それからも、偽物のバンは周りに驚かれながらもしっかりと仕事をこなしていった。周りもそれにだんだんと慣れていき、驚く事も少なくなっていった
一週間が過ぎた頃、デルカダール城
訓練場
偽物バン「よーし、お前ら並べ!今日の訓練だぞー」
ガク「あれ?今日はもう訓練したじゃないですか。まだやるんですか?」
偽物バン「ああ。強くなるには時間がかかるからな。ガク、全員集めてきてくれ」
ガク「は、はい。わかりました」
その後
偽物バン「ほら!バランスが取れてないぞ!もっと体幹に力をいれろ!」
新入り達「はい!」
偽物バン「違う!もっと強く拳を打つんだ!それじゃあただのパンチだぞ!」
指導はどんどん激しくなっていく
ダバン「なあギバ、ガザル。バンってあんなに熱血だったか?」
ギバ「そんなはずねえんだがな。バンとは付き合いは長いが、あんなに熱血なバンは初めてだ」
ガザル「最近やる気があるのはいいんだが、ちょっと厳し過ぎねえか?」
ダバン「だよなぁ。前まではこんな事なかったのに。個人のペースに合わせてやっていたはずなんだが」
その頃、ラースとマルティナの部屋
部屋にはラースとブレイブがおり、魔物が喋れるようになる薬をブレイブに舐めさせていた
ラース「さて、ブレイブ。これで話せるだろ?何か言いたい事あるんだよな」
ブレイブ「.....あー、あー。ラース様、一週間ほど前から城の中にほぼずっと魔物のような気配を感じます」
ラース「魔物のような?しかもほぼずっとなのか」
ブレイブ「はい。私にもはっきりとはわからないのですが、どことなく魔物のような.....。そんな不思議な気配です。息子も僅かながら感じているようで」
ラース「ふむ.......。城のどこから感じる?」
ブレイブ「それもわからないんです。ですが、バンが玉座の間に来ると気配は濃くなりますね。後はなんとも.....」
ラース「.......ブレイブ、バンをどう思う?」
ブレイブ「最近からまるで別人のようになりましたよね。何があったのでしょうか」
ラース「これは俺の勘なんだが、あれはバンじゃない気がしていてな」
ブレイブ「バンじゃない?ですが、見た目も性格も気配まで変わってません。それなのにバンじゃないんですか?」
ラース「ああ。俺も確証はないんだが、あいつを見ていると違和感があってな」
ブレイブ「そうですか....。私にはわからないですね」
ラース「まあそうだよな。マルティナもグレイグもわかってくれなくてな。まあ、俺自身これに絶対の自信があるわけじゃねえからよ。一応警戒だけしておいてくれ」
ブレイブ「話はわかりました。警戒しておきますね」
その頃、訓練場
偽物バン「よし、一旦ここまで!明日からはもう少ししっかりやっていくからな」
新入り達「は....はい...」
新入り達はヘトヘトになっていた。疲れて座っている人もいる
ベグル「おい、バン。少し頑張りすぎだぞ。こいつらの体力の事も考えろ」
偽物バン「何言ってんだよベグル。兵士長として皆を強くしないといけない。強くなるにはこれくらいやっていけないとこの先大変だぞ」
マーズ「それはわかるが、もう少しゆっくりでもいいじゃないか」
ロベルト「まあまあ。バン、明日はもう少しゆっくりにしてみてくれ。俺達も様子を見て先に進めそうか判断する。それで今後の進行度を決めよう」
偽物バン「わかった」
偽物のバンは去っていった
ベグル「........おかしい」
マーズ「真面目になったし、馬鹿をやる事もなくなったよな」
ロベルト「いい事なはずなんだがなぁ.....。俺は少し前の方が楽しかったな」
ベグル「俺もだ。あいつには散々迷惑かけられてたが、それでも楽しかったんだがよ。虐める理由もなくなっちまったしなぁ。あーあ、楽しみが一つ消えてつまんねえの」
ダバン「お前らもバンに違和感覚えてるのか」
ギバ「どこか冷めたよな。もっと暖かいやつだったはずなんだが」
ガザル「そういえば、あいつラース将軍を見ても喜ばなくなったよな」
ロベルト「言われてみればそうだ。今までそんな事なかったのに」
ベグル「今夜バンに話をしてみるか。何か嫌な事とかがあったのかもしれねえ」
その後、バルコニー
偽物バン「さて、誰もいないな。おい、俺。見てただろ?この数日でもう俺はすっかりお前になったぞ」
ネックレスを取り出して話しかけると、ネックレスの世界にいるバンにその声は響いていた
バン「........ああ。そうだな。お前は俺に出来ないような事もできた。皆、お前に感謝していた。誰にも気づかれず、偽物だと疑いもしねえんだ。俺は.....皆にとってその程度だったんだな」
偽物バン「ああ。優秀な兵士長になった俺はこんなにも周りに必要とされている。出来の悪いお前はいらないって事だ」
バン「.........そうだな。どうやら.......俺は本当に役に立っていねえみてえだ」
偽物バン「(へへへへ、いいぞ、言え。その先の自分を諦めるセリフを言え!そうすれば俺はもっと力が手に入る)」
バン「もう......お前が.....俺の代わ」
ラース「何してるんだ?バン」
偽物バン「(チッ!)あ、師匠。お疲れ様です。師匠こそどうしたんですか?」
ラース「....少し外の空気を吸いにな。まあ、休憩だ」
偽物バン「師匠もでしたか。俺もなんです」
ラース「そうか。最近頑張っているみたいだな」
偽物バン「そりゃあそうですよ!何たって俺は兵士長ですから。これくらいやらないといけませんよね」
ラース「別に兵士長だから頑張るとかそんなのはいらねえよ。バンはバンらしくいればいいだけだ。前にもそう言っただろ」
偽物バン「あ、あれ?そうでしたっけ?師匠は今の俺はどう思いますか?」
ラース「変わったな、とは思うぞ。まるで別人のようにな」
偽物バン「まだそんな事思ってるんですか?皆にも散々言われましたけど、俺の本気なだけですって!そろそろ休憩終わりますね。それでは師匠、お疲れ様でした」
ラース「..........一つだけ聞いてもいいか?」
偽物バン「はい?どうしました?」
ラース「兵士長、楽しいか?」
偽物バン「これは仕事ですよ。楽しむなんて必要ないじゃないですか。それでは!」
ラース「(バンはそんな答え方しないよな。やはり別人か。だとしたら、本物のバンはどこに?.............さっきチラリと見えたネックレス。あんなの、あいつ着けてたか?)」