ダバンとケニーの家
ダバン「小さくて悪いな。デルカダールのような、あまりいい暮らしをしていたわけじゃないんだ」
ダバンが案内した家は周りより二回りほど小さく、寂れていた
一部屋しかなく、質素なキッチンに居間、トイレと風呂が一緒になった狭い家になっている
バン「別に構わねえよ。ダバンがここに住んでいたっていうのは意外だったけどな」
ダバン「そうか?まあデルカダールでの暮らしを見てればそう感じるかもな。さて、ケニーの事はわかったと思うが俺の実の弟なんだ。親は........ずっと昔に死んだ。10代の頃から二人でここで暮らしてきたんだ」
バン「ふーん」
ダバン「はは、興味ないって感じだな。まあそこは置いておこう。俺はケニーにいつもこう言っていた。頑張れば幸せがやってくる。だから頑張る事を続けていけばいつか必ず報われる、ってな。俺自身、その言葉に縋り付くように生きてきた。
そうして大きくなるにつれて、俺は誰かを守りたいと思うようになった。初めはケニーを、そこから俺達のような暮らしをしているやつが苦しまないようにしたいと発展していった。だから兵士になろうって決めたんだ」
バン「ダバンが兵士を目指すきっかけはケニーだったのか。まあ大事な弟なんだもんな」
ダバン「ああ、そうだ。だが、そのためにはグロッタの街から離れないといけない。そうしたらケニーは一人になる。俺は酷く心配したんだが、ケニーはどうやらわかっていたみたいでな。俺と約束してくれたんだ」
バン「約束?」
ダバン「必ず俺と同じ兵士になってまた一緒に暮らすんだ、と。そうすれば俺はこの目標を目指して頑張れるし、兄貴も心配しなくていいってな。だから心配するなと逆に励まされてしまった」
バン「それがさっき言っていた事か。だが、ケニーは変わったみたいだぞ」
ダバン「そうみたいだ。何があったのかわからない。俺自身ここにはずっと帰ってなかった。デルカダールに住んでからしばらくは手紙を出していたんだが、ケニーから金は大事にしろと手紙越しに怒られて出さなくなった。
それからは忙しくて時間もなく、ここまで来てしまった。ミラとの結婚式にも呼んだのだが来てくれなくてな。思えば、あの時から既におかしいと気付くべきだったのかもな」
バン「じゃあ俺から話させてもらうぜ、ダバン。俺、言葉とか上手く言えないからはっきり言わせてもらうぞ」
ダバン「なんだよ」
バン「俺はお前の弟だろうと、ケニーを捕まえる。これは絶対に変わらない事だ」
ダバン「!?........そう.......だよな。被害が出ている以上、仕方ないのかもな。だが...........俺は!誰よりもケニーを知っている!そんな事をするやつじゃないと!きっとこれは何かの間違いな可能性だって」
バン「やっぱりな。ダバン、目を覚ませ。師匠もグレイグ将軍も言っていただろ。兵士の役目に私情は関係ないと。今の俺の、俺達の役目はケニーという盗賊を捕まえて皆を守る事だ。履き違えるなよ」
ダバン「ケニーは盗賊なんかじゃねえ!!俺の弟で、大事な家族だ!!家族を捕まえるなんて........出来るわけねえだろうが!!」
バン「じゃあ止めるか?俺の事を。俺はこのままケニーを捕まえにいく。抵抗して戦闘になって、ケニーを倒してロウ様達に牢屋に入れてもらう。それを止めるのか?」
ダバン「...................わからない。どうすればいいのか..........何が正解なのかわからない。俺は........どうしたらいい」
バン「俺は兄弟とかいねえから知らねえけど、兄ならしっかりと弟のケニーに罪を償ってもらうのが正しいはずだ。そのためにまずは弟を止めないとだ」
ダバン「...........そう......だな。バンの言う通りだ。だが、バン、俺に任せてくれないか?大事な弟が道を間違えているのなら、その道を直してやるのが兄としての、家族としての役目だと思う」
バン「わかった。どうしてもって時以外は見てるからな」
ユグノア地方 グロッタの街近く
山の中の木が切られて切り株が並んでいる場所にケニーはいた
ケニー「...........なんでここがわかったんだよ」
ダバン「昔からそうだったな。何かあるとここにいて、考え事をしていた。今も変わらないようでよかった」
ケニー「はっ、何がよかっただよ。そんな昔の事もう忘れてるもんだと思ってたぜ」
ダバン「話してくれないか、どうしてお前がそこまで俺を嫌ってしまった理由を」
ケニー「話して何になるんだよ。昔のように戻ってほしいってか?馬鹿みたいな考えだな。俺は俺の道を行く。お前みてえにはなれねえんだよ」
ダバン「どうして。お前だって、剣を使えたじゃないか。あそこから頑張れば必ず」
ケニー「うっせえなあ!!またその話かよ!!頑張れば幸せがやってくるなんざ嘘だろうが!!そんなの選ばれたやつにしか来ねえんだよ!!」
ダバン「!?」
ケニー「俺がどれだけ頑張ったと思っていやがる!周りの嫌な大人達も無視して、寝る間も惜しんで、兄貴との約束のためにって、頑張れば必ず報われると信じて..........それなのに........俺は.........弱かった......。そこら辺の魔物や、コロシアムでも誰にも敵わなかった......。元から優秀だった兄貴とは違えんだよ!!
てめえと比べられ続けた俺の気持ちがわかるのかよ!兄は強かったのに、兄ならもっと上手く立ち回れたのに、兄ならこんな情け無い戦いしないのに、って..........」
ケニーからは怒りと共に涙が流れていた
ダバン「............だから、やめたのか。頑張る事を」
ケニー「ああ、そうだ!お前がもし帰ってきてくれたら話は変わったのかもな。だが、お前は帰ってこなかった。忙しいことなんかわかってたから期待してなかった。それなのに、お前は呑気に結婚すると連絡してきた。
許せなかった........。俺がこんなにも傷付いているのに、当の兄貴は知りもせず幸せそうに笑いやがって。
俺だって!!いつか幸せがくると信じていたのに........兄貴のようになれると信じていたのに。俺の幸せはどこだよ.......。兄と弟の差が大きすぎて..........嫌になったんだ。
そんな時、前から馬鹿にしてきた不良どもが来たからな。腹いせに偶然持ってた短剣で相手したらどうだ?片手剣なんかよりもずっと扱いやすい。不良どもも俺を恐れて平伏すようになった。これが本当の俺だと。兄とは違う俺の力だと知った。
それからは盗みに明け暮れ、盗賊として名を挙げるほどになった。旅人を襲ったのは俺を認めさせるため。兄と比べ続けて馬鹿にしてきたやつらを全員見返してやるためだ」
ダバン「.............お前はそんなにも.......追い込まれていたのか。すまなかった........俺がもっと早く気付いてやれればよかったのに」
ケニー「もう遅いんだよ、馬鹿が。俺はダバンの弟ケニーじゃねえ。盗賊ケニーだ。てめえとは他人なんだよ」
ダバン「俺の事は恨んでもらって構わない。他人になってもいい。だが、これ以上旅人を襲うな。皆が不安になっているんだ」
ケニー「はっ、知らねえよ、そんなの。これが俺の生き方だ。もう誰にも止められねえ。ダバン、お前だろうとな」
ダバン「ケニー.......」
ケニー「あのバンとかいう兵士、お前の仲間なんだろ?伝えておけ、俺は捕まらねえ、止められねえってな」
ダバン「なら、俺が止める」
ケニー「は?」
ダバン「お前がこんな事する必要がなくなるように、俺がお前を止める!これ以上ケニーに間違った道を進ませない!」
ケニー「てめえが止める?面白え、いつかダバンも倒してえと思ってたんだ。ぶっ飛ばしてやるよ、ダバン!」