???「お、きたきた」
そこには黒いスーツに赤い蝶ネクタイをつけて、帽子を深く被ったラースより少し大きめの男性が立っていた
顔は帽子を深く被っているせいで見えない
マルティナ「........ごめんなさい、今お城開けますね」
グレイグ「城に用事か?すまないが顔を確認させてほしいのだが」
二人は顔の見えない男性を怪しんでいる
ラース「...............」
ラースはその男性を驚愕の顔で見つめていた
???「まあそうだろうな。だが、確認は必要ないはずだぜ。もうわかってるやつもいるみたいだしな」
謎の男性はラースの元へ歩いていく
ラース「お、お前........」
???「久しぶりだな、俺の事覚えてるだろ?」
マルティナ「?ラースの知り合い?」
グレイグ「ラース?大丈夫か?様子がおかしいぞ」
ラース「なんで........」
???「おいおい、今日はハロウィンだぜ。それに、まさか忘れたのか?お前のライバルの顔をよ」
謎の男性はそう言うと帽子を取った
マルティナ「あ!!あなたは!」
グレイグ「なんだと!!」
ギルグード「久しぶりだな、ラース。元気そうで安心したぜ」
ラース「ギルグード!!!」
ラースは肉を放り投げてギルグードに飛びついた
ギルグード「おっとと、って!肉捨てんなよ!!」
ギルグードはラースを受け止めながら投げられた肉もキャッチした
ラース「そうか!!ハロウィンだもんな!!またお前とこうして話せて嬉しいぞ!!」
ギルグード「今日限りだけどな。本当ならじいさんのはずだったんだが、俺に役目を渡してくれてな。代わりに俺がきたってわけだ」
ラース「へへ、へへへ。じいちゃんの方が嬉しかったけどな。ギルグードでも別にいいや」
ラースは涙を流しながら笑っている
ギルグード「あ!!てめえ、そんな事言うのか!」
ラース「久しぶりだ、ギルグード!おかえり!」
ギルグード「!?...........ああ、ただいまだ。ラース」
デルカダール城 客室
マルティナ「はい、紅茶でよかった?コーヒーもあるわよ」
ギルグード「あ、いえ、気にしなくて大丈夫っすよ」
グレイグ「しかし、どうしてお前がここに?お前は死んだはずだろう?」
ラース「ガラッシュの村にもハロウィンはあったんだ。だが、今日のようなお祭りではなくて、そのハロウィンは死者を招くものだったんだ」
二人「死者を招く?」
ギルグード「俺達の村でハロウィンというのは、一年に一度命の大樹から死者が自分の家族や友人の家を訪ねるものだったんです。その日一日だけは選ばれた死者と生者がこうして一緒の時を過ごすんです」
マルティナ「そんな日だったの。だからさっきの理由がハロウィンだから、なのね」
ギルグード「はい。だから俺は早速ガラッシュの村に行ったら誰もいなくてですね。ラースがいるであろう場所、デルカダール城下町に来たんです。歩いてくるの結構大変だったんです」
ラース「祭りに浮かれてすっかり忘れてたぜ。悪いな、ギルグード」
ギルグード「てめえ、俺だったからよかったものの本当にじいさんだったらここまで絶対来れないからな。あの何もない村にずっと一人でハロウィンを過ごす事になってたんだぞ!わかってんのか!?」
ラース「ぐ......」
ギルグード「まあいいけどよ。それにしてもこうして話すのは初めましてですね、マルティナさん、グレイグさん。いや、一度俺が死ぬ前にグレイグさん以外の勇者様達とは話していますが、あれはまあ、ノーカウントで」
マルティナ「そうね。知ってるとは思うけど、デルカダール王国で王女をやってるラースの妻、マルティナよ。よろしくね、ギルグード」
グレイグ「俺はここで王の騎士をしているグレイグだ。以後よろしく頼む」
ギルグード「じゃあ俺も自己紹介しないとだな。俺はガラッシュの」
ラース「ガラッシュの村で守人をやってたギルグード。俺のライバルであり、親友だ。因みに恋愛経験無し。女性を前にすると途端に気持ち悪い性格になるやつだ」
ギルグードに割り込んでラースが紹介をした
ギルグード「てめえ.......なにいらねえ情報まで言ってんだよ!!マルティナさんに変なやつみたいに思われたらどうしてくれんだ!!」
ラース「お前なんか変なやつでいいんだよ!!俺のマルティナに変な気を起こしてんじゃねえぞ!!」
マルティナ「大丈夫よ、ギルグード。別に変なやつなんて思ってないし、昔のラースから救ってくれたのはあなたでしょ?一度ちゃんとお礼を言いたかったの。ありがとう、ラースを友達にしてくれて」
グレイグ「懐かしいですね。確か村にあるあの大樹の場所でギルグードがラースに声をかけたのが始まりでしたな」
ギルグード「へ?えっと.........なんでそれを?」
ラース「あー、色々あって俺の幼少期の記憶を見られたんだ」
ギルグード「な、なるほど。まさか感謝されるとは思ってもなかったぜ。でもなマルティナさん、ちょっと勘違いしてるぜ。確かにこいつとは親友だけどよ、それよりもライバルって感覚の方が大きい。仲良しこよしってわけじゃねえんだぜ」
ラース「俺だってお前と仲良しこよしなんてしてたまるか」
グレイグ「よかったらギルグードも夕飯を一緒に食べないか?王や子ども達、ブレイブもいるがもてなすぞ」
ギルグード「いや、俺は死人だからな。食べ物はいらないんだ。腹が空くとかなくなったからよ。でも、折角来たんだ。食事はいらないが、一緒にはいようかな」
マルティナ「わかったわ。色々お話しましょうね」
その夜、バルコニー
ラースとギルグード、マルティナは三人でお酒を飲んでいた
マルティナ「今日は月が綺麗ね。月見酒だわ」
ギルグード「羨ましい.....。俺も酒をまた飲みてえ」
ラース「羨ましいだろ〜、ほ〜れ、ほ〜れ」
マルティナ「もう、ラース。あまりからかわないの。かわいそうじゃない。それなら今度お墓にお酒持っていくわね」
ギルグード「いや、流石にそこまで気を使わないでください、マルティナさん。こいつのじいさんからも言われたんです。偶に程度で構わないって」
ラース「それにしてもなんだか丸くなったな、ギルグード。もっと前までは突っかかってただろ」
ギルグード「まあな。だが.........お前が心の中で俺や村の事をずっと気にしてたのを見て、こう........気持ちが変わったというか、俺の想像以上に重く捉えてた事が気になってな。偶には穏やかに過ごしてやるのもいいなと思ったんだ」
ラース「ギル.......」
ギルグード「はは、俺に湿っぽい話は似合わねえな!楽しく行こうぜ!あ、そうだマルティナさん!こいつの幼少期の恥ずかしい話教えてあげますよ!」
ラース「あ、馬鹿!!何言おうとしてんだ!」
マルティナ「ふふ、そんなのあるの?気になるわね」
ギルグード「こいつの初恋なんですけど、村の女の子に猛アピールした上で」
ラース「馬鹿ギルー!!!」
ラースは顔を赤くしながらギルグードに殴りかかった
ギルグード「あっぶねっ!!」
ラース「てめえ、人の黒歴史を嬉々として話そうとすんじゃねえよ」
ギルグード「ハッハッハッ!悪い、悪い。口が滑っちまった。お、摘みがなくなってんぞ。ほら、ラース。持ってこいよ、まだ飲むんだろ?」
ラース「誰がそんな手に乗るか!その隙に話す気だろうが!」
ギルグード「いやいや、話さねえから。ほら、行ってこいって」
マルティナ「まだお酒残ってるし、お酒だけってのも体に悪いわ。私が行くわ」
ギルグード「いやいや、女性が動く必要なんてないですよ。ほら、早く行けって」
ラース「チッ!絶対話すなよ!」
ラースは渋々バルコニーから走ってキッチンに向かった
ギルグード「いやー、すみませんね、マルティナさん。あんなやつのどこに惚れたのか俺には全くわかりませんけど、いつもラースを支えてくれてありがとうございます」
マルティナ「そんな事ないわ。私だってラースに支えてもらってばかり。ラースは私をただのマルティナでいさせてくれるの。王女とか、姫とかそんな外見だけじゃなくて中身のままでいさせてくれる。それがとっても嬉しいのよ」
マルティナは優しく笑ってそう言った
ギルグード「........そうですか。マルティナさんにとってラースが必要不可欠なのはよくわかりました。あいつは変に周りに気を使うし、色々先回りしたりするくせ自分の事は蔑ろにするやつですけど、これからもどうか、馬鹿で不安定なあいつを支えてやってください」
ギルグードもマルティナに釣られて優しく笑い、バルコニーから月を見上げた
ギルグード「そろそろ時間切れみたいです」
ギルグードの体からは光が出ていた
マルティナ「やっぱり。なんとなくラースを無理矢理追い払うように見えたから。.............ラースには別れを伝えないの?」
ギルグード「はい。あいつとの別れは本来なら俺が死んだ時に済ませました。二度も必要ありません。また悲しませるわけにはいかない。俺も、じいさんも、ガラッシュの村の全員が皆さんを見守っています。いつまでもお幸せに」
そう言うとギルグードの姿はなくなった
バタン!
それと同時にバルコニーの扉が強く開かれた
ラース「ハァ.......ハァ。マルティナ、その話は嘘だからな!!........あ、あれ?ギルグードは?」
ラースが額に汗を浮かばせながらやってきた
マルティナ「もう帰っちゃったわ。時間切れだったみたい」
ラース「へ........。な、なんだよ、それならそうと言えばいいくせに。しかもカッコつけて俺のいないうちに去るなんてよ。ちょっとくらいお別れを言わせろよな」
ラースは少しキョトンとした後、バツが悪そうな顔をした
マルティナ「本来なら彼が死んだ時に別れは済ませたから二度も必要ないって、悲しませたくなかったみたいよ。ガラッシュの村全員が私達の幸せを見守ってくれてるんですって、嬉しい限りだわ。そんなにも私達を、ラースを想ってくれてるなんてね」
ラース「そうか。...............もう少しくらい一緒にいたかったぜ」
ラースは弱々しく呟いた
マルティナ「ラース.........。ねえ、ガラッシュの村での話、聞かせて。二人はよくどんな遊びしてたの?」
ラース「え?構わないが、どうした?突然」
マルティナ「だってそうやって思い出を話していれば、記憶の中の彼と一緒にいれるわ。それじゃあ駄目かしら?」
ラース「............はは、そうだな!流石マルティナだ!いいぜ、どんどん話してやるよ。俺達はな、よく村の奥に山に続く林があってな。そこで遊んでたんだ」
楽しく話す二人を月は静かに照らしていた。まるで、見守るかのように
ハロウィンは本来死者が自分の家族を訪ねてくるそうです。それと同時に発生する悪霊などから身を守るため仮装をしていたそうです。一部そこから派生させてみました。