次の日、朝食時
デルカダール王「おお、マルティナ、ラース、おはよう。昨晩は眠れなかったか?」
マルティナ「そうですね。あれから夜泣きで何度も起こされてしまって」
ラース「マルティナが俺は寝てていいって言ってくれたんですが、流石にそんな訳にもいかずに結局二人で寝不足です」
デルカダール王「マルティナも一人で二人をあやすのは大変じゃ、ラースも出来る限り支えてやってくれ。わしも出来る限りサポートしよう」
ラース「王様、俺、昨日決めました。俺はマルティナの騎士となります」
グレイグ「おお!ついに決めてくれたか!ありがとう、ラース。おかげで姫様の騎士相手探しをしなくてすんだ」
ラース「げ!?そんな事してたのかよ!それなら言ってくれよ、多分こんなに悩まなかったぜ?」
デルカダール王「ハッハッハ!それはすまなかったのう。だが、お主ならきっとやってくれると信じておったぞ」
マルティナ「でも、お父様はまだ王を退く気はないわ。私もまだまだ勉強しないとだし、ラースもまだ先の事よ」
ラース「まあ、そうだけどよ。これは国の大事な事だから、あまり先延ばしにしてもいい事じゃないだろ」
グレイグ「そうだな。そこの理解もしてくれているのは流石だな。それと、今日から大変だろう。ラースはこれからしばらく先は兵士長を休んでいいぞ」
ラース「え!?大丈夫だぜ?それは仕事なんだからちゃんとやるさ」
デルカダール王「だが、ラースがいない時にマルティナだけでは対処しきれない事も多くなるだろう。お主はマルティナと一緒に子ども達を支えるのじゃ」
グレイグ「そういう事だ。その間、兵士達には俺がまた教える。お前は休んでいてくれ」
マルティナ「お言葉に甘えましょう、ラース。これは譲る気は二人とも無さそうよ」
ラース「わかった、ありがとう、グレイグ。ありがとうございます、王様」
その後、マルティナとラースの部屋
ラース「と、言われたけどどうしよう。落ち着かねえな」
マルティナ「まあ、急にお仕事取られちゃうとそうなるわよね」
ラース「まあとりあえず、おもちゃやおむつをいつでも使えるようにしておかないとだな。袋から開けておこうぜ」
その後
マルティナ「これで大丈夫。後はこの子達に朝ご飯ね。まだ寝てるわね」
コンコン
マヤ「お姫様、いるー?」
マルティナ「あ、マヤちゃん、どうぞ」
ガチャ
マヤ「へへ、来ちゃった。どう?新しい生活は?」
マルティナ「これから大変になりそうだわ。夜泣きだけで大変だったのよ」
マヤ「夜泣きってなんだ?」
ラース「赤ちゃんは夜になると、不安で不定期で泣き始めるんだ。俺達はそれを昨晩あやすのに何度も起こされてな。あまり眠れなかったんだ」
マヤ「えー、大変なんだな。なあなあ、俺にも何か出来ることない?」
マルティナ「それならちょうどよかったわ。今から朝ご飯をあげようと思ってたの。マヤちゃんも手伝ってくれる?」
マヤ「おう!俺もやる!」
ラース「カミュはどうしたんだ?」
マヤ「兄貴なら宿でゆっくりしてるよ。城に行くって言ってきたから大丈夫だぜ」
マルティナ「あら、一人で来たのね。よく迷わなかったわね」
マヤ「まあね!何回も来てるし、覚えちゃった!」
ラース「そういや今日はいい天気だな。どうせなら、バルコニーで食べさせないか?」
マルティナ「それもそうね。外の空気を吸わせてあげましょう」
バルコニー
マヤ「おお!ここすげえ景色いいね!城下町ほぼ全部見えるじゃん!」
ラース「ここでの夕日は格段に綺麗でな。今度機会あったらマヤちゃんにも見せてやるよ」
マルティナ「それじゃあ、私はこの子達にご飯あげてるわ」
マヤ「あ、俺も支えるよ」
マルティナ「ありがとう、マヤちゃん」
その後、カミュとイレブンがやってきた
カミュ「全く。しばらく戻ってこないから様子を見にきたら、あんまり迷惑かけんじゃねえぞ」
マヤ「迷惑なんかかけてねえし!俺も少しは手伝ったからな!」
マルティナ「ふふ、とっても助かったわ。マヤちゃんは頼りになるわね」
マヤ「へへ、俺赤ちゃんを見てたら、何かしてやりたくなってさ。これからも来てもいい?」
ラース「どんどん来ていいぞ。俺達はいつでも歓迎するからな」
カミュ「おい、マルティナ、ラース。あまりこのじゃじゃ馬を甘やかすなよな。手がつけられなくなるぞ」
マヤ「ハア!誰がじゃじゃ馬だよ、クソ兄貴!全く、兄貴も二人みたいに優しくしろよな」
イレブン「マヤちゃんは何を手伝ったの?」
マヤ「俺は赤ちゃんにご飯をあげるのを支えてたんだぜ」
イレブン「赤ちゃんにって事は.....あ、そっか」
ラース「わかったか?イレブン。俺にはあまり手伝いにくい事だな」
カミュ「へー、お前にしてはちゃんとやってたんだな」
マヤ「どう!ちゃんと出来てたんだからな!」
その時、グレイグもやってきた
グレイグ「あ!姫様、ラース、それにイレブン達もいたのか。どこに行ったのかと探したぞ」
マルティナ「あら、グレイグ。探してたのね、ごめんなさい」
グレイグ「いえ、訓練が終わったのでラースに報告をしに来たんです。ラース、俺が知らない間に、随分と兵士達の戦い方が実戦的になったな。
俺は型を基本的に教えていたが、お前はそこからさらに実用的にさせていったのだな。最後の組手は俺にもかなり厳しかったぞ。素晴らしいじゃないか。
特にバンだな。あいつはお前と特訓してるだけあって、他の者の追随を許さないレベルで全ての技が磨かれているな。あのレベルなら隊長どころか、副長を任せてもおかしくない強さだ」
ラース「どうだ!俺の育てた兵士達は!グレイグにそこまで言ってもらえるとは、俺も頑張った甲斐があるな。それにバンの強さに驚いただろ?あいつ、メキメキと力をつけていってな。
確かに隊長を任せられる強さはかなり前から持っていたが、俺はそういう隊での縛りはしてないからな。皆で平等にしていたんだ。別にそこはグレイグの好きにして構わないぜ。
ただ、バンの特訓は俺が直々に見よう。あいつは俺の事を師匠って呼んでくれてるからな。全部グレイグに任せるわけにもいかない。報告ありがとな、グレイグ。俺はバンの所にいってくる。イレブン達と話していてくれ」
訓練場
ラース「おーい、バン!急に兵士長が代わって驚いただろ?すまなかったな」
バン「あ!師匠!いえ、全く!グレイグ将軍も色々教えてくださり、とても参考になりました!師匠は赤ちゃんの方は大丈夫なんですか?俺達の事は気にしなくて大丈夫ですよ?」
ラース「いやー、俺も体を動かしてないとどうも落ち着かなくてな。ハハ、マルティナの事を言えた口じゃなかったみたいだ」
バン「そうだったんですか、それじゃあ今日は何やりますか?」
ラース「今日は片手剣と盾を持ちながら、体術で戦ってもらうぞ。もちろん剣と盾も使えよ?」
バン「わかりました、行きますよ、師匠!」
数時間後
ラース「剣がブレているぞ!しっかり力をこめろ!足と体幹で前進してくるのを止めるんだ!」
バン「ハア!フン!こんな感じですか!」
ラース「ああ、そうやって押さえこんで戦え。そうすれば相手は守る手段が少なくなるからな。防御は最大の攻撃。相手のできる事をどんどん封じろ。そうすれば、相手は隙ができてくる」
バン「はい!わかりました!」
その時、カミュとイレブンが走ってやってきた
カミュ「おい!ラース!子どもが泣き出しちまった!」
イレブン「マルティナだけじゃあ泣き止まないんだ!急いで戻ってきて!」
ラース「わかった!今行く!すまねえな、バン。ひとまずここまでだ」
バン「いえ、気になさらないでください。どうか赤ちゃんの方へ」
ラース「ああ。そうだ!イレブン!カミュ!バンと戦ってやってくれ!頼む!」
ラースは去り際にそう残していった
イレブン「え、僕達が?」
カミュ「おいおい、マジかよ」
バン「あの、勇者様達、俺に指導してもらってもいいですか?」
カミュ「まあ、しないと怒られるのは俺らだしな」
イレブン「何か教えられるわけじゃないけど、よろしくね」
バン「ありがとうございます!じゃあ本気でいきます!」
その後、バルコニー
ラース「すまねえ、マルティナ。大丈夫か?」
マヤ「あ!兄ちゃん来た!助けてくれよ、マルスが泣き止まねえんだ」
マルティナ「ごめんなさい。ルナが泣き出したら、マルスまで泣き出してしまって」
ラース「いや、気にするな。こういう時はな、少しルナと離れてゆっくり安心感を与えるんだ。焦らないで一定のリズムで撫でてやるんだ。もう大丈夫だぞ」
少したつと、マルスはゆっくりと落ち着いていった
マヤ「うわあ!兄ちゃんすげえ!俺、慌てちゃってどうしようって思ってたんだよ」
マルティナ「そうね。安心感を与えるのが大事だったわね。私も少し焦っちゃってたのが伝わっちゃったのね」
ラース「赤ちゃんは意外と俺らの事をよくわかっている。特に感情面をな。俺らが不安だったりしていると、赤ちゃんもそれに影響されちゃうんだ」
マヤ「そうなんだ。赤ちゃんってすげえな。泣き出しても慌てないで落ち着かせればいいんだな」
ラース「ああ、そうだ。マヤちゃんもわからなくても何とかしようとしてくれたのには感謝しないとだな。優しいな、マヤちゃんは」
マヤ「本当?ありがとな、兄ちゃん」
マルティナ「グレイグ、もうこっちに来ても大丈夫よ?」
ラース「何で端っこにいたんだよ」
グレイグ「俺が近づいたら、赤ん坊達がさらに泣き喚いてな。俺はこの顔で、体も大きいから不安を与えているかもしれんと思って端っこに避難したんだ」
マヤ「おっさん、隅ですげえ申し訳なさそうにしてたんだぜ。これで英雄だなんて呼ばれてるなんて信じられねえ」
マルティナ「うふふ、でも彼は戦闘ではとっても頼りになるのよ」
グレイグ「ひ、姫様。ありがとうございます」
マヤ「俺にはただの面白いおっちゃんにしか見えねえな」
ラース「ハハハ!そんな捉え方でいいと思うぞ。これからは戦いなんて少なくなっていくんだからな」
その後
カミュ「おい!ラース!何だ、あのバンってやつ!とんでもなく強いぞ!」
イレブン「本当だよ。僕が久しぶりに剣を握ったってのもあるけど、負けるかと思った!いや、あれはもう運で勝ったようなものだから、負けみたいなものだと思う」
マルティナ「え!?イレブン、負けちゃったの!?」
マヤ「マジ!?勇者様に勝っちゃう兵士がここにいるのかよ!」
カミュ「そうなんだよ、イレブンが負けそうになってて俺もビビったぜ」
イレブン「いや、これは僕も本格的に旅の時の感覚取り戻さないと」
ラース「やっぱりイレブンとはいい勝負したみたいだな。カミュともいい勝負になるんじゃないかと思ったが、そうでもなかったか」
グレイグ「ラースの教え方でここまで変わるとは....。やはり、お前は恐ろしい男だ」
カミュ「ブーメランがほぼ効かないし、短剣も戦い方わかってやがる。兵士とは思えない戦い方してきたぞ。何でそんなの教えてんだよ」
ラース「それがあいつの信念って事だ。俺が教えられる戦い方全てを叩き込むつもりだからな。もしかしたら、俺よりも武器の面では強くなるかもしれないぞ?」
マヤ「すげえ、兄貴の戦いは色んなところで見てて強いって思ってたのに、それよりすげえやつがここにたくさんいるのか」
マルティナ「これだと私も負けちゃうわね。体も元に戻ったら、また動かさないと」