ベルとの出会いから一週間後
デルカダール地方
森が広がる手前に少し大きな丸太で出来た家が建っている。入り口までの道は綺麗な石が敷かれてあり、庭には花が咲き誇っている。そこからは海も一望する事が出来る。
ここはベグルとジェーンの家。ジェーンが望む場所にベグルが建てた家である。
ベグル「おはよう、ジェーン。今日は早いんだな」
ジェーン「あ、ベグル君、おはよう」
ジェーンは本を読んでいたようで、机の上に本が置いてある
ベグル「ん?チョコレート特集?」
ジェーン「そう。ほら、そろそろバレンタインでしょ?だから雑誌もチョコレートの特集が組まれてるんだよ。各街の新しいチョコレートとか美味しそうなチョコレートがたくさん載ってるの」
ベグル「へ〜、まあバレンタインなら当たり前か」
ジェーン「あ、それとね、もちろんベグル君にチョコレートをあげるんだけど」
ベグル「今年は俺もやるからな」
ジェーン「あ、あはは......。覚えてるよね〜」
ジェーンは去年のバレンタインにチョコレートをベグルに内緒で作ろうとした結果、大失敗してキッチンで大爆発が起こり、ジェーン達家族が怪我をしてベグルに強く注意されていた
ベグル「お父さんの火傷とか家とか酷かったじゃねえか。あんなの忘れられねえよ」
ジェーン「う〜......あれはほんの手違いだったんだけど。まあそれでね!ベグル君と一緒に作りたいと思ってるんだけど、バレンタインの日は空いてる?」
ベグル「今のところ大丈夫だぜ。ま、俺も菓子なんて作った事ねえからレシピ見ながらだけどな」
ジェーン「それは私も一緒だから大丈夫。ふふ、じゃあ十日後のバレンタインの日に一緒に作ろうね。楽しみにしてる」
ベグル「ああ、俺も楽しみにしておくぜ」
一週間後、デルカダール城
訓練場
兵士達「護衛任務!?」
ラース「そうなんだ。プチャラオ村で行われるバレンタインのお祭り、そこで異国交流の一貫としてクレイモラン王国からシャール王女とマルティナが呼ばれてるんだ。そこに出ることになったんだが、その護衛役を務めてほしいんだ」
バン「師匠はやらないのですか?」
ラース「俺もいるさ。でも、お祭り騒ぎで人がたくさん集まる。俺一人じゃあキツイ。そこで三人、俺と一緒にマルティナとシャール王女を護衛役としてついてきてくれ」
ロベルト「どれくらいかかりますか?」
ラース「それがなぁ.......お祭り期間全部を頼まれてんだ。だから三日かかる。宿代とかは全てプチャラオ村が出してくれるそうだが」
マーズ「ラース将軍、三人といいましたけど二人の王女の護衛任務となると重大任務。やはり実力的に.......」
ラース「...........わかる。だが、その三人はこの時期...........三日もいないのはキツイだろう」
ラースとマーズはバン、ベグル、ダバンを見ている
バン「うう..........。でも、お仕事ですし」
ベグル「.............」
ダバン「ミラ、許してくれ。必ず埋め合わせはする」
三人もわかっているらしく、苦しそうな表情を浮かべている
ラース「やっぱり実力はどうでもいい。この三人は今回除外しよう、かわいそうだ」
バン「師匠.......」
ベグル「いえ、構いません」
ラース「ベグル......。でも、お前だってきっとジェーンさんとの」
ベグル「兵士の役目に私情は挟まない。そう言ってましたよね?」
ラース「...........」
ベグル「俺は問題ありません。その護衛役、俺が受けます」
ダバン「ベグル..........。ラース将軍、俺も行けます」
バン「俺もです、師匠!」
ラース「わかった。それじゃあ頼んだぞ、バン、ベグル、ダバン」
三人「はい!」
ラース「残りも重要な任務だ。なんせ王女がいなくてもデルカダール王国でバレンタインはある。旅人達も普段より多く来るだろう。さらに俺も一部兵士もいない。役割をしっかり分担して城下町と城の警備を決して怠るなよ」
全員「は!」
その日の夜、ベグルとジェーンの家
ジェーン「ええ!?お仕事になっちゃったの!?しかも三日間!?」
ベグル「すまない!!ジェーン!!必ず一緒にチョコレートは作るから、どうか待っていてほしい!」
ベグルは必死になって頭を下げている
ジェーン「........し、仕方ないよ。だって兵士さんだし、ベグル君は副長さんだもの。こんな各国でイベントがある日なんて忙しくて当たり前だよね。ごめんね、私こそ忙しいのに約束しちゃって」
ベグル「そんな事言うな、ジェーン!俺だって本当なら仕事なんかやらずにジェーンと一緒に!」
ジェーン「それは駄目だよ、ベグル君。わかってるでしょ?」
ベグル「う......。ああ、本当にすまない」
ジェーン「少し残念だけど、それじゃあミラと一緒にベグル君のチョコレート作ってるよ。ベグル君が帰ってきたらもう一回作ろう」
ベグル「ありがとう、ジェーン」
それから三日後、デルカダール城下町
ダバンとミラの家
中ではミラとジェーンがチョコレート作りの準備をしていた
ミラ「そうなんだ。一緒に作る約束は本来ベグルさんとしてたのね。まあ当然よね。でもそれだと残念だったわね、ジェーン」
ジェーン「うん。今日本当ならベグル君と一緒に作って、次の日に出来た美味しいチョコレートを食べるはずだったのに.......。私もベグル君もお菓子作りはほとんどやってないから記念日にもなるねって話してたのに」
ジェーンは少し暗い雰囲気になっている
ミラ「ふふ、仲良しねえ。ダバンは手伝おうとはしてくれるんだけど、なーんにもわかんないのよ。この前調味料に分量ってのがあるって知って驚いてたわ。感覚だと思ってたそうよ、信じらんない。笑っちゃったわ」
ジェーン「ふふふ、それは私より知らないって事だね。じゃあ去年みたいに今回もミラが作ろうとしてたの?」
ミラ「ええ、もちろん。ま、渡すお相手さんはお仕事で行っちゃったから別の日にもう一回作るけどね」
ジェーン「いいなー、ダバンさん。ミラの上手な美味しいチョコレート貰えて。私、今回上手に出来るかなー」
ミラ「真似するのも得意じゃないもんね?ジェーンは」
ジェーン「あー、笑わないでよー」
ミラ「うふふ、ごめんなさい」
その時
コンコン
入り口のドアを叩く音がした
ミラ「あら?誰か来たみたい。どなたかしら?はーい、今開けますねー」
ガチャ
メグ「こんにちは、ミラさん」
入り口にはメグが立っていた
ミラ「あら!メグさん!どうしたの?お店は?」
メグ「今日は兵士さん達にチョコレートを作るためにお休みしてたんですけど、バンが仕事でいなくなっちゃって、他の兵士さん達も忙しいって聞いたので別の日にしようと思って暇になっちゃったんです」
ミラ「そうだったの。バンさんも兵士長だから大変だもんね。マサル君は?」
メグ「マサルは今朝マルス君とルナちゃん達数人と遊びに行ってしまって。だからミラさん達とお話ししたりしようかなと思って来たんです。もしかしてお忙しかったですか?」
ミラ「ううん、大丈夫。あ!ちょうどいいわ!今ね、ジェーンも来てて一緒にチョコレート作りしてたの。メグさんも一緒にどう?材料はたくさんあるの。一緒に食べましょう」
メグ「いいんですか?ありがとうございます!ジェーンさんも会うのは年末以来になります。それではお邪魔します」
ミラ「ジェーン!助っ人が来てくれたわ!メグさんよ!」
ジェーン「あ!メグさん!こんにちは!どうしたんですか?」
メグ「バンもマサルもいなくてお店もお休みだから暇になっちゃったんです。私もご一緒にチョコレート作りますよ」
ジェーン「ほ、本当!?ありがとう!メグさんがいれば絶対美味しいチョコレートになるよ」
メグ「そ、そんな。私は大した事ないですよ」
ミラ「大丈夫、ダバンからたまにお菓子貰うけどどれも美味しいもの。流石だわ、メグさん」
ジェーン「今準備してたんです。メグさんの分も用意しますね」
メグ「私ももちろんやりますよ。ふふ、楽しいお料理会になりそうです」