その夜、グラジー
マドリーとチャムの部屋
ルナ「ど、どうだった?マドリーさん。お母さん達怒ってた?」
マドリー「大丈夫よ、ルナちゃん。どこに行ったのか心配してたけど、怒ってなかったわ。グラジーにいるとわかって安心してたわよ」
ルナ「よかった....」
マドリー「お母さん達に怒られたくなかった?」
ルナ「......うん。でも、言う事聞かなかったから怒られるかなって思ってた」
マドリー「じゃあ今ルナちゃんは悪い事したと思ってるのね。どうして言う事聞かなかったの?」
ルナ「......痛い事されたくなかったから」
マドリー「前にお医者さんに痛い事されたの?」
ルナ「.......されてない。でも、歯を抜くと思ってたから嫌だったの。それを無理矢理やらせようとするお母さん達も嫌だったの」
マドリー「ふふふ、なるほど。じゃあそんな事してくるお母さん達は嫌い?」
ルナ「.........ううん、好き、大好き。優しいし、かっこいいし、いっつも私達のために頑張ってくれてるの知ってるもん。私の自慢のお母さん達」
ルナはそれを言いながら目からどんどん涙が出てきている
マドリー「あら、大変。ほら、泣かないで大丈夫だから。嫌な質問しちゃってごめんね。ルナちゃんがお母さん達をどう思ってるのかはよく伝わってきたわ。きっとマルティナ様もラース様もグレイグ様もデルカダール王様もルナちゃんと同じよ。ルナちゃんが大好き、もちろんマルス君もね。
二人はマルティナ様達にとって宝物よ。だって、マルティナ様達の子どもなんだからね」
ルナ「うん......」
マドリー「親ってのは子どもに痛い事はさせたくないと思ってるはずよ、極力ね。でもどうしても痛みを伴ったり、そうしないと学べない事があるの。その時は親も心を鬼にして、子どもにその経験をさせるわ。
でも、それは断じてルナちゃんを嫌いになったからとかじゃないの。きっとルナちゃんが感じる痛みと同じくらいマルティナ様もラース様も皆痛みを感じるのよ。その痛みを我慢して皆、ルナちゃんを信じてるの。だからルナちゃんも頑張らないとね」
マドリーはルナの頭を撫でながら優しく話している
ルナ「..............」
ルナはしばらく黙り込んだ後
ルナ「ん!」
自分の目を強く擦って涙を拭うと
ルナ「私、明日謝る!それでお母さん達に大好きって伝えて、自分でお医者さんに見せに行く!大好きなお母さん達を困らせたくないから!」
少し赤く腫れた目をしながら、真っ直ぐ前を向いて宣言する
マドリー「ええ、その勢よ、ルナちゃん。私も応援してるからね」
次の日の朝、デルカダール城 大広間
ルナ「お母さん、皆!ただいま!」
ルナが走りながら帰ってきた。大広間には全員がルナの帰りを待っていた
マルティナ「ルナ!お帰りなさい!」
マルティナのしゃがむとルナが飛び込んできた
ラース「お、家出娘が帰ってきた」
デルカダール王「元気そうでなによりじゃ、ルナよ。グラジーは楽しめたか?」
ルナ「うん!」
グレイグ「迷惑かけたな、マドリー。お礼といってはなんだが酒とつまみだ。よかったらビルと二人で楽しんでくれ」
マドリー「まあ!ありがとうございます、グレイグ様!大した事してないのにお礼なんて。気にしなくてよかったんですよ」
ルナ「あ、あのね、お母さん!お父さん!グレイグさん!おじいちゃん!」
ルナはマルティナの胸から離れると、それぞれの顔を見た
四人「ん?」
ルナ「私、皆の事大好きだよ!全然嫌いなんかじゃない、自慢の家族だからね!」
四人「..........」
ルナの突然の発言に四人とも少しポカンとしている
マドリー「ふふふ」
マルティナ「ええ、もちろんよ!ルナは大事な家族よ。私もルナが大好き」
マルティナは再びギュッとルナを抱きしめた
ラース「はは、どうした?突然。ルナを嫌いだなんて言ったか?」
デルカダール王「嫌いになるわけがなかろう」
グレイグ「ありがとう、ルナ。俺もルナが大好きだぞ、なんたって家族なんだからな」
ラース達もそれぞれルナの頭を撫でている
ルナ「私、お医者さんに見せてくる。それでお母さん達に安心してもらう」
マルティナ「ルナ......。ええ、ありがとう」
マルティナはルナを下ろすとルナは医療部屋に走っていった
デルカダール王「また一つ大人になったのう、ルナ」
グレイグ「昨日まであんなに嫌がっていたというのに。本当にありがとう、マドリー。何をしてくれたのかはわからないが助かった」
マドリー「何もしてませんよ。ルナちゃんが自分から言ってくれたんです。大好きなお母さん達を困らせたくないって」
ラース「そうか。はは、ああやって真っ直ぐ伝えてくれるとやっぱり嬉しいよな」
マルティナ「ふふ、伝えると決めたら真っ直ぐ伝える。ラースみたいだったわ。やっぱりルナはラース似だわ」
ラース「そ、そうか?」
マドリー「それでは私はここで失礼させていただきますね」
デルカダール王「ああ、助かった。ありがとう」
その頃、医療部屋
医者「おやおや、ルナ様。おはようございます」
ルナ「おはよう、お医者さん。あのね、私の虫歯治してください!」
ルナは綺麗に頭を下げた
医者「おや、自分お一人でこられたのですか?私はてっきりマルティナ様やラース様がご一緒だと」
ルナ「うん!もう困らせたくないから!」
医者「ふふ、そうですね。では、その虫歯とやらを見せてください。お口を開けて」
ルナ「あー.....」
医者「ふむふむ.........。うーん。ルナ様、これは薬だけでは治りが悪そうです。治療が必要ですが大丈夫ですか?」
ルナ「いいよ!痛い?」
医者「ちょっとだけですよ。出来るだけ痛くならないように私も頑張りますのでルナ様も頑張っていただけると幸いです」
ルナ「わかった!私も頑張るね!」
医者「はい。それでは少々お待ちください」
その後ラース達にもルナの治療が報告され、医療部屋前ではデルカダール王、ブレイブ、コロが常にウロウロしていた
コロ「クゥ〜.....」
コロは医療部屋の前で心配そうな顔をして扉を見つめている。その尻尾はさがり、どこかしょんぼりとしている
デルカダール王「コロもルナが心配じゃろう。わしも心配じゃが、きっとルナなら大丈夫だと信じておる。しかし、少しもルナの声が聞こえないのう」
ブレイブ「ガウ.....」
デルカダール王の隣でブレイブも少し元気なさそうに鳴いた
ガチャ
三人「!」
ルナ「あ!おじいちゃん、コロ、ブレイブ!待ってたの?」
治療が終わったのかルナが元気そうに出てきた
デルカダール王「おお、ルナ。終わったのか?痛くはなかったか?よく我慢したのう」
ルナ「全然痛くなかった!」
医者「おやおや、デルカダール王様。ブレイブ君にコロ君まで。無事治療は終わりましたよ。後はマルス様と同じ薬を塗っていれば大丈夫です。あ、ルナ様。もちろん今日からまた歯磨きをしっかりとしてくださいね」
ルナ「はーい!」
コロ「キャン!」
ブレイブ「ガウガウ」
コロとブレイブも嬉しそうにルナの近くを回っている
ルナ「コロもブレイブも心配してくれたの?ありがとう!早くお母さん達にも報告しよう!」
三人で朝食場に走っていった