ドラゴンクエストⅪ 魔法戦士の男、恋をする   作:サムハル

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恐怖

その後、デルカダール城 玉座の間

 

 

 

グレイグ達はマルティナに先程の出来事を報告していた

 

 

 

マルティナ「ゴライアスですって!?どうしてそんな魔物がここに!?」

 

 

 

 

グレイグ「お気持ちはわかりますが、どうか落ち着いてください、姫様。理由は不明です。後ほど検討していきましょう」

 

 

 

 

マルティナ「そ、そうね。取り乱してごめんなさい」

 

 

 

 

ベグル「重傷者は二名。ビルとマドリーが意識不明で、魔物の姿で倒れていたため治療が少々手を焼いているようです」

 

 

 

 

マルティナ「ビルとマドリーが!?どうしてその二人が、しかも魔物の姿って」

 

 

 

 

グレイグ「マヤ達はグラジーのメンバー全員で塩を取りに偶然デルカコスタ地方を訪れていたようです。そこを襲われたそうです。ビルとマドリーでマヤ達が逃げるための時間を稼いだのだと思われます」

 

 

 

 

マルティナ「じゃあマヤちゃん達は無事なのね。二人には助けられたわね。後でお見舞いにいきましょう」

 

 

 

 

ベグル「報告は以上になります」

 

 

 

 

マルティナ「わかったわ、ありがとう。大きな被害が出る前に対処できて本当によかったわ。よくゴライアスなんて難敵を倒せたわね。流石ラースに育てられただけあるわ」

 

 

 

 

グレイグ「全員が素晴らしいコンビネーションを見せてくれたのです。私が出る幕などありませんでした」

 

 

 

 

マルティナ「そんなに!?本当に凄いわ、ラースにも報告しましょう。絶対喜んでくれるわ。でも大変だったでしょう。ゆっくり休んでて」

 

 

 

 

ベグル「て、照れますね。それではこれで失礼します」

 

 

 

その頃、医療部屋

 

 

 

包帯が巻かれたマドリーとビルが横になっていた

 

 

 

その姿は魔物のままとなっている

 

 

 

近くにはマヤ達が二人の様子を見ていた

 

 

 

テルマ「まだ.......信じられないですけど、本当にビルさんにマドリーさんなんですか。魔物だったなんて」

 

 

 

 

チャム「さっきの魔物、物凄く怖かった」

 

 

 

チャムは先程のゴライアスを思い出して泣きそうになっている

 

 

 

グリー「そうだよね、僕も怖かったよ。でも、ほら。ビルさん達が守ってくれたよ。それにグレイグさん達が倒してくれたからもう大丈夫」

 

 

 

 

チャム「でも.........目を覚まさないよ、二人とも」

 

 

 

 

マヤ「........ちょっとお昼寝しちゃってるだけだよ。大丈夫、少ししたら絶対起きるからさ。それまでは待ってよう、ね?」

 

 

 

マヤはチャムの手をそっと握りしめた

 

 

 

チャム「.........うん」

 

 

 

 

テルマ「..........少し外に出てきます」

 

 

 

ガチャ

 

 

 

テルマは部屋から出ていった

 

 

 

グリー「テルマ君、大丈夫かな。あれから随分静かだけど」

 

 

 

 

マヤ「まだ信じられないのかもしれないよ。いきなりだったからね」

 

 

 

大広間

 

 

 

テルマ「.............」

 

 

 

テルマは階段に座り込んでいた

 

 

 

テルマ「(俺、チャムに守ってやるとか言って、結局自分も守られてた。あの魔物相手に恐怖で体も足も震えて、逃げるのがやっとだった。ビルさんとマドリーさんが体を張ってくれなかったら今頃.........。

 

 

 

ビルさんとマドリーさんも.........死んじゃうのかもしれない。誰にも......死んでほしくなかったのに。こんなにも死が怖いなんて)」

 

 

 

 

テルマ「俺、弱すぎるだろ」

 

 

 

 

エド「そんな事ないだろ」

 

 

 

テルマの後ろにはいつのまにかエドがいた

 

 

 

テルマ「のわああああっ!!!」

 

 

 

 

エド「〜〜!!うるっせえな!叫ぶなよ、突然!!ビックリしたわ!」

 

 

 

エドは耳を押さえている

 

 

 

テルマ「こっちのセリフだ、馬鹿野郎!急に人の背後に現れやがって!」

 

 

 

 

エド「声かけたわ!無視したのはテルマだろ!」

 

 

 

 

テルマ「そ、そうだったのかよ。悪かったな」

 

 

 

 

エド「考え事か?いい考え事はしてなさそうだったけどな。テルマが弱すぎるって事ないぞ。俺はお前は充分強いと思うぜ」

 

 

 

 

テルマ「..............エドには、元から強いやつにはわからねえよ」

 

 

 

 

エド「なんだよ、折角相談にのってやろうと思ってたのに」

 

 

 

 

テルマ「...........さっきな、デルカコスタ地方で」

 

 

 

テルマはポツポツとさっきの出来事を話し始めた

 

 

 

エド「へ〜、テルマの店のおっちゃんと姉ちゃん変な匂いすると思ったらやっぱり魔物だったのか!」

 

 

 

 

テルマ「それでよ、俺はもう誰にも死んでほしくないんだ。誰かが死ぬ体験はもうしたくない」

 

 

 

 

エド「.........何言ってんだよ、テルマ。お前、甘い事考えすぎだ」

 

 

 

 

テルマ「え?」

 

 

 

 

エド「人も魔物も死ぬぞ。誰かに止められてとか関係なくな」

 

 

 

 

テルマ「!!なんで、そんな事」

 

 

 

 

エド「そんな事?馬鹿かよ、テルマ。俺達は生きてるんだから死ぬのも当然だ。そんなのもわからなくなったのか?」

 

 

 

 

テルマ「そういう話じゃない!!俺は!!魔物にも、人間にも、俺の周りの人間が殺されてほしくないんだよ!!」

 

 

 

 

エド「そんなの夢物語だろ。それはテルマのわがままだ。人間は死ぬ、魔物でも変わらない。殺されるか病気か年齢か。それがこの後か、明日か明後日か。そんなのわからない。だか」

 

 

 

バギイッ!

 

 

 

テルマ「黙れ!!」

 

 

 

テルマは話しているエドを殴った

 

 

 

テルマ「黙れ!!黙れ!!黙れ!!!大事な人が死んでほしくないって願って何が悪いんだよ!そんな感情すらも持ち合わせてねえのかよ、お前は!この化け物が!!」

 

 

 

 

エド「!!!」

 

 

 

 

テルマ「ハッ........。俺、今なんて......」

 

 

 

 

エド「............」

 

 

 

 

テルマ「エ、エド?悪い、本音じゃ」

 

 

 

 

エド「はっ、悪かったな、化け物で。お前は俺の事を人間として見てくれてると思ってたのは俺の勘違いだったみてえだな。じゃあな」

 

 

 

エドは訓練場へ走っていった

 

 

 

テルマ「あ............。くそ、なんであんな事を」

 

 

 

その夜、グレイグの部屋

 

 

 

コンコン

 

 

 

グレイグ「む?誰だ?」

 

 

 

 

テルマ「グレイグ将軍、いらっしゃいますか?マヤさんに部屋はここだって」

 

 

 

 

グレイグ「テルマか、入っていいぞ」

 

 

 

 

テルマ「あ、よかった。失礼します」

 

 

 

ガチャ

 

 

 

グレイグ「どうしたんだ。俺に用事か?」

 

 

 

 

テルマ「用事っていうほどの事じゃないんですけど、少し悩み事があって」

 

 

 

 

グレイグ「そうか。構わないぞ」

 

 

 

 

テルマ「ありがとうございます。あの........今日、魔物に襲われてビルさん達が俺達を逃してくれた時、思ったんです。ビルさん達に死んでほしくないって。

 

 

 

俺、ビルさんもマドリーさんもマヤさんもグリーさんも、もちろんグレイグ将軍や皆さんも大事な人なんです。そんな人達が死んでしまうのは嫌なんです。もうあんな気持ちになりたくないから」

 

 

 

 

グレイグ「........ご両親の事か」

 

 

 

 

テルマ「そうです。俺の両親が死んでから、大事な人の死が凄く身近に感じて、怖くて、ふとした瞬間にもう二度と会えなくなっちゃうんじゃないかって思う事があるんです。死が......怖いんです。全てを奪う死が。

 

 

 

だから俺は誰にも死んでほしくないのに、それなのにエドは、人は死ぬって言うんです。死んでほしくない人とか関係なく、死はやってくるって。そんなの.........わかってるのに」

 

 

 

 

グレイグ「俺も死は怖い。だが、今のテルマは、死を恐れているというよりも恐怖しているな。一度味わった死の絶望感から抜け出せていない。大切な者の死によって酷く傷ついたのはわかる。だが、今のテルマは生きている。大地を歩き、息をして、こうして生きている。

 

 

 

死によって失ったものも多いだろう。だが、テルマに残されたものはなんだ。よく思い返してみろ。失ったものばかりではないはずだ」

 

 

 

 

テルマ「俺に残されたもの........。チャム」

 

 

 

 

グレイグ「それだけじゃないはずだ。今のテルマの周りには誰がいる」

 

 

 

 

テルマ「ビルさん、マドリーさん、マヤさん、グリーさん、グレイグ将軍、シルビアさん、ラース将軍、マルティナ様...........エド」

 

 

 

 

グレイグ「そうだ。その者達のためにも恐怖を乗り越えるのだ。死を恐れるなとは言わん。だが、怖がるな。飲み込まれてしまわないように足掻くのだ。生きて、生きて、生きるのだ。生きる強さを手に入れるんだ」

 

 

 

 

テルマ「生きる強さ.....。俺、強くなんて」

 

 

 

 

グレイグ「ならば、これから強くなっていけばいい。急に強くなれなんて無理な話だ。ゆっくりと強さを身につけていこう」

 

 

 

 

テルマ「.........強さ............。強くなれば、この恐怖もなくなりますか?」

 

 

 

 

グレイグ「それはテルマ次第だ。テルマがどれだけ本気で強くなれるかにかかっているぞ」

 

 

 

 

テルマ「............決めました!俺、強くなります!生きるために、今俺の周りにいてくれる大切な人達のために、強くなります!!」

 

 

 

 

グレイグ「ああ、その意気だ。もしテルマがよければ、兵士達との訓練に混ざってみるか?見習いと似た扱いにしていれば、武器も体の鍛錬も出来るぞ」

 

 

 

 

テルマ「い、いいんですか?」

 

 

 

 

グレイグ「俺は歓迎だ。だが、ラースにも相談しないとな。それとバイトの方はいいのか?」

 

 

 

 

テルマ「夜の酒場の時に出ます。それにしばらくはビルさん達の怪我が治るまでお休みです。昼はチャムに任せてしまいますけど」

 

 

 

 

グレイグ「そこもよく相談しておくのだぞ」

 

 

 

 

テルマ「死を恐れるな、俺。そのために俺は、強くなる!」

 

 

 

 

グレイグ「それと、先程の話からするとエドと喧嘩したのか?」

 

 

 

 

テルマ「は、はい。俺が........悪いんです。つい、心にもない事を言ってエドを失望させました」

 

 

 

 

グレイグ「感情が昂っていたのだろう。謝ったのか?」

 

 

 

 

テルマ「.........いえ、まだです」

 

 

 

 

グレイグ「ふむ.........。まあ急げとはいわないし、どうするかはテルマ次第だが、もしエドと友人であり続けたいのなら言葉の一つや二つかけてやるべきだ。勘違いをそのままにしていてもいい事など何もない。それが今後を分ける永遠の溝となってしまう前にな」

 

 

 

 

テルマ「はい!」

 

 

 

 

 

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