それから三日間、ケニーは様々な場面でダバンを狙い続けた。しかし、どれも不発に終わっていた
夕方、ユグノア商店街
ケニー「チッ.......この作戦も駄目なのかよ」
訓練中を狙ったがそれも防がれてしまい、仕方なくケニーは商店街を歩いていた
ケニー「あの野郎、完全に俺の行動を読んできていやがる。そんなにわかりやすいか?俺」
グギュウウ.....
ケニーのお腹から大きな音が鳴った
ケニー「あー、昼抜いたせいで腹減った!イライラすんなぁ、ったくよー!.......どっかで飯食べねえと。でも........金.....。盗むか?」
ケニーが頭の中でいろいろ考えていると
ミラ「あら?」
ケニー「あ」
ケニーの前には買い物かごを持って買い物をしていたミラがいた
ミラ「ケニーじゃない」
ケニー「気安く人の事呼ぶな、女。俺は今イライラしてんだよ、消えろ」
ミラ「嫌よ。私、ダバンの晩御飯の材料買いに来たんだから」
ケニー「口答えすんな」
ミラ「さっきの大きな音、もしかしてケニーが?」
ケニー「チッ、聞こえてたのかよ。悪いか」
ミラ「お腹空いてるのね。もう少し待ってくれる?すぐに買い物終わらせるから」
そう言うと、ミラはケニーの手を掴んで歩き始めた
ケニー「は?」
ケニーはわけがわからないと言った顔をしている
ミラ「この後、塩とハーブ、それからお魚を買うだけなの。その後家でご飯作るから」
ケニー「だからなんだよ!俺には関係ねえ!」
ケニーはミラの手を振り解いた
ミラ「関係ないわけないじゃない。私達家族よ?」
ケニー「てめえまでそんなふざけた事言ってんのかよ。俺はなった覚えはねえ」
ミラ「私もダバンもケニーを家族として迎え入れるわよ」
ケニー「お断りだね。あんなやつと一緒に飯なんか食えるかよ」
ミラ「それじゃあダバンがいない昼や夕方ならいいの?」
ケニー「どういう事だよ」
ミラ「だーかーら、私がその時間にケニーの分のご飯を作ればあなたは食べてくれるの?って事」
ケニー「は?お前が?そんなん、お前に何の意味が」
ミラ「意味?家族と一緒にご飯を食べる事がおかしい?人数も増えて楽しいし、私だってケニーの事もっと知りたいわ」
ケニー「そんなん何の意味もねえだろうが!」
グギュウウ.....
再びケニーのお腹から大きな音が鳴った
ケニー「チッ!」
ケニーは少し顔を赤くしている
ミラ「話が長くなっちゃったわね。ほら、早く行くわよ」
ミラも再びケニーの手を取るとそのまま走り出した
ケニー「だから!俺の事なんか構わなくていいんだってば!」
その後、ダバンとミラの家
ケニー「..........」
ケニーは結局ミラに押し切られ、家の中でご飯を作ってもらっていた
ミラ「簡単でごめんなさい。今度連絡してくれればちゃんとしたの作るから」
ケニーの前には野菜が少し大きめに切られたカレーライスが置かれた
ケニー「カレー........。久しぶりだ」
ミラ「ふふ、そうなの?それならよかったわ。感想も教えてくれると嬉しいわ」
ケニー「あー」
ケニーがスプーンを持って食べようとすると
ミラ「こら!」
パシッ
ミラが勢いよくケニーの手からスプーンを取り上げた
ケニー「な、なにすんだよ!」
ミラ「いただきますは?」
ケニー「は、はぁ?」
ミラ「ご飯を食べる時はいただきますって言うのよ。ちゃんと作ってくれた人や食材、命の循環をしている大樹に感謝をするの」
ケニー「知るかよ!んな面倒な事!早く返せ!」
ミラ「そんな事言う人にはあげません」
ミラはテーブルの上からカレーも取り上げた
ケニー「あ!........チッ!この女..........ダバンのじゃなかったら今すぐにでもぶっ殺してやるのに」
ミラ「で?いただきますは?」
ケニー「........いただきます.....」
ケニーは凄く嫌々な顔をしながら小さく呟いた
ミラ「はい、召し上がれ」
ミラは笑いながらカレーとスプーンをケニーへ返した
ケニー「(面倒くせえ女だ、こんなやつのどこにダバンは惚れたんだか。睨んでも凄んでも強気に対応してくるのもムカつく。自分は大した力もない癖に)」
ケニーはミラの事にイライラしながら黙々と食べていた
ミラ「美味しい?」
ケニー「.......まあ悪くねえんじゃね?久しぶりに食ったからわからん」
ミラ「そう、嬉しいわ。ありがとう、ケニー」
ケニー「感謝なんかされる筋合いはねえよ」
ミラ「そうかしら?ケニーは今、私が作ったカレーを少しでも褒めてくれたでしょ。私、嬉しかったわよ。だからありがとうでいいのよ」
ケニー「..........変な女」
ミラ「ねえ、女って呼び方やめてくれない?私、前にも自己紹介したけどミラって言うの」
ケニー「俺に関係ないやつの名前なんか覚える気はないんでね」
ミラ「関係あるじゃない。こうしてご飯食べてくれた」
ケニー「たまたまだ。もう来ない」
ケニーはカレーを全て食べ終わっていた
ミラ「冷たいのね。おかわりは?」
ケニー「あんのか?」
ミラ「ええ、あるわよ」
ケニー「じゃあ頼む」
ミラ「それじゃあ私の事、ミラって呼んでくれたらね」
ケニー「は、はぁ!?そんな事しねえよ!それなら自分で行く!」
ケニーは立ち上がってそのままキッチンに歩いていく
ミラ「いいじゃない、一回だけ」
ケニー「うっせえ!........あ?なんでキッチンに本が?」
キッチンにある鍋の近くには少し薄汚れた本が置かれていた
ミラ「ああ、これ?これは私のお母さんの大切なノートなの。子どもの頃に離婚していなくなっちゃったんだけど、このノートを私にくれたの。カレーの材料と作り方が載ってて、私の大好きな思い出の味なの」
ミラはノートを大切そうに抱きしめながら優しく話している
ケニー「ふぅん.......。それが今のカレーってわけか」
ミラ「そうなの。皆、このカレーを食べると美味しいって言ってくれるの。私も昔からずっと大好きで、子どもの頃に食べたようなあの優しい味に近づきたいってたくさん練習してるのよ」
ケニー「............幸せなこったな」
ミラ「そうね、幸せだと思うわ。ケニーとダバンの昔の生活に比べたら、私はずっと裕福に暮らしてきたと思う」
ケニー「!?てめ、俺達の過去を」
ミラ「ダバンから聞いたわ、全部。つらい事、苦しい事たくさんあったのよね」
ケニー「何をわかったような口ぶりで!!」
ミラ「何もわからないわよ!どれだけ苦しかったか、つらかったかなんてわからない!でも、そんな苦しみを少しでも分かち合いたいと思うの!それが、人間ってものでしょ!」
ケニー「同情なんかいらねえんだよ!!」
ミラ「同情なんかじゃない!あなた達を大切に思うから!寄り添って、支えていこうとしているの!一人だけでは生きていけないわ。つらい時には、必ず誰かが支えてあげないといけないの。その相手がどんなにこれまで嫌っていた相手だったとしても、支えてくれる人が絶対側にいるわ!」
ケニー「そんなんは甘えだ!俺は!一人だって生きていける!兄貴を超えられる!」
二人は睨み合っている
ケニー「ふん!話にならねえ。じゃあな」
ミラ「あ、ちょっと!」
ケニーは走っていった。ミラも大急ぎでその後を追った
ミラ「またご飯食べたくなったら来てよねー!いつでも待ってるから!」
外に出ると走り去るケニーの背中に向けて大きな声を出した
ケニー「...............」
その夜
ダバン「は?ケニーとご飯を食べた?」
ミラ「ええ、そうなの。カレーを食べてくれて、悪くないって言ってくれたわ」
ダバン「え?俺の、魚のソテーだけど」
ミラ「そこまで多く作ってないもの。ケニーとは別にしたのよ」
ダバン「えー.......」
ミラ「あら?いらない?」
ダバン「あ、いやいや!これも美味い!いる!というか、よくケニーを家に入れられたな」
ミラ「偶然商店街で会ったのよ。そしたらお腹空いてたみたいだったから少し無理矢理家に連れ込んだの」
ダバン「おお......。俺だとそうはならなかっただろうな。流石ミラだ」
ミラ「ふふ、ありがとう。少しでもケニーの事を知れてよかったわ」
ダバン「それならよかった。そうだ。それと明日以降、あまり外に出ないでくれないか?」
ミラ「え?どうして?」
ダバン「随分前にバン達とも行った事がある屋敷跡があるんだが、その近くで呪術を扱う強力な魔物が発見されたらしい。呪術の範囲は広くて、この王国にまで届いている。何をしてくるかわからない。
だから明後日にユグノア王国でも外に出ないようにしてもらって、その間に俺とイレブン様とロウ様が討伐を計画しているんだ」
ミラ「そうなのね、わかったわ。ダバン、信じてるけど気をつけてね」
ダバン「ああ、もちろんだ。ありがとう、ミラ」