半年後、デルカダール城
訓練場
ラース「俺が明日から三日間、クレイモラン王国に指導でいなくなるんだ。だから何かあったらグレイグに言ってくれ」
兵士達「はい!」
バン「師匠!お土産はありますか!?」
ラース「はいはい、覚えてたら全員分何か買ってきてやるよ」
バン「やった!」
ベグル「またお前はそうやってラース将軍に無理言いやがって」
ラース「ただし!バンがその三日のうちに書類を提出していたら、の条件つきだ」
全員「ええ!!」
全員の視線がバンに集中した
バン「うげ......。色々プレッシャーがかかってる」
ギバ「こりゃあどうなるか怪しいもんだな」
ガザル「明日には忘れてそうだ。お土産は無いものと思っておこう」
ロベルト「見習い達のお土産もかかってるぞ、バン。頑張れよ」
ラース「まあ集まってもらってすまなかったな。それじゃあ各自戻ってくれ」
その夜、グラジー
閉店後の片付けも終わった頃、ビルとマドリーから皆に提案をしていた
チャム「お塩?」
マドリー「そうなの、今日で切らしちゃってね。買ってもいいんだけど、どうせなら取りに行きましょうよ」
グリー「取りに行くってどこにですか?」
ビル「質がいいものであればナギムナー村やクレイモランなのだが、そこは流石に遠いし、俺達が作る料理とは少し違う味になる。デルカダール料理を作るための塩はデルカコスタ地方で取れる。
この地方特産の塩はまあまあ貴重でな。しかも、デルカダール料理を作るにはうってつけの味わいが出せるんだ。だから明日の昼を休んで、その時に取りに行こう」
マヤ「ここでも塩って取れるんだ。じゃあデルカコスタ地方に行くって事だね」
テルマ「塩にこだわってるんですね。そんな料理の味が変わるほどなんて少し想像しにくいですけど」
マドリー「調味料って大事なのよ。料理の決め手といっても過言じゃないわ。近いし、魔物も少ないから皆で楽しく行きましょう」
チャム「うん!皆でピクニック!」
グリー「ふふ、そう考えると楽しそうですね」
ビル「それじゃあ明日各自準備してきてくれ。明日の昼前には出発しよう」
全員「はい!」
次の日、デルカダール地方
チャム「〜♪」
チャムは楽しそうにスキップをしている
マドリー「ふふ、楽しそうね、チャムちゃん」
チャム「うん!こんなに大勢でお出かけしたの初めてなの。いつもお兄ちゃんと二人きりだったから」
マドリー「そうなのね。じゃあいい思い出にするようにしましょう」
グリー「テルマ君もこんなに大勢は初めてって事?」
テルマ「はい。だから俺も少しウキウキしてます。こんな年にもなって、ですけど」
テルマは少し恥ずかしそうにしているが、口元は上がっている
マヤ「そんなの気にしないよ。私だってこうやって皆でお出かけするの楽しいよ!」
グリー「僕もだよ。同じ仕事仲間ってのもあるけど、やっぱり皆と仲良くいたいからね。こうやって手を繋いでみるのもいいんじゃない?」
グリーはテルマの手を握った
テルマ「へへ、そうですね。チャムー、兄ちゃんと手を繋ごうぜー」
チャム「あー、グリーさんと手繋いでるー。いいなー、私もー」
マヤ「ふふ、じゃあ私も」
マドリー「あら、楽しそうじゃない。私も混ぜて」
チャム「えへへ、皆仲良し!」
テルマ「ビルさんも入りましょうよ」
ビル「............」
ビルは少し険しい顔をしている
テルマ「ビルさん?」
ビル「ん?ああ、すまねえ。考え事を、って何してんだ?」
マドリー「皆で手を繋いでいたの。楽しいわよ、ビル。そんな怖い顔してないであなたも」
ビル「あ、ああ。(魔物が少ない地方とはいえ..........こんなに見なかったか?)」
その頃、デルカダール城下町
バンとベグルが見回りにきていた
ベグル「いいな、バン。どこにも行かずに来いよ。お前の見回りはいっつも時間かかりすぎなんだからな」
バン「おう!」
ベグル「返事だけはいいんだからよ。さて、今日の魔物調査はどこまでいく?...........あ?」
ベグルが振り返ると既にバンがいなくなっていた
ベグル「あんの....馬鹿野郎が。言ったそばから!」
商店街
バンは肉売り場にいた
バン「おっちゃん!これ、新しいやつか!?」
おじさん「ん?おお、バンじゃねえか。相変わらず目敏いやつだな。そうだぜ、昨日出た新商品だ」
バン「美味そー!」
バンの目はキラキラしている
おじさん「ははは、だろ?自慢の商品だからな。なんなら少し味見してみるか?」
バン「いいのか、おっちゃん!ありがとな!」
バンは肉屋のおじさんから新商品をもらった
肉は薄く切られており、甘い香りのするタレが絡まっている
バン「うん!!美味い!!」
おじさん「はっはっは!相変わらずいい顔して食ってくれるな、バンは」
その時、バンの後ろからベグルがやってきた
ベグル「見つけた!!」
バン「あ.......」
ベグル「てめえ、人が話してた側からいなくなりやがって本当お前は寄り道ばっかり」
おじさん「ベグルさんか。あんたもよかったらどうだい?うちの新商品味見していってくれよ」
バン「そ、そうだぞ、ベグル!俺はいい匂いがしたからうっかり釣られちまっただけだ!これ、美味いから食ってみろよ!」
ベグル「.........ハァー。ったく、それじゃあありがたくもらいますね。..........おお、美味いな。肉にこのタレが凄くあってる」
バン「だよな!おっちゃん、これ売れるぜ!俺が保証する!」
おじさん「はっはっは!兵士長様からのお墨付きはいいもんだ!それじゃあ仕事の邪魔したみてえで悪かったな。見回り頑張れよ!」
バン「ああ!おっちゃんもファイトだぜ!」
ベグル「ごっそさん。ほら、さっさと行くぞ、バン」
デルカダール地方
ベグル「全く。街の人と仲良しなのはいい事だが、仕事を放ったらかしにすんじゃねえぞ」
バン「わかってるって!あれ食べたら俺も行こうと思ってたんだ」
ベグル「はっ、どうだか。お前の事だから近くにあった野菜のおばさんや花屋の婆さんにも話しかけられそうだ」
バン「だってよ、話しかけられたら無視するわけにはいかねえだろ」
ベグル「それはそうだけどよ.............ん?」
バン「ん?どうした、ベグル?って、なんだこれ」
二人が歩いていた草むらには大きな跡がついていた
バン「何かの跡?結構大きいな」
ベグル「これ.......足跡だ。魔物の足跡」
バン「ハァ!?こんなデケエ足を持ってるやつなんて、この地方にいねえはずだぞ!」
ベグル「だな、何かおかしいぞ。幸い跡が続いてる。これを辿ってみるぞ」
数分後
バン「魔物も見かけないと思ってたら端っこにももんじゃやスライム達、木の影にいっかくうさぎやマンドラ、上におおがらすが隠れている。何かに怯えているみたいだぞ」
ベグル「いっかくうさぎやおおがらすなんかは自身の縄張りがあるやつらだ。それを無視してまで隠れる程の何かがいたって事か。この足跡、デルカコスタ地方に向かってる」
バン「俺達二人でどうにかなるか?」
ベグル「万が一もある。ダバンとギバも呼ぶぞ」
バン「そうだな」
その頃、デルカコスタ地方 海岸
チャム「海ー!」
テルマ「ソルティコでは当たり前だった海もしばらく見てないと懐かしく感じますね」
グリー「マヤさん、また一緒に海に入ろうよ!」
マヤ「うん!テルマもチャムもおいでよ!」
四人は海に入って遊び始めた
ビル「なあ、マドリー」
マドリー「流石にわかってるわ。早い所逃げ出さないと」
ビル「何処からだ、この恐ろしい気配は」
マドリー「デルカコスタ地方にこんな強い気配はあり得ない。いえ、この気配の強さ、ロトゼタシア全体でも相当のもの」
ビル「チッ!こんな時に限ってこんな事に巻き込まれるとは」
マドリー「いざという時は..........私達が」
ビル「ああ、当然だ。時間稼ぎにはなってほしいものだが」
チャム「マドリーさーん、ビルさーん、見てみてー、ヒトデがいたの!」
チャムがこっちに向かってきた
マドリー「.....あら、本当だわ。チャムちゃんはヒトデ触れるのね」
チャム「うん!グリーさんがこれ怖がってたんだよー。変だよね」
ビル「ふっ、グリーらしいな。だが、あまりはしゃぎすぎるなよ。海にも魔物はいる。気をつけておけ」
チャム「うん!」
その頃、デルカダール城 玉座の間
二人「巨大な魔物の足跡!?」
バン「はい!魔物達も隅で怯えておりました。今デルカコスタ地方には確認された事のない魔物がいると予想されます」
マルティナ「グレイグ、頼める?」
グレイグ「お任せください。バン、全兵士を連れて行くぞ」
ブレイブ「ガウ!ガウガウ」
ブレイブはマルティナ達の前にやってきた
グレイグ「どうした?ブレイブ」
バン「あ、ブレイブもとても強烈な気配を感じるって言ってます。ブレイブも力になるそうです」
グレイグ「そうか。それならば頼らせてもらおう、ブレイブ」
ブレイブ「ガウ!」
マルティナ「ラースも呼び戻した方がいいかしら」
グレイグ「いえ、その必要はありません。ラースは今自分の仕事をしておられます。ならば、私には私に出来る今の仕事をこなすのみ」
マルティナ「そうね、わかったわ。でも、もし何かあったら連絡して。ラースも呼ぶし、私も行くわ」
グレイグ「はっ!」