次の日の早朝、カフェ
メグ「(やっぱり........私にはこれしかない)」
メグはキッチンに一人で立ち、お菓子を作り始めていた
メグ「美味しいと思ってくれるものを........作らなきゃ」
しばらくして
メグ「.............駄目ね。こんなんじゃ駄目よ」
メグはクッキーやケーキを作っていたが、満足する味になっていなかった
メグ「私.........才能ないのね。バンが褒めてくれてたからわからなかったけど、私には............まずいものしか」
コンコン
メグ「?こんな朝早く?バン?」
店長「メグさん、いるか?シンジだ。ラースから事情を聞いて様子を見に来たんだ。入ってもいいか?」
メグ「シ、シンジさん!?はい!どうぞ!」
ガチャ
店長「ありがとな。悪いな、こんな朝早く」
メグ「そんな!私こそいろんな人に迷惑かけているみたいで」
店長「店........確かに酷い有様だな」
メグ「..............当然なんです。私、向いてなかったんです。このお店もこの機会に辞めようと考えてるんです」
店長「!なんでだ?」
メグ「美味しいと思われない料理を出してるお店なんかあっても仕方ありません。お客さんを少しでも満足させられるようなお店にって思ってましたけど.......現実は厳しいですね」
店長「そんな事ないだろう。メグさんの料理は美味しいはずだぜ。前に味見もした事あるから知っている。俺が言うんだから間違いないって!」
メグ「そんなわけありません。だって.........まずいと話題にされて、お店だってこんなに.........。そんな風に思われているお店なんて」
店長「そいつらは前からいろんな店で悪質な妨害行為をしていたやつららしいぞ。ラースが言っていた。そんなやつらの事なんか信じるな、メグさん」
メグ「でも......」
店長「自信が持てなくなったか?」
メグ「はい........。私、子どもの頃からパティシエになるのが夢だったんですけど、料理自体はそこまで好きではなかったんです。今でもシンジさんのような手際の良さなんてありませんし、他のお店の方がたくさんのメニューや美味しい物があります。私なんて.......」
店長「............。まあ自信ってのは難しいよな。目に見える物じゃないし、それが本物かどうかもわからないものだ。俺だって自信を常に持ってるのは不可能だ。でもな、俺は自信があるかどうかよりも大事なものがあると思ってるぞ」
メグ「自信よりも?」
店長「これだけは他の店に負けない!って部分を持つ事だな。それがあれば他の店と違いが出るし、そこを伸ばしていけば自分への自信にも繋がる」
メグ「私のお店にそんないい部分なんて」
店長「そうか?俺としてはアットホームな雰囲気はとてもいいと思っていたぞ。温かく迎え入れてくれたり、店全体の装飾だったり、馴染みあるようなメニューだったりとかな。まあ一番良い点はメグさんの振る舞いだろうな」
メグ「私の?」
店長「明るく、優しくって感じの営業だもんな。お客さんも絶対落ち着いてここにいてくれていたはずだぜ。常連さんだっているんだろ?」
メグ「は、はい。でも、そんな程度じゃ」
店長「んー、そうだな。さっきメグさんは料理自体は好きじゃなかったって言ってたな。それは今もか?」
メグ「昔に比べたら慣れたのでってのはありますけど、それでも一番ではないですね」
店長「じゃあどうしてこのお店を続けられたんだ?好きじゃないのを長く続けるなんて普通は出来ないぞ」
メグ「え...........。どうして...........」
店長「何か理由があるから、続けたいものがあったからやめなかったんだろ?」
メグ「..............わかんないです」
メグは少し下を向いて考えていた
店長「まあ半分無意識みたいな所もあるだろうしな。仕方ないか。料理してたのか?」
メグ「はい。やっぱり私にはこれしかもう残されてないって思って」
店長「食べてみてもいいか?」
メグ「だ、駄目ですよ!美味しく出来ませんでしたから」
店長「どれどれ............。んー、確かにな」
シンジはクッキーを手に取って食べ、少し考えた後そう言った
メグ「!!で、ですよね。だから私、才能なかったんです」
店長「味変えたのか?前に食べたものから随分と変わったぞ。前の方が凄く美味かったな」
メグ「え?そんな事ないですよ。分量だって同じですし、作る手順も」
店長「...........メグさん、これ作る時なにを考えてた?」
メグ「え?」
店長「このお菓子に込めた心はなんだ?」
メグ「...............心」
店長「前に俺はこう言ったはずだ。お菓子を作るのに一番大事なのは心だってな。それがあればどんなお菓子でも美味しくなるんだ。暖かい味になるからな」
メグ「.........私、美味しいお菓子を作る事だけに精一杯でそんな事まで考えてませんでした」
店長「やっぱりな。前に感じていた優しい味が無くなっていた。俺はあの味がメグさんの作るお菓子の特徴であり、最も美味しい部分だと思っていた」
メグ「.!?................思い出しました。私が........このお店を続けた理由.........」
メグは立ち尽くしながら涙を流している
店長「お、おい!大丈夫か?」
メグ「すみません、すみません。私.........バンが褒めてくれていたから..........それだけで嬉しかったから...........楽しかったから..........出会った最初の時から............私はバンに褒めてほしかったから」
店長「バンのため、か。いい理由じゃないか」
メグ「私!バンに酷い事言ってしまいました!バンが嘘なんてつくわけないのに、嘘が下手なのをわかっているのに、それを...........嘘だって。私が一番言ってほしかった相手の美味しいって言葉を、嘘だと決めつけた。バンはいつも寄り添ってくれてたのに」
店長「............そうか。だからバンが家にいなかったんだな。大丈夫だ、メグさん。バンの事だからきっとメグさんの事もわかってくれているはずだ」
メグ「私.........どうしたら」
店長「じゃあ、仲直りといこうぜ。メグさん、バンの好きなお菓子は知ってるのか?」
メグ「..........私が作るもの全部って言ってくれてました」
店長「はは、バンのやつ欲張りかよ。じゃあどれか一つにしようぜ。流石にそんな数は無理だからな」
メグ「................じゃあ、チョコレートケーキにします」
店長「了解。俺も手伝うからよ、バンのためだけの最高のチョコレートケーキ、作ってやろうぜ。もちろん、心をこめて、な?」
メグ「はい!!」