大聖堂
中には何枚もの絵が飾られていた
マルティナ「なんて綺麗な絵。この絵は一体何を描いたものなのかしら」
長老「こちらの絵の数々は、ラムダの地に伝わる神話の一節を表したものです。
勇者とは、世界に災厄が訪れる時大樹に選ばれて生まれてくる存在
この世界にはじめて勇者という存在が降臨されたのは、はるか古の時代のことです
ロトゼタシアの全ての命の源は命の大樹。邪悪の神はその大樹の中に眠る生命力の根源、大樹の魂を奪おうとしました。
そんな時代に命の大樹に選ばれ生まれたのが、イレブン様と同じ痣を携えた伝説の勇者ローシュ様です。
そして、勇者ローシュ様とともに戦ったお仲間の一人、賢者セニカ様
そのセニカ様の生まれ変わりと言われているのが、そちらのベロニカとセーニャなのです。
ウルノーガ。邪神亡きこの時代に、イレブン様がなぜ勇者として生を授かったのか。皆様の話を聞いて全て繋がりました。どうか、ウルノーガなる者を倒し、世界の未来をお守りくださいませ」
イレブン「はい!」
始祖の森
ラース「ここが始祖の森か。見たことない植物がいっぱい生えてるな」
森は様々な植物や木々が生い茂っている。不思議な色の葉や花、人が余裕で通れるほどの倒木など自然に出来た迷路のようだ
カミュ「魔物も中々厄介なのが多そうだ。気をつけて登っていくぞ」
夕方
ロウ「ふぅ、ふぅ。流石にこの年で山登りは足腰にこたえるのう」
ロウはかなりバテている様子だ
ラース「じいさん、つらそうだな。だが、山頂までもう少しかかるな」
シルビア「今は大樹ちゃんに会う大事な時だし、ここでしっかりと休んでいきましょう」
夜、キャンプ場
ロウはラースにマッサージをしてもらっていた
ロウ「はあ、ありがとのう、ラース。だが、もう少し弱くしてもらってもいいかの」
ラース「おう、これくらいか?他に痛いところあったら言えよ」
ロウ「それくらいで大丈夫じゃ。肩のほうも頼もうかのう」
他の仲間達は火の回りで喋っていた
ベロニカ「いよいよ明日は命の大樹のもとへ向かうのね。なんだか緊張してきたわ。
......ねえ、セーニャ。あの曲を聞かせてよ。あなたが子どもの頃からよく弾いていた、私達の故郷に伝わるあの曲を」
〜♪
セーニャの竪琴が静かな森に響いていく
シルビア「大樹って夜はこんな幻想的に見えるのね。アタシ達の命も、あの葉の一枚なのかと思うと、何だか不思議な気分になってくるわ」
マルティナ「........」
マルティナは少し俯いている
ラース「マルティナ、どうした?暗い顔して」
マルティナ「今、デルカダール王国にいるウルノーガによって、お父様はおかしくなっている。でも、私にとって昔のお父様は常に優しいいい人だったわ。そのお父様を疑うことが........私にはどうしてもできなくて」
イレブン「マルティナ....」
ラース「......俺は、そのままでいいと思うぞ。マルティナにとって、王様は優しい人だったんだろ?それなら、その王様を信じ続けるんだ。疑うことなんてしなくていい。16年間、与えてくれた優しさを忘れなかったんだしな。
今、その優しかった王様を知ってる人は少なくなってきてるだろう。ウルノーガさえ倒せば、必ずマルティナの知ってる優しいお父さんに戻るさ」
ラースは優しくマルティナに笑いかけた
マルティナ「..........ありがとう、ラース。そうね、私が信じてあげないとね」
ラース「.......それにしても、いい曲だ。俺も懐かしい曲を思い出したな。俺も少し故郷の子守唄を吹いてもいいか?」
ロウ「おお、ラースも楽器の心得があったのか」
ラース「いや、俺ができるのはピアノと草笛だけだな。草笛ならここでもできるからな。それじゃあ短い一節だけ吹くな」
〜♪
ラースの草笛の音が周りに響いていく
セーニャ「何だか心が温まるような不思議な曲ですわ」
マルティナ「ええ。少し悲しく聞こえたけど、安らぐ気分になれたわ」
ロウ「この曲は初めて聞いたが落ち着くのう。子守唄というのにも納得じゃ」
ラース「俺のおばが草笛の達人でな、俺はよく教えてもらったんだ。まあ、この曲しか俺はやろうとしなかったけどな。
曲名は無いんだが、俺達は安らぎの唄と呼んでいたな。喧嘩してる子どもがいても、おばがこの曲を吹いてやると必ず落ち着いて謝ったりしていたんだ」
イレブン「僕も草笛ならできるよ。音を教えてよラース」
ラース「いいぜ。本来はもっと長いが、音は簡単だからな。すぐにできるぜ」
その時、ベロニカも笛を袋から取り出した
カミュ「お?なんだ、ベロニカ。お前も楽器ができたのか?」
ベロニカ「違うわ。たしかに笛はできるけど、これは長老からもらったお守り。私達の祖先、賢者セニカ様が昔ラムダに残していったものらしいわ」
ラース「でも笛ができるならよ、今度4人で一緒に楽器で演奏してみたいな」
セーニャ「素晴らしい提案ですわ、ラース様。今ラース様が吹いてくれた安らぎの唄でぜひやりましょう」
シルビア「でもみんな、お喋りはその辺にしておきましょう。夜更かしはレディの天敵よん」
その夜、キャンプ内にて
セーニャ「......ねえ、お姉様」
ベロニカ「ん?」
セーニャ「私とお姉様はきっと、芽吹く時も散る時も同じですよね?」
ベロニカ「セーニャはいつもグズだからどうかしら。......でも、そうだといいわね」
外では
マルティナ「火は消したし、もう大丈夫そうね」
ラース「マルティナ」
マルティナ「あら、ラース。どうしたの?」
ラース「そろそろこの旅も終盤だからな。これだけは言っておこうと思う。俺はマルティナの隣にずっといるが、もし、マルティナを守るために必要なら、この命をかけて守ってみせるからな」
ラースは真面目な顔をしている
マルティナ「......きゅ、急に何を言いだすのよ、ラース。それに、そんな事言わないで。私の隣にはずっとラースがいてほしいわ。そう約束してくれたじゃない。守ってくれるのは嬉しいけど、私のために命なんてかけないでちょうだい」
ラース「まあ、皆と協力して2人で助かればいいだけの話だしな。悪い事言ったな。言いたい事はこれだけだ。おやすみ、マルティナ」
マルティナ「ええ、おやすみなさい。ラース」
マルティナとラースはそれぞれのテントに入っていった