その後
バタン
セーニャ「皆様、お待たせいたしました!」
ベロニカ「あ、帰ってきた。もう!いい加減お遊びは終わりよ、セーニャ!」
セーニャ「はい、もう大丈夫です!ケーキを食べた犯人はわかりました!」
全員「え!?」
ロウ「おお。まさか本当に見つけるとは凄いのう、セーニャ」
カミュ「それで犯人は誰だったんだ?」
セーニャ「それでは、私の推理をお聞かせいたします!イッツショータイムですわ!」
セーニャは何やら片腕を前に突き出して、手を開いたポーズを取っている
シルビア「あら!シャルロットちゃんが推理する時のポーズじゃない!カッコいいわよー、セーニャちゃん!あ!ステイロちゃん!」
セーニャ「まず、先程候補にいた四名の方がどうしてキッチンに入ったのかは皆さん覚えておられますか?」
マルティナ「えっと、まず朝ご飯の時にお父様がだらしない事につまみ食いのためと、訓練後にロベルトがアイスを食べに、その後にバンが水飲みに、そしてラースが大広間で見た怪しい人を探しに、だったわよね」
セーニャ「そうです。ですが、私はこの部屋を出てそこでおかしいと思ったのです。ラース様はデルカダール王様に報告のために移動していた時にその怪しい人を見たとおっしゃっていましたが、そんな事が本当に出来るのでしょうか」
イレブン「え?どういう事?」
セーニャ「デルカダール王様のお部屋は玉座の間の横にある階段を登った先です。つまり、玉座の間の前からしか大広間の空間を見る事ができないのです。実際に見てもらった方が早いですね。少しこちらに来てください」
セーニャはそのまま玉座の間の扉を開け放ち、そこで立ち止まった
グレイグ「王の私室にはここを右に曲がる必要があるな」
セーニャ「はい。つまり、大広間を見る瞬間はこの場所だけ。どうですか?皆様。大広間は見えますか?」
マヤ「いや........ほとんど見えないかな。入り口の光もあって、人が立っててもわからなさそう」
マヤの言う通り、玉座の間の前には広い廊下や大広間、三階へのバルコニーに続くための階段があったりして大広間の空間は全くと言っていいほど見えない。かろうじて入り口から城内に差す太陽光が見える程度だ
ロウ「ふむ.....。これはラースが言っておった人が見えたとしても、あそこまで細部の特徴が見えたとは思えんな」
セーニャ「ラース様、もう一度その怪しい方の特徴を教えていただいてもよろしいですか?」
ラース「え、えっと......髪は黒で........長めの髪だ。身長は確か........イレブンくらいか?」
イレブン「あれ?僕?さっきはラースくらいって自分で言ってなかった?」
ラース「あ、ああ、そうだったな」
セーニャ「瞳の色や服装もおっしゃっていましたね。お願いします」
ラース「.........瞳の色は黒で、服装は........」
カミュ「兄貴、なんでそんなに歯切れが悪いんだよ、らしくねえな。しかもまた間違えてるぞ、瞳の色は紫って言ってただろうが」
ベロニカ「怪しい.........とーっても怪しいわ、ラース!やっぱりあんたが犯人なんでしょ!」
シルビア「これはちょっと本当に怪しいわ。ラースちゃん、間違って食べちゃったの?」
ベロニカ「しかもそれを隠そうとして嘘までついてたってわけね!あんた最低よ!」
マヤ「兄ちゃん、流石に謝った方がいいって」
マルティナ「ラース.......私だって素直に謝れば許すわよ」
ラース「い、いや、違う。俺は犯人じゃないんだ」
セーニャ「皆様、落ち着いてください。ラース様は本当に犯人ではございません」
カミュ「兄貴じゃねえのか?じゃあなんで兄貴はこんな怪しい事を」
セーニャ「ラース様、本当は初めから犯人をご存知でしたね?」
全員「ええ!?」
ラース「..........」
セーニャ「コック様から先程新しい証言がありました。ラース様が何かを探しに来る前に、お手洗いに行ってキッチンに不在の時間があったそうです。犯人はまさにその時、マルティナ様のケーキを食べたのです。そしてその瞬間、ラース様は偶然にもそれを目撃していたのです」
グレイグ「なんと!では、なぜラースは犯人を捕まえなかったのだ?」
セーニャ「それはですね」
ラース「セーニャ、わかった。話すよ。俺は犯人がケーキを食べる瞬間を確かに目撃した。皆が来る時に備えてコーヒーとか紅茶を多めに用意したほうがいいと思って、それを頼もうとして行ったんだ。
コックはいないが、代わりにいたのはケーキを美味しそうに食べる犯人だった。その犯人は俺を見ると慌てて逃げ出した。その後に俺はそれがマルティナが食べるはずのケーキだったと知ったんだ」
マルティナ「なるほどね。その犯人は誰だったの?というか、どうしてその犯人を隠しているの?」
ラース「それはだな.........まあ......」
ラースが言いにくそうにしていると
バタン!
デルカダール王「すまなかった、マルティナ!!!」
デルカダール王が勢いよく入ってきた
全員「王様!?/お父様!?」
デルカダール王「悪かった、マルティナよ。まさかあのケーキがお主の好物だとは知らんかったのだ。わしもあのケーキは懐かしくてのう。つい久しぶりに食べれると思い、口にしてしまった。もう一つ同じ物を買ってきたからわしを許してくれ」
デルカダール王はマルティナの前で土下座しようとしている
マルティナ「は、犯人ってお父様だったのですか!?」
セーニャ「はい、そうです。ラース様のあの嘘の証言はデルカダール王様がケーキを買って戻るまでの時間稼ぎだったのです」
グレイグ「なんとあっけない......」
マヤ「じゃあ、あの怪しい人ってのは本当は」
ラース「いるわけないさ。俺がその場で考えた人物なんだからな。セーニャの言う通り、玉座の間から大広間なんて見えるわけないだろう。本当なら静かに終わるはずだったのに、セーニャが探偵を始めるから焦ったぜ」
シルビア「でも、どうやって王様はキッチンに?」
ラース「実は王様の部屋にある本棚には隠し通路があってな。そこはキッチンへと繋がってるんだ。そこを通っていってつまみ食いをするのが王様の悪い癖なんだ」
カミュ「マジか......。じゃあ兄貴はそれを見たってわけか」
ラース「ああ。その後、王様に食べたケーキがマルティナの好物である事を言って、王様は大焦り。急いで買いに行こうにも時間がかかる。だから俺が協力してケーキを買う時間を稼ごうとしたんだ。
本当ならケーキを食べさせる前に色々皆と話そうと思っていたんだが、マルティナが予想以上に早くケーキを持ってきてほしがったからな。ある意味ではセーニャの探偵には救われた」
マルティナ「まったく.......。お父様、次からはもう勝手にケーキを食べるのはやめてください」
デルカダール王「あ、ああ。約束しよう」
マルティナ「罰としてお父様は一週間甘いもの禁止です。ラースはおかわり禁止」
二人「な!?」
デルカダール王様「マルティナよ!それだけは!それだけはやめてくれ!」
ラース「待て待て、マルティナ!なんで俺まで!?」
マルティナ「お父様と一緒に犯行をなかった事にしようとした時点で同罪よ」
ラース「ぐ.......。せめて、せめて五日に.....」
マルティナ「駄目よ」
ラース「王様.......どうしてくれるんですか。おかず一品じゃ割に合わないじゃないですか」
デルカダール王「すまん、ラースよ」
グレイグ「ラースもおかずで買収されるんじゃない」
セーニャ「これにて閉幕ですわ!」