それから一週間後、デルカダール城
訓練場
ダバン「盾は構えるだけよりも、少し手首の力を抜いてもっと軽く動かせるようにした方がとっさな時にも反応しやすくなるぞ」
見習い達「はい!」
ロベルト「ダバンのやつ、張り切ってんな」
ギバ「あの姉ちゃんと結ばれたらしい。くっそ!羨ましいぜ!」
マーズ「それに比べて、あっちといったら」
別の場所ではベグルとガザルが模擬戦をしていた
ガザル「おい、ベグル!お前やる気あるのかよ!」
ベグル「.....悪かったな。少し、気が抜けてた」
ガザル「少し!?俺の攻撃を避けもしないで突っ込んでくるなんて、何考えてんだよ!」
ベグル「悪かったってば」
ギバ「ダーハルーネから戻ってきたらあれだぜ。また酷くなってるな」
マーズ「そんなにダバンが悔しいのか、あの美人さんとすれ違いになったのが相当きてるのか。はたまた、関係ない事か」
ロベルト「おい、バン。兵士長としてもこれ以上は流石に見過ごせないんじゃないか?」
バン「.....そうだよな。わかった。後で少し話してみる」
夕方 訓練場
ベグル「.......」
ベグルは一人で立っていた
バン「やっぱりここにいたな、ベグル」
ベグル「.......バンか。何だよ」
ベグルはバンを見ないで反応した
バン「その位置だよな。初めてお前と俺が喋った場所はよ」
ベグル「.....そうだったな。今も昔も、馬鹿なのは変わらねえな」
バン「どうしたんだよ、最近。おかしかったのがさらに酷くなってるぞ。まるで、初めて会ったあの時のベグルを見てるみてえだ」
ベグル「本当にそうだと言ったら?」
バン「は?何言ってんだよ、お前。ベグルはいつものベグルだろ」
ベグル「俺はここで甘い空気を吸いすぎたみたいだ。元はそんなつもりなかったのによ。だが、もう入れ替えてきた。悪いが、俺はお前達とはいれねえ。そろそろここを辞めさせてもらおうと思ってるんだ」
バン「何言ってんだよ、ベグル。勝手に話進めんなよな。辞めるのも俺が納得して、師匠が許してからだ」
ベグル「前のお前みたいに、突然辞めてもいいんだろ?」
ベグルはバンを見た
バン「......本気か?ベグル」
ベグル「この目が嘘に見えるか?」
バン「見えねえ。だが、何でだよ!何があったんだ!」
ベグル「お前らには関係ねえ事だ。さあ、この話は終わりだ」
ベグルは去っていこうとする
バッ!
バンはベグルの前に出た
ベグル「......何のつもりだ、バン。どけよ」
バン「どかねえ!お前から理由を聞いて納得するまで絶対にどかねえ!」
ベグル「どかねえ....だと?いつから俺のおもちゃは俺に楯突くようになったんだ?あぁ?」
バン「お、俺はお前のおもちゃじゃねえ!少し弄るくらいなら気にしねえが、今回はその話は無しだ!さあ!理由を話せ!どうしても言わねえんなら力ずくでも言わせて見せるぞ!」
ベグル「忘れたのか?初めてここでお前と戦った時の結果をよ。俺にボッコボコにされて地に這いつくばって動けなくなってただろうが。そんなお前が俺に敵うと思ってんのか?」
バン「それは昔の話だ!今は、俺だってベグルに負けねえくらい強くなった!戦うってんなら相手になるぞ!ベグル!」
バンは戦闘態勢に入った
ベグル「ハァ。まあ、お前はそうでもしねえと退かねえよな。なら、昔と同じようにしてやるよ!」
ベグルも大剣を向けた
バン「せいけんづき!」
バンはベグルに向かっていく
ベグル「渾身斬り!オノ無双!」
ベグルはバンに近寄らせない
バン「危ねえ!しんくうげり!」
ベグル「ソードガード」
ベグルは攻撃を防いだ
バン「なら、ばくれつきゃく!」
ベグル「全身全霊斬り!」
ベグルは攻撃を防ぎながら大剣で足ごと斬ろうとする
バン「マ、マジかよ!足、叩き切る気かよ!」
ベグル「隙を見せるなんて随分舐められたな。アイスブレード!」
ベグルの攻撃がバンに直撃する
バン「ガアアアッ!なっ!?し、真剣!?」
バンの体からは本当に血が出ている
ベグル「何だ、気付いてなかったのかよ。俺は本気だ」
バン「ぐっ....。何でこんな事を」
ベグル「お前は終わりか?なら、もっといかせてもらうぜ。渾身斬り!」
バンを狙って大剣が振り落とされる
バン「危ねえ!!おい!それはシャレにならねえ!真剣なんて聞いてねえぞ!」
バンは必死に避ける
ベグル「兵士たる者、常に戦えるようにしておくべきだろうが。なぎはらい!」
バン「くっ!ばくれつきゃく!」
ベグル「ふん!覚悟決めたか!オラ、来いよバン!ボッコボコどころかバッキバキにしてやるよ!」
バン「(どうしたんだよ、ベグル!さっきから一撃で俺を殺そうとしてやがる!俺が何かしたのか!?)」
その後
バン「ぐうっ....。ハァ、ハァ」
バンはあれから攻められず避けてばかりいた
何回か攻撃がかすったりして傷も増えている
ベグル「チッ!逃げてばっかりでつまらねえなあ!兵士長はそんなもんかよ!」
バン「(大剣や斧はリーチが違いすぎて攻めに回れねえ!武器は無いし、かくとう技じゃあ当たる前にこっちが危なくなる。どうしたもんか!師匠がかくとう技は大剣や斧の相手に使うなって言うのはこういう事か!)」
バン「ベグル!ダーハルーネで何があった!お前が、昔から何か抱えてんのは知ってんだよ!何かあるなら話してくれよ!力になるからよ!」
ベグル「言っただろうが。バンには関係ねえってな」
バン「ジェーンさんの事か!?」
ベグル「ジェーンさんか.....。俺には、あの人は眩しすぎる。強すぎる光は、人を拒むのさ。さあ、覚悟はいいな」
バンの前にベグルが立ちはだかる
バン「ぐっ!ベグル!お前、どうして兵士になったんだよ!誰かを守るためなんじゃないのか!?」
ベグル「........」
ベグルは一瞬動きを止めた
バン「(今だ!)しんくうげり!」
ベグル「ぐっ!」
ガシャン!
ベグルの手から大剣が落ちた
バン「ばくれつきゃく!」
ベグル「グハッ!」
ベグルは吹っ飛ばされる
ベグル「チッ!てめえ!」
バン「俺は、俺を馬鹿にしてきたやつらを見返すために兵士になった!ベグル!お前は何で兵士になったんだよ!」
ベグル「.....自分への戒めだよ。あの出来事を忘れないようにするためだ!」
バン「それが何で急に今になって出てきたんだ!」
ベグル「チッ!煩えやつだなぁ、本当によぉ!!お前が始まりなんだろうが!!」
バン「俺が!?」
ベグル「お前が一人になろうとしてる俺を引っ張り出してきたんだろうが!俺は一人で平気だった!それを、お前が馬鹿みてえに必死になって仲間に入れてきたんだろうが!」
バン「そ、そこの記憶は曖昧だけど、それと何の関係があるんだよ!」
ベグル「お前達といると、全て忘れそうになる!!あの人の事を、あの日の事も、全て!!お前達といると.......俺は、弱くなる」
ベグルはその場で動かなくなった
バン「ベグル.....」グイッ!
ベグルは近づいてきたバンを掴み、馬乗りになった
バン「お、重てえ....」
ベグル「お前が....あまりにも馬鹿で、眩しくて.....俺の罪すら許してくれそうな光が.....暖かくて......ここは居心地がよすぎるんだよ!!俺は、こんな所にいていいわけねえのに!皆が俺を呼んでくれる.....。その声に引っ張られて、忘れてたんだ。
俺が兵士になった理由を!兵士にならなければいけない事を!強くなって、あの人に見せてやらなきゃいけなかったのに!!お前のせいで!!!」
しばらくベグルはバンを殴り続ける
ベグルは涙を流していた
ベグル「もう.....俺と関わるな。お前達は、もっと暖かい所にいるんだ。俺は一人で平気だ」
バン「なに.....嘘ついてんだよ......ゲフッ....平気なやつは........涙流しながら.....そんな事言うわけねえだろ」
ベグル「それをやめろって言ってんだよ!!俺を止めるな!優しい言葉をかけるんじゃねえ!!」
バン「よく.....聞きやがれ、ベグル。.....師匠が....言ってた......兵士は.....誰かを守るだけじゃない。......己の信念を武器に変えて.....戦える者も兵士として....大事な事だって。お前の信念は.....何だ?」
ベグル「もう......喋るな」
ベグルはバンの首を締め上げた
バン「ガッ.......。それを.....見つけ.....必ず.....変われ」ガク
バンは気絶した
ベグル「...........馬鹿が」
泣きながらベグルは訓練場から出て行った
その夜、ベグルは城から去っていった