次の日、デルカダール城 玉座の間
三人「三が日?」
カミュとマルティナとグレイグはラースの聞き慣れない言葉に首を傾げている
ラース「俺も知らなかったんだけどよ、この本に書いてあるんだ」
ラースは世界の文化という本を開いた
ラース「ここだ。ホムラでは年明けから三日間は三が日と呼ばれ、どんな仕事をしている人でも休みとする日。その三日はおせち料理が出され、主婦などの人も料理を作らないようにして過ごす」
グレイグ「どんな仕事をしている人でも休みとする、か。年明けの初めはゆっくりと過ごした方がいいという事か」
マルティナ「いいじゃない、私達も休みにしてみる?兵士達とかいつも働いてもらってるからありがたいんじゃないかしら?」
カミュ「このおせち料理ってのはなんだ?」
ラース「まあ待て、俺に少し考えがあるんだ。この城で一番働いている人は誰だと思う?」
グレイグ「それは王や姫様だろう。常に国や国民の事を考えているからな」
ラース「まあ普通はそう考えるよな。でも、それを支えている人がいるよな?」
マルティナ「グレイグやラースの事?あと兵士達もそうね」
カミュ「てめえ、自分が休みてえだけなんじゃねえのか?」
ラース「違う違う。俺達は朝何してる?」
マルティナ「えっと、朝起きて朝食場でお父様やグレイグ達と朝ごはん........あ!もしかして」
ラース「そうだ。朝から夜、時には昼や夜食も栄養満点で美味しい料理を作ってくれるコックの人達だ。この人達が朝早くから夜遅くまで俺達の動く源となるご飯を作ってくれ、支えている。この人達は兵士のように休日は殆どないだろ?」
グレイグ「た、確かに......。この城で陰ながら最もよく働いてくれている者達かもしれん」
ラース「だからコックの人達にはこの三が日にちなんで、今日から三日間休みにしようと思う。どうだ?」
マルティナ「いいわね!当然のようになっていてお礼もあまり出来てないし、いい機会だわ」
カミュ「へ〜、想像よりずっといい事考えてんだな。見直したぜ、兄貴」
グレイグ「それは俺も賛成だし、王にもぜひ話をしてみよう。だが、コックがいないとなると俺達のご飯は誰が作る?」
ラース「それをこのおせち料理ってやつを作って皆で食べるんだ。見たところかなり量のある料理らしいからな」
マルティナ「なるほどね、とっても面白い意見だわ。おせち料理はホムラに行けば知ってる人も多いのよね?作るならそこで教えてもらいながら作りましょう」
ホムラの里
マルティナ「随分と久しぶりだわ。この暖かい気候も懐かしいわね」
グレイグ「私も久方ぶりです。前よりも賑やかな雰囲気を感じられます」
カミュ「んで?聞くって誰に聞くんだよ」
ラース「まずはヤヤク様だな。あの人なら色々知ってるからよ」
マルティナ「それならちょうどいいわ。昨日の鐘のお礼も言っておきたかったの」
神社
ヤヤク「そうか、コックのためにおせち料理を。流石は勇者の仲間だ、いろんな人を思いやっておるのだな。もちろん協力しよう。腕のいい料理人を紹介する。その者ならばさぞ綺麗なおせち料理が出来るだろう」
ラース「ありがとうございます、ヤヤク様!」
ヤヤク「ジンタに伝えに行け。デルカダール王国からの大切な来賓だと。丁重に指導するようにと」
男性「はっ!」
マルティナ「そんな、わざわざ指導してもらうのにそんな丁重にしてもらわなくても」
ヤヤク「そうか、それはすまなかった。これからその料理人の元へ案内する。そこで望むように指導してもらってくれ」
料理屋 焔
ヤヤク「ここが料理人のジンタという者がいる料理屋だ」
黒を基調とした建物に壁には赤い線で炎のような形が描かれていた
カミュ「なんか高級そうな店だな」
ヤヤク「ホムラでもかなり評判がいい。私もハリマに誘われて食べたが、とても美味だった。少し物静かだが、受け入れてくれるはずだ」
ラース「それは期待できますね。ありがとうございました、ヤヤク様」
ヤヤク「うむ、ではまたいつでもきてくれ」
ヤヤクは去っていった
グレイグ「俺は大丈夫だろうか、料理などお世辞にも出来るといえないほどなのに」
ラース「大丈夫だろ。グレイグが必要となる場面も絶対くると思うぜ」
カミュ「ん?誰かきたぞ」
???「あんた達がヤヤク様が言っていたデルカダール王国の来賓か」
中から白い三角巾をつけ長いコック服をつけた渋い顔の男性がやってきた
マルティナ「はい。突然のご訪問、誠に申し訳ございません。私達は」
???「堅苦しい挨拶はいい。俺はジンタ、ここで料理人やってる。事情は聞いた、おせち料理を作りたいんだってな。ついてきな、教えてやる」
ジンタは中に足早に戻っていった
グレイグ「おい」
マルティナ「いいのよ、別に気にしてないから。わざわざ教えてくれるんだし、変な事言わないで」
グレイグ「........姫様がそう仰るのなら」
焔 店内
ジンタ「おい、リリー。連れてきたぞ、準備は?」
キッチンにはリリーと呼ばれたピンクの髪をした女性がいた
リリー「はい、ジンタさん!準備はバッチリですよ!仕込みや道具も取り揃えてあります!」
ジンタ「うちの手伝いをやってるリリーだ。やかましいが気にするな」
リリー「酷いですよ〜、ジンタさん!お初にお目にかかります、デルカダール王国の皆様!この店、焔のお手伝いとして早15年!リリーといいます!よろしくお願いいたしますね!」
リリーは笑顔で元気に礼をした
ラース「こちらこそよろしく頼む。ラースだ」
マルティナ「王女のマルティナといいます。ご指導のほどよろしくお願いします」
グレイグ「グレイグだ。あまり料理は出来んが、極力手伝うつもりだ」
カミュ「俺はカミュだ。俺も料理はそこまで得意じゃねえが、手先は器用なほうだからな。色々出来ると思うぜ」
リリー「はい!よろしくお願いします!」
ジンタ「んじゃ、教えていくぞ。わかんなかったらリリーに聞け。まずおせちってのは初めは神様への捧げ物だったんだ。そのためにいろんな料理を詰めていた。昔の話だがな。
今は形が変わって料理事にいろんな願いを込めて縁起のいい物とされている。料理の数は多い。二十は超えるな」
ラース「二十!?結構あるんだな」
リリー「それだけたくさん作れば主婦の方も三日は作らなくても過ごせますからね」
ジンタ「それと保存のきく物でもある。酢につけたもの、味を濃くしてあるものみたいにな。この容器におせちを入れていくが、これは重箱と呼ばれている。これを四段重ねて完成だ。重ねる理由は幸せを重ねる、福やめでたさが重なるようにって意味だ」
マルティナ「なるほど、そんな容器にまで意味が込められているんですね」
ジンタ「大体はいいな?次は料理だ。手を洗って準備しろ」
グレイグ「ああ........。むう、どうしても姫様に対しての口調が気になる。あんなぶっきらぼうに話すなどなんて無礼な」
カミュ「仕方ねえだろ。別にこの国ではマルティナはパッと見、ただの旅人なんだ。マルティナ自身も全員に敬ってほしいわけじゃねえんだしよ」
ラース「あんま気にすんな、グレイグ。変な人じゃないんだからよ」
グレイグ「そ、そうだな」