それから数日後、デルカダール城
大広間
ギバ「あ、ラース将軍!お疲れ様です」
ラース「おう、見回りか。お疲れ様」
ギバ「そうだ、ラース将軍。街の人達がちょっと話題にしてたのを耳に挟んだんですけど」
ラース「ん?」
ギバは周りを確認した後、口元に手を当てて静かに話しかけてきた
ギバ「この前、本屋でグレイグ将軍と共にプレミア物のムフフ本買ったのって本当ですか?」
ラース「ブフッ!!」
ラースはその事に思いっきり吹いた
実際、ラースは先日の本の発売日にグレイグに買う所を見せると無理矢理連れていかれていた
ラース「あー........俺は買ってない。買ったのはグレイグで俺は付き添いだ」
ギバ「あ、そうだったんですね。いやー、まさかラース将軍もそういった趣味があるのかと」
ラース「んなわけねえだろ。というか、街の人達がそんな噂を」
ラースは少し頭を抱えている
ギバ「はは、まあ皆からも不思議がられてましたから。まあグレイグ将軍がそういうのが好きなのは前にお聞きしてましたからわかりますけど。あ、マルティナ様にはバレないようにしておきますね」
ラース「頼む。バレたら言い逃れすらさせてもらえないだろうからな。あ、あとバンには話すなよ。うっかりでも話されたら厄介だ」
ギバ「それは確かに。わかりました」
夕方、玉座の間
ガチャ
バン「あ、あの〜........書類の提出を」
ラース「遅い!」
バン「うう......すみません」
申し訳なさそうにしているバンが静かに入ってきた。その手には昨日までの期限の書類が握られており、頭には既にベグルに怒られたのかたんこぶが出来ている
ラース「何回目だよ、まったく。特に今週は忙しくはなかっただろ。やる時間はどこにでもあったはずだ」
バン「はい、ごもっともです」
マルティナ「まあまあラース、落ち着いて。もう怒られてるみたいだし、あまり責めないであげて」
バン「うぅ.......ありがとうございます、マルティナ様」
ラース「........ハァ、まあ確かに。遅れる事も前に比べたらかなり少なくなったしな」
バン「そ、そうですよね!」
ラース「だからってしていいわけじゃねえ」
バン「うっ.......。すみません」
ラース「部屋のカレンダーとかに期日をメモするなりして忘れないようにしろよ。遅れて困るのは俺達なんだからな」
バン「はい.....」
ラース「よし、説教終わり。もう戻っていいぞ」
バン「は、はい......。あ、そうだ。一つ師匠にお聞きしたい事があって」
ラース「ん?なんだ?」
バン「先日本屋にグレイグ将軍と」
パシッ!
バン「ムグッ!?」
ラースはすぐさまバンの口に手を押し付けた
ラース「ちょっとこっちこい」
バン「ムー!?」
ラースはバンを部屋の外に引っ張っていく
マルティナ「え?ちょ、ちょっとラース?」
グレイグ「ひ、姫様、ラースはバンと大事なお話があるそうです。きっといつもの事です」
マルティナ「そう?かなり焦ってたみたいだけど。それに本屋にグレイグと?私、知らないけど何かあったの?」
グレイグ「いえ、私オススメの小説をラースにも読んでほしくて買っただけなのです。おそらく城下町に私と二人でいるのが珍しかったのかと」
マルティナ「ふーん、まあいいわ」
グレイグ「(よ、よし。なんとかやり過ごせたか)」
マルティナ「(寝る前にもう一度ラースに聞いてみましょう)」
その夜、グレイグの部屋
ラースはグレイグと作戦会議を開いていた
ラース「というわけで、バンにも話して絶対にマルティナには言うなと念を押しておいた」
グレイグ「うむ、一番の不安要素がこれで少しはマシになったか。かなりヒヤッとしたぞ」
ラース「本当だよな。バンのやつ、わざわざ玉座の間で話さなくたっていいのに」
その時
コンコン
マルティナ「グレイグ?ラースを見てない?」
二人「!?」
グレイグ「ひ、姫様!ラースならここにいますぞ」
マルティナ「あ、そうだったの。入ってもいい?」
グレイグ「はい、どうぞ」
ガチャ
マルティナ「あ、よかった。ラース、探したわ」
ラース「どうした?マルティナ。もう少しで部屋に戻る予定だったが」
マルティナ「........なにか隠してない?」
ラース「え?別に何も隠してないけど」
マルティナ「そう?数日前からラースとグレイグが一緒にいる時間がかなり増えた気がしててね。まあいい事なんだけど、今日のバンの話を遮ったのも気になるし」
グレイグ「ひ、姫様、ですからそれは」
マルティナ「グレイグは黙ってて」
グレイグ「は、はい」
ラース「はは、なんだ。心配かけたか?別に変な事は何もしてないぞ」
マルティナ「.........そうね。私の考えすぎだったかしら、ごめんなさい。それじゃあまた後でね」
ラース「おう」
マルティナは部屋から出ていった
二人「.......ふぅ〜」
二人は同時に安堵の息をついた
グレイグ「いやはや、姫様の勘には恐ろしいものがある。よく表情を崩さずに話せたな、ラース」
ラース「ポーカーフェイスは昔から得意だったからな。まさかこんな所で使う羽目になるとは思わなかったが」
グレイグ「今度ロウ様がここに来る事になっていてな。その時にロウ様にもお見せするのだ。先に見るか?ラース」
ラース「見ねえよ。いいから一番見つかりにくい場所に閉まっておけ」
グレイグ「むぅ、つれんな。カミュも少しは見たというのに」
ラース「もう興味ねえよ」
グレイグ「ほう?"もう"か」
ラース「んだよ」
グレイグ「いや、お前もやはり興味があった時があるのだなと」
ラース「そりゃあ男だからな。ガラッシュの村でそういった本は少ないから皆で集まって隠れて見てたんだ。ギルグードが一番詳しかったんだぜ」
グレイグ「なるほど。皆で見るというのもいいな」
ラース「ま、昔の話だ。それじゃあ俺は部屋に戻るぜ」
グレイグ「ああ、おやすみ。姫様に気をつけるのだぞ」
ラース「わかってる。じゃあな、おやすみ」