ドラゴンクエストⅪ 魔法戦士の男、恋をする   作:サムハル

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幻の店

バン「お、おい。大丈夫か?生きてるか?」

 

 

 

 

ビル「ぐっ.....」

 

 

 

 

マドリー「ううっ.......」

 

 

 

 

ラース「なんとか息はあるか。グレイグ、回復できるか?」

 

 

 

 

グレイグ「構わないがいいのか?こいつらはさっきの仲間なのだぞ」

 

 

 

 

ラース「仲間割れしてたんだ。おそらく敵ではないと信じている。まあ、敵なら斬るまでだ」

 

 

 

 

グレイグ「わかった。ベホイム」

 

 

 

 

ビル「傷が.....ありがとうございます」

 

 

 

 

マドリー「ありがとうございます」

 

 

 

 

バン「さっきはなんで仲間割れしてたんだ?よかったらわけを聞かせ」

 

 

 

バタン!

 

 

 

扉が開かれて誰かが入ってきた

 

 

 

マヤ「ビルさん!マドリーさん!大丈夫!?」

 

 

 

 

グリー「さっきのやつがいなくなったみたいなので助けにきました!」

 

 

 

マヤとグリーが戻ってきた

 

 

 

ギバ「え!?マヤちゃん、グリー!避難していろって言っただろ!」

 

 

 

 

マヤ「だって、仕方なくって近くで待ってて」

 

 

 

 

ラース「マヤ!!危ない事はするなと言っているだろう!!あんな緊急事態に何を考えているんだ!!」

 

 

 

 

マヤ「!!ご、ごめんなさい、兄ちゃん」

 

 

 

 

グリー「皆さん、信じられないと思うんですけど、このお二人はこの店の店長さんと店員のマドリーさんなんです」

 

 

 

 

バン「ええ!!?」

 

 

 

 

ギバ「どう見たって魔物だぞ!」

 

 

 

 

グレイグ「それは本当か?」

 

 

 

 

マヤ「うん。だからこの二人は悪い魔物なんかじゃないの!お願い、信じて!」

 

 

 

 

ラース「.......なぜ魔物がここで店を開いていた。何が目的だ?しかも、あんな悪いやつのいいなりになっていたようだが」

 

 

 

ビルとマドリーは少しずつ話を始めた

 

 

 

ビル「昔から俺達は人間に憧れてたんです。魔物の世界ではうまくやっていけず、いつも死にかけながら生きていたんです」

 

 

 

 

マドリー「百年ほど前に偶然ドルグ様にそこを助けられ、私達に力を与えてくださいました。その力は変身能力。私達にとってとてもありがたく、ずっとついていこうと思っていたんです」

 

 

 

 

ビル「ですがドルグ様はどんどん凶暴になり、邪神様が復活してからなおのこと手がつけられなくなり、人間を襲うようになりました。それを私達も仕方なくやっていたのです」

 

 

 

 

マドリー「邪神様が倒された後は少し落ち着きを取り戻してくださいましたが、それでも襲う事はやめませんでした。しかし、ある日突然力を蓄えると言い始め、人間の生気を食べるようになりました。それを食べ、ドルグ様はどんどんパワーアップしていったのです」

 

 

 

 

ビル「それから人間から生気を求めるために、人間から生気を吸い取る機械も作りました。その機械を使い、俺達に生気をより多く集めるためにデルカダールに幻の店を構え、人間を襲えと指示が出されました」

 

 

 

 

マヤ「え?幻?」

 

 

 

 

マドリー「最初こそ渋々やっていたのですが、やはりこんな事は間違っていると日頃から思っており、何度もドルグ様に人間と魔物の共存を願ったのですが相手にされず。なら、私達も既に力がある。もうドルグ様についていくのはやめようと思ったんです」

 

 

 

 

ビル「俺達は昔から思っていた人間への憧れから、この店で本物の商売をしたかったんです。魔物という事を忘れて、人間のように。明るく、優しく、楽しく。ここにいる間だけはドルグ様の事や嫌な事も忘れていたんです」

 

 

 

 

マドリー「そんな時にね。グリー君がやってきて、ここで働きたいって言い出してくれたの。私達は人間の仲間ができて嬉しくて。本当に私達は人間なんじゃないかって錯覚するほどに」

 

 

 

 

グリー「マドリーさん......」

 

 

 

 

ビル「しかし、生気が送られない事を疑問に思ったドルグ様から何度も通信が来ました。装置に生気が溜まっているかどうかも判断できたので、とても怒られました。しまいには、私達の任務を取り消しにしようとしていまして。

 

 

 

それだけは絶対にやめてほしかったので仕方なく、店に来た人々を騙して、少しだけ生気を吸い取るために地下へ連れていったのです」

 

 

 

 

マヤ「え?そ、そんな事してたの!?」

 

 

 

 

ラース「その街の人達はどこだ?無事なのか?」

 

 

 

 

マドリー「もちろんです。体力こそ少なくなって気絶してますが、命までは取っていません。あの扉が地下への入り口になります」

 

 

 

 

グリー「あの.....幻のって、どういう事ですか?」

 

 

 

 

ビル「すまなかった、グリー、マヤ。この店は俺達の力で作り上げた偽物。全て偽物なんだ。看板もメニューも厨房もホールも」

 

 

 

そう言うと、周りにあったテーブルやカウンターなどがどんどん消えていった

 

 

 

ギバ「ええ!?お、おいおい、嘘だろ!どんどん無くなっていくぞ!」

 

 

 

 

マドリー「これが真実なの。私達は純粋なあなた達を.......騙していたんです」

 

 

 

 

マヤ「もしかして.....」ゴソゴソ

 

 

 

マヤのポケットにあった先程の給料は残っていた

 

 

 

マヤ「あ、これは残ってた.......」

 

 

 

 

グリー「そ、それじゃあ僕が今まで貰っていたお金も.....」

 

 

 

 

ビル「グリー、本当にすまなかった。お前の給料の少しは魔物のお金だ。魔物の世界には人間のお金はないんだ。だから、少し消えちまってる」

 

 

 

店は全て消え、周りには何も無く、地下への階段だけが残っていた

 

 

 

グレイグ「話はわかった。お前達が悪い魔物ではない事もな」

 

 

 

 

ラース「だが、街の人々を危険に晒した事は罪だ。いくら生きているといってもそれは変わらない」

 

 

 

 

ビル「はい。わかっています」

 

 

 

 

マドリー「私達は間違いを犯しました。どうか斬り伏せるなりなんでもどうぞ。覚悟はできています」

 

 

 

 

バン「ちょっ、ちょっと師匠!まさか本当に殺してしまうつもりですか!?」

 

 

 

 

ラース「.........」

 

 

 

ラースは黙って二人を見ている

 

 

 

マヤ「兄ちゃん、殺さないで。この二人は悪くないじゃん。さっきのやつが全部悪いんでしょ?なら、あいつは倒したしもう大丈夫だよ」

 

 

 

マヤはラースの腕を掴んでいる

 

 

 

グリー「........ビルさんとマドリーさんには、仕事の楽しさや経験を貰いました。お店も道具も全て無くなってしまいましたけど、あの時の思い出は消えていません。ラースさん、どうか助けてあげてください」

 

 

 

グリーもマヤに続いてラースを止める

 

 

 

ビル「グリー.......マヤ.......」

 

 

 

 

マドリー「許してくれるの?だって、ずっとずっと騙してたのに」

 

 

 

 

マヤ「確かに騙されちゃったけどさ、私はこの一ヶ月とっても楽しかった。これからもずっと続くといいなって思ってたんだ。

 

 

 

お店は無くなっちゃったけど、ビルさんとマドリーさんがいればまたどこかで一緒に働きたい。楽しいって思いをずっと続けていきたい。だからお願い、兄ちゃん!反省してるんだし、許してあげて」

 

 

 

 

ラース「わかった。この二人の事は許そう」

 

 

 

 

グレイグ「それがいいだろう。まあ、城には連れて行くぞ」

 

 

 

 

バン「よかった!師匠の事だからもしかしたら許さないんじゃないかって思ってたけど、安心しました」

 

 

 

 

ギバ「バン、俺達は先に地下の人達を助けにいくぞ」

 

 

 

 

バン「おう!」

 

 

 

二人は地下へ向かった

 

 

 

マヤ「ありがとう、兄ちゃん」

 

 

 

 

ビル「本当にありがとうございます。もうこんな事はしません」

 

 

 

 

マドリー「マヤちゃんもグリー君も本当にありがとう」

 

 

 

 

グリー「ビルさん、マドリーさん。どうして、僕を雇ってくれたんですか?偽物なのに、どうしてそこまでやってたんですか?」

 

 

 

 

ビル「最初は断ろうと思ってたさ。だがよ、初めて来たお前が言った言葉が響いてよ」

 

 

 

 

マドリー「覚えてるかしら?グリー君、真剣な目で僕はどうしても自分の家族を助けてあげたいんです。そのためならなんでもします。って言ってたのよ。しかも、もう何件も失敗してたんでしょ?私達、助けたくなっちゃってね。でも、騙してるのは本当に申し訳なかったわ」

 

 

 

 

グリー「.......あの時は僕も必死で。そんな事言ってましたっけ?」

 

 

 

 

ビル「そうだぞ。だから、人間らしく雇った。幸い、人間の真似事なら何度もしてたんでな。料理なんかは普通にできたんだ。その基礎だけでもグリーに教えてとっととやめさせれば、他の所でも仕事できるだろうって踏んでな」

 

 

 

 

マドリー「まあ、それも最初だけだったんだけどね。私達、お店が楽しくなっちゃったのよ。酒場にいろんな人が来て、美味しいって言ってくれてお金をくれる。そんな人間みたいな事が、私達でもできるって知って嬉しかったの」

 

 

 

 

マヤ「もしかしてこのお金ってその時の?」

 

 

 

 

ビル「ああ。俺達の幻の店に金なんていらねえ。だから、少しずつ貯めてそれを分けてグリーやマヤにあげていたんだ。グリーの最初の頃はどうしようもなくて魔物のお金を渡してしまったがな」

 

 

 

 

グリー「そうだったんですね。気にかけていただきありがとうございます。あの、人間みたいになりたいならこれまでみたいに人間の姿でいいんじゃないですか?」

 

 

 

 

マドリー「そうだけど、今回の件があるから。私達はしばらく外には出ないわ。きっと怖がらせちゃうから」

 

 

 

 

ラース「いや、問題ないはずだ。今街の人達はいない。お前達が望むなら、多少の融通はきくぞ」

 

 

 

 

グレイグ「魔物の姿になり、暴れたりさえしなければ問題はない。マヤ達もお前達に感謝しているようだしな」

 

 

 

 

ビル「そんな.....。いいのですか?また、人間のようになっても許していただけるのですか?」

 

 

 

 

ラース「憧れてたんだろ?なら、それを叶えるチャンスだな。お前達次第だがどうするんだ?」

 

 

 

 

二人「ぜひお願いします!!」

 

 

 

 

マヤ「兄ちゃん、今度は本物のお店で働かせてあげて!できないかな?」

 

 

 

 

ラース「それは要相談だな。まあ、バン達を手伝ってからだ」

 

 

 

 

マドリー「人間達には鎖とか何もしてないので運ぶだけです。私達も手伝いますよ。魔物の姿なら人間の姿より力もありますので」

 

 

 

 

グレイグ「それなりの人数がいるという事か。なら、手伝ってもらおうか」

 

 

 

 

 

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