その夜、マルスとルナの部屋
マルス「え?一緒に寝たいの?いいよ!」
ルナ「珍しいね、コロ。自分からお願いにくるなんてさ」
コロ「う、うん。久しぶりにマルス達と寝るのもいいかなって」
マルス「ベッドだともう入らないもんね」
ルナ「大きくなったねー、コロ」
コロ「そう?俺は床で寝てるから大丈夫だよ」
夜中
コロ「........」
コロはマルスとルナが寝静まったのを確認すると閉じていた目を開け、静かに部屋から出ていった
デルカダール地方 滝近くの崖
コロ「え!?」
ブレイブ「やはりか」
コロが崖に向かうと既にブレイブが待っていた
コロ「なんで、父ちゃんが」
ブレイブ「たわけ。息子の事などわかって当然だ」
コロ「...........」
ブレイブ「俺よりあいつがいいのはわかる。俺はあいつのように優しくなどなれないし、言葉も足りない。お前の事を.......愛しているのかすらもわからん」
コロ「!!」
コロはその言葉に酷くショックを受けている
ブレイブ「だが、お前は間違いなく俺とあいつの息子であり、俺の.......俺達の大事な子だ」
コロ「う、うん......」
ブレイブ「まだ俺が怖いか?」
コロ「.......ううん、怖くない。父ちゃんは優しくないって俺言ったけど、あの後ラース様に教えられたの。父ちゃんは、本当は俺が大好きで大事で仕方ないんだって」
ブレイブ「ラース様が?」
コロ「うん。俺もわからなかったけど、説明されてわかった事があるんだ。父ちゃんって、俺が怪我したり危ない事がおこった後、必ず初めに大丈夫かって言ってくれてた」
ブレイブ「当然だろう」
コロ「いたずらして怪我した時も、友達と喧嘩した時も、まず最初に父ちゃんは俺を心配してくれた。それって俺が大事だからなんだって言われた」
ブレイブ「..........俺にはよくわからん。だが、ラース様が言うのならばきっとそうなのかもな」
コロ「ねえ、父ちゃん。俺、どうしてここの崖にいたと思う?」
ブレイブ「?勝手に抜け出して、偶然ここに来たのではないのか?」
コロ「違うんだ。俺、ほとんど無意識でここに来たの。誰かに呼ばれてたから」
ブレイブ「無意識?呼ばれていた?何を言っているんだ」
コロ「今日もね、呼ばれたんだ。暖かくて、優しくて、懐かしくて、どこか父ちゃんみたいな気配」
ブレイブ「..........」
コロ「ねえ、またあそこまで登っていい?」
ブレイブ「ああ、俺もついていくからな」
コロ「うん!」
崖の上
コロ「ここ!」
ブレイブ「ここは......」
コロ「姿は見えないんだけどね、今日もいるよ。ここにその気配が」
コロは何もない部分に寄りかかっている
ブレイブ「..........そこにいるのか」
コロ「うん!」
ブレイブ「俺の声も届いているのだろうか。久しぶりだな」
サアアア
静かな夜風が二人の間を流れていく
ブレイブ「息子がどうしてここに来たのかは深く考えていなかったが、そうか。お前のおかげか。どうだ?俺達の息子は」
コロ「父ちゃん?誰と話してんの?」
ブレイブ「お前が寄りかかっているのはおそらく、お前の母ちゃんだ」
コロ「え!?母ちゃん!?」
ブレイブ「ここは俺とあいつが初めて出会った場所。始まりの場所だ。ここにきてようやく俺も気づいた。この気配、間違うはずがない。俺が........初めて認めたやつなのだから」
コロ「そっか。へへ、母ちゃん見てる?俺、こんなに大きくなったよ」
ブレイブ「お前との契りのせいで、俺は柄にもない事をさせられ続けているのだぞ。お前によく似た自由な子を育て、更に群れのリーダーもやらされ、あの頃の一人を好んでいた俺はどこにいったのだろうな。全く..........いつまでも俺を振り回してくれる」
ブレイブは夜空を眺めながら静かに話している
サアアア
再び夜風が二人の間を流れていく
コロ「父ちゃんと母ちゃん、なにか約束したの?」
ブレイブ「ああ、そうだ。お前が産まれるほんの少し前。つまり、あいつが死ぬ直前だ」
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コロの母「ハァ.............ハァ」
コロの母は横に力なく倒れ、息の間隔もかなり長くなってきている
ブレイブ「おい!起きろ!もうすぐ産まれる!持ち堪えるのだ!」
コロの母「ねえ..........一つ......頼み事、しても......いい?」
ブレイブ「なんだ!こんな時に!」
コロの母「私はもう..........あなたの隣には.....いられないみたい」
ブレイブ「!?そんな事、俺が許すわけないだろう!隣にいると言い始めたのは貴様からだ!お前からそれを破るなどふざけるのも大概にしろ!おい、何が必要だ!水か!肉か!果物か!」
コロの母「あなたにね.......これから生まれる子を.....育ててほしいの」
ブレイブ「俺がだと!?そんな事出来るわけない!お前だって育てる事を楽しみにしていただろう!」
コロの母「だから......よ。私の分まで.........」
ブレイブ「無理だ!お前がいなければ.......俺は子どもなどの扱いは知らん!殺してしまうかもしれんぞ!」
コロの母「ふふ......平気。だって私.....知ってるわ。あなたが......本当はとっても優しくて.......世話焼きな事」
ブレイブ「そんなふざけた事を言っているのは貴様だけだ!俺は絶対子育てなどしないからな!」
コロの母「あら.....酷い。最後のお願いも........聞いてくれないなんて」
コロの母の目は力なく閉じようとしていた
体温もみるみるうちに下がっていく
ブレイブ「おい!!おい!!!」
コロの母「大丈夫..........。あなたは優しいの。きっと素敵な子に成長するわ。あなたが皆のリーダーなんてのも........ふふ、いいと思うわ」
ブレイブ「やらんと言っているだろう!おい!やめろ、目を開けろ!!」
コロの母「...........」
ブレイブ「.................」
コロ「ニャー!ニャー!」
コロの母の亡骸の近くには今まさに産まれたばかりのコロが元気に泣いていた
ブレイブ「..........俺が........こいつを........」
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ブレイブ「そうして俺はお前を育てる事になり、リーダーにもなったのだ」
コロ「そんな話知らなかった。なんで教えてくれなかったの?」
ブレイブ「言う必要がないと感じたからだ。現にこれまで母親の事を気にしてはいなかっただろう」
コロ「そうだけど........」
ブレイブ「だが、いつかあいつの事は聞かれると思っていた。必ずどこかで話さねばと思っていたのだ」
コロ「うん」
ブレイブ「...........俺でいいのか?」
コロ「え?何が?」
ブレイブ「俺なんかが父親でいいのか?俺は、お前に何かをしてやった記憶がない。群れの皆に囲まれて育ち、俺は見ているだけだった。多少狩りを教えただけだ。後の生きる術は全て群れの皆からだ。
ラース様と共に来てからも、マルス達やラース様達にお前は様々な事を教わっただろう。俺は........こんな性格だからな。未だにお前との距離がわからない」
コロ「変な父ちゃん。何言ってるの!俺、父ちゃんの息子だよ!父ちゃんは父ちゃん!俺が世界で一番カッコイイと思ってて、誰よりも強いと思ってる父ちゃんは一人だけだよ!俺、父ちゃんの息子ですっごく嬉しい!」
コロはブレイブの目の前まできて、目を見ながら伝えた
ブレイブ「!!..........そう.....か。ありがとう」
コロ「えへへ、父ちゃんにお礼言われたのなんて初めて」
ブレイブ「そうだな。何もしてやれない父親だが、少しはお前に父親らしい姿を見せられていたのかもしれないな」
ブレイブはコロの頭をポンポンと優しく叩いた
コロ「父ちゃんのその撫で方、俺大好き」
コロは嬉しそうに目を細めている
ブレイブ「この触り方もどうしていいかわからない時の触り方のままなのだ。だが、これでお前にはよかったのだな」
ブレイブもそのコロの様子を見て優しく目を細めた
コロ「うん!」
ブレイブ「........昼はすまなかった。心の僅かにでも、お前を本気で殺そうとした気持ちがあった事を強く後悔している」
コロ「俺も、父ちゃんより母ちゃんがいいなんて言ってごめん。俺の自慢の父ちゃんを、俺自身が馬鹿にするなんて駄目なのにね」
ブレイブ「これからも俺についてきてくれるか?"自慢の息子"よ」
コロ「!!!うん!!もちろん!!俺の父ちゃんは世界一だもん!」
サアアア
笑い合う二人の間を優しく夜風が通り抜けていった