その頃、イレブン達は
ドサ!バサバサ!
突如現れた謎の裂け目から靴やタオルなどの物が出てくるのを警戒して眺めていた
イレブン「な、なに、この裂け目」
ロウ「わからん。出てくる物にも共通点は見つからんのう」
ダバン「見た事ある靴だ、あのタオルも」
その時
ミラ「キャアッ!」
ドサァ!
三人「!?」
本を抱えたミラが裂け目から出てきた
ミラ「いたた....ここは?」
ダバン「ミラ!?」
ミラ「え!?ダバン!?それにイレブン様にロウ様まで!」
イレブン「ど、どうしてミラさんがこんな所から」
その時
ケニー「うおっ!」
裂け目からミラを追いかけてきたケニーも出てきた
ダバン「な!?ケニーまで!」
ケニー「げ、なんでてめえがこの裂け目の先にいるんだよ!」
ロウ「ここはわし達が調べておった屋敷跡地じゃよ。一体お主達に何があったのじゃ」
ミラ「そ、そうだったわ!私達、変な魔物に襲われて!」
???「おや?私の空間に知らない人間が三人。いつの間に侵入されたのやら」
全員「!?」
イレブン達の後ろから謎の声が聞こえ、振り向くとそこにはミラ達を吸い込もうとした魔物が裂け目を閉じて立っていた
ケニー「あいつだ!俺達をいきなり吸い込んできたやつは!」
イレブン「誰!どうしてミラさん達を狙った!」
ジュウ「私の名はジュウ。邪神様により授けられた呪術の力を溜めていた。その力を増幅させるため人間の負の感情を媒体にして、呪いにしていた」
ロウ「人間の感情を操り、力に変える。そんな事早々出来る物ではあるまい。皆のもの、油断するでないぞ」
ダバン「ミラ、下がっているんだぞ」
ミラ「え、ええ」
ジュウ「そして私の呪いに非常に合う負の感情を持つ男、それがお前だ!」
ジュウはケニーを指した
ケニー「俺がだと!」
ジュウ「そうだ。お前の兄に対する羨み、妬み、孤独、自分への劣等感。全てが最高に呪いの力が溜まりやすい」
ダバン「ケニー、お前....」
ケニー「っざけんな!勝手に人の事決めつけてんじゃねえよ!」
ジュウ「あと少しなのだ。あと少しで私の呪いは完全となる。さあ、私の呪いの力の糧となれ!!」
ケニー「誰がなるもんか!」
ケニーは短剣を構えてジュウの元へと単独で走っていく
ダバン「やめろ、ケニー!無謀な事をするな!」
ケニー「黙れ!ヴァンパイア」
ケニーの二振りの短剣が赤黒く力を纏い始めた
ジュウ「ジバマータ」
ジュウが地面に魔法陣を描いた瞬間、ケニーの周囲から数十発の地面の塊がケニーに向かって飛んできた
ケニー「!?」
ドガガガガガ!!
ケニーは量と速度に対応出来ずに四方八方から攻撃され続けている
ダバン「ケニー!!」
ミラ「ケニー!」
ダバンとミラがケニーに向かっていく
ケニー「ぐっ....」
ケニーは攻撃が終わるとそのまま血を吐きながら倒れ込んだ
ジュウ「さあ大人しく来るのだ」
イレブン「させないよ!」
ジュウ「む!?」
ケニーが攻撃されていた間にジュウの後ろにはイレブンが迫っていた
イレブン「アルテマソード!」
イレブンは闘気の力を剣に宿し、真っ白なオーラを纏った剣を振り下ろした
ジュウ「ぬう!!」
ガキン!
ジュウはギリギリで杖で防いだ
イレブン「ぐぐぐ.....ハアッ!!」
ガァン!
イレブンはジュウと競り合った後、ジュウを勢いよく押しのけた
ジュウ「ぐうっ!」
ジュウはその勢いに後方へと戻された
ロウ「ケニーよ、大丈夫かの。どれ、ベホマじゃ」
ロウはダバン達と共にケニーへ駆け寄っており、ケニーに緑色の魔法陣を描くと完全治癒の力をかけ傷を瞬時に塞いだ
ミラ「よかったわ、ケニー」
ケニー「別にお前に心配される筋合いはねえはずだ」
ミラ「そんな事ないわ。私が吸い込まれた時、すぐにケニーも追いかけてきてくれたでしょ。私を心配してくれたのよね。だから私もあなたを心配して当然じゃない」
ケニー「また変な事を」
ダバン「ミラ、戦闘が始まる。早く遠くに避難していてくれ」
ミラ「そうね、頑張って!」
ミラが立ち上がって足速に離れて行こうとすると
ジュウ「!そこの女!」
ミラ「!?」
ジュウ「こっちに来い!」
そう言うとジュウの杖が怪しく光り出した
ミラ「キャアッ!!」
ミラはその光に吸われるように体が勢いよくジュウの元へと移動させられた
ダバン「な!?なにしやがる、あいつ!」
ミラ「な、なによ!離しなさい!」
ミラはジュウの腕に囚われながらもジタバタと暴れている
イレブン「ミラさんを離すんだ!」
ジュウ「ふん、勇者と真っ向から戦う気などはなから無いわ。.......おや、なんだ?その本は」
ミラ「!?やめて!この本だけは渡さない!!」
ジュウ「そう言われたらさぞ気になる。ふん!!」
ジュウはミラが必死に抱えている腕を力強く握った
ミシミシ
ミラ「ああああ!!!」
バサ
ミラの手首から嫌な音が聞こえるとあまりの痛みにミラは抱えていたノートを離してしまった
ダバン「てめえ!!」
それを見たダバンは勢いよくジュウの元へと駆けていく
ジュウ「おっと」
ミラ「うう.....」
ジュウはその様子を見てダバンに向かってミラを突き出した
ダバン「ミラを離せー!!」
ダバンがミラに手を伸ばすと
ジュウ「ドルマドン!」
ジュウは作戦通りといった顔でダバンの足下に黒い魔法陣を描き、強大な闇の力がダバンを包み込み、ミラの目の前で大爆発を起こした
ドォン!
ミラ「ダバン!」
ダバン「がっ....くっ、なんて威力だ」
ダバンは直撃をくらい、その場で膝をついた
ジュウ「さて、これがそのあなたの大事な物なんだな。汚らしい本だ」
ミラ「くっ、返しなさい!」
ジュウ「もうこの際、負の感情を出してもらうならこの男でなくともいい。あなたで私の呪いの力を完成させてください!ハアアッ!!」
ジュウが杖に力を込めて本に黒い魔力を注ぎ込んだ
本は黒く染まっていき、怪しく光り始める。更に小さな本は膨張を始めていきどんどん大きくなっていく
全員「!?」
ミラ「やだ.......や、やめて......」
あくまの書「ギィィィ!!」
本は大きな魔導書のような姿になり、表紙には紫や赤黒くなった不気味な色に赤いギョロギョロとした大きな目玉が一つついている魔物の姿となった
イレブン「な、なんだこいつは!」
ロウ「知らぬ魔物じゃ!魔物を作り出しおった!!」
ダバン「こんな事まで出来んのかよ」
ケニー「.......あいつの、あの大事にしてた本が......」
ジュウ「さあ、勇者達を蹴散らせ!」
ミラ「やめてーーー!!」
ミラはこれまでに聞いた事がないような悲痛な叫び声をあげた。その顔は目に大粒の涙を滲ませて苦しそうな顔をしていた
あくまの書「ギィィィ!!」
そんなミラの声は魔物には届かず、あくまの書はオレンジ色の魔法陣をイレブン達に描き、大きな火柱を発生させた
ミラ「ああ.......あああ.......」
ミラは絶望感に浸ったような顔をしてあくまの書を見ている
イレブン「ふっ!これはベギラゴン!」
イレブン達は全員火柱を避けていた
ジュウ「お?おお......完成だ!あなたからの絶望で今!私の呪いの力が完成した!見せてあげましょう!私の呪いの本気をこの本に!」
ジュウはもう一度力を込めて杖を握ると、跡地を覆っていた黒い魔力の球体は全てなくなり杖に吸収されると、その杖事あくまの書に吸われていった
ドクン
あくまの書が大きく跳ねると、更にその姿は大きく強大に成長していった
全員「!!」
だいあくまの書「ジャアアア!!」
あくまの書より遥かに大きくなり、森からも大きくはみ出すほどの巨大な本となり目玉も表紙も更に禍々しく恐ろしき姿の魔物となった
ミラ「私の........皆を笑顔にする本が......」
ロウ「こうなっては致し方あるまい。この本の魔物を倒すしか」
イレブン達が剣を構えた
ダバン「ミラ......すまん」
ケニー「ま、待てよ、てめえら!!」
ケニーはだいあくまの書の前に立ちはだかるように立った
イレブン「ケニー、なんで」
ケニー「ダバン!てめえ、この本の事知らねえのかよ!あいつの大事な本なんだぞ!」
ダバン「え、なんでお前がそんな事知ってんだよ。この本、なんなんだ?ミラの物なのはわかるが」
ケニー「ハア!?この本はな、あいつがガキの頃の母親との思い出の大事な大事な本なんだぞ!お前だって食べた事あるんだろ、あいつのカレー!それの作り方の本だ!
料理できねえお前にはわからねえかもしれねえけど、あいつはめちゃくちゃこの本大事にしてるんだぞ!それを攻撃してボロボロにしてもいいのかよ!あいつの思い出を壊していいのかよ!!」
ミラ「ケニー.......」
イレブン「母親との......大事な思い出」
ロウ「それが詰まった本じゃったのか」
ダバン「......知らなかった。だけど、こんな姿になっちまったんだぞ!」
ケニー「わかってる。だがよ、あいつは呪いとやらの力でこの姿にしたんだろ。だったら、あのクズ野郎をぶっ飛ばせば元の姿に戻るんじゃねえのか」
ロウ「うむ.....可能性はある。じゃが、あやつの元に辿り着くためにはこの魔物との戦闘は避けては通らぬ。更にミラさんもあやつから救わないといかんのう」
イレブン「........よし、わかった。僕とおじいちゃんでこの魔物を引きつける。あの魔物からミラさんの救出と討伐はダバンと......ケニー、君達に任せたい」
ダバン「え.....は、はい!」
ケニー「勝手に指示すんな。俺のやりたいようにやるだけだ」
ロウ「よし、ならば動き始めようかの」