それから一週間後、デルカダール城
訓練場
ラース「え?今日マーズが風邪ひいたのか。わかった、連絡ありがとう。だが、代わりに今日の見回り誰か変わってやってくれ。何か町に用事があるやつでもいいぞ」
バン「あ!!じゃあ師匠。俺がマーズの代わりに見回りに行きますよ。町に用事もあるんで丁度いいので」
ラース「おう、わかった。それじゃあいつもの時間にベグルと城門前で待っていてくれ」
その後、城門前
バン「あ!師匠!俺達はもう準備終わりました」
ベグル「おい、バン。まだ時間には早いんだから、ラース将軍を焦らせるなよ」
ラース「ハハハ!心遣いありがとな、ベグル。俺は構わないぞ。いつもより早いが、それなら向かおうか」
デルカダール城下町
三人で見回りをしていると、男性がラースに話しかけてきた
男性「あ!ラース様、今日は見回りですか?この前お喋りできてよかったです。俺、これからラース様行きつけの酒場に行くんですよ」
ラース「おお、そうなのか。あそこは酒のつまみも美味いからな。楽しみにしてるといいぞ。だが、あまり早い段階から飲み過ぎで暴れたりするなよ?大変なんだからな」
男性「俺はそこまで飲まないんで大丈夫です。つまみ楽しみにしてますね!それでは、お仕事頑張ってください」
ラース「おう、ありがとな」
ベグル「ラース将軍と来ると、いつもいろんな人に話しかけられるんですよね。皆、ラース将軍の事気に入ってるみたいですよね」
ラース「何でだろうな?俺、それなりに怖がる人とかいてもおかしくない体なんだがな」
バン「それはもう師匠が誰にでも優しく接するからですよ。明るいですし、基本的に温厚じゃないですか」
ラース「基本ってなんだよ。俺はそこまで優しく接してる人、いないんだがな。子ども達くらいだろ」
バン「いえ、気にしないでください(前、怒った時に俺殺されたからだけど)」
ベグル「まあ、町に王族の関係の人がよく来てる事なんて今までなかったんですよ。たまにグレイグ将軍が来る時も、いつも囲まれてましたからね」
バン「あれは凄かったよな。グレイグ将軍の慌ててる反応も面白かった。ただ、見回りだけですごい時間がかかってたのは困ったものだったけど」
その後
ラース「まあ、こんなもんだな。それじゃあ後は城に戻るだけだな。あ、バン。町に用事あったんだろ?行ってきていいぜ」
バン「あ、本当ですか?なら、師匠とベグルも来てくださいよ」
ラース「ん?行ってもいいのか?俺は構わないが、ベグルは用事はないか?」
ベグル「悪い、バン。俺、この後ロベルト達と少し練習するんだ。俺は先に戻ってます」
ラース「お、いい心がけだな。俺も向かえたら行こう。それじゃあな、ベグル。見回り、お疲れ様」
ベグル「はい。ありがとうございます」
バン「それじゃあ案内します。あっちのカフェに用事があって」
ラース「お前がカフェ?不思議な組み合わせだな」
カフェ
女性「いらっしゃいませ。あ!バンさん。また来てくださったんですね。あら?確かラース様ですよね。前も来てくださいましたね」
バン「よお、メグ。また顔出しにきたぜ。師匠の事知ってたのか?」
ラース「俺もここには何度か来た事あるからな。覚えられていたとは」
メグ「あ、はい。何となくですが覚えてました」
バン「怪我はあれからもう平気なのか?記憶はどうだ?何か思い出せそうか?」
ラース「(怪我?記憶?)」
メグ「怪我の方はもうなんとも無くなりました。記憶は.....まだあまり戻ってないですね。仕方ないですよね、戻る可能性は低いと言われましたから」
バン「そうか......。あ、師匠もブラックコーヒーでいいですか?」
ラース「ああ、俺も必ず頼んでるからな。二人いるからこのパウンドケーキもお願いしていいか?」
メグ「はい。ありがとうございます。それではお待ちください」
バン「........」
バンはメグを黙って見つめている
ラース「なるほどな。あれがお前の彼女さんか」
バン「え.....。俺、何も言ってないですよ?もしかして、会話だけでわかったんですか?」
ラース「当たり前だろ?それに、何よりもその顔だ。今自分がどんな顔してるかわかってねえだろ?大事なものを見る男の顔だぜ」
バン「ハハハ....。師匠はすげえや。はい、あのメグって人が、俺が前に話した彼女だった人です」
ラース「だった?」
バン「はい。前にお話しした時はまだ眠ってたんですけど、二週間ほど前に目を覚ましたんです。俺はすぐに向かったんです。でも......メグは怪我とショックの関係で、ここ数年間の記憶が飛んでるんです。だから、俺の事は覚えてなくて」
ラース「そうだったのか....。だが、今は覚えられてるんだな」
バン「俺はその時ショックだったんですけど、メグに「あなたを見ていると、何か不思議な感じがします。それに、私の事何か知ってるんですか?よかったら教えてください」と言われ、俺が様子をみていたんです」
ラース「だが、彼女では無くなっているという事か」
バン「そうなんです。.........俺、すっごくつらいですし、苦しいです。ただ、きっかけは全て俺です。俺のせいなんです。俺が弱いくせに、調子にのった罰なんですよ、これは。だから、俺はこうやって彼女を見守るだけでもう、いいんです。彼女に例え戻れなくても........」
メグ「あ、お待たせしました。ブラックコーヒー二つとパウンドケーキになります」
バン「....ありがとな、メグ」
ラース「..........」
ラースは黙ってバンを見ている
バン「師匠?」
ラース「ハァー。だらしねえ男になったもんだな、バン。いつの間にそんな弱気な男になってたんだ?俺は、お前をそんな風に育てた覚えはない。
そんな気持ちでいるなら、俺はもうお前に教える事は何も無い。これからは周りと同じ扱いに戻す」
バン「!?え!そんな!どうして!?俺、何かしましたか?」
ラース「あ?何でも聞かねえとわからねえのかよ?ふざけんじゃねえぞ。俺が育てた兵士達にこんなやつはいねえ。
お前がその程度だったのなら、お前はもうあの中にいなくて平気だ。兵士なんかやめちまえ」
ラースは冷たい顔で言い切った
バン「そ.....そんな.....師匠、どうして....ウッ!」
ドスン!
バンはラースに床に倒された
ラース「こんな弱っちい弟子なんか、俺にはいらねえ。二度と師匠と呼ぶんじゃねえぞ」
ラースはケーキとコーヒーをすぐに食べると、金を少し置き出ていった
バン「........師匠」
次の日、訓練場
訓練終了後
バン「あの.....ラース将軍....」
バンはラースにゆっくりと話しかけた
ラース「あ?まだお前ここにいたのかよ。やめていいって言っただろうが」
ラースはバンを一瞥しながら言った
兵士達「!?」
他の人達はラースの対応に驚いている
バン「......師匠は.....師匠は、俺がどれだけつらいか何もわからねえだろ!!俺だって!俺だって、あんな風になりたくなかったんだ!!でも、俺のせいだから.....俺があいつを傷つけたから。
俺が苦しめばいいんです!そうすれば、いつか.....きっと....。
そんな事もわからない師匠なんか、俺だって願い下げです!!俺、ここを辞めます!!!」
バンはラースに向かって怒鳴りながら宣言した
ロベルト「な!?バン!お前、何言ってんだよ!」
ラース「おお。こんな弱っちいやつなんか俺の育てた兵士にはいないからな。さっさと出て行け」
ダバン「ラース将軍!?」
バン「くっ........」ダッ!
バンは走り去っていった
ガザル「あ!バン!!待てよ!」
兵士数人も追いかける
ロベルト「ラース将軍、バンと何があったんですか?」
ラース「バン?誰だ、そいつ。知らねえ名だ。ほら、今日の訓練は終わったぞ。解散するなり、残るなりしろよ。悪いが、俺は今日もうここに来れねえからな」
次の日、バンの姿は城からいなくなっていた