それから二週間後、デルカダール城
大広間
シンジがデルカダール城にやってきていた
店長「久しぶりにデルカダールに来たな。相変わらずでかい街だぜ」
バン「ん?おお!店長さんじゃん!どうしたんだ?」
その時、ちょうどバンが訓練場から出てきた
店長「お、バン。久しぶりだな、変わらず元気みたいだな」
バン「へへ、まあな!城に来るなんて珍しいな。師匠に用事か?」
店長「そうなんだ。頼み事があってよ。玉座の間か?」
バン「おう、案内するぞ」
玉座の間
バン「失礼します、マルティナ様。店長さんが来てくれたんですよ」
店長「よう、ラース!そんで久しぶりだな、マルティナさん、グレイグさん。それとブレイブとコロだったよな」
ブレイブ「ガウ」
コロ「キャン!」
マルティナ「あら、店長さん。久しぶりね。案内ありがとう、バン」
バン「いえいえ、それでは俺はこれで。失礼しました」
ラース「何しに来たんだよ、わざわざ城に来るなんて」
グレイグ「何か困った事でもあったか?」
店長「まあその話は一旦置いておくさ。これ、皆で食べてくれ。俺の作ったケーキ達だ。王様も好んでくれてるみたいでありがたいぜ。いつもありがとな」
シンジは少し大きめの箱を渡した
マルティナ「いいの?ありがとう。お父様もきっと喜ばれるわ」
店長「それと三人にこの試作品の味見をしてほしくてな。そのために来たんだ」
シンジは渡した箱とは別の小さめの箱からケーキとプリンを出した
店長「ケーキは栗を使ってて、プリンはかぼちゃを使ってみたんだ。ぜひ食べてみてどうか教えてほしくてよ」
グレイグ「試作品か。シンジの作るものはどれも美味しそうだ。どれ、いただこう」
マルティナ「美味しいわ!栗の甘さと砂糖の甘さがちょうどいいわね。プリンも美味しい。そこまでかぼちゃが強いわけではないのね」
グレイグ「私も同じ意見です。どちらも普通のケーキやプリンよりも甘さが抑えられていてあっさりと食べられるな」
店長「お、高評価みたいだな。へへ、嬉しいぜ」
ラース「...............」
ラースはどちらも食べながら目を瞑って考え込んでいる
マルティナ「どうしたの?ラース。そんな考えて。美味しくなかった?」
ラース「いや........美味いんだが.......なんか............シンジらしくない味だな」
シンジ「!?」
ラース「シンジの作るケーキとかは他の店とは少し味が違うんだ。例えば同じパフェを出してても、シンジの作るパフェはクリームとかだけじゃなくてしっかりとフルーツなどの甘味や特徴を活かしている。他のケーキもそれは同じで素材を活かして作られている」
グレイグ「確かにな。果物と甘味のどちらもはっきりと感じられるな」
ラース「それが今回は違うよな。なんか.........詳しくねえからわからねえけど、無理矢理一つにしてるような........どっちかしか感じられないように思えてな」
マルティナ「言われてみれば..........あ、でも、美味しいのよ?それは間違いないわ」
店長「いや、ラースの言う通りだ。やっぱりこれでも駄目だよな〜........」
シンジは項垂れている
ラース「これ、季節限定とかの商品か?今の季節らしいもんな」
店長「そうなんだ。そのために新商品を作ろうとしてるんだけどよ.........なんかどれも上手くいかねえんだ。納得出来ない味にしか出来なくてよ。実は今のも一応必要最低限の味は出せたって思った程度なんだ。スランプってやつなんだ、俺」
マルティナ「そうだったの。でも、これだって充分美味しいし、店長さんのお店なら売れるんじゃないかしら?」
店長「どうだろうなー。季節限定ってやつはよ、今しか食べれないって意味や特別感があるから商売としては客の目を引くものにしたいんだ。ただ、ダーハルーネだとケーキやスイーツの季節限定でこういったものはどこもやってる。
いろんな果物が取れる季節だからな。桃、リンゴ、梨、ぶどう等々。色々出して他の店と負けないようにしてる。だから今のだとこのメニューもありきたりでパンチが弱いんだ。それでいて味も俺の店の一般メニューより落ちてるときたらなぁ.......客も他の店に行っちまうんだ」
グレイグ「なるほど。単にメニュー考案といっても様々な兼ね合いがあるのだな。難しいものだな」
店長「なんか意見あったりしないか?こんなものが食べてみたいとか、あったら嬉しいみたいなやつ。俺だけだと考えも偏っちまうからよ」
ラース「無限に食べられるような」
店長「マルティナさんとグレイグさんなら何かいい案出してくれそうだなって思ってよ」
ラース「おいこら」
店長「うるせえ、食欲魔神!お前の意見に応えたら食べれるやつなんかほんの一握りになっちまうだろうが」
グレイグ「俺としてもスイーツに詳しいわけではないから大した事言えんが、やはり甘いものを食べるのが多いのは女性だろう。そこを狙ってみるのがいいのではないのか?」
店長「まあな。それはそうなんだが、そういったメニューは既に普通のメニューにたくさんあるんだよな」
マルティナ「私だったら、健康とかにも気を使っているようなケーキだったら安心出来るわね。女性として気になる人は多いと思うわ」
店長「健康か.........。考えてみるかー。難しいんだよなー」
ラース「糖分が殆どだからな。その段階で健康とは少し縁が遠いよな」
マルティナ「ごめんなさい、折角頼ってもらったのに大した事いえなくて」
店長「いやいや、こういう意見が大事なんだ。だからバッチリだぜ」
ラース「ベロニカやセーニャ、シルビア達にも聞いてみたらどうだ?」
店長「それもそうだな。でも、俺あの三人のいる場所知らないぜ?」
マルティナ「それなら私が店長さんのお店に向かうように伝えるわ。きっと力になってくれるはずよ」
店長「おお!そこまでしてくれるのか、ありがとよ!ああ、そうだ。バンに言ってメグさんにも意見聞いてみるか」
デルカダール城下町 カフェ
メグ「新商品の案......ですか」
店長「そうなんだ。同業者だし、いい案ありそうだなって思ってよ」
メグ「そうですね。売上を伸ばせる大切なものですからね。私ならケーキやプリンのようなスイーツではなく、あえて違う路線に向かうかもしれません」
店長「強気だな。まあまあの賭けになるぞ」
メグ「ふふ、確かにそうですね。私が新商品を出すとよくバンがそこら中に宣伝するんです。そのおかげもあって多少は売れているんです。ありがたいですよ」
店長「あー、それはいいよな。宣伝役がいるのは羨ましい。特にバンの性格からすると、誰にでも正直に話しそうだから信頼されてそうだよな」
メグ「ええ、そうなんです。よくバンから聞いて来たって人もいるんです。その分期待に応えないとなんですけどね」
店長「因みに違う路線だとメグさんはどんなものにするんだ?」
メグ「そうですね........。ダーハルーネのスイーツ店事情には詳しくないですから深くは言えませんが、ケーキなどのスイーツはお店の中でしか食べれませんよね。それなら逆に気軽に食べれるようなクッキーやカップアイスなんかにするかもしれません。
そうすれば店内じゃなくても食べれるし、甘いものがそこまで好きではない方にもクッキー程度なら受け入れられやすいです。外で食べながら歩いて貰えれば宣伝にもなりますよ」
店長「ふむふむ、そうだな。確かに宣伝役がいない俺としてはお客を宣伝に使うのはアリだな」
メグ「あと私の店だと健康にも気を使っている人向けにハーブティーなんかもあるんです。ケーキと一緒に頼んだりしている方も多くてまあまあ人気なんですよ」
店長「ハーブティーか。俺の所だとそこまで頼まれるものじゃないんだよな。よし、凄く参考になった!ありがとな、メグさん!やっぱりメグさんはかなりいいパティシエだな!」
メグ「ありがとうございます。シンジさんの力になれたなら嬉しいです」