朝食時
マルティナ「ええ!?バンがいなくなった!?」
グレイグ「そうなんです、姫様。兵士から聞いた話だと、昨夜のうちにいなくなったそうです。ラース、何か知らないのか?」
ラース「......俺は弟子のバンなら知っているが、この城にいるバンの事は何も知らねえ」
ラースは目を合わせず淡々と答えた
デルカダール王「何かあったのか、ラースよ。兵士達が皆戸惑っているぞ」
ラース「弱いやつが嫌な事から逃げ出しただけです。俺はそんなやつを止める気などありません。兵士達の混乱は鎮めておきます」
マルティナ「.....ラース」
マルティナはラースを心配そうに見つめている
訓練場
ラース「よし、全員揃ってるな。訓練始めるぞ」
ギバ「待ってくださいよ、ラース将軍。バンがいなくなったんですよ?」
ラース「俺には関係ないな」
ロベルト「バンから少し聞きました。俺も、ラース将軍と同意見です。あいつが、あんなに情けないやつだとは思いませんでした」
ラース「そうか。お前らは嫌な事があっても、すぐに諦めたりするんじゃねえぞ。逃げたって何も変わらないんだからな。それじゃあ、ペアになれ」
訓練終了後、マルティナとラースの部屋
ラースは部屋の中にある机からあるものを探している
ラース「ええっと、確かここに.....。あった。これだな」
しばらくして、カフェ
カラン
メグ「いらっしゃいませ。あ、ラース様。昨日はどうされたんですか?もしかして、美味しくありませんでしたかね?」
ラース「いや、何でもないんだ。ケーキは美味しかったぞ。昨日はすまなかったな。お詫びにこのチケットをやるよ。よかったら、誰か誘って行ってみてくれ」
メグ「まあ、私にですか?しかもこれ、シルビアさんのサーカスのチケット!あれ?.....私、前にも誰かに誘われたような....」
ラース「どうした?大丈夫か?」
メグ「いえ、気にしないでください。こんな高価なもの、もらってもいいんですか?」
ラース「構わないぜ。ただ、俺があげたとかは城の周りの人に言わないでくれ。変な噂立てられても困るからな。それに、俺はシルビアとは友達でな。俺の事を言えば直接話せると思うぜ。それじゃあな」
メグ「あ、ありがとうございます!ラース様」
その頃、バンは町の隅でうずくまっていた
バン「どうしよう.....。俺、師匠に.....。いや、師匠だってなんで突然....。今日もカフェ行くか」
カフェ
カラン
メグ「いらっしゃいませ。あ、バンさん。丁度よかったです」
バン「どうした?メグ。俺に何か用事か?」
メグ「実は私、シルビアさんのサーカスのチケットを手に入れまして。場所はソルティコみたいです。よかったら、今度一緒に行きませんか?」
メグは笑顔でチケットをバンに見せる
バン「!?(前と...同じ....ソルティコ)」
メグ「あれ?バンさん?どうかしましたか?」
バン「あ、ああ、平気だ。いいな、俺も行きたい。一緒に行こうぜ」
メグ「わぁ〜、嬉しいです。私、このサーカスの日なら空いてます。バンさんはどうですか?」
バン「俺もその日は大丈夫だぜ。それじゃあその日にしよう」
メグ「楽しみにしてますね!」
バン「ああ(こんな.....偶然が)」
一週間後
バンは見回りに来る兵士達から隠れるように生活していた
バン「(城の皆に会いづらい。コソコソして、俺何やってんだろ)」
カフェ
メグ「あ!バンさん。お待たせしました。それではソルティコに行きましょう」
バン「ああ、行こうか」
ソルティアナ海岸
砂浜に到着すると、メグが頭を抱え始めた
メグ「うっ.....。頭が....あれ?私....前にもここに....」
バン「メグ!大丈夫か!?痛むか?」
メグ「あ、ああ...何か思い出せそう....」
バン「無理しなくていい。海岸で少し休むぞ」
バンはメグを支えながら歩いていく
しばらくして
メグ「ありがとうございます、バンさん。少し思い出しました。私、一年ほど前、ここに誰かと来た記憶があります。男の方だったような気がするんですが....。まだ、ぼんやりとしか思い出せないですね」
バン「......。そうか、ゆっくりでいいんだ。思い出していけばいい」
その時
ザバァ!
ギィィィ!ギョギョギョギョ!
海から魔物の群れがあらわれた
メグ「キャア!魔物!?海から来るなんて!」
バン「メグ!!俺の後ろに下がっていてくれ。俺が倒してみせる!」
メグ「バンさん!!あ.....ああ.....。うううぅぅ!」
メグはまた頭を抱え始めた
バン「メグ!!?どうした!?」
魔物「バギクロス!」
魔物はメグの周りに暴風を発生させた
メグ「キャアアアー!」
メグは竜巻に飛ばされそうになっている
バン「あ!しまった!(俺は.....また繰り返すのか...?同じ過ちを....。そんな事、嫌だ!絶対に!!)」
バンは自ら竜巻の中に入った
バン「メグーー!!」パシッ!
飛ばされそうなメグをバンが掴み、抱きしめる
バン「大丈夫だ。メグは俺が守ってみせる。もう、君を二度と傷つけないから!」
バンは竜巻から離れた
メグ「バンさん....ありがとう」
バン「メグ、離れてるんだ。俺は、こんなやつらに負けない!しんくうげり!」
魔物「ギィィー...」ジュワー
メグ「バン....」メグは気絶した
バン「てめえら。絶対に許さないからな!!」
その後、ソルティコの宿
メグ「ん.....。ここは....?」
バン「メグ!!よかった、目を覚ましたな。覚えてるか?」
メグ「.........」
メグは少しボーッとしている
バン「メグ?」
メグ「そうだわ。全部....思い出した。私は、バンと一緒にここに来て、あの時も魔物に襲われた。バンが戦ってくれたけど、私が鈍臭いせいで、私がやられたんだった」
バン「メグ!!記憶が....」
メグ「とっても怖かった....痛かった....。でも、最後はバンが私を抱きしめて「大丈夫だ」と言ってくれてた。私、それにすっごく安心したんだったわ」
バン「......」
メグ「えへへ、私またバンに助けて貰っちゃった。しかも、今度はバンもすっごく強かった。いつのまにかそんなに強くなってたんだね。流石、お城の兵士さんだね」
メグは笑っている
バン「......すまなかった!メグ!!俺が....あの時、弱かったばかりに....お前に苦しい思いも、痛い思いも、怖い思いもさせた!!」
バンはメグに思いっきり頭を下げた
メグ「え!?えええ!?そ、そんな謝らないでよ、バン!私だって、逃げるのが遅くてあなたにたくさん迷惑をかけた。バンは悪くないよ」
バン「あの時の俺はすげえ馬鹿だったんだ。だが、もうそんな俺はいねえ!!俺は、あの日からずっと強くなった!!」
メグ「たしかにバンは強くなってたわ。それに、思い出したの。私があなたの恋人だった事を」
バン「うっ....ううっ....。俺.....メグの記憶が無くなった時......前みたいな恋人の関係は諦めたんだ。俺が.....弱いから、こうなったんだと。
こうなったのは俺のせい。せめてもの償いとして、メグの記憶が戻るまで見守っていようと決めていた。
でも、俺は.....逃げてたんだな。記憶が戻ってほしいと思いながら、戻った時の事が怖くて、戻す方法を探そうともしなかった。俺らしくもなく弱気になって、勝手にいろいろ決めつけて、現実から逃げてたんだ。そんな事したって、何も変わらないのに。
......そっか。だから、師匠もあんな事を....」
メグ「私は記憶が無くても、あなたをどこかで覚えてた。だけど別の人な感じがしたのは、多分違いがわかってたんじゃないかな。これはバンじゃないのかもって」
バン「俺、やっぱり馬鹿だった。何もわかっちゃいなかった。師匠の事も、メグの事も。何より、俺自身を。
俺、師匠と約束したんだった。お前を守るためなら、強くなって、どんなにつらい事でもついていくって。
この約束すら守れてない。そりゃあ師匠も怒るし、呆れるよな。ハハ....」
バンはガックリと肩を落とし、自分に呆れている
メグ「バンはその師匠さんと喧嘩したの?」
バン「ああ。俺が何もわかってなかったのに、勝手に怒鳴って城を出てきたんだ。本当、取り返しのつかない事をした」
メグ「......それ、本当に取り返しのつかない事?」
バン「え?」
バンはメグを見る
メグ「私、よく知らないけど、この数年の間バンはその師匠さんにたくさん教わっていたんでしょ?師匠さんもきっと、本当に見捨ててないと思う。だって、バンはあんなに強くなってた。
そこまでしてくれた師匠さんなら、あなたを信頼している人だと思うの。そんな人が簡単に見捨てたりはしないと思うわ。
酷い言葉を掛けられたかもしれないけど、もしかしたら心のどこかでは戻ってきてくれる事を待ってるかもしれないよ?」
バン「でも.....」
メグ「もう!何弱気になってるの!喧嘩した時は、まず謝るの。バンは今、自分の悪い所をわかってる。相手がどう感じたかもわかってる。それを相手に伝えるの。
伝えなきゃ何も伝わらないし、始まりもしないわ。何もしないよりも、してみて失敗した方がいいわよ。それに、前のバンはそうやってきたじゃない。私は知ってるわよ」
バン「メグ.....。ハハ、そうだったな。悪い、どうやらまた弱くなっていたみたいだ。情けなくてごめんな?俺、決めた。明日、城に戻って師匠と話してくる」
メグ「そうよ!それでこそバンだわ」
バン「ありがとな、メグ。俺に勇気を、励ましをくれて。やっぱりメグは最高だな!
俺は、ずっとお前に言いたかった事があるんだ。怪我で記憶が無くなったから言う機会は無くなったが、今ならお前に誓える!」
メグ「え.....?バン?」
バン「俺は、もう二度と、お前に痛い思いなんかさせねえ。怖い思いもさせねえ。俺が全部守ってやる。そのために強くなった!お前の側で守ってやれるように」
バンはメグを抱きしめる
メグ「......バン」
バン「俺とずっと一緒に未来を歩いてください」
メグ「うん.....。私も、バンがいるなら......何も怖くないよ」
バン「........いいのか....?俺は、お前を守れなかった。記憶まで失うほどの怪我をおわせた。そんな俺を.......許してくれるのか?」
メグ「だって、記憶が無い時も、記憶を取り戻して目を覚ました時もどっちにもバンがいた。私の事、見てて守ってくれたんだよね?だから、許すも何もないよ。ありがとう、バン。私、幸せ者だよ」
バン「メグ.....。俺も今とっても幸せだ」
しばらく二人で抱きしめ合っていた
メグ「あ.....。今って何時かしら?」
バン「ん?今は夜になって結構経つがどうした?」
メグ「私達、ここにサーカス見に来たんだったわ」
バン「あ......。忘れてた。ま、まあメグが記憶も戻ったし、俺もたくさん気づいた事がある。サーカスは残念だったけど、代わりの大きなものは得られたじゃないか」
メグ「......そうね。また今度にしましょう。これをくれたラース様には悪いけど」
バン「え!!?師匠がこのチケットくれたの!?」
メグ「あ.....言ってなかったわね。そうなの。ラース様が先週、急にこのチケットを二人分くれたの。誰かと行ってきなって。というより、師匠ってラース様の事だったの!?」
バン「.......師匠、もしかして」
メグ「ふふっ、どうやらお見通しみたいよ?」
バン「流石すぎて言葉が出ないよ。そっか....。最初から、師匠は全部わかって....」
メグ「仲直りできるといいわね。どうやら、心配はあまりしなくてもよさそうだけど」
バン「ああ、ただメグ。俺、多分しばらくは会えなくなる」
メグ「え?どうして?お仕事忙しくなるの?」
バン「いや.....。地獄を見るから....」
メグ「??よくわからないけど、頑張ってね」