その後
マルティナ「マヤちゃん、その服とっても素敵よ!マヤちゃんの髪色と、とっても合ってるわ。リボンも、こっちの黄色の髪飾りに変えてみましょう。きっといいアクセントになるわ」
マヤ「こんな服、俺いいの?」
デルカダール王「気にするな、マヤ殿。水色はやはりとても似合っておるぞ。さらにかわいらしくなったではないか」
マヤ「いしし....。何か照れるな。俺、服とか最近興味あるんだけどさ、周りの女の子達って俺なんかより、すっごい可愛いじゃん。
俺、綺麗になる方法わかんなくてさ。今まで生き残るだけで必死だったから。この髪型もリボンも兄貴がくれたやつなんだ。ずっと大切にしてる」
マルティナ「マヤちゃん...」
マヤ「俺.....こんな言葉遣いだし...性格だって女らしくない。だから、服はもう何でもいいかなって、考え直そうと思ってるんだ。俺、綺麗になんてなれないや。普通の女の子には、なれないんだ」
マヤは失笑している
デルカダール王「......マヤ殿。お主が求める、普通の女の子とは何なのだ?」
マヤ「え?そんなの周りにたくさんいるような、俺くらいの年代の女の子達だよ。自分の事を私って言って、友達もたくさんいて、お化粧とか可愛らしい服や靴、アクセサリーをつけてるような....そんな子。俺とは.....真逆の存在だよ」
デルカダール王「それはお主と何処が違うのだ?」
マヤ「え?」
マルティナ「ふふ、マヤちゃん。鏡でまだ見せてなかったわね。ほら、見て。あなたは今こんなに可愛らしくて、綺麗なのよ」
マヤに姿見を見せた
マヤ「あ.....。これが....俺?髪型も違う、服もアクセサリーもついてる。だ、駄目だよ、姉ちゃん、王様!俺、こんなの着れない。俺なんかが着たらいけないやつだよ!」
マヤは頭のリボンを取ろうとした
デルカダール王「気に入ってくれなかったかの?」
マヤ「あ.....。ううん、とっても綺麗だった。俺じゃないみたいだった。でも、こうやって着飾って誤魔化したつもりでも、俺は俺なんだ。
男勝りで、ガサツで、意地っ張りで、まともな教育なんてなってない、女の子らしさの欠片も無い俺なんだ。俺は....こんなの着る資格はないんだよ」
マルティナ「マヤちゃん、あなたが生まれてから、今までどんな生活をしてきたのか、私達勇者の仲間達は知っているわ。
とてもつらかったでしょう。苦しかったでしょう。痛かったでしょう。寒かったでしょう。私には、とても想像もできない事だったわ。でも...」
マヤ「何だよ.....。全部....知ってたのかよ。だから、俺に優しくしてくれたのか?.....そんなのいらねえんだよ!同情なんかいらねえんだよ!
どうせ、心の中では馬鹿にしてたんだろ?可愛くもない女だって!そんな事くらい自分でもわかって...」パチン!
マヤ「ウッ!」
マルティナはマヤの頬を叩いた
マルティナ「ぐすっ....ううっ....。どうして、そんな事言うのよ。確かに私やラース達は、あなた達兄妹の過酷な生活を知っていた。どれだけ悲惨かも知っていた。
でも!決してあなた達を馬鹿になんてしてないわ!寧ろ、あの生活の中で必死に足掻いて、生きたあなた達を、私達は尊敬しているの!!
カミュにも私は尊敬してる!あの生活の中、あなたを守りながら空腹を、寒さを凌いだ。あなたが黄金になってからの五年の間も、カミュは必死に生きた。たとえどんな事をしようとも、あなたを救って見せた!
カミュは立派よ。もちろん、それまでを生きたマヤちゃん。あなたも立派なの。そんな風に考えないで。例え今までがどれだけ苦しくても、不幸でも、今は幸せになっていいのよ。
資格なんて、そんなの存在しないわ。マヤちゃん、あなたはどれだけ綺麗になってもいいの。あなたも普通の女の子よ。
優しくて、笑顔が素敵で、小さな命を大切に感じることのできる女の子。そんな自分を認めてあげて。あなたは、とっても可愛いわ」
マルティナはマヤを抱きしめた
マヤ「......ううっ....ううあああ!!ごべん、姉ちゃん。ううう」
マルティナ「いいのよ、たくさん泣いて。そしたらまたあの笑顔を見せてちょうだい」
しばらくマヤは泣き続けた
マヤ「ぐすっ....。ごめん、うるさくした。でも、なんかスッキリした。俺、親とか知らないし、家族は兄貴しかいなかった。さっきも今も胸が凄くあったかくなるんだ。これって本とかでしか知らなかったけど、もしかして俺、愛ってやつをもらったのかな?」
マルティナ「そうよ。これは私からの愛。愛は、あなたを大切に思っている人があなたにくれる最高の気持ちなの。この愛と言う気持ちをくれているのは、私だけじゃない。
ラースも、イレブンも、勇者の仲間達全員、あなたに愛をあげてるわ。そして、それを一番あなたにくれている人はあなたのお兄さんよ」
マヤ「兄貴が....俺に?」
マルティナ「ええ。カミュはあなたをいつも心配しているのよ。あなたが無事でいるか、元気でいるかってね。彼は口には出さないけど、表情は隠せない。
いつもマヤちゃんを見る顔は、旅の頃では見る事なんてなかった優しい顔をしているのよ。きっと、世界で一番あなたをかわいいと思っているのはカミュよ。そんな素敵なお兄さんを大切にしてあげてね」
マヤ「おにい.....ちゃん...」
デルカダール王「マヤ殿よ、わしもそなたを大切に思っている。そして、わしにできる愛の形を今からそなたに聞こう」
マヤ「王様も?」
デルカダール王「先程家族はカミュ殿しかおらんと言ったな。ならば、わしの娘にならんか?もちろんカミュ殿も息子として入れよう」
マヤ「俺達が....王様の....子どもに?でも、姉ちゃんがいるよ?」
マルティナ「私はもちろんお父様の娘よ。でも、あなただって娘になっていいのよ。私の妹になりましょう」
マヤ「.......ありがとう、王様、姉ちゃん。でも俺、すぐに返事できないや。考えさせて」
デルカダール王「ああ、ぜひ検討してみてくれ」
マルティナ「さあ!話はここら辺にして、とりあえず他の服も着てみましょう。髪型も少し変えればいろんな服が似合うわ。マヤちゃん、いいかしら?」
マヤ「うん!お願い、姉ちゃん!」
その夜
マヤ「........俺が、家族に?」
マルティナ「スゥ....スゥ」
マヤはベッドから起き、そっと部屋から出ていった
バルコニー
そっとバルコニーに入るとラースとグレイグがお酒を飲んでいた
マヤ「........あ、兄ちゃん、おっちゃん」
ラース「ん?マヤちゃんじゃないか」
グレイグ「こんな時間にどうしたのだ?もう遅いぞ」
マヤ「何だか眠れなくてさ」
ラース「......何かあったみたいだな。俺達でよければ相談にのるぜ?」
マヤは先程の事を全て話した
グレイグ「なるほどな。マヤちゃんはそれを気にしていたのか。そして、姫様の言っていた通り、俺もマヤちゃんに愛というものを贈っているぞ」
ラース「そうだぞ、マヤちゃん。愛っていうのは、多くの人から貰える事なんて少ないんだ。そして、マヤちゃんはたくさんの人に愛されている。それは絶対に揺るぎのない事実だ。マヤちゃんはかわいいんだ。もっと自信を持っていいんだぞ」
マヤ「俺....かわいいのか?」
グレイグ「ああ、俺にも娘ができたら似たような気持ちになるのかもしれないな」
マヤ「でも俺、愛なんてわかんないよ」
ラース「俺も、これが愛だって説明するのは難しいな。ただ俺がマルティナに向けている思いが、愛だ。これは自信がある」
マヤ「それは、何となくわかる。俺もお似合いだと思うよ」
ラース「ハハ、ありがとな。そして、もう一つ言える事がある。それは、マヤちゃん。君が俺達の子どもに向けている思い。それも愛だ」
マヤ「俺が....愛を向けている?」
グレイグ「先程、マヤちゃんはマルスやルナの事を弟や妹のように思っていると言ったな。それは家族に向ける感情だ。家族はお互いを愛する気持ちがあるんだ」
マヤ「家族...。俺、血も繋がってないのに、王様の娘になってもいいのかな?」
ラース「フフ、実は俺とグレイグもな、王様の息子なんだぜ?」
マヤ「え!?兄ちゃんとおっちゃんって兄弟だったの!?」
ラース「まさか。こんな頭固い兄貴は、俺は嫌だぜ」
グレイグ「おい」
ラース「俺達は王の息子だ。血は繋がってないけどな。王様は家族になってほしいくらい、俺達を愛してくれているのさ」
グレイグ「俺はマヤちゃんより小さい時から、王に息子同然として扱われてきた。だから、王にとって家族とは愛する気持ちがあれば、血など関係ないのだ」
ラース「マヤちゃんは、俺達の息子達に愛の感情を向けてくれている。とても感謝しなくてはならない事だ。俺は、マヤちゃんが家族になってくれたら嬉しいぜ」
グレイグ「俺もそうだ。王がマヤちゃんを愛するように、俺もマヤちゃんを愛している。もちろん、兄のカミュの方もな」
マヤ「....いしし。何だか今日は胸がよく熱くなるんだ。こんな不思議な気分は俺、初めてだよ。もしかして、これも愛の力なのかな?」
ラース「そうさ。そして、家族の力でもある。相手の思いを感謝して、相手に何かしてあげたい。そんな思いが互いに連鎖して、一つの家族となるんだ。誰彼構わずにな」
マヤ「そっか.....。俺、決めたよ。王様の娘になる」
ラース「ああ、おいで。マヤちゃん」
グレイグ「ううっ!ぐっ.....。マヤちゃん。少し大人になれたな。おめでとう」
マヤ「おっちゃん、泣くなよな、全く」
ラース「明日の朝、マルティナと王様に連絡してやれ。きっと喜ぶさ」
マヤ「うん。ありがとう、兄ちゃん、おっちゃん」
グレイグ「ぐすっ、気にするな、マヤちゃん。もう遅い。ゆっくり休みなさい」
マヤ「そうだね。何だか眠れそうになってきた。おやすみ、兄ちゃん、おっちゃん」
ラース「おやすみ、マヤちゃん」