それから一ヶ月後、デルカダール城下町
ダバンとミラの家
ミラ「ねえ、ダバン。まだ話してないの?」
ダバン「ああ.........中々言いにくくてな」
ミラ「気持ちはよくわかるけど、遅くなるよりいいはずよ。私も明日行こうかしら?」
ダバン「.........そうしてくれると助かる。俺一人だとどうしても.......な」
ミラ「わかったわ、無理しなくていいのよ。私が説明できる所はするからダバンは自分の気持ちを伝えて」
ダバン「ああ、情けなくて悪いな」
ミラ「あら、ダバンは普段から私を頼ってくれないからこういう事でも頼ってくれるのは嬉しいのよ」
次の日、デルカダール城 玉座の間
ダバン「失礼します、マルティナ様、ラース将軍、グレイグ将軍。大事な話があって参りました」
ミラ「お久しぶりです、皆様。ダバンがいつもお世話になっております」
マルティナ「あら、ミラさんまで。どうしたの?夫婦揃って」
ラース「大事な話、か。一旦入れないようにしたほうがいいか?」
ダバン「お願いします。まだ誰にもバレたくないので」
ラース「了解。ブレイブ、コロ」
ブレイブ「ガウ」
コロ「キャン」
二人は部屋から出ていった
ミラ「理解の早い子達ですね。偉いわ」
グレイグ「今この扉の前には二人がいて入れない。それで、話とは?」
ダバン「...............」
ダバンは下を向いて少し体を震わせている
マルティナ「ダバン?大丈夫?」
ミラ「ダバン、私が言った方がいい?」
ダバン「スゥー...........。いや、俺が言わなきゃいけない」
ダバンは深く深呼吸した後、三人を真っ直ぐ見つめた
ダバン「マルティナ様、ラース将軍、グレイグ将軍。俺は、春がやってきたらデルカダール兵士を辞めようと決意しました」
三人「!!!」
マルティナ「え........ど、どうして」
ラース「.........理由は?」
ダバン「少し前に俺の弟ケニーが人殺しをしてユグノア王国に捕まりました。俺が兵士になる事を決めた始まりはケニーを守りたかったから。自分の決めた事すら守れなかった自分が嫌になったのです。ケニーからも俺を家族として見られる事はなくなりました。
でも、バンはそんな俺にこう言ってくれました。関係がなくなったならまた一から家族として始めていけばいい、と。ケニーは死んでいません。まだしばらくは捕まっていますが、釈放された後は俺が今度こそあいつを、弟を守ってやりたいんです。
あいつの苦しみや痛みに気付けなかった俺が唯一出来る事は、またケニーを家族として迎える事。そう思い、ケニーとミラと一緒にユグノアに引っ越そうと思ったんです」
グレイグ「............弟を家族として迎え入れる、か。だが、今の話だとダバンはケニーに嫌われているのでは?」
ダバン「嫌われています。でも、昔はそんな事ありませんでした。俺を慕ってくれる優しいやつでした。きっと心のどこかにはまだその一面があると信じています。それに今のままでもいいんです。ケニーは一人じゃないと教えてやりたいんです」
マルティナ「.........話はわかったわ。家族のため.......。そうね、仕方ない事に思えるわ」
ラース「納得はした。だが、もう一人それを話さないといけないやつがいるはずだが?」
ダバン「...........バンですよね」
ラース「兵士長という役割上はそうだな。だが、仲間達全員もそうだろう。いつ話すんだ?」
ダバン「...............ギリギリまで話さないようにしたいです」
ラース「まあ.......そうなるよな。特にバンの事を考えるとな」
ミラ「マルティナ様達は納得してくださったのですか?」
グレイグ「ああ、一応な。兵士を辞めていった者は少なくないが、ダバンは俺が知る限りでもかなりの年月をここで過ごしている。バン達も同じだがな。その分、少し驚いた。飽きたや疲れるとは別の理由なのはわかっていたからな」
ダバン「そうですね。俺も..........ずっとここでバン達と仲良くやっていくのだと信じていたのですが、無視してはいけない問題がありました。もう見逃したくありません」
マルティナ「ユグノアに行ったらどうするの?」
ミラ「ダバンがイレブン様やロウ様に頼み込んでユグノア城で兵士として雇ってもらおうと思っているんです」
ダバン「色々考えたんですけど、やっぱり俺は兵士でいるのがいいかな、と」
ラース「そうか、それなら会う機会もありそうだな」
ダバン「はい。デルカダールで鍛えられた剣を違う国で使うとしても、人々を守るという点は同じです。俺はここで育った事を誇りに思います」
グレイグ「ああ、俺達も応援している。なにか困った事があれば相談してくれ。少しなら援助しよう」
マルティナ「そうね。引っ越しとなるとお金とか大変でしょ?引退とは少し違うけど、今までダバンにはお世話になったからそのお礼としても、ね」
ダバン「あ、ありがとうございます!俺はバンやベグルとは違って大した事は」
ラース「はは、謙遜しなくていいんだぞ、ダバン。お前の盾や剣は皆を守っていた。その立派な意思の元、国民達を救っていた。それを俺達は知っている。その力をユグノアでも輝かせてやれよ」
ダバン「.........はい!!」
ミラ「ダバン、問題はバンさん達よ。本当に話さないの?」
ダバン「止められるに決まってるんだ。特にバンからな。あいつとは、初めてここで出会ってからずっと一緒だった。新米だった時にバンと俺とギバとベグルで約束した事がある。
ずっと一緒に兵士を続けるという事だ。いつか俺達がデルカダール兵士で一番強いってくらいになって皆を守ると、約束した。その約束を破ってしまう。それを知られて不穏な状態で辞めたくない」
ラース「.......あまりいい判断とは思わない。ダバンらしくないし、バン達は怒るぞ」
ダバン「いいんです。最悪ラース将軍達さえ認めてくだされば、辞められます。それ以外には........嫌われてもいいんです。裏切り者だと、言われる覚悟はしてあります。逃げるようにして去った方が踏ん切りがつきますから」
ダバンは苦しそうに笑っている
マルティナ「ダバン.......」
グレイグ「......わかった。俺達はバン達に何も言わないでおく。言うならダバンの自由にするといい」
ダバン「ありがとうございます」
ミラ「........それでは突然失礼しました。こんなお話をしてしまい申し訳ございませんでした」
ラース「いや、大丈夫だ。ダバン、後悔するなよ?」
ダバン「はい」