それから二日後、カフェ
ベロニカ「完成したって聞いたけど大丈夫?」
店長「ああ、バッチリだぜ。俺のかいしんの出来栄えだ!」
セーニャ「とっても楽しみです!しかし、あれだけの材料でスイーツが出来るのですか?」
シルビア「スランプも抜け出したか心配してたのよ」
店長「ああ、きっと大丈夫だ!少なくとも前よりは自信があるんだ!それがこれだ!」
シンジが持ってきたものは白いスポンジに僅かに黄色いクリームが挟まっているシンプルなケーキだった。スポンジの上とクリームの中には鮮やかな黄緑色の粒が散りばめられている。また飾りとして小さいピンクの花が乗っている
ベロニカ「へ〜、中々綺麗じゃない!この花や緑色のは何?」
店長「ふっふっふ、それは食べてみてからのお楽しみだ。黄色いクリームはサンドフルーツをたくさん使ってある。一応スポンジにも使ってあるぜ」
セーニャ「それではいただきます。............ん〜、ケーキとは思えないほどあっさりとした味わいです!それなのに甘さも感じます」
シルビア「美味しいわ、店長ちゃん!でも、気のせいかしら?アタシ、どことなく苦味もあるように思えたのだけど」
ベロニカ「私も感じたわ。といっても気にならない程度だし、甘さの方が強いんだけどね」
店長「まあそうだろうな。シルビアさんやベロニカさんの味覚は正しいぜ。なんたって、その緑色の粒やピンクの花の元はうつくし草だからな!」
三人「うつくし草!?」
ベロニカ「うっそ!?結構貴重なやつよ!?」
セーニャ「かなりの苦味があるものですわ!それをこんなケーキに使われるなんて!?」
店長「そんな大した量は入ってないんだけどな。まあ貴重なものなのはわかってるから一日10品までだ。こうする事で多少高くできるし、期間限定ってよりも1日に食べられてる数に限りがある方が貴重感も増す。
そこに健康的なサンドフルーツ、栄養分の多いサバンナの水ときよめの水、さらにみりょくが上がるうつくし草を使って健康にも重視してあるんだぜ」
シルビア「素晴らしいわ、店長ちゃん!それでこんなに美味しいなんて夢のようだわ!流石店長ちゃんはプロのパティシエね!あれだけの材料でこんな素敵なケーキが出来るなんて!」
店長「プ、プロって......へへ、照れますよ、シルビアさん。まだ試作品程度だったんだがかなりの出来栄えだったからな。今回一番世話になった三人には誰よりも早く食べてほしかったんだ。こんなに高評価なら更に自信がつくってもんだ!後でラース達にも持っていくつもりなんだぜ」
ベロニカ「これ売れるに決まってるわよ、店長さん!あんなキラキラしたお店なんかに負けないわ、絶対!」
セーニャ「あ、あの.......おかわりはありますか?店長様。私、もう一つ食べたいのですが」
店長「はは、もちろんだぜ。三人は今日好きに食べてくれ。他のメニューももちろんオーケーだ。俺が出来る礼はこれくらいしかないからよ」
セーニャ「本当ですか!?ありがとうございます!それではこちらのケーキと、フルーツパフェの方とシュークリームと」
ベロニカ「ちょっと待ちなさい、セーニャ!嬉しいのはわかるけど店長さん一人しかいないのよ!もっと自重しなさい!」
店長「ははは、セーニャさんは変わらずよく食べてくれるな。嬉しい限りだぜ。ベロニカさん、俺は全く気にしないぜ。寧ろ、食べたい事を我慢なんてしなくていいんだ!
俺はパティシエ!誰かが食べたいと願ってくれるならそれをいつでも、いくらでも作れる人だ。それで幸せな時間を送れるのなら、それが俺の最高のプレゼントなんだぜ」
シルビア「素敵よ、店長ちゃん!あなたのその立派な考えは本当見直しちゃうわ!」
ベロニカ「もう.......。でも、甘やかすのとは違うからね。それじゃあ私もチーズタルトを頼んじゃおうかしら」
店長「ああ!飲み物もほしいよな?どれがいい?」
ベロニカ「二人とも紅茶でいいわよね?」
セーニャ「はい!」
シルビア「アタシもオッケーよ」
ベロニカ「じゃあ紅茶を三つでお願いするわね」
店長「ああ!それじゃあ待っててくれよな!」
シンジはキッチンに向かっていった
シルビア「ふふ、すっかり元通りね。寧ろ、元気になったんじゃない?」
ベロニカ「ええ、本当ね。スランプって聞いてあまり想像出来なかったけど、結構苦しそうだったもんね」
セーニャ「つらそうな顔や暗い考えは普段の店長様らしくはありませんでしたからね」
シルビア「二人もマルティナちゃんから手紙が来たのよね?ラースちゃんの伝言、書かれてた?」
ベロニカ「え?ラースの?無かったわよね?」
セーニャ「そうですね。マルティナ様の字だけでしたわ」
シルビア「あら、じゃあアタシだけだったのね。ラースちゃんの字で店長ちゃんは普段見せないけど、一人だからこそ悩んでしまうとそのまま沼にハマってしまいやすいんだって。だから少しでも側にいてくれって」
ベロニカ「へ〜、あいつがそんな事を。確かに焦った感じだったし、暗い考えをしてて一人だとどうしようもなさそうだったわよね」
セーニャ「ラース様はわかっていらっしゃったのですね。流石は友人としてお付き合いが長いだけありますわ」
シルビア「そうね。きっとラースちゃん達も気にしてるはずよ。後でアタシ達も色々報告に行きましょう」
その後、デルカダール城 玉座の間
マルティナ「ふふ、よかったわ。スランプから抜け出せて」
ラース「それで?その新作とやらを早く見せてくれよ」
店長「お前、もっと労いの一言くらい言え!マルティナさんみたいによかった、とかお疲れ様、とかよ!」
ラース「はいはい。ケーキは?」
店長「この野郎.......」
シンジは渋々箱から先程のケーキを出して渡していった。ラースを一番最後にして
グレイグ「ほう、シンプルなのだな。よく果物が乗っていたり、クリームが凄い事になっていたりするのだが」
マルティナ「その分色合いが綺麗だわ。黄緑に白とピンク、いいバランスね」
ラース「なんだ?この緑色のやつ。普通ケーキにこんなのあるか?」
セーニャ「あ、そちらの方はですね」
シルビア「ストップ、セーニャちゃん。きっとビックリするから食べてみて」
ベロニカ「そうよ。想像してなかったんだから」
ラース「ふーん、まあいいか。どれどれ」
グレイグ「おお、クリームが驚くほどしつこくないな。甘さも普通のケーキよりも少ないのだな」
マルティナ「不思議な味のクリームね。甘いのにしつこくなくて、何個でも食べれそう」
ラース「んー?この緑のやつ、なんか味するのか?苦い........のか?」
店長「へへ、その黄緑色とピンクの花はな、うつくし草なんだぜ!」
三人「うつくし草!?」
ラース「あの苦い草か!」
グレイグ「それがこんなケーキにだと!?」
マルティナ「全くわからなかったわ!甘味もそれなりにあるからほとんど苦味なんてないわ!」
ベロニカ「驚くわよねー。私達もビックリしたもの」
シルビア「それでクリームとスポンジにはサンドフルーツとサバンナの水、きよめの水が入ってて栄養もバッチリ。みりょくも上がるっていう健康的なケーキなのよ」
マルティナ「あ.......健康的なケーキって私の案かしら?」
店長「ああ、そうなんだ。どうしたもんかとは思っていたけど、やってみると出来そうだなって思えてな」
セーニャ「やはり素晴らしい腕前ですわ、店長様」
ラース「まあお前なら出来ると思ってたぜ。流石だな」
店長「よっしゃ、ラースが珍しく褒めてくれたぜ!」
ラース「まあ頑張ったみたいだしな。シルビア達が助けになれたみたいでよかった」
店長「本当だぜ!ありがとな、マルティナさん!シルビアさん達がいてくれなかったらどうなってたか」
マルティナ「ふふ、どういたしまして。でも、一番心配してたのって実は」
ラース「これで用事は済んだか?さっさと帰れよ」
ラースはマルティナの言葉に被せるように話し始めた
店長「なんでだよ!もう少しゆっくりさせろよ!」
ラース「邪魔なんだよ、うるさいからな。ほら、さっさと帰ってそのケーキの宣伝でもしてろ」
店長「チッ!さっきの素直さが嘘みたいだぜ。まあ目的は果たせたし、いいか。じゃあな、マルティナさん、グレイグさん、ラース。またいつでも俺の店に来てくれよな!」
マルティナ「ええ、もちろん」
グレイグ「また王が世話になる。こちらこそよろしく頼む」
シルビア「(ふふ、ラースちゃんったら隠しちゃって。照れなくてもいいのに)」