その後、玉座の間
ブレイブ「しかし........ここにいるだけでよいのですか?」
マルティナ「ええ、そうね。私達に訪れてくるお客さんを見ているだけでいいわ。折角お話出来るんだし、それまでは少しお喋りしましょう」
ラース「ん?マルティナ、じいさんと.........誰だ?二人来るぞ」
マルティナ「え?わかるの?」
ラース「耳と鼻が凄くよくなってな。匂いとか音がよく感じ取れる」
ガチャ
ロウ?「マルティナ、グレイグ、ラース、大変なんだよ!」
扉が開かれてロウがマルティナに駆け寄ってきた
マルティナ「ロ、ロウ様!?」
エマ?「あの後おかしな事になってのう」
マルティナ「え?エマちゃん?まさか.......」
イレブン「僕、イレブン!おじいちゃんの姿だけど、中身はイレブンなんだよ!こっちはエマじゃなくて中身はおじいちゃん!入れ替わっちゃったんだ!」
ブレイブ「イレブン様にロウ様までもですか!あの木の実を食べたのですね?」
ロウ「ほ!?どうしたのじゃ、ラースよ。わざわざ様など付けて」
マルティナ「こっちも同じ事が起こってるんです。ブレイブとラースがあの後木の実を食べたら今日二人が入れ替わっていたんです」
ラース「まさかイレブン達もか。イレブンの体にエマちゃんが入ったって事なんだな」
イレブン「うわ、ブレイブがラースみたいな話し方してる。ラース達もそうなっちゃったならどうする?どうやったら治るの?」
マルティナ「お父様が言うには、木の実の成分が切れるのを待つといいって。大体半日か一日だと予想してるけど」
ロウ「やはりか。言ったではないか、イレブン。そう焦る事もない、と」
イレブン「だって.......困るじゃん。こんなの」
ロウ「ほほ、わしとしては若い子の体なんて.........ええのう」
ロウは自身のエマの体を見てニヤニヤしている
イレブン「うわ、おじいちゃん最低!嫌い!」
ロウ「ぬう!?す、すまん、イレブン」
イレブン「酷いや、おじいちゃん!」
ラース「じいさんが悪いな。エマちゃんはイレブンの恋人なんだぞ」
マルティナ「そうですよ、ロウ様。流石に自重なさってください」
ロウ「すまん.......」
イレブン「もういいよ。取り敢えず一日経ってまだ治らなかったらまた考えるよ。ありがとう、マルティナ、ラース......じゃないや、ブレイブ」
ブレイブ「私は特に何もしておりません。不思議な事になりましたが、互いに頑張りましょう」
その後、城内をラースは歩いていた
ラース「(目線が低いと景色が違うもんだな。花とか絵があまり見えねえや)」
ダバン「お、ブレイブじゃん。よ」
ラース「(ダバンか。って、あれ?今はグレイグが訓練してるはずでは?)」
ダバン「城内歩いてるなんて珍しいな。コロ探してんのか?」
ラース「(一応.....ブレイブの程でいくか。返事しないのも変だしな)ガウ」
ダバン「コロならいつもの道でナプガーナ密林がある方に向かったぞ。お前も行くか?」
ラース「(いつもの道?わからないが頷いておくか)ガウ」コク
ダバン「そっか。じゃあなー」
ラース「(ハァ、なんとかなった。まさかブレイブが俺だなんて思うはずねえもんな)」
バン「お!よう、ブレイブ!一人か?」
ロベルト「珍しいな。歩き回ってたのか?」
ラース「(あー、面倒くせえな!バンにこんな恥ずかしい所見られてたまるか)ガウ」
バン「ん?」
ロベルト「城下町か?それともナプガーナ密林の方か?」
バン「ちょ、ちょっと待て、ロベルト。ブレイブ、もう一回喋ってみてくれ」
ラース「(あ?なんだ?こいつ)ガウ?」
バン「..........」
ロベルト「おい、どうしたんだよ、バン」
バン「ブレイブ、俺お前が何て言ってるのかわかんねえ」
バンは真剣な顔でブレイブの目線に合わせてしゃがんだ
ラース「(いや、当然だろうが。俺は今普通に話せるのに、ガウって発音してるんだぞ。意味なんかねえよ)」
ロベルト「は?普通だろ。ブレイブが何言ってるかなんて薬がないとわからねえよ」
バン「いや、そうなんだけど、なんとなく伝わるっていうかよ。それが無いんだ。こんなの初めてだ」
ラース「(なんか怪しまれるのも嫌だな。とっととナプガーナ密林の方にいくか)ガウガウ」
ラースはバンとロベルトの間を通って行った
ナプガーナ密林近くの川
ラース「(へえ、こんなに草や水、森の匂いに溢れてたのか。いろんな音が聞こえる。風の音や水が流れる音、遠くの魔物の声。これがブレイブの見ていた世界か)」
コロ「あ!父ちゃん!......じゃなかった、ラース様!ここまで来れたんだ」
少し離れた場所からコロがやってきた
ラース「ああ、なんとかな。しかし、こんなに匂いや音がすると少し落ち着かないな」
コロ「そう?俺はいつも通りだよ。ラース様もすぐに慣れるって!ねえ、俺の友達と遊ぼう!父ちゃんだと一緒に遊んでくれないんだよ」
ラース「魔物との交流か。少し面白そうだ。遊ぼうか」
コロ「本当!?やったー!じゃあ案内するね、こっちだよー!」
コロは元気に走っていった
ラース「走るのか。まだあまり慣れてないんだけどな」
ラースも少しおぼつかない足取りで向かっていった
その頃、玉座の間
ホムラからの使い「というわけでして、ヤヤク様がこちらにいらっしゃるラース様達に救援をお望みになっておられるんです。どうか私達にお力をお貸しください」
マルティナ「承りました。ただ、向かうのは私達の兵士になると思われます。そちらの方をどうかご理解くださいますようお願いします」
ホムラの使い「は!ありがとうございます、マルティナ王女様!ヤヤク様もお喜びになると思われます。それでは突然失礼致しました」
ホムラからの使い人は深く礼をして出ていった
マルティナ「ラース、じゃなかったわ。ブレイブ、そんなに強く睨まなくてもいいのよ?」
ブレイブ「も、申し訳ありません。表情?というのですかね。うまくコントロールが出来なくて.......こう、力が入ってしまうんです」
ブレイブは目を細めたりして顔を動かしている
マルティナ「そっか。ブレイブ達は普段表情なんてあまりないものね」
ブレイブ「はい。私達はこんなに簡単に顔は動かないので、違和感というかちょっとした動きで口や目が動いてしまうんです」
マルティナ「人間の姿だと慣れないわよね。早い所効果が切れる事を願うしかないわね」
ブレイブ「こんなに人間が感じる世界は静かなのですね。気配を感じられるとはいえ、私達に比べれば範囲はとても狭いです。匂いや音もこんなに感じられないのは初めてです」
マルティナ「ブレイブ達からすると今は静かって事になるのね。このお城、そんなにうるさい?」
ブレイブ「いえ、そんな風に思った事はありません。ただ、様々な変化が至る所でよく起こっているのでそれを感じられないというのは少々寂しいですね。特に訓練場からはよく音が聞こえるのですが、今はよほど大きな音でも無い限り聞こえませんね」
マルティナ「ここから訓練所の音まで聞こえてたのね。それは少し羨ましいわ。あそこはいつも楽しそうな事が起こるから。ここよりずっと退屈しないと思うわ」
ガチャ
グレイグ「姫様、ラー.....ブレイブ。少々問題が」
マルティナ「どうしたの?」
グレイグ「ベグル達がラースとこれからの訓練などについて話をしたいそうなのですが、ラースに直接話したいとおっしゃっていまして」
マルティナ「それは断るしかないわね。グレイグ、ラースに伝えるって言ってくれないかしら?」
グレイグ「それがどうしてもと言われてしまって。私が渋っていたせいなのですが、バン達にどうしてラースを出せないのか疑問に思われてしまって」
マルティナ「うーん........。仕方ないわね。ブレイブ、悪いのだけど話だけ聞いてもらえる?グレイグがサポートするから」
ブレイブ「わかりました。グレイグ様、すみませんがよろしくお願いします」
グレイグ「いや、こっちこそこんな事になってすまない。それでは向かおう。姫様、少しの間だけ誰も客を入れませんので休んでいてください」
マルティナ「わかったわ」
訓練場
グレイグ「すまんな、ベグル、マーズ、ロベルト。ラースが来たぞ」
ブレイブ「俺にどうしてもって聞いたからな」
ベグル「あ、無理言ってすみませんでした、ラース将軍。でも、流石に言っておかないといけないと思って」
ロベルト「新入り達なんですけど、バラつきが多く見られるんです。得意武器や戦い方、型などがうまく活かしきれてないって感じで。やれてるやつもいるんですけど、やれてないやつもそれなりにいます。やっぱりラース将軍が指導していただくのも必要かと思いまして」
マーズ「俺達の力不足ですみません。でも、やっぱりラース将軍が直接教えていただいた方が効率的だと思いまして」
ベグル「明日のジエーゴさんが来るまでには少しでも上達させておきたいんです」
ブレイブ「なるほど。グレイグ様が困っていたのはこういう事だったのか」
マーズ「様?」
ブレイブ「ハッ!すまん、言い間違えた」
ロベルト「今日ってラース将軍何もないって前にお聞きしていたんですけど、どうしてそんなに出てこれなかったんですか?」
ブレイブ「そ、それは......」
グレイグ「緊急で仕事が入ってな。ユグノア王国と話し合いの結果なのだ」
ベグル「え?そうだったんですか。俺やバンにくらい知らせてもよかったのに」
グレイグ「すまない。今朝に決まってな。ドタバタして伝えられていなかった」
マーズ「グレイグ将軍がいらっしゃらなくて大丈夫なんですか?」
グレイグ「ああ。最低ラースと姫様がいれば大きな問題はない」
ベグル「それでしたら指導は無理ですね。すみませんでした」
ブレイブ「いや、構わない。こっちこそすまないな」
ベグル「あ、あと、一つだけ言いたい事が」
ブレイブ「む?どうした?」
ベグル「ジエーゴさんの誘いの件、どうしましょう。俺としては少し魅力的なんですけど」
ブレイブ「誘いの件?」
ベグル「あれ?お忘れですか?前からジエーゴさんにバンと俺が誘われてるじゃないですか。指導役としてソルティコに来ないかって」
ブレイブ「(そ、そんな事が!ラース様はどうお考えなのだろうか)」
グレイグ「その件ならラースは少し前に不定期なら仕方ないと言っていたぞ」
グレイグはブレイブの耳元でそっと答えた
ブレイブ「それなら不定期なら仕方ないと考えているぞ」
ベグル「まあそうですよね。兵士をやめる気は俺もバンもありませんから。ただ、不定期だとどうしても時間がかかりますよね」
ブレイブ「だろうな。それを踏まえてどうするか考えてくれ」