一月後の夜、マルティナとラースの部屋
ラース「え?マルティナが遠征?」
マルティナ「ええ。少しの間だけね。シャールに誘われてクレイモランで数日過ごすの。他の国ではどんな政策や活動をしてるのかも見てきてデルカダールにも学ぶべき場所があれば、と思ってね。一週間後よ」
ラース「.......俺知らなかったぞ」
マルティナ「そうだと思うわ。ラースと私は別行動だもの」
ラース「なんだって!?」
マルティナ「デルカダールには代わりにリーズレットが来るの。それでお互いの国のいい所や政策などを見て成長していこうって話なの。ラースはその時のリーズレットの護衛役なのよ」
ラース「そ、そんな.....。マルティナは誰が守るんだ?」
マルティナ「私は特にいないけど、シャールが側にいてくれるし、エッケハルトさんもいるみたい。お城の守りも固くしてくれるようだから平気よ」
ラース「それでも危ないだろ。グレイグを連れていけよ」
マルティナ「グレイグはお父様についてるし、私がお城にいない間の役割も少し担ってもらうの」
ラース「じゃ、じゃあ俺がそっちに」
マルティナ「ラースはリーズレットの護衛役だし、色々この国の事を教えてあげないとなのよ」
ラース「........反対だ」
マルティナ「え?」
ラース「俺はそんなの認めない!!マルティナ、少し危機感が薄いんじゃないか!?」
ラースは立ち上がり、強く反対する
マルティナ「は、反対って.....。それにもう決まった事なのよ?あまり変更も難しいわ。私だって一人でも大丈夫よ」
ラース「一人でも、なんて思わないでくれよ。もしマルティナの身に何かあったらどうする」
マルティナ「そうならないようにしっかり動くわ。シャール達もちゃんと警備してくれるのよ?」
ラース「保険は必要だろう?」
マルティナ「行動で危険は減らせるわ。それに、まるでシャール達を信用してないみたいじゃない」
ラース「それでもだ!何かあってからでは遅いんだよ!」
マルティナ「.......どうしてわかってくれないの?」
ラース「わかってくれないのはマルティナだろ?」
二人「........」
マルティナ「もういいわ。とにかく寝ましょう」
ラース「そうだな。もう一度明日話し合うぞ」
次の日、朝食時
マルティナ「だから!私は平気なの!!」
ラース「平気なわけあるか!マルティナを心配してるんだ!」
二人は周りを気にせず強く言い争っている
ブレイブ「ガウゥ....」
コロ「クゥ....」
ブレイブとコロは見た事ない二人の様子に怖がっている
デルカダール王「マルティナ、ラース。今は朝食の時。どうかその険悪な空気は沈めてくれんだろうか?」
マルティナ「あ......。す、すみませんお父様」
ラース「すみませんでした、王様」
グレイグ「一週間後の話か。また後で話そう」
マルス「どうしよう、ルナ。母さんと父さんが喧嘩してる」
ルナ「ちょっと怖い.....。喧嘩してるのなんて初めて見た」
二人はコソコソと話している
その後、玉座の間
マルティナ「.........」
ラース「.........」
二人は何も言わずにいるが、一触即発の空気が周りに流れている
グレイグ「(うぅむ.....。まずい、かなり穏やかではない。どうすればよいか。俺はラースの意見に賛成だが、姫様の意見もわかる.....。誰か助けてくれんだろうか)」
グレイグは心の中で困っていた
バタン
ベロニカ「マルティナさーん、グレイグさーん、ラース、久しぶりね!」
セーニャ「シルビア様とデルカダールへお買い物に来たのでお顔を出しておこうかと」
シルビア「あ、あら......?なに、この空気?すっごくピリピリしてる」
マルティナ「ベロニカ、セーニャ、シルビア。来てくれてありがとう」
ベロニカ「ね、ねえ?何かあったの?」
セーニャ「マルティナ様とラース様がいつもより離れているように見えますわ」
ラース「心配してるのにわかってもらえなくてな」
マルティナ「あら、わかってくれないのはそっちじゃない」
ラース「.......」
マルティナ「.......」
二人は静かに睨み合っている
ベロニカ「う、嘘....。あのマルティナさんとラースが喧嘩するなんて」
グレイグ「そうなのだ。俺ではどうしようもなくてな。こんな時に来てもらって悪かったが、助かった。何とか二人を宥めてやってはくれんだろうか?」
グレイグはシルビア達の近くでラース達に聞こえないように頼んでいる
シルビア「まず、ラースちゃんから話を聞いてみましょう。マルティナちゃんはその後。二人の意見を聞いて出来る事はないか探してみましょう」
セーニャ「ラース様、少しお時間いただいてもよろしいですか?」
ラース「ん?俺に?構わないが、グレイグ少し頼む」
グレイグ「任せろ!しっかり話してくるのだぞ」
ラース「??」
マルティナとラースの部屋
ベロニカ「で?何であんなにマルティナさんに突っかかってるの?」
ラース「昨日の夜にな」
ラースはあらかたの事情を説明した
ラース「だから俺はマルティナを守ってくれる人もいないのが心配なんだ。警備や行動の制限だけじゃあどうしようもない事だってある。それをマルティナにもわかってほしいんだが、どうしてかマルティナは大丈夫だと言うんだ」
シルビア「なるほどね。確かに一国の王女の警備としては少し不安かもしれないわね。でも、マルティナちゃんは強い子よ。ちょっとの魔物くらいじゃあ相手にもならないじゃない」
ラース「だろうな。だが、一度デルカダールが襲撃されてから警戒はしておくべきだと痛感した。もうあんな恐ろしい思いはしたくないからな」
セーニャ「それは.....そうですわね」
ベロニカ「でも、そうそうないわよ。あんな事態。数日だけなら大丈夫じゃない?」
ラース「甘いんじゃないか?いくら世界が元通りになって、優しい魔物が増えたからって悪い魔物がいなくなったわけじゃない。邪悪な考えを持つ魔物はまだごまんといる。そいつらからしたら、今回の王女の交換は格好の餌だ。王女が二人も城にいるとわかれば、攻め込もうと考えられて当然の事。それを何故そんな甘く考える?」
ベロニカ「そ、そうだけど.....」
ラース「マルティナはもうあの旅の頃のような扱いじゃないんだ。一国の王女、マルティナだ。マルティナを失くしては国として色々終わってしまう。俺は、そんな最悪の事態を避けたいだけなんだ」
シルビア「........ラースちゃんの言いたい事はわかったわ。マルティナちゃんにも話を聞いてみるわ。呼んできてくれる?」
その後
マルティナ「どうしたの?話なんて改まって」
ベロニカ「ラースから話は聞いたわ。一週間後の王女の交換の事で揉めてるんでしょ?」
マルティナ「.......ええ。でも、これはベロニカ達には関係ない事だわ。ラースが少し頑固になってるだけなの。心配させてごめんなさい」
セーニャ「ですが、私達としてはお二人のそんな険悪な姿は見たくありません。少しだけでもお力になれませんか?」
シルビア「そうよ〜。これはアタシ達が勝手にやってる事。今の状況からもしかしたら、何か変わるかもしれないわ。ね?だから、少しだけマルティナちゃんが思ってる事を言ってみて?」
マルティナ「.....わかったわ。私は一人の王女として、もっとこの国を豊かにしたいの。そのためにいろんな事をやって、国民達に安心して過ごしてほしいの。今回はその大事な勉強。
自分の国だけでなく、周りの国々もみてよい所や歴史、文化などに触れて取り入れられそうな部分を探す。シャールもとっても喜んでたの。でも、ラースったらそれを反対して誰かついていかせようとしてるの。私は確かに王女だから守られなきゃいけないけど、私だって弱くないわ。それに、シャール達もお城に誰もいれないようにしてくれるの。
本当なら誰かがいた方がいいかもしれないだろうけど、今回は全員役割があるわ。それを無視してまで側にいたって、私にもシャール達にも失礼だわ。仕事はしっかりしてもらわないと困るもの。それなら、私が気をつければいいだけ。
ラースはシャール達を信用してないのよ。それに、勉強だから基本はお城の中。外に出るのもそんな多くない。だから安心してもらって大丈夫なのに」
シルビア「.......そうね。マルティナちゃんの意見も最もだわ。お話してくれてありがとう。戻ってもらって大丈夫よ」
その後
ベロニカ「思ったより難しいわね。どっちの言いたい事もわかるわ。ラースの最悪の事態を避けたいってのもわかるし、マルティナさんの勉強だし、他国との交流の気持ちもわかる」
セーニャ「どうしたらよろしいでしょうか。おそらくこのままでは平行線ですわね」
シルビア「うーん.......そうねぇ......中々厄介だわ」