ガンダムビルドダイバーズ・スピリッツインテンション   作:さくらおにぎり

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23話 裁きの閃光、根絶の業火

 ところで、とマイマイはお冷を口に付けてから言葉を選ぶ。

 

「"あの娘"は一度デリートされちゃったのよね?一体どんなインチキ……ミラクルを起こしたの?」

 

「インチキとはなんだインチキとは。准将を侮辱するのならば、この俺がムーンガンダムに代わっておしおきしてやろう」

 

「やめなさいよ、気持ち悪い。……で、実際のところはどうなの?」

 

 過去に、現実世界への"器"を希望したELダイバーの中には、『ビルドデカール』を通じてGBNからGPデュエルのシステムへ転送される際、膨大なデータの"渦"に呑み込まれてそのまま"デリート"されてしまった者もいる。

 当時は、一度デリートされてしまったELダイバーは再度のサルベージが出来ないとされているし、ELバースセンターの尽力によって確率が上がった今でも、デリート後の再サルベージはほぼ不可能である。

 僅か12%ーー成功確率二割以下で転送を成功させた『ファーストELダイバー・サラ』の例は、奇跡が起きたとしか言えない。

 

 トラちゃんは自分のアイテムボックスを開き、あるアイテムを取り出してマイマイに見せてやる。

 

「元々、ブレイクデカールを応用したものを、ビルドデカールと呼称していた。これは、そのビルドデカールをさらに応用したもの……『Re:ビルドデカール』だ」

 

「リビルド……『Rebuild』ってことは、『作り直す』ってこと?」

 

「そうだ。ホシザキ嬢が持っていた、"例のデータの破片"を解析し、可能な限り修復したそれをビルドデカールに落とし込んで作られたものだ」

 

 トラちゃんの掌にあるそれは、一見するとただのナノICチップに見える。

 

「リアルのガンプラに貼り付けてGBNに読み込ませることで、ディメンション内にアクセスする、と言うところまでは、従来品と同じだ」

 

 隣にいるケンさんは黙って『俗物』を啜り、バーテンダーも無言でトラちゃんのお冷やを注ぎ直してやる。

 

「"彼女"の場合は、『失ってしまった電子の肉体を再構築する』と言うプロセスが必要だった。しかし、何千万、何億と言うデータの中から特定の"遺伝子"をサルベージするのは、現状ではほぼ不可能だ。無論、それも出来なくはないだろうが、"御二方"が過労死する方が先だろうな」

 

 さすがの准将もそれは出来ない、とトラちゃんは苦笑する。

 

「だが幸いにも、破片であるものの"彼女"のデータの一部は手元にあった。そこで作られたのがRe:ビルドデカールだ。まぁ有り体に言えば、『遺されたデータを基に人工的に電子の肉体をディメンション内で"作り直す"』……先も申した、"クローニング"のそれだ」

 

 

 

 

 

 クラサカ・カナデは、日曜日の午前中からネットカフェに居座っている。

 決して、社会問題とされている『ネカフェ難民』ではない。

 昨夜に、親友のセアから電話で伝えられたことがある。

 

『明日、大事な友達を助けるために、GBNで戦ってくる』

 

 GBNで戦争とは大袈裟な、とカナデは呆れたものだが、セアの口調や意気込みを聞く限り、『ゲームと現実の区別が付かなくなっている』わけではなさそうだ。

 セアの所属するフォースーーつまりはチームには、近年にその存在が社会的に認められた電子生命体『ELダイバー』がフレンドとして加入しており、その彼女ーージルが何者かの悪意によって利用されているらしい。

 同時に、GBN内で運営とその反運営勢力との武力衝突が起こるようで、恐らく有志によってその様子がリアルタイムで実況されるだろうとも聞いた。

 そのリアルタイム実況を視聴するために、ネットカフェ内のインターネットを利用しているのだ。

 ドリンクバーから汲んできた飲み物も添えて準備は万端。

 

 ガンプラバトルネクサスオンライン 実況 、と検索すると、既にいくつか実況中の動画が生配信されているところだ。

 その内の最上部の動画をクリック、中継動画をリンクさせた。

 

 

 

 

 

 極東ベースの防衛ラインを守るGBNガードフレーム達は、反乱軍のNPDリーオーの大軍の進撃を必死に喰い止めていた。

 

『プラネイトディフェンサーにビームは効かないぞ!『レーザーガン』で対抗しろ!』

 

 一見すると鉄壁の守りを誇るプラネイトディフェンサーだが、実は穴がある。

 原作では『トーラス』の武装のひとつとして存在するレーザーガンは、ビームライフルと比較すると破壊力に劣るものの、連射力に優れる点と、何よりも『プラネイトディフェンサーを貫通する』と言う隠れた副次効果を持つ。

『W』の原作に詳しい者がそう告げると、展開中のGBNガードフレームは次々にビームガンやマシンガンから、レーザーガンへと持ち替え、反撃を開始する。

 その狙い通り、レーザーガンから放たれる光弾はプラネイトディフェンサーへ干渉し、発生装置である円盤状のユニットを破壊していく。

 レーザーガンによってプラネイトディフェンサーは破壊可能……しかし、その本体であるNPDリーオーを撃破するには出力が足りず、即座にダブルガトリングガンやビームカノンを撃ち返してくる。

 

『プラネイトディフェンサーを破壊する者と、リーオー本体を攻撃する者、二手に分かれて迎撃しろ!』

 

 第一、第二防衛ラインの中間地点辺りで、一部のサーバーからの増援が到着し、レーザーガンを主軸とした戦術により、NPDリーオーの大群は数を減らされ、進撃の足が鈍化しつつある。

 ようやく両軍のパワーバランスが拮抗するかしないかの瀬戸際に到達しかけた時、事態は動いた。

 

 本部司令部で、オペレーターの一人がそれを発見する。

 

『成層圏より新たな反応をキャッチ!』

 

「何だ?」

 

『識別は反乱軍とは別で、二個中隊ほどの部隊ですが、急速にこちらへ近付く模様!』

 

 レーダー反応には、NPDリーオー達の降下とは比べ物にならないほどの猛スピードでこの極東ベースエリアへ"落っこちて来ている"。

 

「所属不明部隊に伝えろ、「当局は現在厳戒態勢に入っている、至急退避しろ」と……」

 

 ゲームマスターがそう伝えるように指示を与えた瞬間。

 

 凄まじいショックウェーブと砂塵嵐が、極東一帯を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 オペレーション・インテンションに従事する者達は、大気圏突入に成功し、極東ベースエリアの地上の様子が目視で確認出来るほどまで降下すると、その降下速度のままグライダーを地表へ蹴り飛ばした。

 

 その結果、蹴り飛ばされたグライダー25機は、それ自体が隕石となって戦場へ降り注いた。

 全長10m少しの質量が、衛星軌道上から真っ直ぐ降ってくるようなものだ、地表にぶつかれば当然ショックウェーブは発生するし、それによって巻き上がる砂塵、その二つの要因によってセンサーやレーダーと言った索敵機器は、一時的にとは言えその機能を麻痺させる。

 同時に、MDであるNPDリーオーは突如として戦況が変化したことに判断を遅らせ、その動きを鈍らせる。

 

 砂煙を切り裂きながら先陣を切るのは、ハバキリが率いる遊撃隊。

 

「いーかお前ら!反乱軍はともかく、正規軍とは出来るだけ交戦を避けろよ!まともにやったって勝ち目なんざほぼ0パーなんだからな!」

 

 その遊撃隊長機たる、シュツルムジンライ。

 本体そのものは少し前のジンライ改弐とほぼ変わらないが、腕部は完全にガンダムフレームの形状に合わせたものに作り変えている。

 何よりも目を引くのが、バックパックユニット。

 それは有り体に言えば『ジンハイマニューバとシグーのスラスターを連結した二対の大型バーニアと、大容量のプロペラントタンク』である。

 元より推進力の高いジンハイマニューバと、シグーの高機動性をミキシングさせたそれは、原典機の四倍以上のスピードを瞬時に叩き出すことに成功している。

 だが……

 

「慣らし運転はしても、負担は相変わらずってか……ッ!」

 

 代償として、ダイバーに掛かる負担もまた原典機の四倍以上に跳ね上がっている。

 仮想現実であるGBNだからこそ、ハバキリも独り言を言えるくらいの余裕はあるが、これが現実のものであれば、乗り手すらも無事では済まないだろう。

 しかも、この状態ですら『リミッター付き』なのだ。

 カタログスペック上の時点で既に極めて危険であるために、リミッター解除後の慣らし運転はしていない。

 一応、ハバキリの任意でリミッターを解除することは可能だが、そうなった場合どうなるのかは、彼本人にも分からない。

 そんな欠陥だらけのシュツルムジンライではあるが、その基本性能の高さ"だけ"は保証されている。

 

 アサルトライフルに代わって装備された『ビームカービン』を連射、NPDリーオーの展開するプラネイトディフェンサーの隙間を狙った射撃は、撃墜こそは出来なくとも戦闘力を削る、もしくは体勢を崩す結果に繋がる。

 そして、その隙を他の遊撃隊面々が突いて行く。

 

「さすがにこの数相手じゃ、まともじゃなくても勝てそうにないけどな!」

 

 元アルディナのメンバーのヅダは、ヒートサーベルとシールドクローの両方を駆使してNPDリーオーを切り倒していく。

 

「だが俺達の目的は、あくまでもELダイバー・ジルの救出だ。全部を全部相手にする必要はない」

 

 元コキュートスのメンバーのネモは、両肩に担いだクレイバズーカを連射、近接信管によってバラ撒かれるベアリング弾は、NPDリーオーの重火器を破壊し、アイカメラのレンズを破っていく。

 

「それにしたってっ、多過ぎませんか!?」

 

 ステラのノーベルガンダムは、右手には兄のハバキリから借り小太刀を持ち、左手にはこれもハバキリから借りた76mm重突撃銃を装備する。

 76mm重突撃銃で足回りを攻撃して動きを鈍らせ、その隙に接近し、小太刀で確実にNPDリーオーの首を刎ねていく。

 

 

 

 先陣を切った遊撃隊に続いて、セア率いる一番隊、コーダイ率いる二番隊も、極東ベースエリアに到着するなり戦闘を開始していく。

 

「混乱している内に、数を減らす……!」

 

 セアはコンソールを拡張させ、フリーダムガンダム本来の機能であるマルチロックオンシステムを起動、より多くの敵機を視界に捉え、次々にロックオンマーカーを固定していく。

 20機近いNPDリーオーを全てロックオンすると、フルドレスフリーダムガンダムの両手に握る高エネルギービームライフル、腰部に連ねたプラズマカノン『バラエーナ』、さらにバックパックの高エネルギービーム砲『ナルカミ』、計六門のビーム兵装が展開、砲口に光奔が渦巻きーー

 

「『フルドレスバーストアタック』!!」

 

 それらが一斉に吐き出される。

 プラネイトディフェンサーによって防ぐNPDリーオーの大群だが、六つの重火器による多数へ向けた一斉射撃は、電磁フィールドの防御範囲外にまで及ぶ。

 フルドレスバーストアタックによって揺さぶられたNPDリーオーのフォーメーションは、続いて斬り込んで来るエミルの七星剣士エクシアと、同じく一番隊のメンバー達によって掻き乱されていく。

 

「ジルちゃんが強化人間って言うのなら、ニュータイプ専用機に乗っているはずだ……!」

 

 GNソード【巨門】を振り降ろし、NPDリーオーの頭部から股関節を真っ二つにする七星剣士エクシア。

 その背後をビームカノンで狙おうとする敵機は、元コキュートスのメンバーのソードカラミティガンダムが、腕部のロケットアンカー『パンツァーアイゼン』を射出してNPDリーオーを掴み引き寄せて、レーザー対艦刀『シュベルトゲベール』で斬り裂く。

 

「しっかし、さっきからリーオーしか見えないな。ニュータイプ専用機、どこに隠れている……」

 

 見渡せども見渡せども、重装仕様のNPDリーオーばかりで、ニュータイプ専用機らしい機体は見当たらない。

 それでも手あたったNPDリーオーをきっちり撃破していく辺り、彼らも手練である。

 

 

 

 その一番隊の逆サイドから展開するのは、コーダイ率いる二番隊。

 

「着陸成功!第一関門突破ってところか……」

 

 今回のコーダイのキャノパルドの装備だが、肩部キャノン砲は当然として、ビームライフルはリアスカートに懸架されており、両腕には陸戦型ガンダムが装備する『180mmキャノン』を二丁抱え、さらに両足のマウントラッチにはガンダムレオパルドのものを参考にした『セパレートミサイルポッド』と、ビームライフル以外は全て実弾装備で固めている。

 これらは長期戦を考慮し、撃ち尽くした火器は随時その場でパージして破棄していくためだ。

 二丁の180mmキャノン砲を徐に構えると、立ち込める砂塵嵐を吹き飛ばすように放ち、プラネイトディフェンサーの防御範囲外を狙った砲撃はNPDリーオーの大群をさらに混乱させる。

 

「次の第二関門が、問題なのよ、ねっ!!」

 

 閉じられていたアクティブクロークを広げ、サッキーのガンダムデスレイザーがビームシザースを一閃、高出力のビーム刃はプラネイトディフェンサーに弾かれることなく、それらもろともNPDリーオーの小隊を屍に変えていく。

 

「こりゃぁ予想以上に厳しい……心して掛からんとな!」

 

 元アルディナのメンバーのランドマン・ロディはビームカノンを装甲の厚い部分のナノラミネートアーマーで受け流し、直後にショルダータックルでNPDリーオーを突き飛ばし、体勢を崩したところをハンマーチョッパーで頭部を叩き割る。

 

 戦いはまだ、始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 大気圏軌道上近くに静止する、廃コロニーを転用した移動拠点の司令部では、フォース・リヴェルタを中心とした二個中隊規模のガンプラが、両軍との間に乱入して来た状況が映し出されている。

 

「『青き狂戦士』……やはりプロト01の奪還に現れたか」

 

 常識外れの機動性を以てMD部隊を翻弄するシュツルムジンライを見て、ガンダイバーは目を細める。

 乱入の目的は当然、ELダイバー・ジルを奪い返しに来たのだろう。

 

「少し早いが、『ニュータイプ部隊』を投入する。シークエンス02からシークエンス04へと移行しろ」

 

「ハッ」

 

 オペレーターの一人が了解を示し、すぐにコンソールを打ち込んでいく。

 

「……それと、『私の機体』の準備を急げ。ニュータイプ部隊の降下の後に出る」

 

「了解」

 

 シークエンスの移行により再び廃コロニーのハッチが開かれ、今度は十数機程度の大気圏突入カプセルが射出、極東ベースへ向けて降下していく。

 

 その最後に、廃コロニーのMS用のハッチではなく、艦船ドック用のシェルターが開かれ、様々なチューブやケーブルに繋がれた"赤い巨駆"が解き放たれ、同様に大気圏へ降下していく。

 

 

 

 

 

 暫しの間混乱していた正規軍だが、ようやく通信網やセンサー類が回復し、立て直しを急いでいた。

 

「たかが二個中隊の所属不明機に何が出来るものか、恐るに足らん……ガードフレームの集結を急がせろ。反乱軍もろとも押し潰せ」

 

 各サーバーからも、続々とGBNガードフレームがこの極東ベースエリアに向かってきており、撃墜された機体を含めても10000機近い数がこのディメンションに配備されている。

 レーザーガンによる攻撃で、プラネイトディフェンサーを装備しているNPDリーオーは次々に無力化されているのだ、反乱鎮圧はもはや時間の問題……。

 だが、それは慢心だと思い直し、気を引き締めた直後に次の報告が飛んでくる。

 

『成層圏より、反乱軍コードの一個中隊のガンプラの降下を確認!それと、大型機の反応も捉えました!』

 

「大型MAとその随伴機でも投入したのか?」

 

 NPDリーオーだけでは押しきれないと早々に判断したのか、恐らくは反乱軍は"切り札"を切ったのだと読むゲームマスター。

 少しの思考の末、命令を降した。

 

「……『メギドフレイム』の砲門を開け。目標、敵大型MA」

 

『了解、メギドフレイム、スタンバイ』

 

 極東ベース基地の施設の一部が開かれ、その内部から巨大な筒状物体が外部へと引き出される。

 

『熱核パルスモーター、01から35、正常に起動開始』

 

『パワーフロー良好、システムオールグリーン』

 

『出力98%、エネルギー臨界を確認』

 

『最大照射時間15秒と推定、クールタイム600秒』

 

『照準合わせ、ポイント8900から9901上空』

 

『これより、メギドフレイムの照射を実施する。ガードフレーム各機は送信ポイントの射線上に近付くな、即退避しろ』

 

 ゲームマスターのコンソールから、いくつもの認証コードが入力され、警告表示に囲われた、赤いボタンが迫り上がる。

 

『我々は、このGBNと言う世界の管理者であり、守護者でもある。一般のユーザーから、無能の誹りを受けようとも、我々はこの世界を守ってきた。例えそれが、"曲がりなりにも"、と言う言葉を頭に付けたとしてもだ。彼ら反乱軍はそれを良しとせず、ただ欲する所を為すだけのテロリストである。我々はテロになど屈しはしない。今日までこの世界を守ってきたのは昔日の老人ではなく、今を生きる我々であると、声高々に唱えようではないか』

 

 一呼吸を置いてから、宣言する。

 

『正義は、我らに有り。メギドフレイム、発射』

 

 "黙示録の業火"と称されたそのボタンは、いとも容易く押し込まれた。

 

 

 

 

 

 最初に戦場の"異変"を感じ取ったのは、コーダイだった。

 彼のGBN上の感覚は、ハバキリほど鋭敏なものではない。

 しかし、ハバキリの感覚が前衛的な"勘"に近いものであるに対して、コーダイは自身が踏んできた場数による経験と、戦況の変化を目敏く見抜くことに関する俯瞰的な感覚を鍛えてきた。

 

 そのコーダイの感覚は、『GBNガードフレーム達が"あるライン"から遠ざかるような動きを見せている』ことを見抜いていた。

 

「(正規軍のガードフレームの動きがおかしい、まさか……)」

 

 同時に、その"あるライン"の先に大型の反応が降下してきていることにも気付く。

 次の瞬間、コーダイの「まさか」は「やばい」と言う確信に変わった。

 すぐにコンソールを開き、僚機や同チームにだけに繋がる共通回線に乗せて叫んだ。

 

「全機に告ぐッ、ポイント9901から離れろ!正規軍が『デカいの』を撃ってくるぞ!!」

 

 その警告の数秒後に、極東ベース基地から眩いばかりの"朱い"光束が空へ向かって放たれた。

 

 

 

 

 

 メギドフレイムと呼ばれるその戦術砲は、成層圏から降下してきた"赤い巨駆"を呑み込まんと迫る。

 

 しかしーーーーー放たれた超高エネルギー体は、"紅い巨駆"に触れるよりも先に、見えない障壁によって弾かれ、拡散した業火の数々は死の雨となってベースエリアへ降り注ぎ、NPDリーオーやGBNガードフレームに関係なく余波に巻き込まれては焼かれていく。

 

「正規軍の奴ら、あんなもん隠してたのか」

 

 ハバキリのシュツルムジンライは、降ってくるメギドフレイムの余波を避けつつ、それが放たれた方向ーー極東ベースの本部へモノアイを向ける。

 

「あんなもん、って言いますけど……それを無傷で防いでいるあの紅いアレも凄いと思いますよ?」

 

 ステラのノーベルガンダムは弾の切れたアサルトライフルを捨てて、小太刀を持ち直す。

 

 メギドフレイムの照射が終わった頃を見計らってか、その紅い巨体が蠢き始めた。

 機首に当たる部位が"割れる"と、それが外へ外へと開いていく。

 どぎついピンク色の内部構造には多数の砲門。

 上か、もしくは下から見たそのシルエットは、鳥の鎖骨(ウィッシュボーン)を思わせる。

 

「ありゃぁ……『パトゥーリア』か!?」

 

 ザクマシンガンの弾倉を交換しているヅダは、その紅い巨体が『X』に登場する超大型ニュータイプ専用MAの名を口にする。

 

「パトゥーリアだけじゃない、周りに随伴機もいるぞ」

 

 弾の切れたクレイバズーカを捨ててビームライフルを取り出すネモは、パトゥーリアと共に降下してきたのだろう、大気圏突入カプセルにアイカメラを向ける。

 重力下に突入成功したものから、カプセルを破ってその姿を見せる。

 

 一見すると『キュベレイMK-Ⅱ』のエルピー・プル専用機に見えるが、ファンネルコンテナは大型で、さらに背部には二門のビーム砲が外付けされているところを見る限り『量産型キュベレイ』だろう。

 その数は12機ほどで、パトゥーリアの随伴機と呼ぶにはあまりにも少な過ぎるように思える。

 

「なるほどなー、アレが例のニュータイプ部隊って奴か」

 

 ハバキリのシュツルムジンライのモノアイが、まだ遠方にいるパトゥーリアと量産型キュベレイ部隊を捉える。

 

「それなら、あの中……って言うか、そのパトゥーリアとか言う大きいのにジルちゃんがいるってことですね」

 

「……多分な」

 

 確定では無いため、多分と言う不確定な言葉を使うハバキリは、原作におけるパトゥーリアを思い出す。

 

 原作では、人工ニュータイプの『カリス・ノーティラス』を"生体ユニット"として組み込み、フォートセバーンの街並みを一瞬で火の海変えると言う火力を発揮し、『ガロード・ラン』達フリーデンのガンダムチームを全く寄せ付けない恐ろしいまでの戦闘力を見せ付けたが、『ティファ・アディール』がカリスの思念を感じ取り、声による呼びかけによって攻撃を止めさせ、直後にガロードのガンダムXディバイダーが取り付き、コアユニットごと引き抜いてカリスを奪還、敗北の色が濃厚になるや否や副席にいた『エニル・エル』は逃走、メインパイロットの『ノモア・ロング』も自害に及んだことで制御を失い、そのまま機能停止した。

 

 生体ユニットとして"組み込まれて"いたカリスは、まだ自我を完全に失っていなかったために、奪還することが出来たのだ。

 しかし、そもそもパトゥーリアの生体ユニットとして組み込まれているのがジルとは限らないし、仮にジルだとしても既に『マシーンに呑み込まれて』いたら……

 するべきではない想像を振り払う。

 

 すると、量産型キュベレイ部隊は散開、それぞれが単騎でGBNガードフレームへ襲いかかる。

 

『ファンネル』『ファンネル』『ファンネル』『ファンネル』『ファンネル』『ファンネル』『ファンネル』『ファンネル』『ファンネル』『ファンネル』『ファンネル』『ファンネル』

 

 一斉にファンネルを展開、それぞれが意志を持ったかのように攻撃を仕掛けていく。

 GBNガードフレーム達も、レーザーガンやマシンガンで放たれるファンネルを迎撃しようとするものの、それらひとつひとつはただ無造作に動くだけでなく、意図的に銃撃を躱している。

 

『ファンネルの数っ、多過ぎんだろ!?』

 

『クソッ、クソッ、クソッ!なんでファンネルがあんなに動けるんだ!?』

 

『まさか……本物のニュータイプとでも言うのかよ!?』

 

 ファンネルだけではない、懸命にファンネルからのビームのシャワーを回避しているGBNガードフレームの先を読むように、背部のアクティブカノンからビームが発射され、撃ち抜かれる。

 

 一度は拮抗していた両軍のパワーバランスは、たった一個中隊の登場によって一気にひっくり返った。

 

 

 

「ニュータイプが戦争の勝ち負けを左右することもある、か。あながち間違いでもねーな」

 

 いやこの場合はELダイバーがガンプラバトルの勝ち負けを左右することもある、だな、とハバキリが率直にそう呟いた、その直後に別方向の彼方からアラートが鳴り響いた。

 

 ついこの間にも見た、白銀のジム・クゥエルーージャッジムメントと、それに追従するNPDリーオーが三機。

 

『やはり来たか、ハバキリ!』

 

 両腕のビームライフルを連射してくるジャッジムメントに対し、シュツルムジンライ、ノーベルガンダム、ヅダ、スタークジェガンは瞬時に散開する。

 ハバキリは敢えて向こうのーートーシローの通信回線に合わせて応答してやる。

 

「おー、トーシロー!約束通りデートに来てやったぞ!」

 

 ビームカービンを連射しながら、ハバキリはシュツルムジンライを急加速させてジャッジムメントへ突っ込むーー

 

「だからーーーーーもうデートは終わりだ、あばよ」

 

 ーーと見せかけて、そのままその脇を通り抜けて行った。

 

『逃げるつもりか?逃さん!』

 

 ジャッジムメントはすぐに反転してシュツルムジンライを追おうとするが、シールドを二枚背負った前者と、爆発的な推進力を持つ後者とでは、最高速度が違いすぎた。

 

「ハッ、そんな邪魔くせーモン背負って追い付けるんならな!」

 

 鼻で嘲笑ってやる一方で、身体を襲う負荷は無視出来そうになかった。

 

「(こりゃ推進剤よりも先にオレが保たねーな、小休止を挟んでも30分が限界か)」

 

 ハバキリは、自身のダイバーとしての体力的な限界を測っていた。

 GBN上では肉体的な疲労は感じられない。

 だが、「体力が消耗している」と『脳が勝手に誤認する』のだ。

 五感の全ては、脳の電気信号に通ずる。

 実際に疲れていれば、肉体を通じて脳が「疲れている」と判断して、無意識の内に身体の動きを制限する。

 脳がそう判断すれば、実際は体力消耗など起きていないにも関わらず、身体の動きは制限される。

 逆に言えば、脳が疲れていないと判断していれば、『体力的な負担を無視して動き続けることは出来る』

 それはつまり、いくら疲労しようが負傷しようが、脳が「止まれ」と命令しないため、『疲れていることを感じられない』

 そのような場合、最終的に筋の断裂や骨折などと言った、『整体学的に動かせない状態』になるまで止まれないのだ。

 現実、それも普通ならば脳が真っ先に反応してストップを掛けるので、そこまでに至ることは滅多にない。

 だが、それもGBN上では話が変わる。

 やろうと思えば理論上、全五感を無にする『無我の境地』に至ることも可能なのだ。

 例え手足がちぎれようとも、『その部位が電子的に消えるだけで、動くことはできる』とも言える。

 

 話を戻せば、シュツルムジンライはそのケタ違いな推進力を自在に振り回すことで超絶的な機動を可能にする代わりに、ダイバーのライフを削る、文字通りの諸刃の剣のような機体だ。

 そんな機体を長時間乗り続けようものなら、エネルギーや推進剤が切れるよりも先にダイバーがライフを失って動けなくなってしまう。

 

 何にせよ短期決戦だな、とハバキリは通信回線を合わせ直し、コーダイに繋ぐ。

 

「コーダイ聞こえるか!トーシローが動いた、プランG3に移行する!」

 

 

 

 180mmキャノン砲と肩部のキャノンによる四門の火砲による砲撃戦を継続しているコーダイは、ハバキリからの通信を耳にしてその内容を読み取った。

 

「プランG3か……よし、任せろ!」

 

 了解を返すと、すぐにサッキーに通信を繋ぎ直す。

 

「サッキー、プランG3が発動した。ここは任せる」

 

 ガンダムデスレイザーのビームシザースによる一閃でNPDリーオーを真っ二つにしながら、サッキーはコーダイからの通信を聞き取る。

 

「オッケー!任されたけど、なるべく早く戻ってきてよ!」

 

「なるべくな、なるべく」

 

 すると、キャノパルドはその場で踵を返して移動していく。

 レーダー反応には、キャノパルドと向かい合う形で二つの反応が近付いてくる。

 速度の速い方がシュツルムジンライ。

 そしてその後ろから追い掛けているのが、トーシローのジャッジムメントだろう。

 

 やがて地平線の向こう側から、シュツルムジンライが猛スピードで迫って来るのが見えてきた。

 

「コーダイ、バトンタッチ!」

 

「したら俺がミンチになるわアホ」

 

 シュツルムジンライが右手を差し出して『バトンタッチ』を要求してきたが、そんな速度のシュツルムジンライに触れようものならクラッシュするのは目に見えている。

 そのままキャノパルドの背後をシュツルムジンライが通過するのを見て、コーダイはさらに向こうからやって来る機影ーージャッジムメントを捉えた。

 射程に踏み込んだと見るや否や、即座に180mmキャノンのトリガーを引き絞った。

 対するジャッジムメントもすぐに反応して砲弾を躱した。

 

『そのガンキャノンは……コーダイ、君か?』

 

「正解だ、トーシロー」

 

 ザンッ、と大地に脚を踏み締めて、キャノパルドとジャッジムメントが対峙する。

 

『そこをどいてくれ、僕はハバキリを追っているんだ』

 

「そうはいかねぇ。ここでお前の相手をするのが、俺の役目なんでな」

 

 180mmキャノンの砲口と、ビームライフルの銃口が睨み合う。

 

『そうか。なら、押し通させてもらう!』

 

 トーシローのその言葉が、両者の火蓋を切り落とした。

 

「俺の異名を忘れたかトーシロー!この『深紅の爆炎』、コーダイ様が引導を渡してやらァ!!」

 

 直後、砲弾とビームが交錯した。

 

 青き狂戦士、白き聖騎士の双璧に続く、フォース・アルディナのNo.3……それこそが、深紅の爆炎の異名である。

 

 

 

 

 

 パトゥーリアと量産型キュベレイ部隊の出現は、セアとエミルの一番隊も確認している。

 しかし、GBNガードフレームとNPDリーオーとの三つ巴の戦いを無視しながらは進めない、無理に押し通ろうものなら背中から撃たれるのは火を見るよりも明らか。

 フルドレスフリーダムガンダムと七星剣士エクシアが背中合わせで立ち回る中、エミルは背中同士の接触通信を行う。

 

「セアさん、ここはボクが引き受けます。あなたはニュータイプ部隊……ジルちゃんを頼みます」

 

「だけど、ここで私が抜けても大丈夫?」

 

 ただでさえ少ない戦力で、大群を相手に分散させるのは愚策。

 

「ボク達の目的は、あくまでもジルちゃんの奪還です。その本懐さえ成し遂げられるなら、無茶のひとつやふたつ、やってみせますよ」

 

「……分かった。一番隊総員!今から指揮権を私からエミルくんに移譲します!以後は彼の指示に従ってください!」

 

 号令を聞いて「エミルに指揮権を移譲?」「分からんがとにかく了解!」と言う応答が返ってくるのを確認してから、セアのフルドレスフリーダムガンダムは、スカートユニットを翻して、パトゥーリアの方へ飛び立つ。

 

 時を同じくして、トーシローの相手をコーダイに任せたハバキリが近付いてくる。

 

「セアさん、こっちはコーダイに後を任せてます」

 

「うん、こっちもエミルくんに任せてあるよ」

 

 どうやら経緯の違いはあるものの、ハバキリとセアは奇しくも同じことを考えていたようだ。

 

 シュツルムジンライとフルドレスフリーダムガンダムの二機が加速、パトゥーリアへ向かおうとするが、不意にその足を止める。

 

 パトゥーリアの内部構造にある多数の砲口にエネルギーが集束し、想像を絶する荷電粒子となって吐き出される。

 それは、ハバキリとセアに向けたものではなかった。

 しかし、荷電粒子は真っ直ぐに極東ベースの本部へ向かいーーーーー

 

 一瞬にしてその周囲を地獄絵図へと変えた。

 

 幸いにして、シェルターシールドによって守られた司令部が崩壊するようなことはなかったものの、射線上にいた数百機近いGBNガードフレームが焼き払われ、切り札であろうメギドフレイムにまでその被害は及び、さらには周りの市街地まで炎に包まれる。

 

 

 

 

 

 パトゥーリアの荷電粒子砲による被害は、控えめに言って甚大であった。

 

『被害状況を確認しろ!』

 

『ガードフレームの損耗率、全体の三割を越えました!』

 

『極東ベース市街地……は、破損率87%です……!』

 

『メギドフレイム小破、修復可能ですが、30分は必要とのこと』

 

『シェルターシールド強度、31%低下。パトゥーリアの荷電粒子砲であればもう一発は防げます』

 

 たった一度の射撃だけでこれほどの被害が出ているのだ。

 二発目は防げても、間髪入れず三度目も来ないとは限らない。

 ゲームマスターは焦燥を押し隠して、努めて冷静を装って指示を飛ばす。

 

『……メギドフレイムの修復を急げ。20分で終わらせろ、チャージは完全でなくとも構わん。パトゥーリアではなくリーオー部隊を薙ぎ払うために撃つ』

 

『不完全なチャージで試射もせずに撃てと?それは危険ではありませんか?』

 

 オペレーターの一人が純粋に疑問として訊ねた。

 パトゥーリアと言う巨大な目標ではなく、NPDリーオー部隊に向けて撃つのなら、展開中のGBNガードフレーム部隊を射線上から離さなくてはならない。

 そして、修復間もなく試射もせずに、なおかつ不完全なチャージで撃てと言うのだ。

 下手に撃って暴発でもしようものなら、どんな被害がどこまで出るか分からない。

 それでも、決断は非情にも下される。

 

『幸いにも、パトゥーリアの注意は所属不明機に向けられている。その間にメギドフレイムを修復、照射してリーオー部隊を殲滅し、ガードフレーム全機でパトゥーリアを討つ。戦局の打開にはメギドフレイムが不可欠だ』

 

『は、ハッ』

 

 オペレーターはすぐに了解し、メギドフレイムの修復を急がせる。

 

 

 

 

 

「こんな……これは……ッ」

 

 フルドレスフリーダムガンダムを通じた視界の中、セアはその絶望的なまでな"破壊"の痕を目の当たりにする。

 

「ビビってる場合じゃねーですよセアさん。……気持ちは分からんでもねーですけど」

 

 あんな巨体から、街一つを焼き払うだけの力がいとも容易く放たれるのだ。

 たかがガンプラの一機や二機でどう倒せと言うのかと言いたくもなる。

 それでも、誰かが止めなくてはならないのだ。

 

「とりあえずオレが突っ込みます。セアさんは後詰めをお願いします」

 

 そう言うや否や、ハバキリはアームレイカーを押し上げて、シュツルムジンライをパトゥーリアへ向けて突撃させた。

 すると、パトゥーリアの方もシュツルムジンライの接近を認めたらしく、機体の各部から触手のようなものが多数生えてくると、それらがビーム砲となってシュツルムジンライに襲いかかる。

 およそ三十基による有線ビーム砲からの攻撃を掻い潜りながらも、ハバキリはビームカービンを連射、有線ビーム砲を破壊しようとするが、反撃が来ると分かれば有線ビーム砲はすぐにパトゥーリア本体に引っ込み、ビーム弾はフィールドバリアによって弾き返される。

 

「ビーム射撃は無理か。実弾も持ってねーし、懐に飛び込んで殴るしかねー……なっと!」

 

 すぐさまパトゥーリアの荷電粒子砲が、地表にいるシュツルムジンライへと降り注がれる。

 ハバキリはシュツルムジンライの莫大な推進力によって機体を強引に回避させる。

 息つく暇はない、すぐにまた多数の有線ビーム砲がシュツルムジンライ目掛けてビームを撃ちまくってくる。

 シュツルムジンライがビーム砲を躱す最中、一歩遅れて来たセアのフルドレスフリーダムガンダムが、ハバキリを狙う有線ビーム砲をマルチロックオンする。

 高エネルギービームライフル、バラエーナ、ナルカミによる一斉射撃が放たれるが、これもパトゥーリアのフィールドバリアによって弾かれる。

 

「……長距離ビームは、完全に効かないみたいだね」

 

 フルドレスフリーダムガンダムの武装のほとんどは、ビーム兵器だ。

 唯一の物理攻撃可能な武装は頭部のピクウスのみだが、これはあくまでも牽制やミサイル迎撃などに力を発揮するものだ、対MAでは無力に等しい。

 

 パトゥーリアの注意がフルドレスフリーダムガンダムにも向けられるのを尻目に、ハバキリのシュツルムジンライはビームカービンを納め、代わりにシースザンバーを抜き放ってパトゥーリアの懐へ加速する。

 有線ビーム砲からの攻撃は最低限の回避と、シースザンバーの腹で防ぎながらも肉迫し、

 

 ついにパトゥーリアの装甲に取り付くことに成功した。

 

 ハバキリはすぐに通信回線を切り替えて、接触通信を行う。

 

「ジル!そこにいるんなら聞こえてるな!?オレだ、ハバキリだ!」

 

 …………………………

 

 しかし、パトゥーリアからの応答はない。

 

「聞こえねーとは言わせねーし、オレの声を忘れたとも言わせねーぞ!」

 

 …………………………

 

 原作におけるカリスの場合は、パトゥーリアに組み込まれてから間もなくだったために、まだ心は生きていた。

 だが、今回のケースはどうだ?

 ジルが誘拐されてから一週間は過ぎている。

 強化人間として扱われていたのなら、再調整で洗脳し直し、パトゥーリアとの最適化も行われているかもしれない。

 

 もうジルは、ELダイバーの女の子ではなく、『機械仕掛けの化物』に成り下がってしまったのか?

 

 ハバキリの思考にそんな迷いが生じかけた時、不意に有線ビーム砲のひとつがシュツルムジンライに巻き付いた。

 

「っ、しまった……っ!?」

 

 そのまま引き寄せられ、パトゥーリアの荷電粒子砲の前に晒される。

 

「こ、ん、のっ……!」

 

 ハバキリはアームレイカーを押し上げて、シュツルムジンライの推進力で強引に荷電粒子砲の前から離れ、シースザンバーで機体に巻き付いている有線ビーム砲を叩き斬る。

 ようやく拘束から逃れ、一度パトゥーリアから距離置きながら、僚機確認画面からセアのフルドレスフリーダムガンダムの状況を見る。

 有線ビーム砲からの攻撃を躱しつつ、避けきれないものはラケルタ・ビームサーベルで斬り弾いているが、やはり近付けないようだ。

 

「セアさんっ、大丈夫ですか!」

 

「私は平気。でも、これじゃ近付けない……」

 

 通信を交わしながらも、両機はその場から飛び下がった。

 直後にパトゥーリアの荷電粒子砲が放たれ、シュツルムジンライとフルドレスフリーダムガンダムがいた地点を薙ぎ払った。

 

「接触通信でもジルの反応はありませんでした。あとはもう、ヤツの内部に進入して、コアユニットを直接引っこ抜くしかねーです」

 

「それなら、私が注意を引き付ける感じだね。ハバキリくんにばっかり負担が掛けて申し訳ないけど、お願い」

 

「よし、それじゃ……」

 

 短い作戦会議を強引に終わらせるかのように、二人の周囲からビームが放たれた。

 パトゥーリアの有線ビーム砲によるものではない。

 そのパトゥーリアの護衛のために戻ってきたのか、量産型キュベレイが三機、ファンネルを放っている。

 

「こっちは私が相手する!ハバキリくんはジルちゃんを!」

 

「おー、任せました、よッと!!」

 

 よッ、と共にシュツルムジンライはスラスターの炸裂と共に跳躍、再びパトゥーリアへ突撃していく。

 

 フルドレスフリーダムガンダムも、スカートユニットを翻しながらもファンネルからのビームを掻い潜り、イニシアティブを保つ。

 

「ジルちゃんのコピー体、か……可哀想だけど、加減はしてあげられないッ!」

 

 セアは腹積もりを決め込んで、量産型キュベレイ三機と対峙する。

 

 

 

 

 

 GBNイースト・エリア、山岳地帯。

 

 山中にあるフォースネストからは、あるフォースのガンプラが出撃準備を整えていた。

 その中で、暗緑の髪のエルフがスピーカーを通じて声を張る。

 

「総員傾注!これより俺達は極東ベースへ突入し、正規軍と反乱軍との戦闘に介入する!目的はただひとつ、『この戦いをガンプラバトルによって終わらせる』ことだ!既に戦闘に介入している『フォース・リヴェルタ』とその関係者とは共闘する!混戦の中でそれを誤解なく伝えるのは難しいかもしれないが、俺達ならやれると信じている!」

 

 フォースネストの格納庫には、七機のガンプラが起動し、それぞれがハンガーから降ろされてリニアカタパルトへ乗せられる。

 

 桜色のSDガンダム

 

 菫色のケルディムガンダム

 

 血塗られたパラス・アテネ

 

 メタリックブルーのガンダムアスクレプオス

 

 深緑のゼータプラス

 

 黒紫色のサイサリス

 

 それらが順々に発進していく中、最後に出撃するのは、『マスラオの改造機』

 

 

『マスターガンダム』を思わせる一対のバインダー。

 

 戦国武将の鎧や袴のような外装甲。

 

 かの有名な『獄炎のオーガ』とはまた違う"焔"の意匠。

 

 各部には『ブレイヴ』『オーバーフラッグ』と言ったパーツがふんだんに用いられた、旧ユニオン系のシルエット。

 

 黒を基調とした本体に、"焔"の如し赤が派手に彩る。

 

 

 

 赤みを帯びた黒髪を無造作に束ねた青年は、コクピットの中で目を閉じて腕を組み、心静かにシークエンスが完了されるのを待つ。

 

 オールグリーン、出撃準備完了が告げられると同時にその橙色の眼を開き、アームレイカーを握り締める。

 

「ツルギ、『マスラオブレイヴレイズ』、『フォース・スピリッツ』……参るッ!!」

 

 "勇焔"と銘打たれたマスラオはカタパルトから放たれ、戦火の中へと飛び立つ。

 

 結末の時は近いーーーーー

 

 

 

 

 

【次回予告】

 

 コーダイ「お前は一体何が目的で戦ってんだ、トーシロー!」

 

 トーシロー「分かるまい!ハバキリと一緒に戦ってきた君には!」

 

 セア「私にはトーシローくんの戦う理由は分かってあげられない……それでも、私達にも戦う理由はある!」

 

 ハバキリ「次回、ガンダムビルドダイバーズ・スピリッツインテンション

 

『ジル』

 

 オレは必ずジルを取り戻す……何があってもだ!!」

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