ドラゴンクエストⅪ 魔法戦士の男、恋をする   作:サムハル

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怪しきもの

医療部屋

 

 

 

ガチャ

 

 

 

グレイグ「ラース、もう一人お前に会わせたいやつを連れてきた」

 

 

 

 

ラース「あ、グレイグさんに皆さん。俺って結構知り合いが多かったんですね。それで、その人ってのは?」

 

 

 

 

ブレイブ「あの.......ラース様、私を覚えておられますよね?」

 

 

 

 

ラース「え!?」

 

 

 

ラースはブレイブを見ると驚いてベッドの隅に身を縮めた

 

 

 

ラース「ま、魔物!?しかも喋れるなんて!!」

 

 

 

 

ブレイブ「ラース様.......(驚き.....戸惑い.....それと........恐怖。そんな感情しか感じられないなんて)」

 

 

 

 

シルビア「大丈夫よ、ラースちゃん。怖がらなくていいの。この子はブレイブちゃん。私達のとっても大事な味方なのよ」

 

 

 

 

ベロニカ「あんたの事とっても慕ってたのよ。何か感じない?」

 

 

 

 

ラース「魔物なのに......味方なんですか。随分変わってるんですね。でも、確かに見た事あるような.....」

 

 

 

 

ブレイブ「...........ラース様、驚かせてしまい申し訳ございません。いつか必ずラース様が戻る事を願っております。それまでは.......お側にいないようにしますね」

 

 

 

ブレイブは悲しそうに部屋から出て行った

 

 

 

セーニャ「ブレイブ様.......」

 

 

 

 

ラース「なんだか悲しませてしまったようだ。やっぱり記憶が無いと皆さんも困りますよね。早く戻さないと」

 

 

 

 

イレブン「焦らなくて大丈夫だよ、ラース。一つずつ思い出していこうよ。これからは僕達がついてるから何かあったらすぐに頼ってね」

 

 

 

 

ラース「ありがとうございます、イレブンさん。頼りっぱなしになると思いますが、皆さんよろしくお願いします」

 

 

 

大広間

 

 

 

カミュ「わかっただろ?ブレイブ。俺達は別に嘘をついてたわけじゃねえんだ」

 

 

 

 

ブレイブ「はい、疑ってすみませんでした。それにラース様を見て確信しました。今のラース様が私を見た時は恐怖の感情しか感じらません。前までの優しい顔や暖かい感情は.......全くありません。私は今のラース様にとって恐怖でしかないようです」

 

 

 

 

ロウ「そうじゃな。じゃが安心するんじゃ、ブレイブよ。わし達が必ず元のお主が好きであった主人のラースに戻すからのう。それまではわし達のお城にいるんじゃ」

 

 

 

 

イレブン「コロもいるし、僕もおじいちゃんもいるからさ。ちょっとラース達に会えなくなるけど、しばらくの間だけだから」

 

 

 

 

セーニャ「お辛いと思いますが、どうか私達とラース様を信じて待っていてください」

 

 

 

 

ブレイブ「はい.........。わかりました」

 

 

 

その頃、デルカダール城下町

 

 

 

ジールとエドが見回りをしていた

 

 

 

ジール「よし、見回りはこれで大丈夫なはずだぞ。戻ってバンさん達に報告しよう、エド」

 

 

 

 

エド「城下町の見回りってつまんねーの。前にやった外の見回りの方が楽しかったぜ」

 

 

 

 

ジール「そう言うなよ、エド。これだって兵士の大事な仕事なんだからさ」

 

 

 

 

エド「仕事だからって言われてもつまらねえとなー」

 

 

 

話しながら城に戻る二人の前に数人の人達がすれ違った

 

 

 

エド「なんかいつもこの広場や商店街通ると人が大勢いるよな」

 

 

 

 

ジール「そりゃあこの城下町で一番といってもいいくらい人が集まりやすい場所だからな。これくらい当然だって」

 

 

 

 

エド「ふーん、皆ここを使うって事かー。........!?」

 

 

 

エドは近くをすれ違った一人に驚いている

 

 

 

ジール「ん?エド?どうした?」

 

 

 

ジールはエドが後ろを見続けている事を疑問に思った

 

 

 

エド「..........いや、なんでもねえ」

 

 

 

 

ジール「?そうか?まあ、戻ろうぜ」

 

 

 

 

エド「ああ(人間........か?今のやつ。どこか魔物みてえな、変な匂いがしたぞ)」

 

 

 

それから数日後

 

 

 

ラースは医療部屋ではなく、マルティナと同じ部屋で過ごしていた

 

 

 

マルティナ「どう?ラース。そろそろお城に慣れてきた?」

 

 

 

 

ラース「はい、もうバッチリです。よく教えていただくってのもあるんですけど、やっぱりこのお城も俺の家だからですかね?何となく部屋を知ってるんです」

 

 

 

 

マルティナ「それはよかったわ。でも、そろそろその口調直さない?そんなよそよそしくしなくていいのよ。もっと気楽に話してほしいわ」

 

 

 

 

ラース「それもそうですね。あっ、そうだな。イレブンさん.....イレブン達とも大分仲良くなれてきたし、ずっとこの口調ってのも変だよな」

 

 

 

 

マルティナ「ええ、その方がいいわ。ラース、今日は私と城下町に降りてみましょう。初めてでしょ?」

 

 

 

 

ラース「お城の外か!確かに初めてだ。また案内頼んでいいか?マルティナさん」

 

 

 

 

マルティナ「........ええ、もちろん。それじゃあ行きましょう」

 

 

 

デルカダール城下町

 

 

 

ラース「うわ〜......窓から見てたけど、結構広いんだな」

 

 

 

 

マルティナ「ええ、そうね。旅人なんかだとよく迷っちゃうらしいのよ。そのために案内板も作ったの」

 

 

 

 

ラース「そうなのか。でも..........この景色を見てると、どこか暗いな気持ちになるような、そんな気分ですね。不思議です」

 

 

 

 

マルティナ「そう.......よね。でも、暗くなっちゃったなら明るくいきましょう!色んなところ回ってみましょう。新しい発見があるかもしれないわ」

 

 

 

 

ラース「ふふ、そうだな。それに何か食べたくなってきた。一緒にご飯食べようぜ、マルティナさん」

 

 

 

 

マルティナ「ラースらしいわ。一緒に食べましょう」

 

 

 

その頃、大広間

 

 

 

ビルとマドリーがやって来ており、グレイグと話していた

 

 

 

グレイグ「どうしたのだ、二人とも。折角来てもらったのに悪いが、実は色々あって忙しくてな。早めに伝えてくれると助かる」

 

 

 

 

ビル「お忙しい中すみません、グレイグ様。少々気になった事がありまして、マルティナ様達にお伝えしなければと思ったんです」

 

 

 

二人は真剣な顔をしている

 

 

 

グレイグ「気になった事?」

 

 

 

 

マドリー「はい。実はここ数日、この城下町で怪しい魔力を感じるんです。この魔力が魔物特有のものでして、しかもこの魔力..........かなり強いです」

 

 

 

 

グレイグ「!?それはつまり.......凶悪な魔物が人間に化けている.....と?」

 

 

 

 

ビル「可能性はあります。場所までは特定出来ないのですが、これは私達かブレイブさんのような魔物で無ければ気づけないかと思い、報告に参りました」

 

 

 

 

マドリー「そういえば.......この城から魔物の気配がありませんね。ブレイブさんは?」

 

 

 

 

グレイグ「数日前から用で城にいない。ビル達が報告に来てくれなければわからなかっただろう。ありがとう、二人とも。皆に報告して、対策をしておく。もし本当なら大変な事になる前に手を打たなければ」

 

 

 

 

ビル「そうだったんですね。お力になれたようで何よりです。それではお忙しい中失礼しました」

 

 

 

 

マドリー「お仕事頑張ってくださいねー」

 

 

 

ビルとマドリーは去っていった

 

 

 

グレイグ「城下町に魔物か。急いで皆に報告しなければ。まずは王と姫様達からだな」

 

 

 

グレイグは玉座の間に向かっていった

 

 

 

その頃、ラース達は

 

 

 

ラース「おお!美味いな、この肉!」

 

 

 

ラースは酒場で大きな肉にかぶりついていた

 

 

 

マルティナ「(よかった。少しずつだけど、ラースらしくなってきてるわ。このまま......思い出していけばいいけど。もし.......本当に記憶が戻らなかったら私は.........いつまで頑張れるかしら)」

 

 

 

マルティナはラースを見ながら少し気持ちが暗くなっていた

 

 

 

ラース「マルティナさん?」

 

 

 

マルティナが気付くとラースが心配そうにマルティナを見ていた

 

 

 

マルティナ「あ.....。ご、ごめんなさい、ラース。どうしたの?」

 

 

 

 

ラース「考え事してたのか?なんか........悲しそうな顔してた」

 

 

 

 

マルティナ「そ、そうだった?心配かけてごめんなさい、ラース。なんでもないのよ(私の馬鹿、ラースに迷惑かけちゃ駄目じゃない)」

 

 

 

 

ラース「んー........心配ってより、俺はマルティナさんのその顔、凄く嫌だったな」

 

 

 

 

マルティナ「..........え?」

 

 

 

 

ラース「さっきの悲しそうな顔だよ。その顔見たら俺、何だか凄く嫌だった。なんでかはわからねえんだけど、マルティナさんにその顔は似合わねえなって思った」

 

 

 

 

マルティナ「ラース.............。ふふ、そうよね。ごめんなさい、ラース。嫌な思いさせて。私ももう少し食べようかしら」

 

 

 

 

ラース「あ、笑ってくれた。俺、マルティナさんのその笑ってる顔、好きだぜ。安心するっていうか、暖かい気持ちになれるんだ」

 

 

 

 

マルティナ「(そう。ラースは全部忘れてるんじゃない。全部覚えてるわ、どんな事も全部。ただ、今は少しだけ思い出せないだけ。必ずラースなら記憶を取り戻してくれる。それまでは頑張らなきゃ)」

 

 

 

その後、商店街

 

 

 

ラース「色々あるんだな、人も多くて賑やかで楽しそうだ」

 

 

 

 

マルティナ「そうね。こうやって皆が楽しく過ごしてくれてると王女としても嬉しいわ。あ、ラースあっちにアイスが売ってるわ。一緒に食べましょう」

 

 

 

 

ラース「お!いいな、食べようぜ」

 

 

 

 

マルティナ「私はミントにしようかしら。ラースは何が食べたい?」

 

 

 

 

ラース「俺はオレンジかな。美味そうだ」

 

 

 

 

マルティナ「わかったわ、じゃあ私が頼んでくるわね。ラースはそこのベンチで待ってていいわよ」

 

 

 

 

ラース「ありがとな、マルティナさん」

 

 

 

ラースとマルティナは分かれてラースは奥のベンチに座った

 

 

 

ラース「(マルティナさん、明るくて面倒見がよくて優しい人だな。一緒にいると楽しくなれる。マルティナさんだけじゃない。イレブンさん達全員優しいし、明るいいい人達ばかりだ。そんな人達に囲まれていた俺は........どんな人だったんだろうか)」

 

 

 

ラースが一人で考え込んでいると

 

 

 

???「ちょっといいかな?」

 

 

 

 

ラース「え?」

 

 

 

白い服を着た老人が話しかけて来た

 

 

 

???「ラースで合ってるよね?」

 

 

 

 

ラース「?俺がラースだけど......」

 

 

 

 

???「見つけた。ふんっ!」

 

 

 

老人はラースの胸に手を当てると、そこに力を込めた

 

 

 

ラース「え?..........うぐっ!」

 

 

 

ラースは突然胸を押さえてうずくまった

 

 

 

老人「冷たい冷たい、氷に包まれろ。さて、ラース、私についてくるがいい」

 

 

 

 

ラース「...............はい」

 

 

 

体を起こしたラースからは目に光が無くなっていた

 

 

 

老人「ヒヒヒヒ」

 

 

 

老人とラースはどんどん歩いていく

 

 

 

マルティナ「お待たせ、ラース......って、ラース?」

 

 

 

マルティナは辺りを見渡している

 

 

 

マルティナ「どこいったのかしら?ここで待っててって言ったのに。..............あら?あの後ろ姿、ラースだわ!どこに行くのかしら」

 

 

 

マルティナは少し離れた人混みの中にラースを見つけ追いかけていく

 

 

 

広場

 

 

 

エド「チェッ!また俺が見回りかよ。しかも今度はこの魔物の掲示板も変えなきゃいけないなんてよ。まあ簡単だからいいけどよ、俺は早く特訓してえのに。

 

 

 

...........ん?あそこにいるのってラース.....将軍?なんでここに。確か記憶がどうのこうのって。しかも近くにいるやつ........変な匂いがするな。あ、マルティナ.......様もいる。ははーん、わかったぞ。デートってやつか!人間の女と男はよくやるってじじいが言ってたしな」

 

 

 

 

 

 


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