それから一ヶ月後の夜、デルカダール城
グレイグの部屋
夕食後、ラースはグレイグに呼ばれ部屋にやってきていた
ラース「なんだよ、グレイグ。頼み事って」
グレイグ「いや.......そのだな、どうしても必要なのだ」
ラース「何がだよ」
グレイグ「............だ」
グレイグはか細い声で何かを言った
ラース「は?」
グレイグ「お、お金を貸してほしいのだ」
ラース「........ハァァ!?」
ラースは顔を思いっきり顔をしかめた
グレイグ「ぐっ......」
ラース「何変な事言ってんだよ。金なら困る事はほぼないはずだろ」
グレイグ「...........」
グレイグは静かに正座をする
グレイグ「頼む!!何も聞かずに金を貸してほしい!必ず倍にして返すと約束する!」
グレイグは土下座をして頼み込んでいる
ラース「..........」
ラースもグレイグのその勢いに呆然としている
グレイグ「頼む、ラース。一生の頼みだ」
ラース「...........何に使うのかだけは言え。それ以外は聞かないから」
グレイグ「それだけは言えない!」
ラース「じゃあ貸さない。断固拒否だ」
グレイグ「ぐぅぅ...........」
グレイグは顔を赤くしている
ラース「...............俺の予想通りでも貸さないからな」
グレイグ「な、何故だ!!」
ラース「そんなくっだらねえ事に人の金を使ってんじゃねえ!!」
グレイグ「頼む!!10名限定のプレミア物なのだ!!ロウ様との大切な大切な楽しみでもあるのだぞ!!」
グレイグはラースに縋りついた
ラース「知るかーーー!!」
グレイグ「ぐぐぐ.........ど、どうしても貸さないと言うのだな」
グレイグは何かを決めたようにラースから離れた
ラース「当たり前だ。なんで許されると思っていやがんだ、馬鹿野郎」
グレイグ「なら、俺も最終兵器を出そうではないか」
ラース「最終兵器?」
グレイグ「貴様が隠しているあれの場所を姫様にお伝えするぞ!!」
グレイグは更に顔を赤くして、強く言い切った
ラース「ゲェホッ!!ゴホッ!!ゴホッ!!」
ラースは突然のグレイグの発言にむせこんだ
グレイグ「ど、どうだ」
ラース「ふざけんな!!!てめえ、今何をしようとしてんのかわかってんのか?あぁ!?」
ラースは顔を鬼のようにしながら問い詰めている
グレイグ「うっ........。そ、それでも俺は!あれを集めなければならんのだ!」
グレイグはラースのその顔にも負けずにラースを見ている
ラース「ふざけやがってぇぇ...............。条件だ!その条件を飲めば貸してやる」
グレイグ「なんだ」
ラース「その1、必ず貸した金の二倍にして俺に返す事!
その2、その馬鹿げた本を買う以外に使わない事!
その3、明日俺の言う事は全て必ず聞く事!
その4、この約束はベロニカ、セーニャ、シルビア、マルティナには死んでもバラさない事!
その5、金を返す期日は4日!いいな!!?」
グレイグ「了解した。男と男の約束だ。この命に代えても守ろう」
ラース「で?その金額は?」
グレイグ「20万ゴールド」
バゴン!!
グレイグ「ぐぉぉぉ......」
グレイグの頭に巨大なたんこぶが出来上がった
グレイグもあまりの痛みに頭を押さえ込んでいる
ラース「ふざけんなよ!!俺の給料ほとんど持ってかれるじゃねえか!!」
ラースはそのままグレイグの首を掴んで締め上げている
グレイグ「ま......待つのだ.......。落ち着け.........ぐるじい」
ラース「これが落ち着いていられるか!!!」
グレイグ「おれ...........俺も出す...........ロウ様もだ............三人で分担するのだ」
ラース「そうかよ。なら、最初からそう言え」
ラースはグレイグから手を離した
グレイグ「ゲホッ!!ゲホッ!!.....だからラースに貸してもらいたいのは5万ゴールドだ」
グレイグの首にはくっきりと跡が残った
ラース「わかったよ。ほら」
ラースは持っていた財布から5万ゴールドを渡した
グレイグ「心から感謝する」
グレイグは頭を深く下げて受け取った
ラース「条件を忘れんなよ!!明日、俺の言いなりになってもらうからな!」
グレイグ「ああ、わかっている。なんでもしてやろう」
ラース「本当ならボコボコにしてやりたいが仕事に影響が出るのも困るからな!仕方なくだからな!」
グレイグ「そ、そうか。それがないだけまだよかった」
次の日の朝
マルティナと王様は不思議な光景に目を瞬かせている
ラース「おかわり」
グレイグ「は!ただいまお持ちいたします!」
ラース「これもだ」
グレイグ「は!」
グレイグは軽くご飯を食べた後、ラースに付きっきりでおかわりを持ってきている
マルティナ「ラース?グレイグと何かあったの?」
ラース「今日一日は俺の言いなりになってくれるんだってよ。こいつは悪い事したからな」
デルカダール王「そ、そうであったか。程々にするのだぞ、ラースよ」
ラース「大丈夫ですよ。無理難題は言いませんから」
ラースはにっこりと王様に返した
デルカダール王「そ、それは当たり前なんじゃが..........。まあよい、ラースを怒らせたグレイグが悪いんじゃろう」
王様もラースの反応に深くは触れないようにした
その後、玉座の間
カミュ「よ、ただいま。って.......何してんだ?おっさん」
カミュが帰ってくると
グレイグ「む、カミュか。お帰り」
掃除道具を持ったグレイグが玉座の間を隅々まで綺麗にしていた
マルティナ「カミュ、お帰りなさい」
ラース「よう、久しぶり」
カミュ「お、おう。なあ、何があったんだ?」
マルティナ「グレイグがね、ラースを怒らせたみたいなの。だから今日一日グレイグはラースの言いなりらしいのよ。それで今は玉座の間を掃除してってラースから言われているの」
カミュ「ほ〜、なるほどね。まーたおっさんは変な所で兄貴を怒らせんだからよ」
ラース「おいグレイグ、もっとテキパキやれ」
グレイグ「は!」
カミュ「........兄貴、ちょっと楽しんでるだろ?」
ラース「まあな!でも、当然の報いってやつだろ」
その後
ラース「グレイグ、訓練場の設備の点検」
グレイグ「は!」
しばらくして
ラース「グレイグ、武器と鎧の点検」
グレイグ「は!」
更にしばらくして
ラース「グレイグ、食料と薬の不足品を買ってこい」
グレイグ「は!」
更に更にしばらくして
ラース「グレイグ!部屋のシーツの取り替え!」
グレイグ「は!」
夕方、大広間
グレイグ「ゼェ........ゼェ.........。くっ、ラースのやつめ、こんなにコキ使う事ないだろう」
グレイグは普段の仕事よりも圧倒的に多い労働にクタクタになっていた
カミュ「見てるこっちもかわいそうになってきたぜ。兄貴のドS心に火がついてたからな」
グレイグ「もう夜になれば頼まれるものも少なく」
ラース「グレイグ!マーズと風呂掃除!」
グレイグ「は!今向かう!」
カミュ「やれやれ.......おっさん、ご愁傷様だな」
その夜、酒場
カミュとラースとグレイグは酒を飲みに来ていた
グレイグ「頼む、ラース!!いえ、ラース様!!私にお金を払わせる事だけは!!」
ラース「チッ!まあいいよ、今日は目一杯楽しめたからな」
グレイグ「ありがとうございます!」
カミュ「(兄貴のやつ、舌打ちしたって事はあわよくば程度に考えてたな?)で?おっさん、何やらかしたんだよ。ここまで暴走する兄貴は中々見れねえぜ」
グレイグ「.........カミュならよろしいですか?」
ラース「ああ、いいぞ。この馬鹿はな、プレミア物とかいうムフフ本を買うために俺に五万ゴールド借りたんだ」
カミュ「は?」
グレイグ「プレミア物でもただのプレミアではないのだ!10名限定の!豪華特典もついて、なおかつ」
カミュ「いや、わかったからよ。な、なんでそんなくだらねえ事を?おっさんだって兄貴に金を借りるなんて事をわざわざする必要ねえだろ」
ラース「じいさんとグレイグと俺で分割したんだ。20万ゴールドするんだってよ」
カミュ「ハァ.........。本当くっだらね、酒のつまみにもならねえじゃねえか。英雄様も落ちぶれたもんだな」
グレイグ「カミュ!お前にも見せてやるからな!あの作品は素晴らしいぞ!」
カミュ「へいへい。でもよ、兄貴はなんで貸したんだ?こんな事に貸すなんて思わなかったが」
ラース「...........まあ、いろいろあるんだよ。プライドとか」
カミュ「へー、それもくだらなそうだな」
ラース「くだらなくねえ!」