その頃、マルティナとラースの部屋
コンコン
マヤ「姉ちゃん、いる?」
マルティナ「ええ、いるわよ。入ってどうぞ、マヤちゃん」
ガチャ
マルティナ「いらっしゃい。自由に座って。紅茶でも飲みながら話しましょう」
マヤ「うん。ありがとう」
マルティナ「お砂糖やレモンはいる?」
マヤ「ううん、そのままで大丈夫」
マルティナ「わかったわ、はい。お菓子も食べていいからね。それで用事ってどうしたの?何か相談?」
マヤ「うん、そうなんだ。実はね.......グリーさんの事で相談があるんだ」
マルティナ「(やっぱり)続けていいわよ」
マヤ「わかった。ここ最近、というかもう少し前かな。それくらいからグリーさんの事を考えるようになって、意識するようになっちゃったんだよ。最初はなんて事無かったんだけど、最近だと顔を見てるとドキドキするし、近くにくるとどうしても普段みたいになれなくなっちゃうんだ」
マルティナ「マヤちゃんはそれが何でかわかる?」
マヤ「今まで体験した事なかったけど........恋ってやつなの?」
マルティナ「ええ、そうね。マヤちゃんはグリーに恋してるのよ。相手の事が気になったり、ドキドキしたりする事がまさにそうね」
マヤ「やっぱり....」
マルティナ「とってもいい事じゃない。好きな人が出来るのは幸せな事だわ。マヤちゃんは告白しないの?」
マヤ「.............しない.....かな」
マルティナ「!?ど、どうして?」
マヤ「私さ、今までグリーさんと色々過ごしてきた。一緒に働いたり、お店が消えてビックリしたり、海の呪いがあってそれを乗り越えたり。グリーさんと一緒に過ごしてきて、私いつも楽しかった。二人で喋って笑っているのが好き」
マルティナ「それならその気持ちを伝えましょう。どうして伝えないの?」
マヤ「怖いんだ。この楽しい日常が壊れてしまう可能性が。グリーさんは最初は友達で、仕事仲間だった。グリーさんも同じはず。でも私は、友情って言葉だけじゃ足りないくらいグリーさんを気にしてしまっている。グリーさんは......どう思ってるのかな。きっと友達か仕事仲間くらいだと思う」
マルティナ「.........」
マヤ「友達と恋人はさ、全然違うじゃん。行動も思いも互いへの愛も全然違う。恋人ってのはお互いが好きじゃないと駄目だもん。私だけじゃ........駄目だもん。
グリーさんは優しいから、きっと私が告白したら私を気にして了承してくれると思う。でも、それじゃあ本物の恋人なんて言えない。それに、私は今のような関係が好き。互いに協力して、励まして皆と仲良くお店をやっているそんな関係が。
もしそこに私の私情を入れたらきっと壊しちゃう。そんなの絶対嫌だ。あの関係を壊したら........もう戻れない」
マルティナ「.......なるほどね。その関係を壊したくないからグリーには伝えないのね。例え了承されても、グリーが自分の事を本当に好きなのかわからないから」
マヤ「うん。だからさ、姉ちゃんにはある事を教えてほしいの。このグリーさんへの気持ちを諦められる方法をさ」
マルティナ「........残念だけど、私にはわからないわ。誰かへの思いを諦める......。私はそんな事した事ないし、したいと思わなかったから」
マヤ「そっか、そうだよね。数日前にさ、マイ、えっと、私の友達にも相談したんだ。その時に私、マイにこんな質問したんだ。男女で友情ってあると思う?ってさ」
マヤは下を向き始めた
マルティナ「マイちゃんは何て言ってたの?」
マヤ「マイはね、わからないけど私は無い方が多いと思うって。男女で友達同士仲良くしてたら、いつか恋愛になるでしょ?って。恋愛と友情は別物になっちゃうんじゃないかなって言ってた」
マルティナ「恋愛と友情は別物.......。なるほど。確かにそうかもしれないわね。恋愛対象となった時点で友達同士では無くなっちゃうから」
マヤ「それを言われてさ、まさに今の私だなって。友達同士だったはずが、いつの間にか友達同士じゃなくなってて、私が好きになってた。
ずっと......友達でいれると思ってた......。私......友情も恋愛も.....どっちも出来るものだと思ってた......。私が.......グリーさんを友達じゃなくさせちゃった」
マヤが握りしめた手には涙が落ち始めていた
マルティナ「マヤちゃん.............。ねえ、マヤちゃん。私とラースが夫婦なのはもちろん知ってるわよね?」
マヤ「え?う、うん。当たり前じゃん。私と姉ちゃん達が初めて会った日からそうだったじゃん」
マヤは目を擦りながらキョトンとしている
マルティナ「そうよね。でもね、私ってラースはもちろん大好きなんだけどイレブンだって、カミュだって、シルビアだって、ロウ様だって、グレイグだって、バンだって大好きよ。でも、ラースへの大好きとは少し違うの。違いがわかるかしら?」
マヤ「違い?え?..........夫婦だからとかじゃないよね。友達として大好きって事?」
マルティナ「ふふ、その通りよ。違いはそれが友情か愛情か、よ。イレブン達は仲間としてって意味もあるけどね。ラースだって始まりは仲間として大好きだったわ。
でも、いつしかそこに本物の愛情が出来た。私はそれが好きの始まりだと思うわ。マヤちゃんもそうじゃない?グリーと友達として過ごすうちに愛情が出来たから、こうして悩んでる。どうかしら?」
マヤ「.......うん、同じだね。でも、兄ちゃんへ愛情が出来たならやっぱり今まであった友情はさ、消えちゃったんじゃない?」
マルティナ「あら、そんな事ないわ。私は今だってラースの事を友達としても大好きよ。とっても素敵な友達だわ。でも、そこに恋人として、夫として大好きな気持ちが合わさっていくわ。私のラースへの大好きって気持ちは、何個も重なって出来ているの。
友達を好きになったからって、今までの友情は絶対に消えないわ。ずっと残り続ける。だって、愛情の始まりはそこからだもの。友情があったからこそ、その中に愛情が出来るの。今まであった友情に愛情っていう気持ちが足されているのよ」
マヤ「友情は消えない....」
マルティナ「だから大丈夫。マヤちゃんのその思いは、これまでのグリーとの関係が生んだものよ。無くそうだなんて思うのはちょっとかわいそうじゃない?グリーにも、マヤちゃん自身にも」
マヤ「.........でもさ、グリーさんからしたら私は友達。ずっと友達のままなんだよ。私だけ恋人になりたいって思ってても....」
マルティナ「あら、それじゃあマヤちゃん。グリーに猛アタックしちゃいなさい。私は好き!って、行動でも言葉でも何でも使って。そうしたらきっとグリーだってドキドキしてくるはずよ。そこを落としちゃいなさい。本当に大好きなら、その人を離しちゃ駄目よ。あなたの素敵な未来のために、本気を出さなきゃいけないわ」
マヤ「ええ!?そ、そんなの無理無理!恥ずかしくて出来ないよ!それに、グリーさんに気味悪がられたら嫌だよ!」
マルティナ「グリーはそうそう簡単に人を気味悪がったりしないわ。だって怖い幽霊ですら、臆せず話したのよ?絶対大丈夫よ」
マヤ「うう、でもちょっと怖いよ。何したらいいかもわからないし」
マルティナ「まずはデートに誘ってみたらどうかしら?二人でどこか行った事あるの?」
マヤ「あ、あんまり無いよ」
マルティナ「それじゃあ尚更よ!!絶対行きましょう!私もサポートしてあげるから!」
マルティナはテーブルに両手をついて勢いよく立ち上がった
マヤ「え、ええ......」
マルティナ「ビルとマドリーにも上手く話しておくわ。マヤちゃんは何も心配しないで大丈夫だから、デートに行ってグリーを落としちゃいましょう」
マヤ「い、いしし......。何だか姉ちゃんを見てたら元気出てきたかも。じゃあ.......ちょっとだけ声かけてみようかな」
マルティナ「その意気よ、マヤちゃん!そのちょっとがとっても大事なんだから」
マヤ「.......そうだね。うん。私がここで初めて王様達と家族になった時も、ほんのちょっとの一歩が私をここまで変えるきっかけになったんだった。私、やってみるよ!」
マルティナ「懐かしいわね。マヤちゃんが初めてここで自分の思いを明かしてくれたんだもんね」
マヤ「うん。私も今でも覚えてる。ずっと忘れない。やっぱり姉ちゃんに話してよかった!あの時も、私の一歩を踏み出すきっかけをくれたのは姉ちゃんだから!姉ちゃん、ありがとう!」
マルティナ「マヤちゃん.......。頼ってくれて私もとっても嬉しいわ。これからも何でも一緒に頑張りましょう。いつだって力になるわ」
マヤ「いしし、うん!」