それから一月後、未来世界のデルカダール城
玉座の間
ラース「今日も報告は無し....か」
ベロニカ「ええ、ごめんね、ラース。そうそう現れないのはわかってたけど、もう一月が経つのね」
マルティナ「.....元の世界の皆が心配よね。何も言わずに来ちゃったんでしょ?」
ラース「ああ。心配しているはずだ。早く帰ってあげたいが、今はまだどうしようもできないな」
グレイグ「耐えるしかあるまい。互いにな」
ラース「そうだよな。報告ありがとう、ベロニカ。またよろしくな」
ベロニカ「いいのよ、気にしないで。私もラースと久しぶりに話せて嬉しいんだから」
ラース「そういえば、こっちのベロニカは元の姿に戻れないのか?」
ベロニカ「え!?そっちの私、元の姿に戻れるの?」
ラース「一時的にな。特殊な首飾りをつけて魔力を込めると戻れるんだ」
ベロニカ「ええー!いいなー!私も戻りたい!」
ラース「俺に言われても困るんだがな。だが、その姿でかなり時が経っただろ?もう慣れたんじゃないか?」
ベロニカ「そりゃあそうだけど、困る事はまだまだ多いんだから!少しでも戻りたいわ!私、その首飾り見つけるわ!」
ラース「お、おう。頑張れよな」
その後、訓練場
マルティナ「ハァ!テヤア!」
ラース「よっ!ハァ!」
マルティナ「やっぱり腕が上がってるわ。私じゃ敵わないじゃない。そっちの世界で大分強くなったのね」
ラース「まあ、邪神と戦うためにはかなり強くならないとだったからな。今となったらこの強さはあまり必要ないんだ。衰えも感じてきたしな」
グレイグ「おっさんみたいな事を言うようになったのだな」
ラース「俺はまだおっさんじゃねえ!」
バン「あ、ラース将軍!また指導お願いしてもいいですか?」
ラース「おお、バン!いいぜ、どんどん教えてやるよ」
グレイグ「やはり前の世界で皆と仲良くしていただけあって、馴染むのが速いですね」
マルティナ「元からよ。皆と仲良くしていってすぐに馴染んでいたの。性格や人柄も関係あるのかしら。いい人でしょう?ラースは」
グレイグ「.......はい。私をおもちゃにしてくるのを除けば」
マルティナ「ふふ、それも彼のいい所だから。本当に嫌な事はしてこないのよ。........でも、彼は私の知ってるラースより大人だわ」
グレイグ「そうですか。ですが、ラースも本来生きていれば、ああなっていたという事じゃないでしょうか」
マルティナ「そうね。多分そうなんだと思うわ。でも、いきなりその姿を見せられても、何だか違和感あるわ」
グレイグ「私には、深く言う事ができません。まだ、姫様ほどあの男を知らないのです」
マルティナ「ええ、ごめんなさい。わかっているわ。こんな事を思っているのは私だけなのも。私が、彼にわがままを言っている事も」
グレイグ「姫様、それはわがままではございません。当然の事です。愛する者が生きて目の前に現れたら、人は誰でもこうなります」
マルティナ「......ありがとう、グレイグ」
その夜、マルティナの部屋
ラース「なあ、どうしたんだ、マルティナ。少しボーッとしてるぞ。悩み事か?」
マルティナ「少しだけね。ラースは私の知るラースより、遠くなった気がして」
ラース「まあ、世界が違うとそれまでの自分とは変わっているのもあるかもな。年とったからかもしれないけどな」
マルティナ「それは私もそうよ。でも、私は今のラースとの思い出はほぼ無いわ」
ラース「.......それは間違ってるぜ、マルティナ。確かに思い出は無いかもしれないが、俺は俺だ。マルティナが知るラースに重ねていいんだ」
マルティナ「でも、今の私じゃああなたには」
ラースはマルティナの口を指で塞いだ
ラース「おっと。それ以上言うなよ。そんな言葉がほしいんじゃない。俺は、今のマルティナも大好きだ。マルティナは俺の事、嫌いか?」
マルティナ「そ、そんな事ないわ。私も好き。だって、ラースだもの。少し変わっていたってラースだわ」
ラース「そう。俺は俺。世界とかどうでもいいんだ。マルティナはマルティナだ。少し変わったくらいじゃ離れないし、嫌いにもならない。だから、俺と一緒に重ねてもいいんだぜ」
マルティナ「.........ふふ。ありがとう、ラース。そうね。少し難しく考え過ぎてたかしら」
ラース「そう。笑え、マルティナ。俺はその笑顔が一番好きなんだぜ」
マルティナ「ええ、そうだったわ。私、ラースにこれからもたくさん笑って生きる事を誓ったんだった。だって、私の笑顔はラースのお気に入りなんでしょ?」
ラース「お気に入りなんてもんじゃないさ。俺の宝物だ」
マルティナ「ええ、ありがとう。明日はまた少し旅行しましょう。私、ずっとラースと海に行きたかったの」
ラース「へへ、いいじゃねえか。たくさん遊ぼうぜ」
それからも報告は無く、時はどんどん過ぎ去っていった
ラースはそれでも待ち続けた。いつか、戻れる時が来ると。
それまではこの世界の皆と過ごして、自分が皆につけた心の傷を癒していく、と。
そして、ラースが未来に来てから二年の月日が流れた