それから半年後
デルカダール城 玉座の間
リーズレットがデルカダール城にやってきていた
リーズレット「急に訪れてしまい申し訳ございません、デルカダール王様、マルティナ王女様。私からお願いがあってこちらに伺いました」
デルカダール王「気にせんでよい。わし達はいつでも歓迎するぞ」
マルティナ「そうよ、リーズレット。それにあまり堅苦しくしなくても大丈夫。ここには今は私達しかいないんだから」
リーズレット「じゃあ話し方は戻すわね。シャールから失礼の無いようにってずっと言われてるから真面目な話し方になっちゃうけど、私はこの話し方の方が楽でいいのよね」
デルカダール王「お主の話しやすい口調で大丈夫だ。無理に敬語を使う必要はないからな」
ラース「俺達にはそっちの方が馴染みもある。それで、俺達にお願いって何だ?」
リーズレット「実は、クレイモランでの研究の一環である薬を開発したの。それがこれ。これを魔物に飲ませると、私のような元から喋れる魔物じゃなくても一時的に人間と会話できるようになるの」
リーズレットは小さな瓶を取り出した
グレイグ「何だと!?それは凄いな。しかし、どうしてそんなものを?」
リーズレット「少し前の密猟者の事件で、怪我をした魔物を治療しようとする時に会話ができないと色々困るという事がこっちでも多々あったの。
それと、シャールが望む魔物と人間との共存。その希望ともなれるかもしれないのよ。それで一度試作品を作ってみたの」
デルカダール王「ふむ。確かに魔物と喋れれば魔物との共存も夢ではない。それでは試しにブレイブやコロで試してみようという事じゃな?」
リーズレット「話が早くて助かるわ。でも、最終判断はブレイブ達よ。ブレイブ、少しだけ協力してくれないかしら?」
ブレイブ「ガウ、ガウガウ」フルフル
マルティナ「あら、コロの方を見て首を振ってるわね。コロは駄目という事かしら」
ラース「自分はいいのか?ブレイブ」
ブレイブ「ガウ」コク
リーズレット「ふふ、ありがとう。それじゃあ少し飲んでみて」
ブレイブ「ペロペロ」
リーズレット「どうかしら?」
ブレイブ「何も味がしないな。おお!!?」
全員「おお!!」
リーズレット「よかったわ。一段階は成功ね」
ブレイブ「私の言葉が伝わるのですね!氷の魔女よ、感謝する!」
ラース「お、おお、ブレイブってこんな話し方してたのか」
ブレイブ「ラース様!私はずっとあなたとお話ししたいと思っていたのです!」
ブレイブはラースに駆け寄ってきた
ラース「ハハハ!ブレイブ、俺に様なんて付けてたのかよ。別にいらないぞ?」
ブレイブ「いえ!我が主を敬うためです!私達の群れを救っていただき大変感謝しております!」
マルティナ「あら、ラースに懐いてるんじゃなくて完全に主従関係になっていたのね」
デルカダール王「これはいいのう。この効果はいつまで続くのだ?」
リーズレット「まだ試作段階なので長くは持ちません。この瓶一本を使って二日ですね。もしよければ、経過を見て報告してもらえると今後の研究に助かるのですが」
グレイグ「ああ、任せてくれ。俺達もこれはとてもいい提案だと思う。ぜひ世の中に普及させてみよう」
ブレイブ「氷の魔女よ。このような機会を与えてくれた事、大変感謝する。しかし、あまり多用するのは控えて欲しい」
リーズレット「あら。どうしてかしら?」
ブレイブ「確かに俺達もこれまで魔物と人間では会話が出来ず、苦しい思いをした。ラース様やマルス様に出会う前までは、あの怪我や病気だらけの群れに生きる希望などなかった。
だが、私達は話せずとも行動する事で人間と会話ができる。私達がやりたい事を行動に表せば、俺とラース様のように繋がる事ができる。この行動する事に、意味があるのだ。
話せれば確かに私達にとっても楽だ。だが、それは私達にとって大切な事を忘れさせてしまう。何かのために行動する。これこそが、私達魔物にとって生きる理由となっているのだ。だからあまりそれを周りの魔物に使わないでほしい。せめて、緊急時などの時限定で頼む」
ラース「ブレイブ.....」
リーズレット「なるほどね。ふふ、賢い子だとは思ってたけどこんな事を考えてたのね。ありがとう。あなたの意見、とても参考になったわ。わかったわ、この薬は今後控える事を誓うわ。どうしても、という時にしか使わないわ」
ブレイブ「この思いを伝えられたのはその薬のおかげだ。便利な事だけは認める。ありがとう」
デルカダール王「ブレイブよ、お主は魔物達の目線で考えてくれておったのだな。私達では考えられぬ目線だ。とてもいい意見が聞けそうじゃな」
ブレイブ「王様、ありがとうございます。私なんかの意見であればどうか聞いてくださるとありがたいです」
リーズレット「それじゃあ私は帰るわね。二日経てば瓶の中身も全部無くなるからよかったら使って。それじゃあね」
ラース「ありがとな、リーズレット。なあ、ブレイブ。俺達の事はどう思ってるんだ?」
ブレイブ「私の主はラース様です。我が子も同じく、ずっとあなたについて行くと誓いました。主が決めた事ならば、私達にとってそれは絶対です。
そしてラース様が大事にされている方は、私達にとっても大事にしなければいけません。デルカダール王様、マルティナ王女様、マルス、ルナ、勇者様方に兵士の方々。他にもいるようですが、私が手を出せるのはこれくらいです。
私が出来ることは何でも致します。いつでもご指示をお願いします」
ラース「ハ、ハハハ。ここまで来ると何だか不思議な気分だな」
ラースは少し困ったような顔をしている
マルティナ「いいじゃない。とっても従順で。この子達はラースに感謝してるんだから」
デルカダール王「ブレイブよ、お主は半年前の魔物の密猟の事をどう思っておった」
ブレイブ「私は密猟者どもに群れごと壊滅させられそうになった身です。絶対にあいつらを許しはしません。今はもう話も聞かないので安心してますが、あのアジトでの光景は忘れられません。
人間達には気づかなかったかもしれませんが、あの場所にはたくさんの怨恨がうごめいていました。魔物や人間の恨みの集合場所となっていたのです。
情けない事に私は恐怖で動けなくなってしまい、グレイグ様が声をかけてくださらなければ私はおかしくなっていたでしょう。グレイグ様、ありがとうございました」
ブレイブはグレイグに頭を下げた
グレイグ「いや、気にするな。それにあそこはそんな場所だったか。まあ、納得はいくがな」
デルカダール王「ふむ。そのアジトの光景とやらはわしは詳しい事はわからんが、グレイグ達からの話からしても相当狂気に満ちていたのだろう。相当つらい思いをさせたようだ。すまなかった」
ブレイブ「いえ!お気になさらないでください!私が強くなればいいだけの話です!」
デルカダール王「ブレイブよ、恐怖とはどれだけ強くなろうと訪れるのだ。それを乗り越えて、わし達は強くなるのだ。強くなれば恐怖を乗り越える、というわけでは無いのだぞ」
ブレイブ「.....なるほど。大変心に響くお言葉でした。ありがとうございます」
ラース「しかし、何だかイメージが崩れていくな。もっとこう、わーいとか抽象的な言葉を話していると思っていたんだが」
ブレイブ「それは私達を馬鹿にしておられますか?ラース様」
ラース「ああああ!!違う!違うんだ、ブレイブ!俺の中でそう捉えていただけだ。これからは改めるぞ!」
ブレイブ「そういう話し方は我が子のような時のみです。普通の魔物は皆私のように人間と変わらず、普通に話していますよ」
マルティナ「そうなのね。それじゃあ二日間よろしくね、ブレイブ」
ブレイブ「はい。私もこの貴重な体験を楽しみますよ」