それから二日後、ユグノア城 大広間
イレブン「それじゃあ出発しようか」
ダバン「は!」
ロウ「何やらよくない魔力を付近から感じる。魔物の魔力と合わさって危険じゃ。早く倒して皆を安全にしてやらんとな」
イレブン「僕も嫌な予感がする。大変な事になってしまう前に急ごう」
イレブン達は森の中にあった屋敷の跡地に向けて出発していった
その頃、屋敷跡地
森の中にある跡地には黒く渦巻いた謎の大きな球体があり、その中で一体の魔術師のような姿をした魔物が水晶を覗いていた
???「けへへへ、中々集まってきた。不安、絶望、やはり人間から得られる負の感情は私の呪いに非常に合う。特に一人の男から感じる妬みや苦しみ、最高じゃ。もっと、もっと私によこせ。........そうだ、もっと効率のいい方法があった」
水晶には屋根の上で座り込んでいる一人の男が映り込んでいた
その頃、ユグノア城下町
屋根の上でケニーが一人で座っていた
ケニー「..........」
ケニーはこの前のミラとの出来事により、昔の事を思い出していた
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ダバンとケニーが共に暮らしていた時の事
ガチャ
ダバン「ケニー、ただいま」
ケニー「あ!兄貴!おかえり!今日はどうだった?」
ダバン「.........わり、また依頼邪魔されてさ。ほんの少ししかお金、稼げなかった」
ダバンの手には三枚の銅貨が握られていた
ケニー「そっか、また.......あいつらが?」
ダバン「ああ。情けなくてすまないな。この金、兄ちゃんはいらないからさ、ケニーにやるよ。ちゃんと貯めておくんだぞ」
ダバンはケニーの手に銅貨を全て渡した
ケニー「え、いいよ!これ、兄貴の稼いだ金じゃん!僕.....俺、もいつか兄貴みたいに稼げるようになるからさ!」
ダバン「いいよ、明日こそもっと稼いでくるからさ。それより兄ちゃん、腹減ったな〜」
ケニー「あ!ご飯出来てるよ!孤児院の子ども達に教わったんだ!かれーってやつにしてみたんだ!うまく出来てるかはわかんないけど」
ダバン「かれー?」
ケニー「うん!違う国の料理なんだってさ!はい」
ケニーは小さな鍋からカレーをすくい、皿に乗せた
ダバン「ほう......。美味そうな匂いがするな。これ、野菜か?こんな高いやつ、どこから」
ケニー「孤児院の人から傷んでたりしてる物貰った!」
ダバン「はは、そうか。それはありがたいな。お礼言ったか?」
ケニー「もちろん!兄貴も明日言ってよね!」
ダバン「そうだな。さあ、食べようぜ」
ケニー「うん!あーん...........!うぇ.......野菜、半生」
ダバン「まあこれくらいなんてことないだろ。噛みごたえがあっていいじゃないか、美味いぞ」
ケニー「うう、折角兄貴にもっと美味しいかれー作ってあげたかったのに」
ダバン「おいおい、そんな事ないって。俺の初めてのカレーがケニーの手作りでこんなに美味しいんだ。凄く嬉しいぞ」
ケニー「え、本当!?美味しい!?」
ダバン「もちろんだ。弟が俺のために作ってくれたカレーだ、まずいわけないだろ」
ケニー「じゃ、じゃあまた作ってもいい?」
ダバン「ああ、楽しみにしてる。でも、無理はするなよ?」
ケニー「うん!!」
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ケニー「.........何思い出してんだよ、俺。こんな記憶......邪魔でしかねえ」
ケニーは固く手を握りしめると
グギュウウ......
ケニーのお腹から大きな音が鳴った
ケニー「またかよ。ま、昨日何も食べてないから当たり前か」
その時、ふとケニーの脳裏にある一言が思い浮かんできた
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ミラ「またご飯食べたくなったら来てよねー!いつでも待ってるから!」
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ケニー「..........行くか、ダバンもいないだろうしな」
ケニーは屋根から飛び降りて広場へと向かっていった
その頃、ユグノア地方 山中
ガサガサ
イレブン達はどんどん屋敷跡地に向けて進んでいた
ロウ「進むにつれてどんどん魔力が濃くなってゆく。やはり原因はあの屋敷跡地で間違いないようじゃな」
ダバン「ここまでくると俺でも感じます。この雰囲気、並大抵の魔物ではないようですね」
イレブン「そうみたい。もしキツそうだったら皆に援護を要請する。だから退く事も視野に入れておこう」
ダバン「承知いたしました。勇者様のお仲間が揃えば敵なしですからね」
イレブン「ふふ、敵なしは言い過ぎだよ。まあ負ける気はしないけどさ」
ロウ「!?なんじゃ、あれは」
二人「!」
三人は屋敷の跡地の場所にある大きな黒い球体にたどり着いた
ダバン「なんですか、これ。こんなの見た事ない」
イレブン「これが魔力の正体?」
ロウ「わからん。わしが近づいてみよう」
ダバン「!!いけません、ロウ様!何かあったらどうなさるのですか!俺が代わりに行きます!」
ロウ「じゃが.....」
ダバン「イレブン様とロウ様は俺の後ろにいてください」
イレブン「わかった。よろしくね、ダバン」
ダバン「.........」
ダバンは盾を構えながら恐る恐る黒い球体へ近づいていく
二人「.........」
イレブンとロウもダバンの後ろについていく
ダバン「さ、触りますよ」
二人「うん/うむ」
ダバンの盾が黒い球体に触れた瞬間
ブワッ!!
三人「!?」
触れた部分が大きく広がり、三人を一瞬で包み込んだ
ダバン「え!?」
イレブン「な、中に入っちゃった!!」
ロウ「なるほど、これは魔力で覆われた空間の入り口じゃったというわけか。そしてここでおそらく何かをしておったのだろう」
三人の目の前には黒い空間が広がっており、その中心には大きな壺や謎の液体が詰まった瓶、本棚や薬品のような物など怪しい物がこれでもかと置かれている
イレブン「なんか.......ラースのお父さんの研究所だった場所と似てるかも」
ロウ「当事者はおらんようじゃ。今のうちに少し調べてみよう」
その頃、ダバンとミラの家
コンコン
ミラ「はーい」
ガチャ
ケニー「よ、よう」
ミラ「あら!ケニー!こんにちはね、どうしたの?」
ケニー「いや.........その、大した事じゃねえんだけど」
グギュウウ......
ケニーのお腹から再び大きな音が鳴った
ケニー「チッ!!」
ケニーは顔を赤くしてそっぽを向いた
ミラ「......ふふふふ」
ケニー「笑うな!殺すぞ!」
ミラ「ふふ、ごめんなさい。またお腹空いてたのね。いいわよ、ご飯出来てるから」
ケニー「ふん!あ、それとよ」
ミラ「なに?」
ケニー「なんでこんなに人がいねえんだ?店もやってねえし、まさか全員家の中なんて事あるのか?」
ミラ「あー、ケニーは知らないのね。今日から極力外に出ないように言われてるのよ。なんでも強い呪術を扱う魔物が近くにいるらしくて、被害を抑えるためらしいわ」
ケニー「ふーん、そんなのさっさと倒しちまえばいいのに。ここには勇者様とかそのお仲間とやらがいるんだろ?」
ミラ「そうね。だから今日からイレブン様とロウ様、それとダバンが討伐に向かっていったわ。絶対倒してくれるから安心ね」
ケニー「そもそもそんな魔物がいるとわかった時点で倒しておけばいいのによ」
ミラ「そんな事言わないの。お二人は忙しいんだから。ほら、いつまでも玄関で話してても意味ないわ。あがって」
ケニー「そうだな」
ケニーが家の中に入り、扉を閉めようとすると
ヒュオオオッ!!
二人「!?」
強い強風が吹き、扉が開かれた
ミラ「キャア!!」
ケニー「なんだ!?」
???「お前だ、私の呪いに非常に合う負の感情を生み出している男は」
開け放たれた扉の前には謎の魔物が立っていた
ケニー「あぁ!?何の話だ!」
ケニーは短剣を構えて身構えた
ミラ「な、なんなの!?あいつ!この国にどうやって!」
???「さあ!私と共に来るのだ!」
謎の魔物がそう叫ぶと謎の裂け目が出来上がり、吹き荒れていた強風が今度は切れ目の方へ向かって吸い込むように吹き始めた
ケニー「ぐっ......やべ、これは」
ミラ「やだ、何よこれ!」
バサバサバサッ!!
二人は必死に掴まって耐えているが、家の中の物がたくさん裂け目の中へと吸い込まれていく
その時、キッチンから一冊の古びた本が吸い込まれていく
ミラ「!?駄目!!」
ミラはそれを見ると手を離して本を両手で抱き抱えた
ミラ「キャアアアッッ!!」
手を離したミラはそのまま裂け目へと吸い込まれていく
ケニー「あ!!んの、馬鹿女が!!」
ケニーもそれを見ると急いで追いかけていった