それから一ヶ月後、デルカダール城
訓練場
ラースとダバンが真剣な顔つきでやってきた
バン「あ、師匠!と、ダバン。どうされましたか?」
ラース「バン、兵士を全員呼び出すんだ。見習いも含めてな。重要な話がある」
バン「え?わ、わかりました!少々待っててください!」
しばらくして
バンの号令により、兵士全員が集められていた
ラース「よし、全員揃ったみたいだな」
バン「ダバン、なんでそっちにいるんだよ。こっちに並べよ」
ダバン「.........」
ダバンは顔を暗くしてバンの問いを無視した
バン「ダバン?」
ラース「ダバンから重大な発表がある。しっかり聞けよ」
ラースはダバンの背中をそっと押して前に出させた
ダバン「..........はい」
ダバンは深く深呼吸する
深呼吸が終わると真っ直ぐ兵士達を見た
ダバン「皆、突然ですまない。俺、ダバンはデルカダール兵士を辞めさせてもらう事になった」
バン達「!!?」
見習い達「え」
ダバン「今までたくさん世話になった。俺はもうここからいなくなるけど、皆の事絶対忘れねえから。ありがとう」
ラース「と、いうわけだ」
ベグル「.....チッ.....」
ギバ「嘘....だろ」
ガザル「........おいおい」
マーズ「あの時のお金はそういう意味が」
ロベルト「マジかよ、ダバン。いなくなるのか」
ラース「言いたい事はたくさんあるだろうな。ダバンはあと五日でいなくなる。この数日は忙しくないから極力仕事は回さないようにしておく。ダバンと過ごす最後の時間だ、楽しむんだぞ。じゃあな」
ラースは一足先に戻っていった
ダバン「..........」
ダバンは少し顔を歪めて下を向いている
ロベルト「あー、まあなんだ。ビックリしたけどさ、理由があるんだろ?多分ずっと前から決まってたんだろうし、言わなかった理由とかもさ」
ロベルトは苦笑いしながらダバンの肩に優しく手を置いた
ダバン「あ、ああ」
バン「........ねぇ」
バンがボソリと呟いた
全員「?」
ダバン「バン?」
バン「俺は認めねえ!!!!」
バンは発表後からずっと黙っていたが、ついに感情を爆発させたような怒鳴り声をあげた。その怒号は訓練場全体に強くビリビリと響いている
ダバン「バン.......俺は」
バン「なんで黙ってた!!なんで突然になってこんな事言い始めた!!辞めるってなんだよ、昔にした俺達との約束はどうなったんだよ!!!」
バンは大声でまくしたてるように叫び続ける
ダバン「すまん........。だけど、俺にだって」
バン「信じられねえよ.......。ずっと.....仲間だと思っていたのに.........。そう思ってたのは俺だけで、お前の中じゃそんな事なかったって事かよ!」
ダバン「違う!俺だってずっとお前らと」
バン「嘘つけ!!そうじゃなきゃこんな酷え事するわけねえだろ!!お前なんか信頼するんじゃなかった!!お前みたいなやつを仲間だと思うんじゃなかった!!ダバンなんか大っ嫌いだ!!!」
ダバン「!!!」
バンの言葉にダバンは酷く傷ついた顔をした
バン「あ..........。知るか!」
バンはしまったというような顔をすると訓練場から走って出ていった
全員「............」
重い空気だけがその場に残り続けていた
ベグル「..........バンの言い分は最もだ。あいつの性格上こうなる事はお前にもわかっていたはずだろう。何故ずっと黙ってたんだ」
ダバン「......言い出しづらかった。約束を破る事になるし、バンが止めないわけがねえ。でも、最悪兵士長の許可がなくともラース将軍とマルティナ様からの許可があれば兵士は辞められる。これが最善の手だと思った」
ベグル「は?これが最善の手だぁ?ふざけた事言ってんなよ、クソ野郎」
ベグルはダバンに近づいていく
ギバ「あー、待て待て!お前まで喧嘩モードになってどうすんだって!ダバンにだってきっと考えがあるんだからさ!それを聞いてから話し合おうぜ!」
ギバが急いでベグルとダバンの間に入った
マーズ「そうだな。ダバン、理由を教えてくれ。どうして辞めようなんて思ったんだ?」
ダバン「.......ケニーの事だ。前に俺の弟がユグノアで盗賊として捕まったのは話したよな。あの時、バンにケニーと一からまた家族として始めていけばいいと言われて納得したんだ。
俺はもう一度ケニーと家族に戻りたい。兄として、またあいつを守ってやりたい。そう思えたんだ。」
ベグル「それで?」
ダバン「そ、そのためにユグノアに行こうと思ったんだ。だからここを辞めて」
ベグル「んな事聞いてねえ。家族に戻りたい?生温い事言ってんじゃねえよ」
ギバ「お、お前!立派な事だろ!なんて事言うんだ!」
ベグル「こんな軟弱者にそんな大層な事出来るわけねえだろ!お前みたいな弱いやつには不可能だ!」
ダバン「!!な、なんでだよ!俺はちゃんと考えてケニーと」
ベグル「うるっせえなぁ!!無理だって言ってんだろうが!!」
ダバン「お前が決めるなよ!なんでそんな事がわかるんだよ!」
ベグル「わかるに決まってんだろうが!!てめえがずっと弱いままで変わった弟を戻せるわけがねえんだからよ!!」
ダバン「俺は弱くねえ!!」
ベグル「弱えよ!!この中の誰よりも!見習い達なんかよりもずっとお前は弱え!!」
ダバン「なんだと......」
二人は互いに睨み合い、今にも取っ組み合いになろうとしている
ロベルト「待て待て!ダバン、落ち着くんだ」
ガザル「ベグル!もっとなんか言葉あるだろ。そんな攻撃的になるなって!」
ロベルトがダバンに、ガザルがベグルの前に出て場を宥めようとする
ギバ「ダバン、ベグルのあれはちょっと違くて。あー、なんだ。勘違いで」
ベグル「勝手な事言ってんじゃねえぞ、ギバ!勘違いなんかじゃねえよ!」
ベグルはガザルを無視して進んでいく
ガザル「や、やめろって言ってんだろ!」
ガザルはベグルを背中から取り押さえようとする
ギバ「ベグル!ダバンだって今つらいんだぞ!そんな酷え言葉かけるなって!励ましてやれよ!」
ベグル「あぁ!?チッ!ギバもよー、いっつもいつもヘラヘラしてよ、場を盛り上げてればいいと思ってんなよ!」
ギバ「な、なんだよ.....それ。今関係ねえだろ!ベグルこそそうやって短気になってこっちは迷惑してんだよ!」
マーズ「やめろって!!ギバまで雰囲気に呑まれるな!三人とも落ち着け!深呼吸だ!」
ベグル「チッ!やってられっかよ」
ガザル「うおっ!?」
ベグルは背中で取り押さえていたガザルを投げ飛ばした
ドン!
ガザル「ガハッ!」
ガザルは壁に叩きつけられ、ベグルはそのまま訓練場から去っていった
ロベルト「大丈夫か?ガザル」
ガザル「ゲホッ!あんの野郎、思いっきり投げやがって」
ダバン「.........」
ギバ「.........」
訓練場全体にはもう取り返しのつかないほど嫌な空気で満たされていた
ロベルト「......あー、一旦このメンバーで訓練やるぞ。ダバンとギバは各自でやっててくれ。俺とガザルとマーズで見習い達を教えるからよ」
二人「おう」
訓練終了後
ダバンとギバもそれぞれ訓練が終わると素早く訓練場から出ていき、残ったのはロベルトとマーズとガザルになった
ロベルト「やばいぞ、四人の仲がバラバラになっていく」
ガザル「やばいなんてもんじゃねえ、緊急事態だ。あの四人がこんなマジで喧嘩した事今までねえぞ」
マーズ「どこをどうしていけばいいか.......。俺達だって別にダバンがいなくなる事をよしとしたわけじゃねえのによ」
ガク「あ、あの、ロベルトさん、マーズさん、ガザルさん」
真剣に話し合おうとしていた三人にガクとジール、ジャスが話しかけてきた
ロベルト「どうした?」
ジャス「バンさん達、大喧嘩しちゃったじゃないですか。やっぱり仲直りさせた方がいいと思うんですよ」
ガザル「だよな。あんな雰囲気がずっと続くのは俺だって御免だ」
ジール「ですよね。だからさっき俺達で意見を出して、仲直りさせるにはやっぱり四人をよく知る三人じゃないと駄目だって思ったんです」
マーズ「お、おう。まあ確かにガク達よりは付き合い長いけどよ」
ガク「なので!三人にはバンさん達の仲直りに専念してもらいたくて!でも、俺達の訓練があったり見回りとかであまり動けないですよね。だから俺達で出来る限り分担して、訓練は俺達三人が教えられる範囲で。
見回りは前に教えてもらったやり方で外と魔物調査、城下町の見回りに見張りもやります。極力三人にお仕事がいかないようにするんで、バンさん達を仲直りさせてあげてほしいんです!」
三人「お願いします!」
ガク達は頭を下げた
ガザル「お、お前ら......」
ロベルト「わかった。だが、無理はするなよ?何かあったらすぐに連絡するんだぞ」
三人「はい!」
マーズ「さて、責任重大だな」