ガンダムビルドダイバーズ・スピリッツインテンション   作:さくらおにぎり

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8話 迷い解き放つ時

 ゲイバー『ADAMS APPLE』の店内で、やべー奴によるみ〜ちゃんを崇め称えるための演説はなおも続く。こいつもうほっといていいんじゃないかな。

 

 ネオアメリカンコーヒーが仮面の獣人に、日本酒『鉄ノ華』がトラちゃんに用意されてから、仕切り直しとばかりトラちゃんが『思い出語り』を続ける。

 

「修羅場とみ〜ちゃんの話は一度置いておくとしよう」

 

 トラちゃんは早速お猪口に酒を注ぎ、仮面の獣人はアメリカンコーヒーの香りを楽しむ。

 

「関連する話と言えばそうだな……貴殿は『ゲリラ』の噂はご存知かな?」

 

「存じているとも。ついでに言えば、これでも『私は元運営の人間』だからな。多少なりともGBNの"裏"について知っているつもりだ」

 

 とは言え、と仮面の獣人は言葉の端の自信を弱める。

 

「私が知っているのは、『ゲリラ』と呼ばれる少数精鋭のダイバー達が、アンチELダイバー勢ばかりを襲撃しているぐらいのものだが」

 

「うむ、概ねその通りだな。まぁ、ディープな面にまで踏み込んで無ければ、それくらいの情報しか出てこんだろう。俺も、この手の情報を手に入れるにあたって、随分と骨を折ったものだ」

 

 お猪口に注いだ、薄紅色のそれを静かに呷るトラちゃん。

 

「君は、それ以上のことも知っていたようだが?」

 

 仮面の獣人とて分かっていることだった。

 このトラちゃんが、現実とGBNの両方で底知れない情報網を持っていることを。

 そしてそれは、トラちゃん自身が誠を誓うーーGBNの運営においても強い発言力を持っているーー"准将"なる人物による指示の元でしか動かないことも。

 

「知ってはいる。……だが、あまり口外に出来んことだからな。俺としてもどこまで話して良いものか」

 

 言葉を選び直してから、トラちゃんは再度口を開き直す。

 

「その少数精鋭、もしくは単独の『ゲリラ』だが、普段は一介のフォースに紛れて、普通にGBNでプレイしているからな。実際に襲撃を行っている現場を目撃する以外で、『ゲリラ』であるか否かの区別は付けられん」

 

「神出鬼没の、文字通りの『ゲリラ』と言うわけか」

 

 運営が把握し切れないほどの隠密行動、さらに極めて迅速かつ、確実。

 まるでニンジャだな、と仮面の獣人は苦笑する。

 

「……とまぁ、ニンジャのような『ゲリラ』だが、追跡していく内に面白い結果が出てな」

 

「面白い結果、と言うと?」

 

 まさかアバターまで忍装束を纏ったダイバーではあるまい'な、と仮面の獣人は冗談混じりに苦笑するが、トラちゃんが答えた結果は、予想とは異なる答えだった。

 

「この『ゲリラ』、実は『あるフォースのガンプラ』に見られる特徴に非常に近くてな」

 

 トラちゃんはコンソールパネルを開き、複数の画像を見せた。

 それら画像には『菫色のガンプラ』や『緑色の可変機』などが映し出されている。

 

「ふむ……ふ、む……?はて、どこかで見たことのある色合いだが……」

 

 仮面の獣人は顎の毛並みを肉球で扱きながら、マスクのフィルター越しに目を細める。

 

「ほれ、こんな感じのガンプラなど、見覚えはないか?」

 

 トラちゃんが指したのは、『手首が異常に大きい黒紫色のガンプラ』

 

「こっ、こいつはッ!?……そうか、『ゲリラ』と言うのは、"彼ら"のことだったのか」

 

 その『手首が異常に大きい黒紫色のガンプラ』を見て、仮面の獣人は驚いて、すぐに納得したように息をついた。

 

 今でもたまに夢に出てくるのだ。

 あの、ハンマーのように巨大な手首に肩を掴まれてはタコ殴りにされ、地面に思い切り叩きつけられ、愛機を粉々にしてくれた、ジャイオーンの改造機を。

 

 それを思い出してからは、画像内のガンプラが、どこのフォースの誰のものか、全て分かった。

 

「フォースの足並みを揃えていないのは何故かと思えば、こう言うことだったとはな……」

 

「ご理解いただけたかな?」

 

「あぁ、よく分かったよ」

 

 仮面の獣人が頷くのを確かめてから、トラちゃんはコンソールを閉じた。

 

 

 

 

 

 シャア専用ザク、ガンダムMK-Ⅱ、キャノパルド、ガンダムデスレイザーの四機が蒼空を舞い、景観のためのエリアである『レジャーフィールド』へ向かう中、コーダイは思考を回していた。

 

「(あのシャルルって奴の話口調、なんか引っ掛かるんだよな……?)」

 

 気怠そうに、所々間延びした口調。一人称が「オレ」と言うのもそうだ。

 自分で自分のことを「ネカマだ」と言うダイバーなど初めて見たが、隠すつもりもないなら、何故リアルと同じ性別でプレイしないのだろうか。

 何か理由があってのことだろうが、コーダイの頭では思い付かない。

 ふと思い当たったのは、意外な人物だった。

 

「(ハバキリ……?)」

 

 確かに話口調は似ているし、ハバキリなら理由さえあれば躊躇いもせず女装するかもしれない。

 だがそれは、あくまでも『かもしれない』の範疇であり、使っているガンプラも愛機のジンライではなく、SDのシャア専用ザクであるとなれば、

 

「……まさかな」

 

 と言う結論に至る。

 シャルルのガンプラが、かつてのハバキリがフォース・アルディナの結成当初に使っていた、アストレイブルーフレームと同じであればもう少し疑えたのだが、既にコーダイの中で『シャルル≠ハバキリ』と言う図式が組まれてしまったので、それ以上に踏み込むことが出来なくなっていた。

 

 そうこうしている内に、目的地である花畑が近付いてきた。

 シャルルの正体については一度頭の片隅に置いておくことにして、コーダイはキャノパルドの速度と高度を落す。

 

 花畑そのものから少し離れた平地に、順番に着陸していく。

 

 ここの花畑は、多種多様な花々が数多く群生しており、今回のターゲットアイテムであるバラの花だけでなく、ヤナギランの花や彼岸花の他、レアアイテムとして『00』本編中でイノベイターとの決戦を前に、フェルト・グレイスが刹那・F・セイエイに手渡した『命の華』が採取可能であったりする。

 

 シャルルはシャア専用ザクに片膝を着かせて、右マニピュレーターを胴体に寄せてからコクピットハッチを開く。

 

「さて、早いところバラの花を集めて、帰るとしますか」

 

 地面に降り立つと、順々にコーダイ、サッキー、最後にセアとジルがコクピットから降りてくる。

 

「わぁ……」

 

 視界一面に広がる幻想的な光景を前に、ジルは見惚れる。

 今にも駆け出しそうなジルを尻目に、セアはシャルルに話し掛ける。

 

「シャルルさん、バラの花って何色でもいいの?」

 

「何色でもオッケーです。もし見分けがつかなかったら、とりあえずアイテムボックスに入れて、後で確認すれば大丈夫です」

 

 セアに話し掛けられて、シャルルは何気なく答えてからハッとなる。

 

「(あ、やべ。素の反応返しちまった)」

 

 ついいつもと同じーー『ハバキリ』と同じように返してしまった。

 しかしセアの方は特に訝しむこともなく「分かりました」と頷いた。

 

「ジルちゃん、行こっか」

 

「うんっ!」

 

 すると、ジルはセアの手を取るなりそのまま引っ張っていく。

 その後に続くように、コーダイは「コレクトミッションなんて久しぶりだなぁ」と、サッキーは「なんかレアアイテムとか採れないかな」と、それぞれ違う様子を見せながら花畑に足を踏み入れていく。

 

「んじゃオレも、クソ真面目にバラ集めと洒落込みますか」

 

 このローゼン・ズールは貴様を倒すために作られたのだからなぁ、とぼやきつつ、シャルルも花畑へ向かう。

 

 

 

 

 

「……そうか、そっちは外れか」

 

 イースト・エリア、山中にあるフォースネストの格納庫の中で、深緑のゼータプラスは待機していた。

 

『こっちの"裏側"はむしろ外ればっかねぇ。連中も下手に"裏道"を通るより、堂々してる方が安全って思ってるのかも』

 

「どうやらそうらしいな。マイ、一応そっち側はこのまま任せるぞ」

 

『はいはーい。センパイもねー』

 

 それだけ言葉を交わすと、すぐに通話を切り、履歴を削除する。

 続いてGBNのワールドマップを開き、チェックポイントを記していく。

 

「……ここと、ここは探ったな。この地形なら、ショートカットが使える。だとすると、このサーバーゲートが……」

 

 ぶつぶつと一つずつ確認しつつ思案に更けていると、

 

 ーーふと、所属メンバー以外のガンプラがフォースネストに接近する音声が鳴り響く。

 

「ん?」

 

 それを聞き取ると同時に、ゼータプラスのコクピットへ飛び込み、すぐに機体を起動させる。

 レーダーを確認すると、ガンプラの反応が二つほど。

 フォースネストのすぐ近くを通過しようとしているだけで、ここに立ち寄るような素振りは見えない。

 とは言え、かなりフォースネストに近い距離を飛行しているようだ。

 とんだ迷惑だな、と嘆息をつくと同時に「待てよ」と零す。

 フォースネストから離れつつある二つの反応。

 レーダー範囲を広げ、その二つの反応がどこへ向かうのかを注視する。

 その方向には、レジャーフィールドが点在している。

 

「……」

 

 何となく嫌な予感がする。

 すぐにまたゼータプラスから飛び降りるなりメンテナンスハンガーに放り込み、弾薬エネルギーと推進剤の補給だけすませてから、すぐにカタパルトデッキに乗せて、出撃した。

 

 湯煙を切り裂きながら、ゼータプラスはWR(ウェイブライダー)形態へ変形、先程の二機を追うように、レジャーフィールドへ急行して行く。

 

 

 

 

 

 シャルルは花畑の中で、バラの群生を正確に発見しつつ、手早くバラの花を採集していく。

 

「……4、5、6っと」

 

 色とりどりのバラの花をアイテムボックスへ納めて、他のメンバーはどうかと辺りを見回す。

 

「命の華〜、命の華はどこだ〜、隠れてないで出てこ〜い」

 

 コーダイはターゲットのアイテムよりも他のアイテムを探しているようだ。

 採取率1%以下のレアアイテムだ、普通に確率を待つだけでは何度も同じミッションを受けなくてはならないだろう。

 

「なーんかあたし、こう言うミッションに嫌われてる気がする……」

 

 サッキーは一応バラの花を集めようとしているようだが、肝心のそれがなかなか見つからないらしい。

『ピンクちゃん捜索任務』の時と言いこれと言い、何かと不運が付き纏っているようだ。

 

「見てみてセア、出来たっ」

 

「あ、もしかして花冠かな?」

 

 セアとジルに至っては、ミッション中に遊んでいる始末だ。

 ジルはそこら中の花を片っ端から集めては、花冠を作ることに夢中になっており、そんなジルの相手をするのはセアであり、当然ながら採集の手は進んでいない。

 これはオレ一人で全部集めることになるかなー、と腹積もりを決めて、シャルルは次の場所へ足を向ける。

 

「……7、8、9、10。これで半分だな」

 

「えぇぃ、ヤナギランはいい!命の華を出せ!命の華を!」

 

「これだけ探してやっと一本とか……」

 

「セアのぶんも作ってあげるね」

 

「作ってくれるの?ふふっ、嬉しいなぁ。……あ、これかな?」

 

 ターゲットアイテム︰バラの花 12/20

 

 肉体的疲労の無いGBNとは言え、長時間も屈んでいては気分が疲れる。

 シャルルはその場で立ち上がり、背伸びする。

 

「んん〜……たまには土いじりもいーけど、そんな楽でもねーな」

 

 そうぼやきながら、ぼんやりと青空を見上げる。

 燦々と降り注ぐ日の光に、ふわふわの綿菓子のように綺麗な純白色をした雲。

 小さかった頃は、『あの雲が綿菓子みたいだ』と無邪気に笑っていたが、今になって雲が綿菓子みたいだと思えば、その次に『あれが全部綿菓子なら凄まじいカロリーと糖分だな』と余計なことも考えてしまう。

 

「どうしたのシャルル、ぼーっとしたりしてさ」

 

 ふと、シャルルの隣にサッキーが歩み寄っていた。

 

「ぼーっとしてることに、ぼーっとしてる他に意味があるってのか?」

 

「……ごめん、よく分かんない」

 

「ぼーっとしてることに意味なんかねーよ、ってことだ」

 

 ただの言葉遊びだから気にすんな、とシャルルは背伸びをやめる。

 

「オレはバラの花を10本集めたけど、サッキーさんは?」

 

「あたしはまだ一本だけ。ってかシャルル、なんでそんなに集めれるの?なんか不条理なものを感じるんだけど……」

 

 頬を膨らませるサッキー。

 運の良し悪しばかりはどうしようもないが、連続して不運なことが起こると不条理さを感じるのも無理はない。

 

「一応、ソロプレイでもクリア出来るようには調整されてるはずだからな。たまたまオレの方に集中して置かれてただけだろ」

 

 ーー実際は、シャルルがこの花畑のどこにどの花が採取出来るかを大凡把握しているのだが、それは明かさない。

 コーダイが狙っている命の華に関しては、完全にランダム配置な上に出現率も極めて低いので、シャルルも分からない。

 

「なんか納得いかない……」

 

 がっくりと項垂れながら溜息をつくサッキー。

 

「ま、そー言うこともあるだろ」

 

「……」

 

 項垂れていた頭を上げて、サッキーはシャルルの顔を見上げる。

 

「なんだサッキーさん?オレの顔に修正パンチでもぶち込むつもりか?」

 

「そんなことしないけど……もしかしてシャルルって、Mな人?」

 

「いやいやいや、さすがのオレも痛め付けれられて興奮は出来ねーよ」

 

「って、ドSかドMの話しじゃなくてさっ」

 

 何言わせるのよ、とサッキーは気持ちを切り替える。

 

「シャルルって、あの二人と知り合い?」

 

 サッキーの言うあの二人とは、セアとコーダイのことだ。

 

「…………」

 

 シャルルは言葉を詰まらせてしまった。

 ここでその沈黙が意味することは、「セアとコーダイとは知り合いである」ことの証明に他ならない。

 

「あ、やっぱり知り合いなんだ」

 

 サッキーにもそれは分かっていたようで、納得したように頷く。

 

「……あの二人に、知られちゃいけないことでもあるの?」

 

「いーや、むしろ知ってもらおーと思ってたよ。サッキーさんにもな」

 

「さっき言いかけてたこと?」

 

 エントランスロビーでシャルルが言いかけていた『直接話したいこと』だ。

 

「さっきはタイミングが悪かったんだよ。このミッションが終わった後にでもと思ってた。……さっさと、バラの花集めよーぜ」

 

 いくら制限時間に余裕があるとは言え、いつまでも遊んでばかりではせっかくのミッションも失敗に終わってしまう。

 気を取り直して採集を再開しようと動くシャルルだが、その動きをピタリと止めて、空を見上げた。

 

「どうしたのシャ……?」

 

 サッキーもシャルルの視線の先を見上げて、それが何かを視認する。

 

 

 

「クッソー……どこにあるんだよ命の華……ん?」

 

 コーダイは顔を上げた。

 彼の視線の先に見えるのは、二つの機影。

 それらは徐々に大きくなってーーこの花畑に近付いてくる。

 

「何だ?あいつらもここでミッションか?」

 

 コーダイの様子に気付いたのか、セアとジルもその方向に目を向けてーー

 

「……うっ」

 

 不意に、ジルが身を震わせた。

 

「どうしたの、ジルちゃん?」

 

 心配そうにセアが声を掛けるが、ジルはその二つの機影を見やる。

 

「あの、二人から……嫌な感じがする……」

 

「!」

 

 ジルの感じ取った「嫌な感じ」に、セアは覚えがあった。

 ハバキリとコーダイとの三人で挑んだ、オデッサ作戦のミッションの時と同じだ。

 接近する機影が、ハッキリとした形が見えるほどに近付いてくる。

 

 一機は『νガンダム』、もう一機は『サザビー』

 どちらも『逆襲のシャア』に登場した、それぞれアムロ・レイとシャア・アズナブルが搭乗し、地球へ落下しつつあるアクシズを巡って激しい戦いを繰り広げた機体だ。

 

 その二機が減速すると、何の躊躇いもなく花畑の上に着地した。

 当然、フット裏にある花は踏み潰される。

 

「あっ……」

 

 ジルはその光景を見て固まってしまう。

 

 それを嘲笑うかのような、品の無い笑い声がスピーカー越しに響く。

 

『いるいる!ガンプラに乗りもしねーで彷徨いてるのが!』

 

『文字通り、アタマがお花畑ってかぁ!』

 

 νガンダムはビームライフルを足元にーー正確には、ジルへ向けていた。

 

「ジルちゃんっ!」

 

 セアは強引にジルの身体を抱き寄せると、その場から逃げ出した。

 次の瞬間には銃口からビームが放たれ、二人がいた地点の花畑を焼き払った。

 

 同様にサザビーの方もビームショットライフルをコーダイに向けて発射していたが、銃口を向けられたコーダイはその場から身を投げ出すようにしてビームをやり過ごしていた。

 当然、花畑もまたビームによって焼かれる。

 

「っ……お前らっ、ここをどこだと思って攻撃してやがる!」

 

 コーダイは起き上がりながら、自分を攻撃してきたサザビーに向かって憤慨する。

 

『知ってるよ!生身を晒してる奴がいるから、どうぞ攻撃してくださいってエリアだろ!』

 

 なおもコーダイに向けてビームショットライフルを連射するサザビー。

 MSの銃火器で、動き回る生身の人間へ向けて当てるのは至難だ。

 だが、掠めるだけで即死。

 

「クソッ、何とかガンプラに乗り込まねぇと……!」

 

 これ以上、この花畑を踏み荒らされるわけにはいかない、どうにかνガンダムとサザビーをここから離れた場所まで誘導しなくては。

 しかし、このまま真っ直ぐキャノパルドに乗り込もうとしても、乗ろうとしている内に狙い撃ちにされる可能性が高い。

 どうする、とコーダイは逃げながらキャノパルドの元へ向かおうとするが、

 

「ルールとマナーも知らねーのかあんぽんたんが!!」

 

 突如として、シャルルのシャア専用ザクが現れ、サザビーのボディに飛び蹴りを喰らわせる。

 だが、軽量なSDガンダムでは、20mを上回るサイズのサザビーの重量を蹴飛ばすことは出来なかった。

 

『はっ!SDガンダムなんて使ってんのかよ、そんなオモチャをGBNに持ち込むんじゃねぇよっと!』

 

 逆に、サザビーのシールドに殴り飛ばされてしまうシャア専用ザク。

 とは言え、まともに受けてはないのですぐに姿勢制御する。

 

「だまらっしゃいあんぽんたん、てめーのサザビーだってオモチャだろーがあんぽんたん。だからてめーはあんぽんたんなんだよ、分かったかあんぽんたん」

 

『チッ……あんぽんたんあんぽんたんうるせぇなぁ!』

 

 シャルルはサザビーを挑発しつつ、花畑から遠ざけようと誘導する。

 

 一方のνガンダムの方には、サッキーのガンダムデスレイザーが打ち掛かっていた。

 シャルルとサッキーの二人はいち早く危険を察知し、コーダイとセアよりも先にガンプラに乗り込んでいたのだ。

 

「なんてことしてくれんのよ、あんた達はぁッ!」

 

 アクティブクロークを翻しながらビームシザースを振り抜くガンダムデスレイザーだが、対するνガンダムもビームサーベルを抜き放って迎え撃つ。

 

『あー?露骨に腐女子受けを狙ったWのガンプラ使うとか!お前、ガンダムを何だと思っちゃってんの?』

 

 ビームシザースとまともに打ち合えるところ、νガンダムのビームサーベルの出力も相当なものだろう。

 

「……なにその言い方?あんたもしかして、お気持ち警察とかそう言うアレなの?」

 

 サッキーの言うそれは、ネット界隈においてひとつの主義主張だけが正しいと言い張り、それ以外は何かにつけて何が何でも否定したがる、アンチのお手本のような連中だ。

 

「ごめん正直言って気持ち悪いんだけ、どッ!」

 

「どッ」に合わせてビームサーベルを弾き、流れるようにビームシザースを横薙ぎするが、νガンダムの反応も早く、飛び下がってビームシザースの一閃をやり過ごす。

 

『いや、キモいのはそのガンプラの方だからね!?アタマあるでしょ!?使お……』

 

 何かを言い掛ける前に、サッキーは通信を切った。

 

「はー、うっざ……」

 

 耳障りな声はこれ以上聴きたくない。

 とりあえず、このバカとあっちのバカを花畑から追い出す。

 ビームシザースを構え直し、ガンダムデスレイザーは突撃する。

 

 

 

 シャルルとサッキーの二人が牽制してくれている内に、コーダイはキャノパルドに、セアもジルを連れてガンダムMK-Ⅱに乗り込んだ。

 コーダイはキャノパルドを再起動させつつ、セアと通信を繋ぐ。

 

「セアさん、聞こえてますか?」

 

「うん、大丈夫」

 

 セアの応答を確認してから、コーダイはサザビーと戦っているシャア専用ザクと、νガンダムと戦っているガンダムデスレイザーの両方を見比べる。

 

「……よしっ、俺はシャアザクの方を援護します。セアさんはあっちのデスヘル、黒い羽根のガンダムの援護を頼んます」

 

「うんっ」

 

 キャノパルドはシャア専用ザクの方へ、ガンダムMK-Ⅱの方へ、双方の援護へ向かう。

 

 

 

 サザビーが振り下ろすビームソードアックスを回避しつつ、シャア専用ザクは少しずつ後退していく。

 

『避けんなよ、避けたら花畑が潰れるぜぇ?』

 

「じゃ、てめーが攻撃しなきゃいんじゃね?」

 

 避けたらこうなる、だったら攻撃しなければ良い、などと罵詈雑言のドッジボールをしつつ、シャルルは冷静に思考を回す。

 あのサザビー、乗り手の人格はともかく完成度はそれなりに高い。お気持ち警察をしているだけはあるという事か。

 気軽に作った程度のシャルルのシャア専用ザクでは、まともに攻撃しても撃墜するのは難しい。

 

「(ま、やりようはある)」

 

 シャルルの中では、既にあのサザビーを撃破するための算段が組み上がっている。

 問題は、向こうがこちらの誘いに乗ってくれるかどうかに掛かっているが……

 

 不意に、シャア専用ザクとは別の方向からバルカン砲の銃弾がサザビーの装甲を叩く。

 ダメージはゼロに近いが、注意を逸らす程度の効果はあった。

 

「大丈夫かシャルルさん!」

 

 コーダイのキャノパルドが援護に来てくれたようだ。

 彼がシャルルのことを「シャルルさん」と呼んでくれている辺り、どうやらハバキリだとバレていないらしい。

 それに合わせて、シャルルも彼への呼び方を変える。

 

「わりーな"コーダイさん"、助かる」

 

 シャルルはシャア専用ザクのザクマシンガンを右手に持ち替えさせ、左手にはヒートホークを抜き放つ。

 キャノパルドはさらに左肩に担いだハイパーバズーカも発射してサザビーを牽制するが、対するサザビーはビームソードアックスを振るって砲弾を切り裂く。

 

『チッ、Sランクの奴がこっちに来たか。まぁいい、まとめてぶっ潰してやる!』

 

 サザビーはその場から飛び下がると、バックパックに納められた六つの筒状の物体を射出させる。

 

『行けよファンネル!』

 

 筒状の物体から四枚の羽が広がると、それらは意思を持ったかのように飛び回り、シャア専用ザクとキャノパルドにビームを浴びせ付けてくる。

 サイコミュ兵器のひとつである、ファンネルだ。

 宇宙世紀の原作では、重力下でファンネルはまともに使えないのだが、このGBNでは重力の有無に関係なく使用可能である。

 

「うぉっと、ファンネルか」

 

 放たれるビームを掠めそうになりつつ、キャノパルドはビームライフルによる反撃を行い、シャア専用ザクはファンネルからのビームを掻い潜りつつ接近を試みるが、サザビーはファンネルをこと細かく制御しながらも、ビームショットライフルを撃ってくる。

 

「(このザクじゃキツいか)」

 

 シャア専用ザクでは性能が足りない。

 無論、この機体で倒すことは出来るが、少しばかり時間がかかる上に面倒だ。

 シャルルとしてはさっさと片付けて、νガンダムと交戦しているサッキーとセアの救援に向かいたいが、そうもいかない。

 

『ホラどうしたどうしたァ!』

 

 なおも苛烈にファンネルとビームショットライフルを放ってくるサザビー。

 

「野郎、ナメやがって!」

 

 コーダイもサザビーからの攻撃を掻い潜りつつ、ビームライフルとハイパーバズーカによる砲撃を以て反撃する。

 

「(ま、急がず攻めればいいか)」

 

 今はまだ様子見だ、とシャルルは四方からのビームを躱してみせる。

 こちらが痺れを切らして仕掛けるか、向こうが慢心で油断するまでが勝負。

 

 

 

 一方の、セアとサッキーの二人。

 セアのガンダムMK-Ⅱは、サッキーのガンダムデスレイザーを誤射しないように、なおかつνガンダムからの攻撃にも警戒しつつ、慎重に行動していた。

 

「サッキーさんのガンプラは、接近戦が得意みたいだから……」

 

 あのビームの大鎌一丁だけでνガンダムに肉迫し、それ以外の武装の類は恐らく装備していない……そう読み取ったセアは、ガンダムMK-Ⅱをνガンダムの後方へ回り込ませつつ、ターゲットマーカーを合わせていく。

 

『見えてんだよ!フィンファンネル!』

 

 すると、νガンダムの背部に掛けられていた複数の板が飛び出し、それぞれが『コ』の字に変形すると、サザビーのファンネルと同様に自立稼働しながらガンダムMK-Ⅱへビームを放つ。

 

「うそっ、あれも攻撃してくるの!?」

 

 オールレンジ攻撃の類を知らないセアは、完全に虚を突かれてしまっていた。

 バイタルバートへの直撃コースだ。

 しかし、セアと同乗していたジルが声を上げる。

 

「セア、上に飛んでっ」

 

「えっ?」

 

 セアは返事をするよりも先に身体が反応していた。

 アームレイカーを捻り引き下げると、ガンダムMK-Ⅱはその場からジャンプ、0.2秒前まで立っていた地点を、フィンファンネルのビームが薙ぎ払った。

 

『避けやがった!?』

 

「どこ見てんのよっ!」

 

 ガンダムMK-Ⅱの挙動に意識を向けた瞬間、ガンダムデスレイザーが地面を削るように下からビームシザースを斬り上げてきた。

 νガンダムは咄嗟にシールドを前面に向けて防ごうとするものの、ビームに耐性を持つ盾や装甲すらも一閃の元に両断可能な出力の前には耐え切れず、νガンダムのシールドは真っ二つに斬り裂かれた。

 

『クソがっ、なめんなやぁ!』

 

 だが、シールドで防がれると言うタイムラグが生じたせいで、ガンダムデスレイザーはνガンダムの前で隙を晒していた。

 反撃に振るったνガンダムのビームサーベルが、ガンダムデスレイザーの両腕を斬り飛ばした。

 

「あっ!?」

 

 マニピュレーターに掴んだままのビームシザースが、地面を滑っていく。

 それに一瞬でも視界を傾けてしまったせいで、サッキーはνガンダムの次の挙動を見逃した。

 返す刀で振り下ろされるビームサーベルは、確かにガンダムデスレイザーの胴体へ迫るーー

 

「させない……ッ!」

 

 寸前、νガンダムにビームと砲弾が降り注ぎ、ビームサーベルを振り下ろそうとしていた手を止めた。

 上空へ跳んだセアのガンダムMK-Ⅱが、ビームライフルとハイパーバズーカの両方でνガンダムを攻撃している。

 

『チッ、ザコが粋がってんじゃねぇよ!』

 

 νガンダムはガンダムデスレイザーを蹴り飛ばし、上空にいるガンダムMK-Ⅱに視界を向け直す。

 

『撃ち落とせフィンファンネル!』

 

 制御を切られて地面に落ちていたフィンファンネルが再び動き出し、ガンダムMK-Ⅱ目掛けて一斉にビームを放った。

 

 セアは瞬時にアームレイカーを引き、ガンダムMK-Ⅱを飛び下がらせつつ着陸しようとする、

 

「っ!」

 

 が、その着地点には花畑がある。

 

「ここは、ダメッ……!」

 

 強引にバーニアを噴かせて、どうにか花畑から離れた位置にまで移動しようとするが、不意にスラスターの蒼炎が停止した。

 コンソールには、ガンダムMK-Ⅱのバックパックや足回りに『Over heat』の赤い表示がいくつも表示されている。

 

「オーバーヒート!?」

 

 スラスターを連続して酷使したために放熱が追い付かず、オーバーヒートを起こしてしまったのだ。

 こうなると、バーニアが放熱完了する一定時間、スラスターを使った機動が出来なくなってしまう。

 コンマ一秒が生死を分かつ戦闘中において、これは致命的なミスだ。

 強引に方向を変えたせいで、ガンダムMK-Ⅱは姿勢制御も出来ないままに地面に不時着する。

 

 

 

 サザビーからの激しい攻撃を凌ぎつつ、シャルルは僚機確認の画面を開く。

 コーダイのキャノパルドは大した損傷もなく善戦している。

 

 問題は、女子二人の方だった。

 

 サッキーのガンダムデスレイザーは両腕を失って戦闘力を失い、セアのガンダムMK-Ⅱは何が起きたのかその場で倒れてしまっている。

 その隙を見逃すνガンダムではないだろう。

 事実、νガンダムはフィンファンネルを呼び戻すとビームサーベルを構え直して、どちらから仕留めようかと首を左右に振っている。

 

「ちくしょっ、ドガドガ撃ちまくりやがって!底無しかよ!」

 

 コーダイはサザビーの絶え間の無い攻撃に悪態をついている。

 ここで背を向けてνガンダムの方へ向かえば、後ろから撃たれるか、或いはコーダイが一人でサザビーを食い止めなくてはならなくなる。

 しかし、ここで足を止めているわけにはいかない。

 

 ーーシャルルーーハバキリーーの思考が高速で回転しーーこの事態を切り抜ける策を打ち出すーーしかし不確実ーーそれにコーダイを混乱させるかもしれないーーハッキリ言って"博打"ーー

 

 

 

 

 

 中 途 半 端 な こ と を し て い る 自 分 が 気 に 食 わ な い 。

 

 

 

 

 

 ーーその信念がシャルルを後押しし、ついに踏み切った。

 

「おい聞こえるかコーダイッ!」

 

「あぁ!?なんだっ!」

 

 

 

「『コンビネーションブラスト』だ!行けるな!?よし行くぞ!」

 

 

 

「おうよっ!」

 

 シャルルの口から放たれたそれを聞き、コーダイは反射的に了解を返した。

 その了解を確認する前に突出するジンライーー否、シャア専用ザクの後ろ姿を見て、コーダイはハッとなった。

 

「なんで、シャルルさんが俺達の作戦コードを……?」

 

 コーダイの言う俺達ーーフォース・アルディナでは、作戦を迅速に進行させるための作戦コードを用いていた。

 当然ながら、アルディナ以外のメンバーでは知るはずもないはずだが……?

 それに、あのシャア専用ザクが一瞬、ハバキリのジンライにダブって見えたのは気のせいか?

 

「(……それは後だ)」

 

 今それをシャルルに問い質している暇はない。

 コーダイはターゲットロックをマニュアルに切り替え、ホロスコープを目に通しながら、照準をサザビーに合わせていく。

 

「ハー……ッ、ハー……ッ、ハー……ッ」

 

 シャルルのシャア専用ザクがサザビーからのビームの嵐を掻い潜る中、キャノパルドがサザビーをロックオンする。

 その射線上にはシャア専用ザクがいるがーー

 

「……行けよォォォォォッ!!」

 

 コーダイは構わずにトリガーを引き絞った。

 瞬間、ビームライフル、ハイパーバズーカ、肩部キャノン一対、合計四門の火器が放たれる。

 当然、それらはサザビーよりも前に先にシャア専用ザクに向かう。

 

「最高のタイミングだぜ、コーダイ」

 

 だが、シャア専用ザクは不意にその場からジャンプし、ビームと砲弾を飛び越えるようにやり過ごす。

 

『は、はっ!?』

 

 ジャンプしたシャア専用ザクに気を取られたサザビーは、続いてやって来るビームと砲弾への対処が遅れた。

 結果、一筋のビームと三発の砲弾はサザビーのビームショットライフル、左肩、ボディを直撃していく。

 だが、サザビーはネオ・ジオン総帥たるシャア・アズナブルの専用機だ、多少の被弾ごときで戦闘不能になるほどヤワな機体ではない。

 

『ぐっ、そんなもんで……っ!?』

 

 重砲撃機たるキャノパルドの火力を受け切れたことは称賛に値しても良いだろう。

 だが、これで終わりではない。

 

 仰け反った姿勢を正そうとするサザビーだが、そのダイバーの視界は蛍光ピンク色の光に覆われる。

 

 何かと思ってモニターを凝視するとーー、

 

『……え?』

 

 グポゥォン、とシャア専用ザクのモノアイが、文字通り目を光らせていた。

 その左手でヒートホークを振り下ろしながら。

 

『あ、ちょ、やめ』

 

 熱プラズマをサザビーの頭部ーーコクピットに叩きつけられ、中にいたダイバーは何かを言い終える前に焼き潰された。

 

 サザビー、撃墜。

 

 コンビネーションブラスト。

 フォース・アルディナのメンバーの中で熟知し合っていたその作戦コードは、前衛が敵機の目隠しとなり、後衛が前衛と敵機の対角線上から射撃、それに合わせて前衛が上方へ回避行動を取り、射撃を敵機に喰らわせる。

 その射撃で敵機が撃墜するならよし、回避されたとしても上に跳んだ前衛が上空から再度接近して近接攻撃を敢行、その間にも後衛がさらに援護射撃で追い詰める、と言う三段構えの攻撃だ。

 

 サザビーの撃墜を確認したシャルルはすぐにシャア専用ザクのスラスターを飛ばし、反対側にいるνガンダムの方へ急ぎ、コーダイのキャノパルドもそれに続く。

 

 

 

 

 

 あのガンダムデスレイザーとか言うふざけた改造機は両腕を失っており、まともに攻撃は出来まい。

 そうなれば優先的に撃墜すべきは、まだ五体満足の素組みのガンダムMK-Ⅱだ。

 νガンダムは、スラスターのオーバーヒートを起こしてまともに動けないガンダムMK-Ⅱの方へ狙いを付けるが、

 

「させる、かぁっ!」

 

 不意に、背後から蹴り飛ばされた。

 それは、両腕を失っているにも関わらず突っ込んで来たガンダムデスレイザーだ。

 

『このっ、しつこい!』

 

 νガンダムは起き上がるなり矛先をガンダムデスレイザーに向け直そうとするが、標的にしたその姿が風景に溶け込むように消える。

 ガンダムデスレイザーが起動させたミラージュコロイドだ。

 

『あ!?どこいった……んがっ!?』

 

 消えたと思った次の瞬間には、脇腹を蹴り飛ばされ、仰け反ったところに体当たりを喰らわされる。

 

『いい加減に、うぜぇッ!』

 

 苦し紛れに振るったビームサーベルだが、体当たりを仕掛けたために至近距離にいたガンダムデスレイザーへ、まぐれ当たりながら直撃を与えた。

 

「あぐっ、ぁはっ!?」

 

 メガ粒子の波動がコクピット内にまで干渉していた。

 モニターはスパークと共に弾け飛び、その衝撃がサッキーをコクピットの壁に叩き付ける。

 ダイバーの制御を失ったガンダムデスレイザーは仰け反ったまま倒れる。

 

『死ねよやぁ!』

 

 再三四度、ビームサーベルを振り下ろすνガンダム。

 

「……っ!」

 

 ダメージを受けた身体に鞭打ってサッキーはアームレイカーを握り締め、ガンダムデスレイザーのアクティブクロークを閉じ、νガンダムのビームサーベルを弾き返す。

 1/144スケールと比べてもパーツそのもの質量や密度は桁違いな1/100スケールのパーツだ、そう簡単に破られはしない。

 

『このっ、ふざけた装甲しやがって!』

 

 νガンダムは何度も何度もビームサーベルをアクティブクロークへ叩き付ける。

 一撃一撃を受ける都度に耐ビームコーティングが剥がれ、装甲が斬り裂かれていく。

 いくらスケール違いとは言え、限界はある。

 

 次の一撃を受けてはもう保たないだろう。

 

 しかし、その寸前でνガンダムはその場から飛び下がりーーそこに砲弾が通り過ぎた。

 

「生きてるかサッキーさん!後は俺らに任せろ!」

 

 コーダイのキャノパルドだ。

 肩のキャノン砲で牽制してくれたようだ。

 シャルルのシャア専用ザクも一緒だ。

 

『チッ、あのバカもうやられたのかよ!』

 

 あのバカーー僚機であるサザビーのことを罵りつつ、νガンダムはフィンファンネルを呼び戻し、シャア専用ザクとキャノパルドの二機にビームを撃ちまくる。

 シャア専用ザクはビームとビームの間を掻い潜りながらも、ザクマシンガンを撃ち返し、キャノパルドは脚部のミサイルポッドを全弾発射、空になったポッドはすぐに切り離してデッドウェイト化を防ぐ。

 対するνガンダムもザクマシンガンの銃弾を避けつつ、四発のミサイルは頭部のバルカン砲で撃ち落としていく。

 爆破されるミサイルの爆煙に紛れるように、シャア専用ザクはヒートホークを構え直しつつ、接近を試みようとするものの、フィンファンネルによる手数のある攻撃を前に踏み込めずにいる。

 

「……ま、苦戦してるフリでもしといてやるか」

 

 ーーその実、わざと踏み込んでいないのだが。

 コーダイの方もシャルルの意図に気付いたらしく、遠距離から散発的な砲撃を繰り返すだけだ。

 

『避けてばっかいねぇで勝負しろよ、勝負!』

 

 攻撃が当たらないことに苛立ち始めたのか、νガンダムの攻撃が乱雑になる。

 

 シャルルはそれを見計らっていた。

 

「今だ、セアさん!」

 

 セアへ向けた通信。

 

 その刹那、

 

 

 

 νガンダムの背後からビームサーベルを突き刺した、ガンダムMK-Ⅱの姿があった。

 

 

 

「後ろからって言うのは気が引けるけど、ごめんね」

 

 そう小さく呟きつつ、セアはビームサーベルを引き抜いた。

 コクピットブロックをまともに貫かれたνガンダムは、ツインアイの光を消して、その場で崩れ落ちた。

 

 νガンダム、撃墜。

 

 不埒な乱入者を討ち倒したのはいい。

 だが、

 

「お花畑、めちゃくちゃになっちゃった……」

 

 セアの隣にいるジルが、物悲しそうに零した。

 色とりどりだった場所は踏み潰され、焼き払われてしまっていた。

 

「……派手に戦っちゃったからね」

 

 サッキーも言葉の端を落とす。

 

「あいつらが変な乱入さえしてこなけりゃ、こんなことには……っ」

 

 コーダイは苛立ちに歯軋りする。

 

「これ、もうバラの花は集められないよね……」

 

 セアも、望まぬ過程による結果とは言え、自機が踏み荒らしてしまった花々を見下ろす。

 この無残な光景が、彼らの沈痛さと悲痛さを表していた。

 

「……いや、そーでもねーな」

 

 ふとそう口にしたのはシャルル。

 その言葉に耳を傾ける他の四人。

 

「ほれ、あそこ」

 

 シャア専用ザクの左の人差し指が、ある方向ーー正確には、先程までセアのガンダムMK-Ⅱがオーバーヒートを起こしてしまった地点の、近く。

 

 そこだけ、無事な花畑があった。

 

「おっ、運良く生きてるのがあるじゃねぇか」

 

 コーダイもシャア専用ザクの指す先を見やる。

 

「なんであそこだけ?全滅しちゃったんじゃ……」

 

 サッキーはその方向を見て目を丸くするが、ジルがその理由を答えてくれた。

 

「セアが守ったんでしょ?」

 

「……え?」

 

 どういうことかと、セアはジルの顔を見降ろす。

 

「あの時、お花畑を潰さないようにって」

 

 そう。

 セアがガンダムMK-Ⅱを着地させようとした時、花畑を潰さないようにわざと離れた位置まで強引に機動したのだ。

 そのために、スラスターがオーバーヒートを起こしてしまったのだが、結果オーライだ。

 

「……そうだっけ?」

 

 セアとしては無意識の内の行動だったのか、今ひとつ的を得ていないような顔を浮かべている。

 だが、彼女のおかげで、まだミッションを続けられる。

 

 しかし、不意にコンソールがまたガンプラの接近を告げてきた。

 

「さっきの奴らのお仲間か!?」

 

 コーダイは即座にキャノパルドのビームライフルを構えさせて、その接近反応の方へ向ける。

 

 空の向こう側から現れたのは、ライトブルーとレーシンググリーンのツートンカラーで塗装された可変機ーーゼータプラスの改造機だった。

 

「ゼータプラスか……」

 

 厄介な相手だ、とシャルルは舌を打つ。

 すると、突然ゼータプラスはMS形態へ変形し、その場でホバリングする。

 

「……なに?襲ってこない?」

 

 ガンダムデスレイザーのアクティブクロークを開きながら、サッキーはゼータプラスの挙動を注視する。

 数十秒のホバリングの後、ゼータプラスは再びWR形態へ変形し、旋回してその場から離れていった。

 

「……何もしないで、帰って行ったね」

 

 ゼータプラスが水平線の向こう側に消えるのを見送るセア。

 

 

 

 

 

「どうやら、俺が手を出す必要も無かったな」

 

 νガンダムとサザビーの二機が撃破されたのを見て、ゼータプラスーー機体銘『ゼータプラスラファーガ』のダイバーはすぐに踵を返して、元いたフォースネストの方へ戻る。

 

 その途中で長距離通信が届き、彼はそれに応答する。

 

「こちら、コードネーム『フリューゲル』、どうぞ」

 

 顔の見えないサウンドオンリーの通信から、男性の声が発される。

 

『サヤ君、今は大丈夫かね?』

 

「ご心配なく、自由飛行中ですので」

 

『そうか。では早速だが、良いニュースと悪いニュースの両方がある。どちらから先に聞きたい?』

 

「ローランさん、またそんな通信士の真似事のようなことを……じゃぁ、良いニュースからで」

 

 しかし、良いニュースと悪いニュースの両方があり、どちらから先に聞きたいかを問われた時、良いニュースとは『最悪よりはマシなニュース』であり、悪いニュースとは『控えめに言って正真正銘最悪のニュース』に限られているのだが……とサヤは心底で皮肉る。

 

『最悪よりはマシなニュースではないぞ、私達にとっては喜ばしいことだ』

 

 そんなサヤの心底を読み取ったのか、あるいは同じことを考えていたのか、通信先の相手は苦笑する。

 

『まず、君が先日に拿捕したタカギ氏から有力な情報を吐き出してもらった。おかげで反ELダイバー勢の拠点のいくつか割り出すことが出来た。近々にそれらの掃討、制圧戦を行うだろう』

 

「喜ばしい……かどうかは複雑ですけど。それで、悪いニュースの方は?」

 

『…………』

 

 通信越しに間の置いた溜息が聞こえる。

 伝えることも躊躇うほどの最悪なニュースなのだろうか?

 

『……』

 

 数秒の間を置いてから、『悪いニュース』の内容を聞かされたサヤは、思わずコクピットの壁を殴った。

 

 

 

 

 

 セアが守った花畑から、残るバラの花8本をしっかりと採集し、近辺に停泊しているスーパーソニックトランスポーターにバラの花20本を納品させて、ミッションはクリア。

 

「さて、シャルルさんよ。どう言うことか説明してもらおうじゃねぇか」

 

 ベース基地に帰還してきたシャルル、セア、コーダイ、サッキー、ジルの五人。

 その構図は、壁を背にしたシャルルと、それに向き合う他四人と言う、文字通りの四面楚歌。

 

「なんであんたが、俺やハバキリしか知らないはずの作戦コードを知っていたのか、をな」

 

「わーかってるよ。ここまで来て逃げ隠れもしねーって」

 

 元よりそのつもりだったからな、とシャルルは腹を括り、昨日までの全てを明かした。

 

『ハバキリ』のログデータを初期化してからは、『シャルル』と言うネカマとして行動していたこと。

 サッキーとは、シャルルとして行動している時に知り合ったこと。

 シャルルのままでコーダイやセアの前に出るのを避けていたのは、二人を混乱させたくなかったから。

 サッキーには、自分は元々ハバキリと言うSランクのダイバーとして活動していたことを伝えようとしたが、そこにジルとセア、コーダイがやって来て、有耶無耶になってしまったこと。

 作戦コードも、自分がコーダイと同じフォースにいたのだから知っていて当然。

 

 これが、昨日までの全てだ。

 

「アホだろお前」

 

 返ってきた開口一番が、コーダイのアホ呼ばわりだった。

 

「なぁんでそんなこと黙ってたんだか。正直に言ってくれりゃ、ネカマで行動することだって分かってやれたのによ」

 

 続いて、サッキーからは呆れたような溜息。

 

「やっぱりそうだったんだ。全部納得」

 

 セアは困惑したような顔をするが、結局の要点を訊いた。

 

「えーっと、シャルルさんがハバキリくんで、ハバキリくんがネカマとして行動していたって言うのはびっくりしたけど……それで、"君"はこれからどうするの?」

 

 彼女が訊ねるのは、これからのことだ。

 このままシャルルのままでいるのか、ハバキリに戻るのか。

 

「オレは本来のハバキリに戻ります。中途半端なことをしてる自分が気に食わなかったんで」

 

「そっか。それが訊きたかったの」

 

 セアもネカマがどうだとは深く考えていないようで、これからも彼は『ハバキリ』であることが分かって、納得したようだ。

 

「……ねぇ、ハバキリ」

 

 そして最後にジル。

 

「おー、なんだジル?」

 

 彼女も何か訊くのかとシャルルは身構えるが、

 

 

 

 

 

「シャルルって、誰?」

 

 

 

 

 その場にいた全員がずっこけた。

 

 

 

【次回予告】

 

 ハバキリ「と言うわけで完全復活、スペシャルで二千回のオレ様が、地獄から舞い戻ってきたぜ」

 

 コーダイ「炭酸かデュオかハッキリしろい」

 

 セア「そうそう、Dランクになったらフォースって言うのを組めるようになるんでしょう?ここにいるみんなで組めないかな?」

 

 サッキー「それ、あたしも同じこと考えてました。せっかくだからさ、みんなでフォース組まない?」

 

 ハバキリ「っても、ジルはガンプラ持ってねーから、本格的なフォースバトルをするには、後一人くらいは欲しーな」

 

 ジル「わたしは、ダメなの?」

 

 コーダイ「ジルちゃんはアレだ、俺らのマスコット的な」

 

 セア「次回、ガンダムビルドダイバーズ・スピリッツインテンション

 

『七星エクリプス』」

 

 サッキー「フォース名はどうしよっかなぁ……」

 

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