それから数日後、ユグノア城
廊下
地下の牢屋へと続く階段の前に、イレブンとダバンとミラがいた
イレブン「それじゃあ、もう一度約束を言うよ。
ケニーの牢屋以外には見向きしない事。
特別にケニーの牢屋を開けるけど、入るのはダバンだけ。
ケニーと話せる時間は10分、それ以上は認めないよ。
いい?」
ダバン「はい!」
ミラ「わがままを申してしまい申し訳ありません。ダバン、落ち着いて話してね」
ダバン「そう.....だな。時間も限られてる。グダグダしてはいられないな」
イレブン「それじゃあ向かうよ。ついてきてね」
地下牢
見張りの兵士に軽く礼をして進んでいく。新しいユグノア城とはいえ、地下牢にもなると暗く錆ついたような匂いが立ち込めている
イレブン「さあ、ついたよ」
ケニー「あ?」
ケニーは牢屋の隅で壁を見ていたのを振り返った
ダバン「ケニー」
ケニー「チッ!.......んだよ。笑いに来たか?」
ダバン「そんな事するわけないだろう」
ケニー「ふん!.........その女がてめえのか」
ケニーはダバンの隣に立つミラを睨みつけた。その目は暗い牢屋の中でもはっきりと光って見えた
ミラ「.....初めまして、ケニーさん。あなたの兄のダバンの」
ガシャァン!
ミラ「!!」
ケニー「こんなやつが俺の兄なわけねえだろ。女、もう一度言ってみろ。その首、切り裂くぞ」
ケニーはミラが兄という発言をした瞬間、牢に勢いよく飛びかかりミラに向かって殺気をぶつけている
ダバン「ケニー......」
イレブン「大丈夫?ミラさん。無理しないで見守るだけでも」
ミラ「いいえ、大丈夫です。大きな音に少し驚いただけですので。ケニーさん、ダバンの妻のミラといいます。これからよろしくお願いします」
ミラはケニーの殺気を気にしていないように、ケニーを見つめたまま凛と発言を続け、綺麗に頭を下げた
ケニー「よろしく?はっ、何を馬鹿な事を。俺は盗賊!てめえはただの一般人!よろしくなんざ出来るわけねえだろ!」
イレブン「盗賊ケニー、今からダバンを牢屋の中に入れる。ダバンから君に話したい事があるみたいだ。ただし10分間だけだからね」
ケニー「断る!!こんなやつと話す事なんかねえ」
ダバン「聞くだけでも構わない」
ケニー「俺はてめえの声すらも聞きたくねえんだよ」
イレブン「.......どうするかはケニーの自由だ。開けるよ」
ダバンが入り口を体で塞ぎながら、イレブンが牢屋の鍵を開けた
ガチャ
ダバン「よっ!」
ガチャ
ダバンは開いた瞬間に僅かに牢屋を開け、体を滑り込ませすぐに鍵を閉めた
イレブン「ダバン、今から10分だからね。僕達はここで見てるから」
ミラ「きっと伝わるわ。諦めないでね」
ダバン「ああ」
ケニー「聞かねえって言ってんだろ。勝手にしろ」
ケニーはダバンに背中を向け、耳を塞いだ
ダバン「勝手にするさ。ケニー、頼みがある」
ケニー「誰がてめえなんかの頼みなんか聞くかよ」
ダバン「もう一度!家族としてやり直さないか!俺とミラと一緒に!」
ケニー「は......?何言ってんだ、てめえ」
ケニーは意味がわからないといったような顔で振り向いた
ダバン「ケニーは前にグロッタで俺に前こう言ったな。俺は兄貴でも家族でもなんでもねえ、ただの他人だと。確かにその通りだ。一番大事な弟であるお前を守らずにずっと苦しませ続けた。いじめられている事は簡単に予測していたのに......。
お前がこうなったのは全て俺のせいだ!お前が俺を嫌いになり、失望するのも当然だ!だからやりなお」
バキィッ!
二人「!?」
ガシャァン!
ケニーは話しているダバンを殴り飛ばした
ケニー「ふざけるなよ!!何が苦しませ続けただ、何がやり直そうだ!!
誰のせいで俺が周りに馬鹿にされ続けたと思っている!!
お前が俺の兄なんかになりやがったからだろうが!!!
お前がいると俺は永遠に比べられるんだよ!そんなやつと一緒になんているわけねえだろうが!!」
ダバン「そんなやつら、見返してやればいいだろ!!」
ケニー「だから見返しただろうが!!全員動かなくしてやっただろうが!」
ダバン「そうじゃない!馬鹿にしてきたやつらは、功績で見返してやれ!力でねじ伏せるのは間違っている!」
ケニー「そんなもの!何の意味も持たねえ!!結局比べられるに決まってるんだ!」
ダバン「なら、周りが比べられなくなるまで強くなれ!俺を追い越せ!!」
ケニー「ああ!追い越してやるよ!てめえをぶっ殺してな!」
ダバン「やってみろ。出来るもんならな」
二人は互いにキツく睨み合っている。その顔はまさに兄弟と思うくらい、鋭さや雰囲気がそっくりだった
ミラ「ちょ、ちょっとダバン!そんな事言ったらあなた」
ダバン「大丈夫だ、ミラ。たかが知れてる」
ケニー「舐めやがって.......。ここから出たら覚えてろよ!必ずてめえを殺して超えてやる!!」
その後、玉座の間
ミラ「何考えてるのよ、ダバン!!あなた、本当に殺されたらどうする気!?」
イレブン「ダバンが早々そんな事は起こらないと思ってるけど、僕もあの判断はよくないような気がする。なんであんな事を言ったの?」
ダバン「あいつが出てくるまで半年を切りました。ケニーが俺の話を聞くとは思っていませんし、頼みも聞くなんて考えていません。でも、ケニーがこのまま外に出たらどうなるか。またグロッタの家へと戻り、前の生活に元通りだと考えたのです。
そんなの、俺は絶対に嫌です。ケニーにとってあそこは嫌いで嫌いでたまらない場所です。そこにいても、ケニーにとっても周りにとっても何もいい事なんてありません。
だからケニーが俺にやってくる理由がほしかったのです。それがあれば、ケニーは俺の元へ来る。このユグノアに残り続けます。俺がいるであろう家や城に来るでしょう。その間にゆっくりと時間をかけて話していこうと思います。まあ大体は命を狙われると思いますが」
ロウ「そのためにわざとケニーを焚きつけた、というわけか」
ダバン「はい。それにケニーに俺を追い越せと言ったのも俺の本心です。ケニーは俺と比べられ続けた事で自分に自信がなくなり、俺を恨むようになりました。なら、その俺をケニーが越えればいいと考えました」
イレブン「言いたい事はわかるけど、結構難しい事だよ」
ダバン「わかっています。これにも作戦があるんです。どうか協力していただけませんか?」
ロウ「それは一向に構わぬが.....」
ダバン「ありがとうございます」
ミラ「(本当に大丈夫なのかしら、ダバン。心配で仕方ないわ)」