それから数日後、デルカダール城下町
今日はホワイトデー。バレンタインのお返しを渡す日として、城下町のお店や商店街には白や青を基調とした旗などが飾られており、チョコレートやクッキー、コップや花束など様々な商品が目立つように置かれている
ベル「そうか、今日はホワイトデー。だからこんなに人が多いのだな。いや、この国からしたらこの程度は当たり前なのかもしれんな。まあいい、城までの道は.........あっちか」
ベルは城に向かって歩き始めた
デルカダール城 大広間
ベル「失礼する」
ベルが中に入ると
コロ「キャン!」
コロがベルに向かって走ってきた
ベル「な、なに!?魔物!?こんな城の中に!?」
ベルは突然の事に戸惑いながらも、背中に背負った大剣を取った
コロ「ク、クゥ......」
マルス「コロー、突然どうしたの?あ、お客さんだ。こんにちは」
奥からは少し遅れてマルスが走ってきた
ベル「子どもか!離れろ!そいつは魔物だぞ!」
マルス「え?ま、待って!!コロは悪い魔物じゃないよ!僕達の大事な家族!」
マルスはベルの様子を見て急いでベルとコロの間に入った
ベル「魔物が.....家族?」
マルス「うん、そうだよ。ほら見て、このキラーパンサーはコロっていうんだけど襲ってこないでしょ?」
コロ「キャン!」
マルスはコロを撫でると、コロも嬉しそうに吠えた
ベル「な、なんと........。随分と変わった魔物なのだな。突然すまなかった」
ベルもマルスとコロの雰囲気に大剣を背中に戻した
マルス「ううん、大丈夫。初めてコロ達を見ると皆似た反応するから。それでお姉さんはどうしてここに来たの?母さんや父さんに用事?」
ベル「その母さんや父さんが誰かはわからぬが、おそらく違うな。私が来たのは兵士の一人であるマーズ殿に用があって来たのだ」
マルス「あ、マーズさんに用事?僕、呼んでくるよ!」
ベル「おお、そうか。それは助かる」
マルス「ここで待っててね、お姉さん!」
マルスは走っていった
コロ「キャン」
コロもベルに小さくお辞儀をして戻っていった
ベル「ま、まさか魔物に頭を下げられるとは。本当に変わっているな。だが、落ち着いて見ると可愛らしいな」
数分後、マルスとベグルがやってきた
マルス「ごめんね、お姉さん。マーズさんいなかった」
ベグル「ベル、久しぶりだな。悪いがマーズは今、城下町で暴れているやつがいるって事で取り押さえに行っていないんだ。もう少ししたら戻ってくるとは思うけどよ」
ベル「久しいな、ベグル殿。そうか、仕事であれば仕方ないな」
マルス「お姉さん、ベルさんっていうんだね。ねえ、ベルさん。よかったら母さん達に会ってきたら?」
ベル「先程も言ったが、その母さんとやらは誰なのだ?」
マルス「この国の王女だよ。マルティナっていうの。父さんはラースだよ」
ベル「な!?こ、この子はつまり!」
ベルはマルスの発言に驚きながらベグルを見た
ベグル「そういう事だ。この国の王子様ってな。あともう一人、ルナっていうお姫様もいるぞ。二人は兄妹なんだ」
マルス「凄いでしょ!」
ベル「驚いた、マルティナ殿とラース殿の息子だったとは。それに娘もいるのか、知らなかった。それなら少し話をしていこう。お伝えしたい事もあるからな」
マルス「はーい、玉座の間はこっちだよ」
玉座の間
ガチャ
マルス「父さーん、母さーん、グレイグさーん、ベルさんっていう人が来たよ」
ベル「お久しぶりです、マルティナ殿、ラース殿、グレイグ殿」
マルティナ「あら!ベルさん!久しぶりね」
グレイグ「何かあったか?」
ラース「マルス、ありがとな」
マルス「うん、じゃあねー」
マルスは戻っていった
ベル「いえ、特に何かあったわけではないのですが、少しマーズ殿に用事があったのと先日私がご迷惑をおかけしてしまったのに何も詫びをしていなかったと思いまして」
ラース「詫びなんていいさ、別に。そんな迷惑かかってないしよ」
マルティナ「そうよ、こっちこそバンの件でベルさんに迷惑かけたもの」
ベル「そう言っていただけるとありがたいです。こちら、つまらない物ですがガオス村の特産品、絹で作ったタオルになります。もしよろしければお使いください」
ベルはカバンから様々な淡い色をしたタオルをいくつも取り出した
グレイグ「こ、こんなにいいのか?」
マルティナ「そうよ。確か織物で村を成り立たせてるって」
ベル「お気遣いいただきありがとうございます。ですが、私達は大丈夫ですのでご安心ください」
ラース「そうか。なら、ありがたく使わせてもらうぞ」
ベル「はい」
グレイグ「それとマーズは今、急な仕事で城下町に出ていてな。悪いが、しばらく待っていてほしい。そろそろ帰ってくると」
ガチャ
バン「失礼します、マルティナ様。ご報告に、あれ!?ベル!」
マーズ「え?あ、本当だ!ベルさんじゃないか!」
グレイグが話していた時、バン達が報告に戻ってきた
マルティナ「あら、ちょうどいいタイミングね。どうだった?」
バン「は!旅人同士のいざこざでしたので少々話をしたのですが、互いに興奮しており俺達に刃物で襲ってきたのでそれを退治。
手荒でしたが、街から追い出しました。あ、退治といっても刃物を壊したりしただけで旅人達には何もしていませんよ」
マルティナ「そう、わかったわ。最近血の気が多い人達が多くて困るわね。ありがとう」
ラース「マーズ、ベルはお前に用事があって来たみたいだぜ」
マーズ「そうなのか?いなくてすまなかったな」
ベル「いや、仕事だったのだから仕方ない。やはり兵士となると忙しいな」
バン「マーズ、この後は俺達でやっておくから自由にしてていいぞ。ベルを待たせてたみたいだしよ」
マーズ「そ、そうか?ありがとな、バン。まあ何かあったらすぐ連絡くれよ」
その後、デルカダール城下町
マーズ「久しぶりだな、ベルさん。また来てくれて嬉しいぜ」
ベル「ああ、マーズ殿も変わりないようで何よりだ。実は用事といっても大した事ではないのだがな。これを渡そうと思っていたのだ」
ベルはカバンから少し小さい紫色の長方形の箱を取り出した。そこには黄色のリボンが巻かれている
ベル「前にマーズ殿には迷惑をかけたからな。それのお詫びとお礼としてチョコレートを作った。よかったら受け取ってくれ」
マーズ「.......お、おう、ありがとな。別に礼とか詫びなんていいのによ」
ベル「だが、何かしなければ私の気がすまなかったのでな」
マーズ「そ、そうか。俺、女性から貰ったの初めてだ。大事に食べさせてもらう。というかよ、これだったらバレンタインに来るべきだったんじゃないのか?」
ベル「ま、まあそうなのだが、別にホワイトデーだから女性があげてはいけないわけではなかろう」
マーズ「ふふ、そうだな。じゃ、折角のホワイトデーなんだ。これのお返しをするよ」
ベル「さてはマーズ殿、楽しみたいだけなのではないか?」
ベルは先程からチラチラと商店街を見ているマーズの様子と今の発言で勘づいた
マーズ「そ、そうだよ。城下町がこんなにホワイトデー一色なんだ。兵士でも少しくらい楽しみたいだろ。といっても、どうするかな......。あ、ベルさんはデルカダールに来たのこれで二回目か?」
ベル「ああ、そうだな」
マーズ「それじゃあ大した礼にはならないが、俺がデルカダールを案内しよう。デルカダールの特産品とか食い物とか」
ベル「おお、それは助かる。観光は前回出来なかったのでな。今回落ち着いてしようかと思ったが、こうも広い上に人も多いと大変な気がしていたのだ」
マーズ「おし、それじゃあまずは商店街の」
グギュゥゥ
ベル「..........」
マーズ「..........」
気の抜けるような音がハッキリと聞こえた
ベル「そういえば昼時だな、私も腹が減った。先にご飯にしようではないか」
マーズ「はい、そうさせてください」
マーズは盛大に自分のお腹が鳴った事とベルの気遣いにより顔を真っ赤にして下を向いてしまった
ベル「そこまで恥ずかしがる必要はないだろう。人間なら当然の事だ」
マーズ「いや、だって、あんなタイミング悪く鳴るか?普通」
ベル「とてもよい音だったぞ」
マーズ「そういう意見は求めてねえ!」