その夜、バルコニー
ラース「......」
ブレイブ「クゥーン?」
ラースは椅子に座り、遠くを見つめながらブレイブを撫でていた
ガチャ
デルカダール王「ここにおったか、ラース」
デルカダール王がやってきた
ラース「王様、こんな所まで来てくれたのですか。俺に用事ですか?」
デルカダール王「ああ。お主と少し話がしたくてな」
ラース「ここは冷えます。中に入りましょう」
デルカダール王「いや、ここで構わん。わしも冷たい夜風に当たりたいのじゃ」
ラース「わかりました。ブレイブ、王様のそばで少しでも暖めてやってくれ」
ブレイブ「ガウ」
デルカダール王「すまなかった、ラース。お主の事はグレイグとマルティナから聞いた。幼少期の事、これまでの事など全てな」
ラース「やはりそうでしたか。俺は別に構いませんよ。あまり、俺の口からは言いたくない事ですし」
デルカダール王「マルティナが心配しておったぞ。ラースが自らの手で父親を殺した事をな。グレイグもそれを聞いて心配しておった」
ラース「.......」
デルカダール王「わしはお主の人生はつらい事が多いように感じた。報われぬ事や苦しい事が、まだ若いのに余りにも多すぎる」
ラース「ハハハ!王様、同情なんかいりませんよ。そんなもの、何の役にも立たないって思います。それに間違ってますよ、王様。いつ、俺が自分の人生はつらい事ばかりだと言いましたか?
俺の過去の傷や苦しみは確かにつらいです。俺を飲み込んでしまう時もありました。でも、俺はまだ生きています。そして、誰かに必要とされています。それってとっても幸せだと思いませんか?こんな幸せ、普通に生きてたら味わえませんよ。
俺は幸せ者です。どんなに過去が苦しくても、今この時はそれとは比べ物にならないほどの幸せに包まれています。俺はこれからもこの幸せを噛み締めていきますよ」
デルカダール王「ハッハッハッハ!これは恐れ入った。流石は勇者と共に世界を救った一人なだけある。何と逞しく、光り輝いておることか。わしの発言は忘れてくれ。だが、お願いをしてもいいかな?ラースよ」
ラース「はい。何でしょうか?」
デルカダール王「わしはお主に、本当の父親のあるべき姿を教えてやりたいのだ。お主の父、ジルゴ殿のような姿では無い父親をな」
ラース「本当の父親....」
デルカダール王「わしはお主を息子として迎え入れた。それならば、わしはお主に一人の父親として教えられる事がある。
子を想い、慈しむ心じゃ。よく頑張っておるな、ラースよ」
ラース「王様....」
デルカダール王はラースを抱きしめた
デルカダール王「お主は知らないであろう本来の親とは、こうして自分の息子を抱きしめたくなるものじゃ。例えどんなに大きくなってもな」
ラース「俺....父親にこんな事してもらったのは初めてです。じいちゃんとは....また違う温かさがありますね」
デルカダール王「わしがお主に教えられる事など数少ない。だが、これだけは教えておかねばならぬ。
親の愛を知らぬ子など、あってはならんのだからな」
ラース「王様....。少しだけ.....このままでもいいですか?」
数分間、ラースは抱きしめられていた
ラース「ありがとうございました、王様。父親はいいものですね。王様のような父親は、俺にとって初めてですよ」
デルカダール王「少しでもお主に父親のあるべき姿を教えられたなら、わしはそれでいい。わしの姿を真似しなくてもよいが、子を想い、愛する事だけは決して忘れるでないぞ」
ラース「はい。俺の中にあのジルゴのような血が入っているのかと思うと、俺ももし道を間違えたらああなってしまうのかと思って怖かったんです」
デルカダール王「そんな事あるまい。わしはこれまでで確信しておるぞ。お主は決して命を無碍にする事などしない、とな。お主もそう思っておるだろう?」
ラース「そうですね。俺はああはなりません。絶対に。王様、励ましてくれてありがとうございました。そして、王様のような立派な父親を持った事。とても誇らしいです。どうか、俺の父親になってくださいませんか」
デルカダール王「何を言っておる、ラースよ。前からずっと、わしはお主の父親じゃ」
ラース「へへ、そうでしたね。ですが、これからはデルカダール王の息子、ラースと名乗ります。よろしいですか?」
デルカダール王「ハッハッハ!それはわしも嬉しい限りじゃ。ぜひ周りに自慢してやるんじゃ。自分はわしの自慢の息子の一人じゃとな」
ラース「はい!」
バルコニー前
デルカダール王とラースの姿をグレイグとマルティナはそっと見ていた
グレイグ「ズズッ.....ううっ、王よ、何と心の広い.....」
マルティナ「グレイグ、気持ちはわかるけど泣きすぎよ。でも、私も耐えるだけで必死ね。ラース、お父さんの優しさがわかってよかったわね」