが誕生日と言う、バースデーです。友達の誕生日をお祝いする……これのどこがおかしいことでしょうか?そんなことはありません、"人"として当然のことです」

 

 元アルディナのメンバー達は、静かに頷く。

 

「だからこそ、そのためにも……彼女の命が他者の都合で弄ばれていいはずがありません!フォース・リヴェルタ、フォース・アルディナ、フォース・コキュートスの皆さん!私達の大切な友達を救うために!私達皆が笑って未来(あした)を迎えるために!どうか力を貸してください!」

 

 ハバキリは、一度だけ長い瞬きをするだけ。

 

「『オペレーション・インテンション』……発動!!」

 

 セアのその号令と共に、各輸送機からガンプラが出撃していく。

 

 

 

「こうまでビシッと決められちゃ、燃えないわけにはいかねぇよな。コーダイ、キャノパルド、行くぜ!!」

 

「ジルちゃんがいなきゃ、フォース・リヴェルタじゃないもんね。サッキー、ガンダムデスレイザー、出撃するよ!!」

 

「出来ることはやった、後は出たとこ勝負だ。エミル、七星剣士エクシア、未来を斬り開く!!」

 

「こんな無茶苦茶な作戦なのに、不思議と負ける気がしません。ステラ、ノーベルガンダム、レディ・ゴー!!」

 

「はー、ちゃんと言い切れて良かった……っと、まだ気を抜くのは早過ぎ。セア、フルドレスフリーダムガンダム、行きます!!」

 

「待ってろよジル、お前の「ありがとう」って気持ち、ちゃんと返してもらうからな。ハバキリ、『シュツルムジンライ』、出撃(で)るぞ!!」

 

 

 

 出撃完了と同時に、SFSに乗り込んだまま大気圏へ突入していく。

 

 これは、『鉄血のオルフェンズ』の劇中でギャラルホルンのMSが使用した、降下用グライダーだ。

 MS単独での大気圏を突破、さらにそのまま作戦ポイントへ直行可能と言うモノ。

 

 しかし、本来ならば大気摩擦を抑えるために減速するはずがーー逆に猛烈な速度で加速していく。

 いくら耐熱処理が施されたグライダーとは言え、速度が速すぎるとそれも意味を為さなくなってしまう。

 それでも燃え尽きないのは、その上からさらに冷却シートと耐熱フィルムーーRX-78に搭載されていた大気圏突入オプションーーを加えた超特殊仕様であり、こと限界まで耐熱処理を上乗せされている。

 

 それを25機全機が同じオプションで出撃しており、次々に大気圏へ降下、地球の真反対から極東ベースへ向けて突入していくーーーーー。

 

 

 

 

 

【次回予告】

 

 コーダイ「よぉぉぉぉぉっしゃぁッ、軌道上からのスカイダイビング成こぉぉぉぉぉッ!」

 

 エミル「テンション上げてる場合じゃないよ、混乱してる内にさっさとジルちゃんを捜す!」

 

 サッキー「反乱軍はリーオーばっかりだけど、ジルちゃんが乗ってそうな機体はどこに……」

 

 ステラ「ねぇ、なんですか?あの、赤くて大きなガンプラ。宇宙から降りてきたんでしょうか……?」

 

 ハバキリ「次回、ガンダムビルドダイバーズ・スピリッツインテンション、

 

『裁きの閃光、根絶の業火』」

 

 セア「こんな……こんなことが……ッ!?」 

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