それから三日後、夕方
デルカダール城下町
デルカダール王達はビルのお店が開店するという事で、案内されていた
マヤ「やっと出来たんだ。この日を待ってたの」
ラース「本当にいいのか?開店は明日なんだろ?」
ビル「気にしないでください。約束したじゃないですか。開店したら一番始めに教えると」
デルカダール王「夕方に町に降りるのは久しぶりだな」
マドリー「わざわざすみません。お城を閉めさせてしまって」
マルティナ「気にしないで。私もお父様もずっと楽しみにしてたし、今日はもう何もなかったから丁度よかったの」
カミュ「しかし、酒とか料理とか各地のがあるんだろ?楽しみだな、兄貴」
ラース「ああ!少し多めに食べてもいいよな!」
グリー「ラースさんの多めってどれくらいになるかわからないですね」
グリーはラースの発言に苦笑いしている
グレイグ「ラース、あくまで特別に開店しているのだ。明日の分の事も考えてやれ」
ラース「それは流石にわかってるさ。俺ってそんな見境ないように見えるのか?」
カミュ、グレイグ「ああ」
カミュとグレイグは同時に答えた
ラース「........即答かよ」
マヤ達の店 グラジー
グリー「到着ですよ」
ビル「ここが俺達の店、グラジーです」
赤い屋根とレンガでできた壁に所々黒い線が入っており、看板には黄色い文字でグラジーと書かれている
デルカダール王「ほう。周りとは少し違う見た目だな。中々お洒落ではないか」
グレイグ「このグラジーとは何か意味があるのか?」
マドリー「流石グレイグ様!いい所に気づいてくれました。マヤちゃん、教えてあげて」
マヤ「ちょっ、ちょっと恥ずかしいかな」
マルティナ「マヤちゃんが考えたの?」
ビル「そうなんです。いくつか考えていた時にマヤが閃いてくれまして」
カミュ「別に笑わないぜ、マヤ」
マヤ「えっとね、ありがとうって意味の言葉を少し変えてみたの。ほら、お客さんにむけてありがとうございますって言うし、お客さんが私達に向けて言ってくれる時もあるから、そういうありがとうを大事にする場所に出来たらいいよねって思ってさ」
デルカダール王「素晴らしいな、マヤ。わしもとてもいい考えだと思うぞ」
グレイグ「マヤ、なんていい子なんだ」
ラース「グレイグ、涙出てきてんぞ。マヤ、とってもいいじゃないか。そんな大事な思いがこもったお店はきっといい店になるぞ」
グリー「よかったね、マヤさん。やっぱりマヤさんのが一番よかったね」
店内
黒を基調とした壁やテーブルにオレンジの床が映えている
グレイグ「ほう。クラシックな雰囲気だな。落ち着くではないか」
マルティナ「暖かい感じがするわ。酒場っぽくはないわね」
マドリー「昼は酒場ではなくランチなどをメインにしようと思ってるので、あまり酒場っぽくするのもどうかなと思って」
ビル「実は照明の具合で雰囲気が変わるんです。見ててください」
ビルは照明のスイッチを押した
照明は白い光から暗いオレンジの光になった
デルカダール王「ほう。確かにこうなるとまた雰囲気が変わるな。酒場によくみられる大人な雰囲気が出ておる」
グリー「凄いですよね。光だけでこんなに変わるなんて」
カミュ「面白えな。これなら酒場らしくていいんじゃねえか?」
マヤ「あ、折角呼んだのにこれじゃあ紹介しかしてないね。王様も姉ちゃんも座って。料理とかお酒とか持ってくるから」
ラース「お!それも楽しみにしてたんだ!ワクワクするな!」
デルカダール王「まあ、まずはこの店が無事に完成した事を祝って乾杯しようではないか」
ビル「そうですね。マヤ、ジュースでいいから持ってきてくれ」
グリー「あ、僕も手伝いにいかないと。大変だろうから」
マルティナ「私達も手伝いましょうか?」
マドリー「いいんですよ、マルティナ様。今日はお客様ですので、座って待っていてください」
マルティナ「そ、そう?それじゃあ待ってるわね」
しばらくして
ビル「それではこのお店、グラジーが完成し、繁盛する事を願うと同時にそのために機会やお力を貸してくれたデルカダール王様、マルティナ様、グレイグ様、ラース様、カミュ様、お城の兵士様、そして、マヤにグリーに最大の感謝を込めてかんぱい!」
全員「かんぱい!!」
その後、料理やお酒などが振る舞われていった
デルカダール王「これは確かグロッタにあるチャルケという肉だったな。酒に合うんで、昔よくロウと食べていたのう。久しく食べておらんかったが、懐かしい」
グレイグ「私もこれは好きですね。グロッタなどに行った際には必ず食べておりました。まさかデルカダールで食べれるようになるとは」
グリー「ラースさん、カミュさん、ホムラのお酒もあるんですよ」
ラース「マジか!!買いに行かなくてもよくなったって事か!!」
カミュ「よかったじゃねえか、兄貴。これからは通い詰めるんじゃねえか?」
ラース「もちろんだ!毎日でも行きたくなったな!」
ラースはかなり喜んでいる
マドリー「ホムラのお酒が好きなんですか?」
ラース「ああ。昔から俺のお気に入りでな。だが、毎回ホムラに買いに行くのが少々面倒だったんだ。これはありがたい」
マヤ「兄貴、ほら。値段はするけどクレイモランの五年物ならあるよ」
カミュ「お!いいじゃねえか。本当に各地の酒を用意してんだな。大変だっただろ?」
ビル「いえ、実は私もお酒は大好きでして、私の趣味みたいなものなんです」
ラース「お!話がわかりそうなやつが増えたぞ、カミュ!」
カミュ「だな。ビル、今度語り合おうぜ」
マルティナ「これは確かソルティコのライム貝。前にシルビアの家で食べたわね。これだけでも美味しいわよね」
グリー「僕もそれ食べたんですけど、爽やかでちょっと甘くて美味しいですよね」
マドリー「ビルがお酒を集めるから、それに合う物を私が集めてたんです。これはワインとよく合いますよね。ハムもとってもいいんですけど、私はこの貝が大好きなんです」
グレイグ「む?お、おい.....このブヨブヨした物は何だ?」
デルカダール王「わしも見た事ないな。どこかの料理なのか?」
グリー「あ......これは僕の故郷のナギムナー村の料理で魚の白子なんです。見た目は変ですけど、お醤油などで味付けするとお酒に合うんです。ぜひ食べてみてください」
グレイグ「なるほど。魚だったか。どれ、食べてみよう」
デルカダール王「おお!中々いけるではないか!」
ラース「へえ、白子か。あれはホムラの酒にピッタリなんだよな」
カミュ「ラガーとかにも合うぜ。俺も昔からよく食べてたな」
マドリー「二人とも詳しいですね。あの食感が苦手な方も多いんですよね。そうだ。お二人にはあれもお出ししましょう」
ビル「おお、マドリーのつまみ特選が始まったな」
マルティナ「つまみ特選?」
マヤ「お酒のおつまみを出してくれるんだけど、私はちょっと苦手かな」
グリー「僕も。聞いた事ないのだったり、味が独特でちょっと....」
グレイグ「ほう。気になるな」
マドリー「これなんてどうですか?」
マドリーは魚の料理を出してきた
マヤ「わわっ!それめちゃくちゃしょっぱいやつ!」
カミュ「へしこか。確かにかなりしょっぱいよな。俺も苦手だ」
ラース「へしこ?食べたことねえな。魚料理か」
マドリー「はい。へしこっていいまして、魚を長ーく漬けたんです。クレイモランやナギムナー村、ソルティコなどで見られますね」
マヤ「兄ちゃん、気をつけて。凄くしょっぱいから」
デルカダール王「どれ、わしももらおうかの」
グレイグ「俺も一つもらおうか」
マルティナ「ラースの反応で私は決めようかしら。カミュもマヤちゃんも警戒してるみたいだし」
ラース「どれ.......おお!!しょっぱいな!だが、これなら.......やっぱり!ホムラの酒と合うぞ!五年物とも合うんじゃねえか?」
デルカダール王「おお、味が濃いのう。じゃが、悪くない。つまみとしては面白いではないか」
グレイグ「ごほっ、ごほっ。姫様、食べるならお気をつけください。冗談抜きでしょっぱいですよ」
マルティナ「じゃ、じゃあ少しだけ......んん!結構濃いわね」
カミュ「濃い味は苦手なんだ」
マドリー「まだまだありますよー」
ビル「マドリーが止まらなくなってきてるな」
グリー「いいんですかね?」
マヤ「まあ、兄貴も兄ちゃんも酔う事はほとんどないし、大丈夫だと思うよ」
ビル「様子をみてマドリーを止めるぞ」