一時間後
テルマ「あの......ラース将軍。まだそんなに食べるんですか?」
ラース「ああ、まだ腹に入るからな。俺はまあまあ食べる方だからよ」
テルマ「まあまあですか......」
ラースの周りには空になった大皿が重ねられている
マヤ「気にしないで大丈夫だよ、テルマ。兄ちゃんは凄い大食いだからこれが普通なの」
カミュ「だな。驚くのはよくわかるが、心配いらないぜ。あ、でも食べたいものがあったら遠慮なく取って大丈夫だぜ。兄貴もそこは配慮してるからな」
ラース「何か食べたかったか?この肉のソテーとか美味いぞ」
テルマ「そうなんですか。それじゃあ貰いますね」
ビル「カミュさん、ラース様、実は今日私のお気に入りのお酒を持ってきたんです。よろしければ飲んでみてください」
カミュ「お!本当か!兄貴、かなりいい酒が来たぞ!」
ラース「ビルのお気に入りか。それは期待できそうだ」
ルナ「見ててね、チャムちゃん!ヒャド!」
ルナの手のひらには小さな氷ができた
チャム「わあっ!凄ーい!!ルナちゃん魔法使えるんだー!いいなー!」
マルス「僕も出来るんだよ!メラ!」
マルスも手のひらに小さな炎を出した
チャム「ええ!マルス君も!私もやりたーい」
マドリー「流石ラース様とマルティナ様の子ども。魔法をこの歳で使いこなせるなんて」
グリー「僕も羨ましいですよ、魔法なんて」
マドリー「ふふ、グリー君に魔法はあまり似合わない気がするわ。失敗してるイメージがあるわよ」
グリー「ええ!酷くないですか、マドリーさん!」
デルカダール王「ラースよ、少しこっちに来てくれ。わし達だけで願い事だけ済ませておこうと思ってな」
ラース「わかりました。ビル、カミュ、少し待っててくれ。すぐ戻ってくる」
マルティナ「ガラッシュの村ではどうやってお願い事してたの?」
ラース「多分バンデルフォン王国と同じじゃないかと思うが」
グレイグ「それが恥ずかしい事に俺の記憶には祭りの記憶しかなくてな。細かいところは忘れてしまったのだ」
ラース「なるほど。まあ何十年も前の事だから忘れて当然だろ。それじゃあやってみせるな。俺の村では、まずこうやって静かに手を合わせて月にお願い事をしながら祈るんだ」
ラースは手を合わせて目を閉じた後、しばらくそのままでいた
ラース「..........それでお願い事が終わったら団子を入れ物ごと月に掲げて食べる。こんな感じだ。簡単だろ?」
デルカダール王「なるほど、確かに簡単だな。しかし、恐らくは願いをするポーズや団子を月に掲げる事などにも細かな意味があるのだろう。どれ、わし達もやってみよう」
マルティナ「願い事は口に出さなくていいの?」
ラース「そうだな。まあ出してもいいのかもしれないが、願い事なんて個人でバラバラだったからな。知られたくないものだってあったんじゃないか?今回は皆同じだけどよ」
グレイグ「なるほど。その可能性はありそうだな。それでは心の中で願うとしよう」
デルカダール王達も静かに祈り始めた
マヤ「へ〜、あれがお月見でやる事なんだ」
グリー「神聖な感じがするね。わざわざお祈りするなんて教会や女神像みたいだよ」
マルス「ルナ、僕達もやろう」
ルナ「そうだね。お母さん達もやってるもん。私はねー、綺麗な宝石が貰えますように!」
マルス「じゃあ僕は大剣がもっと上手くなってグレイグさんに褒められますように!」
料理も無くなってきた頃
ラース「そういえばな、月を見ていて思い出した事があるんだ。ガラッシュの村にあった伝説の話で、月にはゴールデンコーンが住んでるんだってよ」
ビル「ええ!?ゴールデンコーンが月に!?」
マドリー「それ本当なんですか!?」
グリー「ゴールデンコーン?」
マヤ「私も初めて聞いた。なに、それ?」
マルティナ「魔物の名前の事で、いっかくうさぎに似た姿をした金色のうさぎよ」
チャム「金色のうさぎ!?そんなのがいるんだ!」
ルナ「絶対綺麗だよ。あ!!月に住んでるから金色なんだ!」
カミュ「だが、何でそんな事が言われてるんだ?」
ラース「月の模様をよく見るとゴールデンコーン、つまりいっかくうさぎの模様があるんだ。あれが角と耳と足だ。今日はよく見えるぞ」
マルス「本当だ!いっかくうさぎの形してる!」
グリー「へ〜、面白いなあ。そんな模様が月にあったなんて」
テルマ「じゃあ、もしかして本当に月にはゴールデンコーンがいるんだ」
ラース「だろうな。そう考えてみると面白いだろ?」
グレイグ「おい、ラース。そんな嘘をついて遊ぶな。子どもは喜ぶだろうが後々恥ずかしい思いをするのではないか?」
グレイグはこっそりとラースに話した
ラース「なんだよ、グレイグ。つまらないな。相変わらず頭が固いんだから。少しくらい夢があった方がいいだろ」
グレイグ「ぐ.....。だが、周りから馬鹿にされるのではないか?」
マルティナ「あら、いいじゃない。もしかしたら本当に月には魔物が住んでる可能性だってあるかもしれないわ。勝手に私達が月には何もいないと思ってるだけかもしれない」
デルカダール王「ハハハ、そうだな。とても可能性を感じられる伝説だ。無碍に嘘だと言い切るのもつまらない。少し夢を持ってもいいかもしれんな」
ラース「ま、俺もあまり信じてはいないけどな。昔からそんなわけないって思ってるしよ」
ラースは月から目を離して酒を飲んだ時
全員「あ!!」
月を見ていた全員が一斉に声を出した
ラース「え?どうした?」
マヤ「今、ゴールデンコーンの模様が動いた!」
チャム「跳ねたよ!ピョンって!」
ルナ「私も見た!本当にいるんだー!」
マドリー「あの模様が動くなんて....」
ラース「い、いやいや何言ってんだよ。そんな訳ないだろう」
マルス「え?父さんは見なかったの?今の凄い瞬間だったんだよ」
カミュ「目の錯覚か?もう動いてないしな」
グリー「でもこんな一斉に同時で錯覚なんて起きますか?」
グレイグ「まさか......今の光景が信じられんな」
マルティナ「ほら、嘘なんかじゃないかもしれないわよ。ゴールデンコーンは本当に月の使者なのかもしれないわね」
デルカダール王「よいものを見せてもらった。やはりまだまだ知らない事はたくさんあるようだな」
ラース「マジかよ......。くそっ!俺も見たかった!何で目を離したんだよ!」